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●2026年8月号
■ 高市政権の暴走政治を止めよう
    相楽 衛

■ はじめに

高市政権の暴走政治が止まらない。2月の衆院選での数を力にして、「時が来た」と改憲へのアクセルを踏み続けており、次々と悪法を成立させている。
   
特別国会の会期末は当初は7月17日であったが、6月末頃から与党が衆議院議員の議員定数削減法案や副首都法案の審議入りを強行したことや、高市氏が党首討論に応じなかったことなどに野党が反発し、衆参両院での審議拒否で、「国会の空転」が続いた。このため、衆院は17日に与党などによる賛成多数で8日間の会期延長を可決し、与党は維新が求める副首都法案等の成立を目指している。
   
高市改憲の危機が強まる中で、今国会の特徴といくつかの重要法案等の問題点と、私たち護憲勢力の運動課題について述べたい。
   
   

■ 次々と重要法案成立や政策変更を強行

・殺傷可能武器の輸出解禁
   
自民・維新の連立政権合意書にある防衛移転3原則の運用指針の5類型撤廃に基づき、4月21日、閣議および持ち回りの国家安全保障会議で、防衛装備移転3原則の運用指針を改悪し、武器輸出を制限した「5類型」を撤廃し、殺傷能力のある武器の輸出の全面解禁に転換した。また、「武力紛争の一環として現に戦闘が行われている国」に対し、「武器の輸出を認めない」としたが、米国などを念頭に日本の安全保障に関わる地域で同志国が武器を必要とするなど「特段の事情がある場合」には認めるものだ。
   
まさに高市政権の暴挙というしかない。国会審議も全くせず、閣議決定で武器輸出全面解禁を行うことは、政策の大転換であり、憲法の平和主義に反する。 日本製の武器を他国に売り、戦争に使うことが現実化すれば、それは日本が「死の商人国家」となることを意味する。
   
半世紀前に当時外務相だった宮沢喜一・元首相は「我が国は兵器の輸出をして金を稼ぐほど落ちぶれていない」と答弁したが、高市氏は「時代が変わった」と切り捨てた。高市政権は武器輸出拡大で三菱重工業や川崎重工業等々の大企業・軍需産業をさらに成長させることを目論み、そして、自民党への企業団体献金でも深く結びついているのである。
   
   
   
・国家情報会議設置法
   
この法案は、自民・維新の合意書の「インテリジェンス政策」の部分で、いわゆるスパイ防止法制の第1弾と指摘される法案だ。内閣に総理大臣を議長として、官房長官、国家公安委員会委員長、法務・外務・財務・経済産業・国土交通・防衛・金融担当の各大臣を委員とする「国家情報会議」を設置し、内閣官房の内閣情報調査室(内調)を「国家情報局」に格上げするものだ。
   
その役割は、「重要情報活動(安全保障の確保、テロリズムの発生の防止、緊急の事態への対処、その他の我が国の重要な国政の運営に資する情報の収集調査)及び外国情報活動に関する重要事項を調査審議する機関」とした。しかし、情報収集には事実上歯止めがない。政府を批判する者は「スパイ」などとして、市民監視や人権侵害が拡大する危険性がある悪法だ。
   
この法案の問題点について、5月19日の参院内閣委員会では、「国家情報局」設置法案に関する参考人質疑が行われ、海渡雄一弁護士が反対の立場から市民の人権を侵害する法案の欠陥を指摘し、「国家情報局の政治的中立性の確保と警察組織との明確な分離」や、「政府から独立した第三者機関による実効性ある監督措置が絶対に必要不可欠なこと」を述べた。
   
しかし、法案は与党に加え、国民・中道・公明・参政・チームみらいが賛成し、成立した。立憲民主・社民・共産・れいわ・沖縄の風は反対した。
   
   
   
・予備自衛官特例法
   
正式名称は、「予備自衛官等の円滑な遂行を図るための国家公務員及び地方公務員の兼業の特例に関する法律案」だ。有事や災害時に招集される予備自衛官に公務員が兼業しやすくし、自衛官の慢性的な人員不足の解消を目指す狙いだ。
   
国家公務員や地方公務員には、法律で「国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」(国家公務員法)と職務専念義務が課せられている。予備自衛官として活動するときは、その都度、首長や任命権者の許可を得る必要があったが、特例法では予備自衛官になる際に許可を得ていれば、招集する際には職務専念義務は免除され、任命権者の許可を得る手続きも不要になる。
   
小泉防衛大臣は5月19日の記者会見で、予備自衛官等は有事等に防衛力を増強する重要な存在という認識を示し、「予備自衛官等が招集に応じやすくなるような施策を着実に進め、その継続的・安定的な確保に努める」と強調している。
   
