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●2017年4月号
■ 政治情勢の特徴と今後の課題
   社民党幹事長  又市 征治

   

■ 通常国会前半の攻防

1月20日から150日間の会期で始まった第193回通常国会は、冒頭から政府・与党側の強権的な姿勢が目立った。彼らが衆・参両院で3分の2以上を占めた故である。
   
安倍首相は、冒頭の施政方針演説で、例によって「自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々」との連携を強調した。憲法違反の安保法制を強行し、また内心の自由・思想を取り締まりの対象とする共謀罪の創設を企み、そして沖縄の民意を蹂躙して新基地建設を強行し、さらには中東・アフリカの7か国からの市民の入国と総ての国からの難民の受け入れの停止を命ずる大統領令を発するトランプ大統領を「信頼関係を築ける」人物と評価するなどして、よくも「自由、民主主義、人権、法の支配」が基本的価値などと唱えてなんの矛盾も感じないのか、改めてその厚顔無恥ぶりに呆れる。また、演説では「これまでも、今も、これからも、日米同盟こそがわが国の外交・安全保障政策の基軸である。これは普遍の原則だ」と唱えた。これが、「米国第一主義」を掲げる独りよがりなトランプ政権に追従を強めることになりはしないか、懸念を強めざるを得ない。そしてまた「日本をどのような国にしていくのか、その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めよう」と、改憲への強い意欲も示した。
   
国会審議は、まずは2016年度第三次補正予算関連法案の審議からであったが、これはアベノミクスの失敗による税収減1.7兆円を赤字国債で賄うこと、補正予算の緊要性の原則に反して来年度当初予算のミサイル防衛関連経費の一部(1706億円)を前倒し計上していること、発効が絶望的となったTPP関連予算の執行停止・見直しがなされていないことなどの問題点があった。しかし与党側は、4野党が反対する中、衆・参ともわずか2日間ずつの審議で採決に持ち込み、1月31日に可決・成立した。
   
次いで、2月1日から衆議院で2017年度政府予算と関連法案の審議に入ったが、様々な問題の審議が生煮えのまま2月28日には衆議院で採決が強行され、直ちに参議院に送付された。参議院では3月1日から審議入りした。
   
この予算案の特徴は、社会保障の自然増分を1400億円も圧縮して医療・介護の負担を増加させる一方で、防衛費を過去最大の5兆1250億円(補正予算含めれば5兆3000億円)に膨張させる“バターより大砲”重視の内容であることから、当然、反対した。
   
一方、この予算審議の過程で、米国トランプ政権への追従姿勢、違法な文部科学省の天下り斡旋問題、「共謀罪」をめぐる金田法相の支離滅裂な答弁ぶりと質問封じ、南スーダンPKO部隊の日報をめぐる防衛省の情報隠しと稲田防衛相の文民統制不能ぶり、学校法人「森友学園」への国有地の不当払い下げ問題と安倍首相や稲田防衛相らとの関係疑惑などが浮上した。これらに対して4野党は共闘を強め、金田法相と稲田防衛相の辞任や森友学園の籠池理事長の参考人招致を求めて厳しく追及してきたものの、数の多数を頼んで臭いものに蓋をするような与党の強引な国会運営によって追及・解明は不十分なまま、3月28日で日切れを迎えようとしている。
   
なお、天皇の退位問題は、1月19日以降、衆・参両院の正副議長の下で各党・会派の代表による協議が行われ、3月17日には国権の最高機関である立法府として天皇の退位を認めることなどで一致し、今国会中に実質的に皇室典範の改正などの立法措置を政府に求めることとなった。
   

■ 後半国会の諸課題・法案

4月からは問題山積の諸課題や法案の審議入りとなる。 先に触れた追及課題、すなわち文科省の天下り斡旋問題とその根絶策、防衛省の情報隠蔽とシビリアンコントロール問題並びに稲田防衛相の資質問題、森友学園への国有地の不当払い下げ問題と政治家との関係疑惑などは、引き続き真相解明と責任の所在追及が当然必要である。    
これらに若干付言すると、

