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●2022年9月号
■ 臨時国会に向けた課題をさぐる
    小笠原 福司

■ 1.アベノミクスは「衰退戦略」だった

安倍元首相の「国葬」が9月27日に強行されようとしている。改めて「国葬」に値するのか。アベノミクスの9年間が日本社会に何をもたらしたのか、再確認をしたい。
   
   
   
・(1) 脆弱化した日本経済と貧困・格差の拡大
   
第一は、世界経済における日本経済の地位の低下である。
   
日本経済(GDP)は、アベノミクス前年の2012年度には世界経済の8.3%を占めていた。21年には5.3%まで低下した。「成長戦略」どころか「衰退戦略」だった。
   
購買力平価(為替相場、インフレの影響を除外)でも、同期間の日本経済の地位は、4.7%から3.8%に低下している(1位中国27.0兆ドル、2位アメリカ22.9兆ドル、3位インド10.1兆ドル、4位日本5.6兆ドル、5位ドイツ4.8兆ドル)。
   
第二は、アベノミクスは株価や株式時価総額を倍増させ、株式を保有する企業・投資家・富裕層の資産を倍増させた。世帯のほぼ3割が金融資産を保有しない日本社会で、アベノミクスは「一方の極」へ資産を集中させ(純金融資産1億円以上を持つ富裕層世帯は、333兆円の純金融資産を保有する)、格差を拡大させた。しかも、消費税率を短期間で5%から10%へと引上げ、国民所得に対する税・社会保障負担率(国民負担率)を、39.4%から48.0%へと跳ね上げた。
   
貧富の差はますます拡大し、国民の生活水準は押し下げられ、エンゲル係数も40年前の水準に戻り、貧困化が進んだ(25年間賃金がほぼ上がっていないことが主要因)。
   
第三は、大企業・資本の自由な利益確保を最優先するアベノミクスは、国内での設備投資や賃金の支払いを渋り、内部留保を貯め続ける企業経営を放置してきた。大企業は利益剰余金を1.4倍増やし(20年度は466兆円)、全産業の経常利益は1.7倍になった。特に株式配当金の支払いは1.8倍に増えた(国内の配当金で毎年30兆円前後)。他方で、GDP世界第3位の日本の実質賃金(3万8515ドル)は、OECDの平均賃金(4万9165ドル)からさらに引き離された。
   
第四は、アベノミクスの下で累積した政府債務(国債発行残高)により、日本を世界トップクラスの「政府債務大国」に転落させた。自国のGDPの2.5倍もの政府債務は、戦後の代表的な政府債務大国のイタリアや近年2回の財政破綻に見舞われたギリシアより深刻である。
   
巨額の政府債務の償還は、安定財源とみなされる消費税の税率アップへの圧力として作用し、アベノミクス下で10%に倍増したが、この間法人税減税は維持されている。
   
以上、アベノミクスの結末は、大企業の利益剰余金や株式配当金を倍増させる一方で、実体経済の衰退と脆弱化、賃金の停滞、貧困格差の拡大、累増する政府債務、2度の消費税引き上げと国民負担率の上昇など、国民経済と生活にとって深刻な「生存の不安定性の増大」を招いた。これがアベノミクスの本質・真実である。
   
   

■ 2.臨時国会における岸田政権との対抗軸

・(1) 物価高から暮らしをどう守るのか
   
物価高が止まらない。特に生活必需品に限ってみれば5%弱の値上がりである。そして、図表で見るように低所得者(年収463万円未満)ほど「体感物価」が上昇して2.7%。高所得者層(年収962万円以上)は2.2%である。
   

(図表1・クリックで拡大します)
   
支出の比重を見ると、低所得世帯は食料が26%、光熱水道が8%を占める。それぞれ中所得層は25%、6%、高所得層は24%、5%だ。体感物価は資源高に拍車がかかった3月以降に差が開き始めた。
   
7月の全体の物価上昇率は、エネルギー関連は16.2%、2ケタの伸びが続いた。食料は4.4%と、前月の3.7%から加速した。旅行や映画鑑賞などの物価上昇率はなお0%台で推移する。こうした生活必需品以外の分野への支出は高所得層の方が多く、体感物価の差につながる。
   
低所得層は貯蓄も少ない傾向があり、生活必需品の支出が増えれば不要不急の消費を削る必要に迫られる。生活防衛色が強くなると、景気の下振れ圧力になる。7月の内閣府の消費動向調査では、「暮らし向き」の指数は全体として2カ月連続で下落して28.4に。特に、年収500万円未満の世帯は統計を遡れる04年以来最低の水準に沈んだ。
   
