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●2019年11月号
■ 臨時国会の課題と総選挙闘争方針
     社会民主党選挙対策委員長 参議院議員 吉田忠智

   

■ 未来の大分岐を迎えて

第200回国会を迎えた。国会は、各時代、各議員の努力とともに回を重ねてきたが、国民の期待にどれだけ応えられただろうか。私たち国会議員1人1人に課せられた課題だと肝に銘じたい。また、本稿の最後でも述べるが今、私たちは「未来への大分岐」にいる。日本一国内の与野党次元の問題ではなく、資本主義の終わり、人間の終焉か?という時代状況の中での決断と行動が求められる。
   
さて、そのような時代状況下での国会。私たちは、これまで再三閉会中審査要求、臨時国会早期開会要求をしてきたが、安倍政権は論戦から逃げ回ってきた。その最たる問題が年金財政検証問題、消費税増税問題等であるが、他にも課題は山積している。
   
本稿では、10月4日に行われた総理の所信表明演説に基づき、まずは、その主要な問題点を概観する。
   
   

■ 総花的な首相所信表明演説

総理の演説を直に聴いた印象は、全体的にやる気が感じられず総花的で、国民の皆さん、市民の皆さんの切実な思いに向き合っていない。議場での野次もすさまじかった。
   
今国会の最大の課題と目される憲法については、演説の最後で「しっかりと議論していく。皆さん、国民への責任を果たそうではありませんか」と国会議員に訴えた。行政府の長から国会が言われる筋合いではない。憲法九九条に抵触する越権行為だ。
   
最初に出てきたのは、一億総活躍、教育無償化。「3歳から5歳までの全ての子どもたちの幼児教育、保育の無償化が実現した」「70年ぶりの大改革」と自画自賛だが、待機児童問題を置き去りにして、大改革はないと思う。
   
高等教育についても、深刻な状況にある奨学金の問題。奨学金で自己破産がどんどん発生するような状況であるにもかかわらず、それも中途半端。とても高等教育の無償化とかいう高等教育の充実になっていない。
   
ハンセン病の患者・元患者のご家族の皆さんの判決については、「極めて厳しい偏見、差別が存在したことは、厳然たる事実」と認め、「訴訟への参加・不参加を問わず、新たな補償の措置を早急に実施します」としたのは当然だが、政府として判決を踏まえた措置を実施してもらいたい。
   
次に全世代型社会保障。「65歳を超えて働きたい。8割の方がそう願っている」と。働きたい方もいるだろうが、働かざるを得ない高齢者が出てきていることの方が問題だ。年金だけでは食べられない状況があることから政府は逃げている。国民年金がだいたい受給額平均月額5万5000円と言われて満額もらえない人が多い中で、最低保障年金をしっかり引き上げていくこと、年金財源は不公平税制の是正によって作っていくことこそ求められている。
   
「同一労働同一賃金によって正規・非正規の壁がなくなる」と言うが、全然実態を踏まえてない。正規・非正規の問題は何ら解決せずに、非正規という言葉だけなくそうとする前の厚生労働大臣の動きもあったが、これもおかしい。
   
成長戦略。「年金財政検証では、アベノミクスによって支え手が500万人増えた結果、将来の年金給付に係る所得代替率が改善」というのは、見方が部分的だ。
   
有効求人倍率が全体として上がったのは、やっぱりそれだけ職を求めている人が少なくなっていること。実際増えているのは非正規だ。
   
   

■ 経済界主導の貿易政策で農業に打撃

農産物の輸出について「ベトナムやシンガポールでは、最近日本の粉ミルクが人気」「牛乳や乳製品の輸出は2割以上増加」というが、実際は増えてないのではないか。加工品を数字上粉飾して増えたようにしている。自給率そのものが低下しているという根本的問題を直視すべきだ。
   
