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●2026年2月号
■ 総選挙で高市政権を打倒しよう
    宝田 公治

■ はじめに

年明けから衝撃なことの連続である。1つは、トランプ大統領の数々の蛮行、なかでも1月3日ベネズエラへ軍事進攻し、マドゥロ大統領夫妻を拘束し、米国に連行したことである。国際法違反と非難の声が上がっている。もう1つは、突然の衆院解散である。「物価高対策が最優先。解散のことを考える暇はない」と言っていながらである。「大義なき解散」と非難が激しく上がっている。さらに、高市発言「台湾有事は存立危機事態」で日中関係は一気に悪化、経済への影響が懸念されている。
   
高市首相は、これらについて何の対策もしていないのだから、政治空白を作るような状況ではない。
   
もう1つの衝撃は、立憲民主党(以下、立憲)と公明党(以下、公明)が合流、新党中道改革連合(以下、中道連合)を結成したことである。高市自民党が右寄りになることに対し、中道連合を立ち上げ、穏健保守とリベラルに広げていくことをめざしている。解散総選挙では、中道連合を中心に自維与党を過半数割れに追い込むことが求められる。
   
   

■1. 米・トランプ大統領のベネズエラ侵攻

この侵攻は、これまで米国が主張してきた「自由・民主主義・法の支配」といった基本的価値を覆す行動である。いかなる理由であれ今日の軍事行動が国際法違反であることは明白だ。しかもその国を当面は自らが運営するという前代未聞の暴挙である。これが許されるなら、ロシアのウクライナ侵攻を批判できなくなる。中国は南・東シナ海で力による一方的な現状変更を試み、台湾周辺では威圧的な行動を繰り返しているが、それを批判する根拠も失う。
   
米国は昨年12月、「国家安全保障戦略」で西半球(南北アメリカ)を勢力圏とするモンロー主義(1823年ジェームズ・モンロー第5代大統領、欧州諸国と南北アメリカ大陸の相互不干渉を主張)という実に200年前の考え方を打ち出た。これは新たな『植民地主義』である。トランプ氏にとっては中南米の反米政権は許しがたいのである。ましてや中国やロシアに近づくことはもってのほかということである。ただし、侵攻の本音は「石油利権を取り戻す」と正直に語っている。
   
この度の侵攻に対する高市首相の対応は、5日の記者会見で「わが国は従来から自由・民主主義・法の支配といった基本的価値や原則を尊重してきた」と述べたものの「ベネズエラにおける民主主義の回復と情勢の安定化に向けた外交努力を進める」と、米国の侵略行為を非難しなかった。小野寺五典自民党税制調査会長(元防衛相)は4日Xへの投稿で「『侵攻』と表現し、『力による現状変更』そのもので、中国を非難する論拠に矛盾する」とまともな指摘をしている。
   
今年に入ってトランプ氏は、ベネズエラ侵攻に加え「66の国際機関から脱退」「イランへの軍事介入の検討」「パウエルFRB議長への捜査」「グリーンランド取得への意欲表明」など洪水のように世界や米国内からも批判される言動を繰り返している。その背景は自身が述べているように「今年11月の中間選挙で負ければ弾劾される」という恐怖である。昨年のニューヨーク市長選、バージニア・ニュージャージー州知事選での民主党に敗北したことによるものである。
   
   

■2. 反動的な自民・維新の「政権合意書」

昨年10月20日、高市自民党総裁と吉村洋文日本維新の会(以下、維新)代表が、連立政権樹立の合意書に署名した。そして、21日に召集された臨時国会の首相指名選挙で維新は高市総裁に投票し、「閣外協力」の形で自維政権が誕生した。 今後、自維政権の政策はこの合意書を柱に進められると思うので、その合意書の反動性について指摘する。
   
   
・(1)国民生活無視の経済・社会保障
   
「食料品は、2年間限定で消費税を対象外にすることを視野に法制化を検討」。物価高対策はまったなしの課題であるにもかかわらず、「視野」「検討」との表現にとどまっている。社会保障では、医療費の削減である。
   