  1. 天下り問題は、文科省だけなのか、全省庁の厳しい調査が必要であり、その上で業界と省庁との癒着につながる天下りの根絶策が必要である。
     
  2. 防衛省の情報隠蔽と稲田防衛相の資質問題は重大である。昨年7月、南スーダンの首都ジュバ(の陸上自衛隊の宿営地近く)で2日間にわたり政府軍と反政府勢力との激しい銃撃戦が発生し270人以上が死亡した。現地の自衛隊部隊はこれを日報で「戦闘」が発生したと伝えた。その日報の開示を求められた稲田防衛相は、あれは「戦闘」ではなく「衝突」だと強弁し、また「日報は廃棄して存在しない」と答弁した。しかしその後、陸自内部に日報が保管されていたことが発覚し、しかも統幕幹部が従来の説明と整合性が取れないとして公表しないよう指示したことまで発覚した。これは、PKO参加五原則が崩れて自衛隊部隊を撤収させざるを得ない事態を隠蔽するとともに、シビリアンコントロールの機能不全を示すものであり、稲田防衛相と自衛隊幹部の責任は重大である。
     
  3. 加えて稲田氏は、弁護士時代に森友学園の訴訟に関与したことを全面否定したが、大阪地裁への出廷記録を突き付けられ、先の答弁を「記憶違い」だったとして発言の撤回と謝罪に追い込まれた。国会と国民を欺き続ける稲田氏は防衛相失格であり即刻辞任すべきだ。同時にこのような虚偽答弁を繰り返す稲田氏を防衛相に任命した安倍首相の責任も大である。
     
  4. 森友学園への不当な国有地の廉売(評価額の14%)問題は、3月23日の籠池理事長の国会証人喚問が注目される。そもそも安倍首相は籠池氏を「私の考え方に共鳴した方」と語り、「情熱的な教育をされると妻から聞いた。しつけなどをしっかりしておられるというところに共鳴した」とも説明していた。また昭恵夫人が森友学園の運営する小学校の名誉校長に就任し、講演会でその教育方針を賛美していた。そして問題となっている「瑞穂の國記念小學院」建設に安倍首相から「100万円の寄付」を 受けたと籠池氏は述べている。したがって不当な国有地の廉売に安倍首相やその周辺からの口利きがあったのではないか、あるいは財務省が安倍首相と学園との近い関係を忖度したのではないかとの疑惑がもたれている。この疑惑解明がどこまで進むかは籠池氏の物証をもっての証言次第であろう。でなければ金銭授受問題などは水掛け論に終始し、逆に籠池氏が名誉棄損・偽証罪や補助金不正取得などで刑事告発され、真相解明がないまま幕引きになりかねない。その構えで政権・与党側が一転して証人喚問要求に応じたのであろう。

後半国会での主な与野党対決法案は、「共謀罪」を新設するための組織犯罪処罰法改正案、「世界で一番企業が活動しやすい国」のための「働き方改革」関連法案、自己負担を2割から3割に引き上げるなどの負担増を含む介護保険法等一部改正案、農業の国際競争力を高めるためと称する農業競争力強化関連法案などが上げられる。紙幅の関係でこれらについては本誌3月号の横田論文を参照願いたい。
   

■ 改憲動向に対峙し「活憲」運動の強化を

今年は日本国憲法施行70周年にあたる。改憲を自らの使命に任じる安倍首相は、前述したように、施政方針演説で「日本をどのような国にしていくのか、その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めよう」と、改憲勢力に決意を促した。したがって衆・参両院の憲法審査会で改憲の論点整理を進めようとする動きが強まるとみられる。維新の会などが唱える教育の無償化や地方自治条項の拡充などを改憲の突破口にしようとすることも考えられる。
   
そもそも、戦後一貫して自民党が「自主憲法制定」を掲げてきた真の狙いは、戦争放棄を宣言する現行憲法を廃棄し、“戦争ができて一人前の国”という時代錯誤の認識に立った新憲法を制定することにある。だから自民党の「憲法改正草案」では、自衛隊を憲法に「国防軍」と明記し、人権は「公益及び公の秩序」の枠内に制約し、政治権力を縛る憲法を逆に国民を統制するものに変える内容となっている。つまり安倍政権が進める改憲とは、現憲法の国民主権・平和主義・基本的人権尊重の三原則を踏みにじる改悪に他ならないのである。
   