TPP、EUとの経済連携協定にも触れているが、これから日本農業にどのような影響が出てくるか。いいところだけ、輸出が部分的に増えたとか言うが、農業者の懸念や不満が東北、北信越の参議院選挙の選挙結果に表れている。不都合な部分には向き合っていない。 現場の声を十分聞かず、経済界主導の「農業改革」により主要農産物種子法が既に廃止をされたが、米どころ新潟をはじめ各地で既に種子条例制定の動きがある。こうした声に全く向き合っていない。
   
今回、日米貿易協定も臨時国会で承認案件となるが、これだけTPPを上回る譲歩をアメリカにしているわけだから、そうした姿勢も問わなければならない。TPP11 + 日米貿易協定そして日EU、こうした度を越した自由化によって甚大な影響を受ける。農業対策は待ったなしの課題だ。
   
復興については「各省庁の縦割りを排して、徹底した現場主義を貫き、政治の責任とリーダーシップの下、福島の再生、東北の復興に取り組んでいく」と述べたが、東日本大震災から8年7カ月、沿岸部はまだまだ復興には程遠い状況だ。私も何回も福島に行ったが、人もまだ戻ってきていない。復興格差と言われる状況も出ている。
   
東電幹部の刑事責任を求めた福島原発訴訟、汚染水問題、避難指示解除で賠償金が打ち切られた問題など原発に関する諸問題がことごとくスルーされている。印象操作も甚だしい。今国会でしっかり追及していきたい。
   
地震、集中豪雨、記録的な暴風など自然災害についての言及があった。「台風15号による大規模停電」、千葉のことについて触れたが、内閣改造と重なっていた。内閣改造をずらすぐらいの事態であったのではないか。初動対応をしっかり問われなければならない。
   
また、近年自然災害の多発との関連で言えばCO2対策は喫緊の課題だが、同時に国内の森林をいかに保護するかという点も忘れてはならない。林業における森林経営管理法、民有林ばかりでなく国有林まで民間企業に明け渡すような改悪も看過できない。一貫する新自由主義的改悪がこうした災害を助長している面も浮き彫りにしていきたい。
   
災害に対応する自治体職員は疲弊している。この間の地方行政改革による市町村合併、職員削減、会計年度任用職員制度導入に向けた課題等への対応が急務である。
   
中小・小規模事業者、インバウンドが増えたのは事実で、地域経済にも波及効果はあるが、外国人との共生という視点も欠かせない。現代の奴隷制度とも言われる技能実習生の問題が置き去りにされていないだろうか。出入国管理法の改正が強行された。約256万人の在日外国人の中で、約128万人が日本で働く。技能実習生の問題、外国人留学生の問題、様々な問題がある。総理の所信表明演説にはこの点についても言及がなかった。
   
消費税については「消費税率引き上げによる影響には、引き続き十分に目配りしてまいります」と述べた。そのことは当然だが、構造的問題のある消費税を引き上げて、軽減税率についての様々な問題、事業者に対する負担のことも考えていかなければならない。税と社会保障の所得の再配分機能を高めるという観点で政策転換を求めていきたい。消費税の今後の取り扱いについて、8%に戻す法案を用意している政党や5%に戻すことを主張する政党もあり、今後合意形成を図っていきたい。
   
   

■ 具体策欠く外交政策

外交安全保障について。「沖縄の基地負担軽減に引き続き取り組みます」と言うが、言葉だけだ。沖縄の負担軽減とは何が負担軽減になっているのか。戦闘機の爆音、事件、事故への具体策が何も出ていない。一部の基地を返還して、その一方で、これから50年100年と続く軍港を備えた基地を辺野古に作ろうと政府は躍起になるが、沖縄県からの声には無回答だ。軟弱地盤の問題もスルーしている。世界一不平等と言われる日米地位協定には何も手をつけようとしない。このことも問われなければいけない。
   