   
・(2)反動化列挙の安全保障

  • 「敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイルの整備。次世代動力潜水艦の保有を推進」
  • 「安保関連三文書を前倒し改定」
  • 「防衛装備品輸出の5類型を撤廃」
  • 「インテリジェンス・スパイ防止関連法制を年内に検討開始、早期に成立。内閣情報調査室を格上げし『国家情報局』を創設。日本版CIA『対外情報庁』の設置」

など軍拡・戦争する体制づくりに邁進。スパイ防止法は、国民民主党(以下、国民)や参政党も実現をめざしている。
   
   
・(3)改憲に前のめり

  • 「九条改正の条文起草協議会を両院審査会に設置する」
  • 「緊急事態条項の条文案を26年度中に国会提出をめざす」

など改憲に執念を示している。
   
   
・(4)政治改革の本丸「企業・団体献金」は延命

  • 「企業・団体献金の扱いは、臨時国会中に協議体を設置し、高市総裁の任期中(27年9月まで)に結論を得る」
  • 「衆院定数の1割を目標に削減、臨時国会で成立めざす」。

維新はこれまで「企業・団体献金の禁止」を政治改革の柱としてきたが、それを簡単に棚上げし、議員定数の削減にすり替えた。現在、衆院各会派の代表で構成する「衆院選挙制度に関する協議会」で議論が続けられている。与党だけで議員定数削減を強行することは論外である。
   
維新は「国会議員が多い」と述べているが、日本の国会議員数は人口比でOECD38カ国中36番目と少ない。また、維新が主張する比例代表の削減は、少数意見の切り捨てとなり、多様な民意を反映できなくなる。
   
   
・(5)その他
   
「外国人政策の司令塔を強化する担当閣僚を置く」など排外主義の危険を否定できない。「同一氏の原則を維持。旧姓の通称使用の法律を26年通常国会で成立」と選択的夫婦別姓制度の導入には明確に反対。「『日本国国章損壊罪』を26通常国会で制定」と憲法一九条で保障されている思想・信条の自由の侵害。
   
   

■3. 高市首相の反動的な言動

・(1)「台湾有事は存立危機事態」発言
   
発端は、昨年11月7日、臨時国会衆院予算委員会で立憲の岡田克也議員が「台湾をめぐってどのような状況が『存立危機事態』にあたるか」の質問に対し、高市首相は「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースである」と答弁した。これを機に日中関係は一気に最悪の状態になってしまった。この1週間前10月31日、韓国で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力)で、高市首相が中国の習近平国家主席との首脳会談で「戦略的互恵関係の構築が両国と国際社会の利益にかなう」と再認識した直後の発言だった。
   
台湾有事に米国が参戦するという設定そのものが非現実的である。とりわけ、トランプ大統領のもとで中国と軍事衝突になる可能性はきわめて低いと思われる。中国の反発は「一つの中国」原則を踏みにじったことにある。中国は台湾を「領土の不可分の一部」と考えている。これについては米国は、1972年ニクソン大統領が訪中し中国の毛沢東主席・周恩来首相との間で「中国の立場に異論を唱えない」としている。日本も1972年、日中共同宣言で「中国の立場を十分理解し尊重する」と誓言している。その後、日米ともにこの立場を変えていない。高市首相が「政府の従来の見解に沿ったものである」といくら主張してもレッドラインを超えているのである。中国からすれば「内政干渉」なのだ。その後、高市首相は「特定のシナリオについてコメントすることは、今後慎む」と答弁している。
   
中国は日本への制裁を強化している。日本への渡航自粛、水産物輸入停止、歌手の講演中止、軍民両用(デュアルユース)品目の輸出規制強化、レアアース等の戦略物資の供給制限などで経済的影響が拡大している。とりわけレアアースは、自動車、電機・電子機器(スマホ含む)、金属、半導体など製造業に大きな打撃を受ける懸念がある。
   