両院に設置された憲法審査会は、第一に「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制についての広範かつ総合的な調査」を掲げている。だから改憲の論点をあれこれをあげつらう前に、現憲法の理念・条項がどう活かされているかを「総合的に調査」することが必要である。このことは国民に保障された諸権利を守るために重要である。
   
例えば、周知のように憲法第二五条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と国民の「生存権」を保障している。しかし、

  1. 働く者の4割・2000万人にも上る低賃金の非正規労働者、
  2. 過労死・過労自殺を生み出す長時間・過密労働、
  3. 生活保護費を下回る年金受給者、
  4. 原発事故で狭い仮設住宅の生活を余儀なくされている避難者

などの現実は、到底「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているとは言えず、国がその向上及び増進に努めているとは言えない。
   
また第一四条は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と「平等原則」を保障しているが、男女間、正規・非正規間の賃金・待遇の格差が厳然として存在する。
   
さらに第二六条は、「すべて国民は、…その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と「教育権」を保障するが、貧富の差によってこれが保障されているとは言えない。
   
もとより海外での同盟軍支援や自衛隊の武力行使の範囲を拡大する安保法制は「戦争放棄」を謳う第九条に違反することは言うまでもない。
   
こうした憲法理念や条文の空洞化は歴代自民党政権によるなし崩し改憲の結果であるが、こうした現実を改善・改革することこそが、国民の多数が政治に求めることであろう。そのためには、こうした憲法違反や空洞化の現実を職場や地域社会に訴え、改善を求める広範な「活憲」運動に高め、憲法全面改悪を目論む安倍政権打倒の闘いと結合しなければならない。
   
特に労働組合は、この「活憲」運動の一環として、長時間労働の規制、非正規労働者の正規化、男女間と正規・非正規間の均等待遇などの実現の闘いを強める必要があろう。
   

■ 解散・総選挙の動向

各種世論調査を見ると、今日、多くの国民は、鳴り物入りの「アベノミクス」の成果宣伝にもかかわらず、一向に生活が向上しないばかりか、相次ぐ年金・医療・介護などの改悪・負担増や消費税10%への引き上げに不満・不安を抱き、また子育てや子弟の安定した就職にも不安を持っている。さらには原発に依存しない社会を願い、「戦争する国」への転換に反対している。だから、このような国民の要求や願いを踏みにじる安倍政治に不安や不満、危機感を抱く国民も多いのだが、各種世論調査によると安倍内閣の支持率は依然高く、なお50%前後である。それはなぜであろうか。もちろん政権側の巧妙な宣伝もあるが、世論調査の中身をつぶさに見ると、安倍内閣支持のうち「(安倍氏以外に)適当な人がいない」や「代わるべき政党がない」と答える人が半数以上を占めている。つまり安倍内閣を支持する50%前後のうち半数を超える人々が「野党が頼りない」から安倍内閣を消極的に支持しているということを表している。野党側の真摯な反省と対応が問われているのである。
   
安倍首相が、2018年9月までの自民党総裁任期中(3月5日の自民党大会では実質2021年9月まで総裁任期延長を決定)の衆・参両院での改憲発議を目指し、昨年末から早期解散・総選挙を窺ってきた。安倍首相にとっての総選挙の必須要件は衆院で改憲勢力が3分の2以上を確保することである。そのために、高い内閣支持に加えて年末の真珠湾慰霊訪問でさらに好感度を上げ、また100兆円規模の来年度予算のバラマキで国民に期待を持たせ、通常国会冒頭解散・2月選挙を模索していたことは間違いない。
   
しかし、“政治は一寸先が闇”で、予想外のトランプ氏が米国の大統領に就任した。彼は、自らへの批判や反対意見を容赦なく攻撃し排除する態度を露わにするなど、民主国家のリーダーとしてあるまじき言動が止まらない。1月20日の大統領就任以降どんなカードを切ってくるか、「米国第一主義」を掲げて自国の利益を最優先する、選挙中も日本や韓国の核武装に言及したり、米軍駐留経費の負担増か米軍の引き上げに触れたり、日本や中国の貿易不均衡を言い立てたり、長年にわたって築かれてきた国際秩序をないがしろにし、日米関係にもどんな影響を及ぼすか懸念が拭えない。したがって安倍政権としては両国間の各般の政策調整に不安があり、総選挙中にそれが表面化しては堪らない。そこで、当面、早期解散・総選挙は見送り、経済対策・外交に力点を置きつつ、今後の解散戦略を探ることにしたと見られる。
   