北朝鮮情勢についても、総理は「条件を付けずに、金正恩委員長と向き合う決意」と述べたが、信頼関係構築への努力が感じられない。在日朝鮮人に対する教科書の無償化、高校授業料無償化、幼児教育の無償化についても、朝鮮人学校や外国人の幼稚園とかは対象とせず、差別している。日本で共に暮らす朝鮮民主主義人民共和国出身の同胞に対して、しっかり必要な手立てを講じないと、日朝国交正常化に向けて安倍総理がいくら会談したいと言っても、信頼は得られず、会談の条件整備が整わないのではないか。
   
北方四島の問題については、「共同経済活動が動き出した」「長門合意は着実に前進」「領土問題を解決して、平和条約を締結する」などと言及したが、何も成果が上がってない。事実上、四島返還から二島返還に切り替えてロシアの態度が頑なだ。20何回も総理が出向いても、成果はない。根底には日米安保の問題があると思う。対米従属姿勢を改めることが北方四島問題解決の鍵を握る。
   
韓国についてはたった1行。「韓国は、重要な隣国であります。国際法に基づき、国と国との約束を遵守することを求めたい」と。冷淡で、上から目線な印象を受けた。すでに別府など九州観光地では韓国からのインバウンドがどんどん減って閑古鳥が鳴いている。地域経済にも深刻な影響が出ている。日韓関係が北朝鮮との関係にも影響している。日韓請求権協定について、個人の補償については、玉虫色で過ごしてきた部分もある。過去に合意したからというだけでは済まされない問題がある。日韓関係をどのように改善していくのか、言及がなかったのは大変問題だ。
   
以上が総理大臣所信表明演説を通じて浮き彫りになった今国会の諸課題である。私は今国会から参議院総務委員会、決算委員会、政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会に所属することになった。まずは所属委員会の所管案件から院内での論戦に挑んでいきたい。
   
   

■ 総選挙闘争への方針と取り組むべき課題

院内での闘いは、衆参で立民と国民の会派合流で野党第一勢力が大きなまとまりとなり、野党共闘の柱が実現することになった。参議院では会派名に「社民」も入り、衆参ともに野党第一会派で安倍政権と対峙することになった。その他野党各党、会派、議員との共闘、共通政策、政権構想、選挙協力を推し進めつつも、社民党の再建再生をいかにして進めるべきか。
   
衆議院解散・総選挙は早ければ年内、遅くても1年以内と想定される。準備を急ぎたい。候補者擁立、自治体議員の協力、社民党各県連合の活動強化、支持拡大に向けた様々な取り組みが必要だ。
   
社民党は、去る10月3日に全国幹事長会議を開催し、小選挙区では、11ブロック内で最低1人以上の擁立、東北と九州は全県から擁立などの方針を確認した。
   
比例は参議院が全国比例であるのに対して衆議院はブロック比例。ブロック単位での活動強化、そのための状況把握が急がれる。候補者擁立は容易ではないが、当選できる候補者の擁立、当選させる取り組みを強く働きかけていきたい。
   
現有2議席を含む5議席以上当選を目標としたい。大分2区、ここは社民党、吉川幹事長の選挙区勝利に全力を尽くしたい。それから沖縄2区。照屋寛徳国会対策委員長が長年守ってきてくださった貴重な1議席。照屋議員が74歳ということで勇退をされる見通しだ。後継者については、地元沖縄県連合での丁寧な協議を待ち、県連合の決定を全力で応援して参りたい。
   
「安倍政権打倒・改憲阻止」を最大の目標に、全289の小選挙区における最大限の住み分け一本化と社民党公認候補の擁立、野党間選挙協力により当選に注力したい。党首経験者として、選挙対策委員長として、各党トップや政治家レベルでの合意だけでなく、実務者レベル、支援組織レベルでの意志の疎通を図りたい。
   