以上を踏まえれば、高市首相は1日も早く発言を撤回するしかないのである。
   
   
・(2)スパイ防止法の制定
   
スパイ防止法の制定は、前述のとおり自維の「政権合意書」にある。国民・参政・保守党も成立をめざしている。立憲は参院選の政策で「国民の知る権利を守るため特定秘密保護法を見直す」とし、スパイ防止法の制定には触れていない。
   
ところで、スパイ防止法とはどういうものなのか? 1985年、中曽根政権時に自民党が議員立法法として提案した「国家秘密スパイ防止法案」が参考になる。1つは、制定を強力に推進したのは、統一教会と国際勝共連合だった。2つは罰則の対象に未遂・予備行動なども含まれていた。3つは、外国への通報目的の探知・収集・漏えいは、死刑または無期懲役の厳罰が課せられていた。
   
2013年、第2次安倍政権時に制定された特定秘密保護法には、この法案の大半が盛り込まれている。新たなスパイ防止法案には、厳罰が課せられる可能性がある。公務員だけでなく、ジャーナリストや市民も対象であり取材等の委縮になる。参政党の神谷代表が主張するような「政治的な思想信条を調査をする」制度になれば、治安維持法の再来である。また、既存の情報機関を統合して設置される機関が、日本版CIAとなる危険性もある。人権と民主主義、平和を守るためにスパイ防止法は阻止しなければならない。
   
   

■4. 解散総選挙で政権交代を

1月9日夜、読売新聞が「高市首相が通常国会冒頭(1月23日)で解散を検討している」との報道に日本中が唖然とした。高市首相は、再三にわたって衆院解散は「考えている暇はない」と否定していたからである。加えて、国民民主党(以下、国民)が、早々に26年度予算に賛成の意向を示し、成立の見通しが立っているにもかかわらずの解散だからである。
   
立憲は、昨年10月、26年間にわたった自公連立政権から離脱した公明と、衆院で中道連合を立ち上げた。これも衝撃な出来事であった。これまで与党対野党として闘ってきた相手との合同である。また、公明の支持母体は「創価学会」という宗教団体である。従って、この合同をすんなり受け入れられる立憲党員は少ないと思われる。とりわけ、社民党から立憲に合流した党員はなおさらであろう。これらの現実をどう捉え、どのような運動にしていくか検討してみたい。
   
   
・(1)解散について
   
解散について、一言で言えば「大義なき解散」もしくは「自己都合解散」である。野党などからも「経済後回し」「自分勝手暴走」「理不尽」「党利党略」「個利個略」「独りよがり」と指摘される大義が見えない解散である。19日、高市首相の記者会見では、自公政権から自維政権への転換、政策では「責任ある積極財政」や「安保政策の抜本的改革」など重要な政策転換の是非を問うとした。それなら23日から始まる通常国会で論議すれば良かったのである(この後の解散はあり得る)。高市首相は「高市早苗が首相で良いのかどうか、主権者たる国民に決めてもらう」と述べた。そして、「高市早苗」という名を何度も発した。つまり、高市内閣の支持が高いうちに自民党単独で過半数(233議席)を得るというのが本音であろう。しかし、会見では「目標は与党で過半数」としたが、現在でも過半数を維持しているので、解散の理由にはならない。
   
もう1つの本音は、国民の「手取りを増やす・103万の壁」は、160万円まで引き上げており、高市政権は今回178万円まで引き上げる満額回答を示した。にもかかわらず、国民が政権に入らない態度にしびれを切らしたのではなかろうか。つまり国民・玉木氏に「こびへつらうのは、もうやめたい」ということであろう。このことは、維新に対してもあるのではなかろうか。タカ派高市氏個人にとっては、右翼・タカ派の維新とは同調するのであろうが、確かな政権維持のためには、閣外協力では不安定ということではかなろうか。自民単独で過半数を得て、少数政党に配慮せず、高市本位の政治を進めたいのであろう。
   