その後、7月2日投開票の東京都議選で小池都知事と対立する自民党都連の苦戦が伝えられることから、急遽、来年度予算成立の3月末解散・4月末選挙も密かに検討されたようだが、森友学園問題や防衛省の疑惑隠しと稲田防衛相の虚偽答弁などから内閣支持率が急落し、見送らざるを得ないと見られる。とすると、情勢変化次第だが、公明党との対立覚悟で都議選とのダブル選挙を選択するか、秋以降に体勢を立て直して臨むかに絞られてくる。まさに常在戦場である。
   
(因みに、今年総選挙を行う場合、7月の都議選の前後3カ月と、5月の衆院選挙区区割り改定で100選挙区前後の線引き変更が想定されるので以後数カ月は選挙が難しい。つまり4〜10月頃まで選挙は困難と見られている)
   

■ 総選挙に向けた野党共闘再構築へ

先に、「安倍政治に不安や不満、危機感を抱く国民も多いのに安倍内閣の支持率が高いのは、『野党が頼りない』の裏返しでもあり、野党側の真摯な反省が必要だ」と述べた。ではどうするか。私は、昨年の参議院選挙に向けて、「“一強多弱”と揶揄される政治状況を打破するには、野党が小異を残して大同に就くこと、すなわち共通政策に合意し、野党共闘の強化で安倍政権 vs 野党連合の構図を明確にして、国民に政治が変わる期待感や現実感を広げることが大事だ」と、野党各党に粘り強く働き掛けた。その結果、参院選では32の1人区で候補者の一本化が実現し、3年前の2勝29敗から11勝21敗に前進すると共に、比例代表では4野党の得票が前回より588万票伸び、片や自公は166万票増(ほぼ投票率上昇分)に止まった。まさに野党共闘への国民の期待感の表れであったと言えよう。
   
その後、昨年9月に民進党が蓮舫執行部に代わり、新潟知事選と東京・福岡の衆院補選をめぐって野党共闘にきしみ・亀裂が生じたが、わが党などの働きかけで昨年末には衆院選でも4野党が「できる限りの選挙協力」を進めることで合意し、わが党が提案した次の3点を大筋確認した。この実現によって改憲勢力に3分の2を割らせ、安倍政権を退陣に追い込まねばならない。

  1. 早急に野党4党で共通政策の合意を図る
  2. 早期に295(特に野党議員のいない172)の小選挙区の「すみ分け」調整を進める
  3. 候補者の支援は各選挙区の実状に即して効果的な方策をとる
ただ、民進党応援団の連合が「共産党とは共闘しない」方針であることから、民進党内に共産党との選挙協力に後ろ向きな動きもあり、実現性に懸念がないわけではない。現に総選挙が延びたこともあって、3月20日現在、共通政策の合意にも至っていない。
   
肝心なことは、参院選の結果に見るように、自公 vs 野党連合の構図が明確になり力合わせが実現すれば、かなりの小選挙区で与野党の逆転が可能である。「共産党アレルギーで票が逃げる」ことを心配するより、野党連合で反自民票をまとめることの方が大きいことは明らかなのだから、民進党はそれを政治決断し、連合などに理解と協力を求めるべきである。
   
なお連合は、「反自民・非共産」を主張するのであれば、民進党候補の立たない選挙区での社民党や自由党の候補者を支援するのが筋であり、この点は要請している。
   

■ 社民党の目標と課題

前述したように、次期総選挙の最大の目標は、野党連合で改憲勢力を25議席以上(できれば30議席以上)減らして衆院で3分の2を割らせ(341を316議席以下に)、改憲発議をできなくさせて安倍政権を退陣に追い込むことである。
   
わが党は、その中で「5議席以上の確保」を目標としている。これは願望でなく実現可能な目標である。それは、

  1. 「すみ分け」の実現によって沖縄二区と大分二区は選挙区で勝てる可能性があり、そして九州各県で候補者を擁立して戦えば、これに伴って比例でも2議席獲得の可能性がある。
     