社民党のイメージ強化のため、政党ポスター、新報号外、ネット対策など従来にも増した取り組みが求められるが、限られた予算を最大限有効に生かす発想で、センスある質の良いものを制作することが必要だ。過去から引き継ぐスローガン、蓄積された発想を大切にしつつ、新たな時代を創り出す新しい発想で、魅力ある社民党のイメージを形成したい。この点については横田氏が本誌10月号の論考でも指摘した通り「『貧乏人からは取るな』といった弱者の心情の琴線に触れる訴え、『自分はどうなってもいい』という自己犠牲精神、『みんな生きていてくれよ』『みんなは悪くない』という有権者との共感」など、他党の訴え方からも学び、社民党員1人1人が「エッジ」の効いた言葉と行動で人々との共感の輪を拡げていくことが大切だ。党内での議論を行って参りたい。
   
加えて地域での地道な取り組みとして、街頭宣伝、対話集会、政策報告会、学習会等、一方通行に陥らず、人々からのフィードバックを受け入れる双方向の取り組みにしていきたい。「話す力」「伝える力」を増すためには「聴く力」を磨き、「聴く社民党」を定着していきたい。
   
社民党の存在感を高める。ラグビーに例えれば「護憲」というボールを敵に奪われずに前進していくために、体を張って敵からの攻撃を防ぎ、ボールを活かす、その一点に集中し、仲間を信じて、ボールをつなぐこと。辛抱強く、諦めずに身を挺して護憲共闘を前進させることだと考える。その闘いに徹することが結果として社民党への再認識、再評価を高めることになると信じる。
   
選挙闘争の目的は「安倍政権打倒・改憲阻止」であるが、この闘いに勝利するためには、人々を引き付ける魅力を持たなければならない。「平和・自由・平等・共生」という私たちが掲げる社会民主主義の理念を、現実的課題の中で浸透させ、将来へのビジョンとして打ち出していく。
   
マルクス・ガブリエル他著、斎藤幸平編『資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐』を最近読了した。資本主義の行き詰まりの中で、「資本主義では環境危機を乗り越えられない」「情報テクノロジーの時代に資本主義が死んでいく」など資本主義を乗り越える状況が説かれ、新たな理念の提起が求められる。アメリカのバーニー・サンダースやイギリスのレジェミー・コービン労働党党首が新たな動きを作ったのは、政治家の個人的資質ではなく社会運動に拠ると指摘している。同書は、「古き良き時代の社会民主主義的な価値観を復活させることで、危機を乗り越えられるのか」との設問に対しては「ノー」と答え、これからの時代に即した運動の在り方を模索する。
   
しかし、それは社民主義そのものへの失望ではなく、今後私たちが新たな「社民党運動」をいかに創っていくか否かで、時代の潮目を変える分岐点にいることも示していると私は理解した。
   
雇用創出、再配分政策などこれまでの社民党の政策を、新興政治勢力が主張し、一定の支持を得てきたことは、既存政党への批判という意味では、私たちも生まれ変わる必要性がある。一方、組織を持たず、運動に根差さない、いわば「根無し草の政治リーダー」では、ポピュリズムから全体主義に陥る危険性も秘めている。
   
こうした状況下、従来から「がんこに平和」「元気に福祉」、最近は「憲法を活かす政治」「支え合う社会」を唱え、運動を積み重ねてきた社民党だからこそ、この「未来への大分岐」の舵取り役を担えると考える。
   
同書の著者の1人マルクス・ガブリエルは「人類は、今、胸元に拳銃をつきつけられているような状態」と衝撃的な言葉を発したが、技術の加速の行き着く先に「サイバー独裁」「デジタル封建主義」が待ち構えていることを私たちは自覚し、好むと好まざるとにかかわらず、対峙していかなければいけない。最悪の状態を避けるためには「資本主義そのものに挑まなければならない危機的段階にきているのではないか」と問題提起する。
   
そのための運動をどう構築するか。1人で行う運動、市民運動、労働組合運動等々、どのような運動に属し、獲得目標の設定によっても運動の在り方は千差万別だが、柔軟に離合集散や協力、協調を図りながら、運動の機運を高めていきたい。社民主義をブラッシュアップし、それを草の根から実践する、理論と運動の展開が、我々の喫緊の課題である。
   
   

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