衆参本会議で法案は採決され、与党の自民・維新に加え、野党の国民・中道・立憲民主・公明・参政・チームみらい・保守が賛成し、可決・成立した。反対は社民・共産・れいわ・沖縄の風だった。立憲民主党の賛成には正直驚く。
   
6月17日、社民党自治体議員団全国会議は、次のような声明を出し、廃止を訴えた。

防衛省は、「有事や災害の際に招集される予備自衛官」としていますが、すでに地方公務員による大規模地震などの被災地への中長期の派遣は行なわれています。したがって実質的に、軍事のための予備自衛官の招集となります。この間、全国の自治体職員数は、削減され続け、諸外国の中でも最低レベルです。すでに自治体職場は多忙化の中で長期病休者は最多となり、定期健康診断有所見率(健康不調率)も民間職場を超えて最悪傾向が続いています。しかも、招集は自治体議会の審議や自治体職場の繁忙状態とも関係なく、国家の一方的な判断で実施されます。自治体職場に混乱をもたらし、職員のさらなる多忙化となり住民対応を粗雑にするものです。また防衛省は「予備自衛官などの採用はあくまでも本人の自由な意思に基づくもの」としていますが、それは予備自衛官になる際の「本人の意思」に限られ、その後の招集において「本人の自由」など、尊重されるわけがありません。法案の段階でも、全国知事会、全国市町村会との事前の相談協議もありませんでした。「地方自治の本旨」(憲法)を放棄し、「住民の福祉の増進」(地方自治法)とする自治体のあり方の基本を破壊するものです。これは、自治体を国家の下部機関として「新たな戦前」から「新たな戦中」にむかわせるものです。

・国民投票法改正
   
憲法改正に向けた具体的な手続き法となる国民投票法改正案も審議されている。この法案は2022年に自民などが改正案を提出し、廃案となったものと同じだが、改正案は衆議院で、自民・維新の与党と野党側の国民民主・参政党が共同提出を行った。
   
衆議院の採決では、自民・維新・中道・国民民主・参政・チームみらいの賛成多数で可決し、参議院に送られた。「国民投票を行う際の広告の規制やインターネット規制については速やかに検討し、必要な措置を講じる」とした付帯決議もあるが、国民投票法には、国民投票の際の最低投票率等の規定もない。正に改憲を推し進める国民投票だ。参院で廃案を目指そう。
   
   
   
・国旗損壊罪法の創設
   
6月16日、自民・維新・国民・参政の4党が共同提案の議員立法として、国旗損壊罪法案を衆議院に提出した。これも連立政権の合意書に盛り込まれていたが、高市首相の強い意向(悲願)と、保守層に向けた政治的アピールのための法案とも言われている。
   
法案では、「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者は、2年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金」とした。本来国旗を大切に思う感情については、批判的感情も無関心も、まさに国民1人ひとりの内心の自由に属するものであり、刑罰をもって国旗を強制するものであってはいけない。そもそも日の丸は、戦前に軍国主義高揚の手段の1つとして使われた歴史的経緯もある。その反省からも刑罰をもって強制することは絶対にあってはならないのである。しかし、7月17日の参院本会議で可決・成立し、反対は、立憲民主・社民・共産・公明・れいわ・沖縄の風だった。
   
   
   
・衆議院定数削減法案
   
6月23日、自民と維新は「衆議院議員の選挙制度改革及び定数削減に関する法律案」を議員立法で衆議院に提出した。法案は、法施行から1年以内に結論が出ない場合は、自動的に比例代表の定数を176人から45人削減し、131人として、衆議院議員の定数を420人にする内容である。
   
つまり、現在の衆議院議員の定数は465人だが、小選挙区の数は減らさず、比例区議員だけを削減して、定数420人とする悪法だ。
   
仮に、比例区だけ45人を削減した場合、その影響を受けるのは野党である。「2月の衆院選を基にした試算では、比例選で45議席を削減した場合の減少率は、共産党50%、参政党43%、国民民主党39%など、中小政党への打撃が大きい」(読売新聞)とすでに報道された。高市政権の思惑は、異を唱える野党を弱体化させることである。この法案は、皇室典範改正案を通すために、今国会での成立は見送った。
   
   
   
・皇室典範改正案
   
衆議院定数削減法案を先送りしても高市政権が強引な成立を図ったのが皇室典範の改正だ。連立合意書には、「古来例外なく男系継承が維持されてきたことの重みを踏まえ、現状の継承順位を変更しないこと」「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする、を第一優先とする」と記述している。
   
6月30日、立法府の全体会議が開かれ、政府案の

  1. 女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ
  2. 旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える