  2. 東北ブロックでは前回総選挙の比例最下位当選者の得票と先の参院選でのわが党の比例得票(17万1300票)との差は4万4000票であり、6県で「すみ分け」を含めてこの分を上乗せすれば1議席獲得の可能性が高い。
     
  3. そのために、各都道府県で1名以上候補者の擁立を目指して党の見える化・比例票の拡大を図ることがなんといっても大事である。現状は、23選挙区に候補者を擁立する意向を3党に提示し、調整を図っている。何としても議席を拡大して党の再建に弾みをつけ、安倍退陣につなげねばならない。

あちこち講演などに出向いた先で、「社民党が小さくなって日本の政治がおかしくなった」「もっと社民党の姿が見えるように頑張れ」などと叱咤・激励を受ける。たしかに党は「小さく」なり、「存在感も薄くなった」ことは事実であろう。改めてその要因を検討しなければならないが、その一つは、1990年代からの経済のグローバル化の下で世界的に新自由主義・新保守主義が急速に台頭し、国際的にも国内的にも資本の側の巧妙かつ熾烈な攻勢を受けて労働者運動が経済的にも政治的にも後退を強いられたこと。二つ目は、国内では労働運動をはじめ大衆運動が後退を余儀なくされたことに加え、社会党・社民党の最大の支持母体であった労働組合の大勢が民主党(民進党)支援に移ったこと。そして三つ目は、成果を上げ得ないばかりか後退を強いられる闘いが続く中で、闘うことへの萎縮や諦め傾向が広範に広がってきたことなどが上げられるのではないか。こうした要因が重なって、例えば2000万人に及ぶ非正規労働者の増大、連年にわたる実質賃金の低下(1997年をピークに15ポイント前後のマイナス)などに追い込まれ、運動への積極性が希薄になり、政治的にも国政選挙で護憲勢力の減少傾向が続き、違憲立法・戦争法の強行や改憲の勢いが増してきたと言えよう。
   
こう見ると、社民党の後退は労働者運動全体の低迷の現れと言える。とすれば、ここから脱却するには、選挙戦に力を倍加して奮闘することは勿論だが、基本的には、大幅賃上げ、格差解消、不公平税制是正、社会保障拡充、戦争法廃止、平和憲法擁護、脱原発など国民の多くが求める課題による労働運動をはじめ大衆運動の強化が不可欠である。
   
特に労働運動では、大幅賃上げをはじめ企業内の非正規労働者の正規化や均等待遇、長時間労働規制など人間らしく働く権利拡充、職場改善などを闘うと共に、労働法制改悪反対、大衆運動を萎縮させる「共謀罪」反対、憲法三原則を踏みにじる憲法改悪反対などについて教育宣伝・討議・意思統一を図り、諦めや萎縮を闘う意欲に変える努力を惜しまず、闘いを強化することが課題であろう。
   
社民党は、先に述べた安倍政権の競争最優先で格差と貧困を生み出す新自由主義、そして戦争ができる国をめざす新保守主義と対峙して闘うことを党是としている。だから、前述した国民的諸課題をくみ上げて闘ってきた。民進党はこうした大衆運動が不十分である。だからわが党は、小さくなったとはいえ、このような諸課題の実現を求める国民各層の闘いの砦、その政治代表の役割を担っている。
   
そのわが党がこれ以上後退すれば、こうした課題を共に闘う平和運動センター、脱原発運動、原水禁や反戦・反基地運動などがさらに弱体化し、政治反動・憲法改悪が一気呵成に進むことは灯を見るより明らかである。
   
党員の皆さんにはこうした使命感と自負心を持って今こそ職場・地域で奮起してほしい。また支持労組や支持者の皆さんにも、以上の点をご理解頂き、一層のご支援ご協力を切にお願いしたい。
   
繰り返しになるが、安倍政権の暴走に多くの国民が不安・不満、危機感を抱いている。このような政治を食い止め、国民の暮らしと権利、平和と民主主義を守ることが党の使命である。解散・総選挙に備え、計画的に党の「見える化」を図り、従来よりも一歩も二歩も前に出て闘おう。
   
(2017年3月22日)


 

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