   
・(2)国民・玉木代表について
   
国民・玉木雄一郎代表の言動についてである。筆者はこれまで国民を与党でも野党でもない「ゆ党」と批判してきた(維新もそうであったが、現在は閣外協力で与党になった)。国民は、25年度予算に賛成し、26年度予算にも賛成の意向を表明していた(解散に不満をぶちまけている)。少数与党の状態に付け込んで、自党の要求を実現させる。取引で支持を得ようとする態度である。また、昨年の首相指名を巡っても立憲の要請には応じず、野党との共同歩調を拒否した。あるテレビ番組では、維新藤田文武共同代表と出演し、一緒になって立憲批判を繰り返していた。立憲に対しては「何がしたいのかが見えない」というが、国民こそ世代間対立を煽るような政策ではなく、国民諸階層のための政治、野党として活動してもらいたいものだ。
   
   
・(3)中道連合の綱領、基本政策について
   
立憲・公明両党は19日、中道連合の綱領と基本政策を発表した。基本政策では「生活者ファーストの政治の実現」として、食料品の消費税ゼロなど物価高対策とともに、選択的夫婦別姓制度の導入や「企業・団体献金の規制強化」を掲げ、高市政権との対抗姿勢を明確にした。しかし、原発や憲法・安保問題については、合流を急ぐあまり党内議論がされず、政策的にも立憲より後退しているところがある。
   
記者会見で安住淳立憲幹事長は「共生と包摂の社会へと転換していく。高市首相のめざす社会と違うものだ」と、西田公明幹事長は「生活者ファーストの実現と日本の平和を守る。これが中道の政治だ。国家ファーストではない」と共に高市自民党との違いを強調し、対決姿勢を示した。
   
中道連合の綱領前文では「対立を煽り、分断を深める政治ではなく、生活者ファーストの政治を着実に進める中道政治の力が求められている」「国民1人ひとりが自分らしく生き、国家やイデオロギーのために国民を従わせる政治ではなく、人間の尊厳を守り抜く政治を我が国の中心に据え直す」とある。立憲の綱領前文では「人間の命とくらしを守る、国民が主役の政党です。『自由』と『多様性』を尊重し、支え合い、人間が基軸となる『共生社会』を創る」とある。表現は違いこそすれ、「人間の尊厳が基軸」となる社会を創るということでは同じと考えられる。
   
懸案の原発と憲法・安全保障であるが、本誌の中川直人論文に詳しいが、立憲のこれまでの方針からさらに後退していると考えられるが、立憲野党、市民運動などとの今後の共同闘争を通して変更を迫るしかない。    
   
・(4)消費税減税について    
自民党が争点つぶしに消費税減税を打ち出した。一方、国債への不安が顕在化しているので、財政赤字を拡大させてはならない。そこで考えられる財源は、

  1. 軍事費の倍増はやめる、
  2. 金融所得の総合課税化、
  3. 所得税の累進強化、
  4. 法人税の強化

である。
   
   
(5)解散選挙をどう闘うか
   
解散総選挙の目標は1つ。自維政権を倒すこと。つまり過半数割れに追い込むことである。筆者はこれまで解散総選挙をジャンプと位置付けてきた(24年10月の総選挙をホップ、昨年7月の参院選がステップ)。高市首相個人の人気は高いが、自民党の支持率は低迷したままである。解散についても朝日世論調査(17、18日)では、「反対50%」「賛成36%」と世論も否定的である。
   
自維政権を打倒するためには、中道連合の躍進を軸に、289ある小選挙での候補者一本化の努力である。野田代表は、国民に対しては「現職候補がいる選挙区には中道連合は擁立しない」と言っている。共産党は「中道連合との選挙協力は行わない」と表明しており、中央段階での選挙協力は難しいが、地方段階でのこれまでの野党間の共闘、共同の努力を最大限活かすしかない。もう1つは、労働組合や市民団体の最大限の大衆運動である。時間はないが、共にガンバロウ!!
   
(1月21日)
   

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