の両案が示されて議論が行われたが、その日のうちに衆参正副議長が「立法府の総意に沿う」として了承し、「立法府の総意」として閣議決定し、衆議院に提出した。
   
どこが「立法府の総意」なのだろうか。閣議決定した改正案には、全体会議で出されなかった皇位継承について、女性皇族が一般人と結婚した場合、住民基本台帳法を適用するとされ、公式の皇族とは区別した。各党からの反対や異論も考慮せず、「男系男子の継承に固持し、男尊女卑の法律だ」との強い批判がある。また、「女性天皇・女系天皇を認めるべきだ」という7割超の各種世論調査にも反したものだ。驚くことに、この改正案では、「次の改正は30年後」としている。
   
法案は、自民・維新・国民民主・中道・公明・参政・チームみらいが賛成し、可決・成立した。立憲民主・社民・共産・れいわ・沖縄の風は反対した。

   
   

■ 高市政権の暴走政治に反対!――広がる市民デモ

高市政権の暴走政治は、次々と悪法成立を図っているが、これに抗し、改憲に反対する市民デモも拡大している。
   
特に今年に入ってからデモ参加者は増え続けていると言われ、2月27日の国会前集会に約3600人、3月10日は約8600人、同19日の「総がかり行動」には1万1000人が集まり高市改憲反対の声を上げ、多くの若者がペンライトを振った。そして、同25日の国会前の「平和憲法を守るための緊急アクション」には2万4000人が集まり、同時集会は26都道府県33カ所で開かれた。4月に入り、8日の改憲反対デモでは国会前の約3万人に加え、SNSやインターネット上の「デモカレンダー」等での情報共有・拡散が行われ、全国149カ所に拡がった。同19日の国会正門前集会には3万6000人が参加。続く、5月19日には1万人が集まり、「イラン戦争絶対反対、改憲反対、国家情報局設置反対」等をコールし、ペンライトを振った。さらに、6月19日には2万6000人が集まった。7月10日の「国会前アクション めちゃくちゃな政治に抗議します」には、2万7000人が集まり、全国の集会は44都道府県136カ所で行われた。
   
国会前のデモは、戦争法の強行成立から廃止を求める「総がかり行動」が毎月19日に行われてきたが、今年に入ってからの特徴では、20〜40代の市民らでつくる「We WANT OUR FUTURE」が主催する集会に多くの若者が集まっているのが、特徴である。
   
   

■ 黙っていては、暴走政治は止まらない

国会前や全国各地では、今できる行動として市民集会(デモ)が続いているが、私たちも所属政党や労働組合、平和運動組織等の垣根を越えて、高市政権の暴走に反対の声を上げる運動に参加し、拡げる努力がこれまで以上に必要になっているのではないだろうか。高市暴走政治は、改憲・大軍拡を推し進め、物価高でくらしが厳しくなっている切実な声を置き去りにしている。市民は、日本に軍事費負担増の圧力をかけ、国際法違反のイラク戦争をしているトランプ政権に追随するだけの高市政権に対し、不満やNOの声を上げているのである。
   
国会デモの拡がりは、「デモカレンダー」等での情報発信が大きい。これまでデモに参加していない若者にも拡がり、長らく平和運動に関わってきた私たちも頑張りどころだと思う。いま頑張らないで、「あの時にもっと……」では「後悔先に立たず」となってしまう。黙っていては、暴走政治は止まらない。私たちも可能な限り、大衆運動・平和運動の集会に参加(知人へも参加を呼びかけ)し、市民・労働者と一緒に改憲反対・暴走政治を止めようの声を上げることだ。
   
その際、私たちに重要なことは政党や平和運動組織が分かれている地域では、所属政党を越えて共闘し、集会や行動を行っていくことだと思う。古い話で恐縮だが、労働大学学長や日本社会党衆議院議員を務めた木原実さんが

「国民運動は党派の運動に従属したり解消したりする運動ではなく、逆に社会主義政党が党派を超えて国民的な要求を実現する運動だ」
   
「運動のなかで、部分的な両党の共闘を盛り上げ、反戦・平和の運動を拡大しよう」(『木原実評論集・資本主義の揺らぐ日』1978年発行)

と述べている。
   
木原さんがここで書いている「社会主義政党が党派を超えて」や「部分的な両党の共闘」とは、社会党と共産党のことであって、当時の情勢と今日では、「国民運動」の高揚も労働運動の状態も全く違っている。しかし、護憲・改憲反対や反基地・反原発(脱原発)・原水禁などの国民運動や地元住民と接点を持つ運動は、自分たちの党派(所属政党)に従属したり解消したりする運動ではない。言い換えれば、政党の都合で運動するか、しないのかを決めたりするものではないと言っている。
   
いま、高市政権が進めている改憲、軍事基地強化、原発再稼働などに抗するため、諦めないで大衆運動を各地域からつくっていくことが求められている。
   
すでに行動や・共闘が行われている地域では、粘り強く、力を合わせてこの運動を拡げていくことが必要ではないだろうか。
   
(7月20日)

   

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