これからさらに物価高が続くが、低所得者、年金生活者などより影響が大きい世帯に的を絞った政府としての具体的な支援策が求められている。
   
   
   
・(2) 命を守る医療体制の強化
   
8月2日に日本感染症学会や日本救急医学会など医療4学会が連名で緊急声明を出した。医療体制の逼迫緩和を目的に、65歳未満の人々に対し、基礎疾患をもつ患者や妊婦を除いて、新型コロナ感染症の症状が出ても軽症の場合は、「検査や薬のために慌てて医療機関を受診することは避けて」と呼びかけた。「この国は何時から病気になっても病院に行けなくなったんだ」などネットで批判が続出した。
   
声明は受診の目安に関して、「呼吸困難や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合」などに限定。厚労省が2年前に受診目安から削除した「37.5度以上の発熱4日間以上」という「PCR検査難民」を生んだ悪名高い基準である。当面求められていることは、リモート検診の環境整備や抗原検査キットの配布、PCR検査の拡充などである。
   
新型コロナウイルスの18日の新規感染者数は25万5534人で過去最多となり、21道県で最多を更新した。WHO(世界保健機関)の8月8日から14日までの1週間の新規感染状況まとめでは、日本が139万5301人で、世界全体の4分の1を占める。同期間の日本の死者数は1647人と米国に次いで世界で2番目に多かった。
   
第6波(今年1〜6月)では1万2888人が亡くなった。第7波(7月〜8月18日)の死者数は2カ月足らずですでに5008人だ。このままでは、第7波で過去最多の死者数が出る恐れがある。こうした現状下で「全数把握」の見直し、ワクチン接種の有料化の動きも出ているが、感染拡大の防止にこそ全力を挙げるべきではないのか。 岸田政権の「国民の命よりも経済優先」という政治姿勢が如実に表れている。感染抑止、医療体制の強化に向けて、6党・会派が要求している臨時国会をいち早く開き、早急に本格的な対策を審議し、実行に移すべきである。
   
   
   
・(3) 民主主義とは何かが問われる事態
   
岸田首相は、7月8日の安倍晋三元首相の死去から約1週間後の14日に記者会見で「国葬」で行うことを表明。22日に閣議で決定した。「国葬」に関する法律や基準はない。岸田首相は「国の儀式」を内閣府の所掌事務のひとつとした内閣府設置法を根拠に挙げたが、基準がない以上、時の政権に恣意的に適用される。国会での説明や審議もない中での政府の決定という、そのプロセスの省略こそ、岸田首相が「国葬」の根拠とした「民主主義が問われている」。国民の賛否が、「国葬はなじまない」が過半数を超える中での強行は、有無を言わさず一方的な価値観を国民に強い、さらなる社会の分断を助長することになる(賛成は3割程度)。
   
安倍氏への銃撃事件をきっかけに、にわかに注目されたのが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治家との関係である。特に、自民党議員(多くは安倍派の清和会)との浅からぬ関係が相次いで明らかになった。そのことが、安倍氏の「国葬」への反対意見の広がりにもなっている。
   
旧統一教会の霊感商法や法外な献金強要などが社会問題化し、多くの違法行為・不正行為が裁判で認定されており、多くの被害者を出した団体から選挙で支援を受けることなど、有権者の理解は得られない。しかし、未だに自民党は党として旧統一教会との関係を徹底的に調べ解明し、関係を絶つ意思を明確にする姿勢ではない。「個々の議員に任せる」では政権政党とは言えず、政治不信を増幅することになる。「国葬」は皮肉にも「弔問外交」どころか、自民党政権が反社会的なカルト集団と持ちつ持たれつだったという恥ずべき実態を世界に発信する機会になる。
   
   
   
・(4) 直近の世論調査が教えるもの
   
毎日新聞と社会調査研究センターは20、21の両日、全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は36%で、7月16、17日の前回調査の52%から16ポイント下落した。不支持率は54%で前回(37%)より17ポイント増加した。
   
岸田首相は8月10日に内閣改造と自民党役員人事を実施したが、「評価しない」との回答が68%に上り、「評価する」は19%にとどまった。自民党と旧統一教会の関係に問題があったと思うかとの問いでは「極めて問題があったと思う」が64%、「ある程度問題があったと思う」が23%で、合わせて9割弱が問題があったと答えた。「それほど問題があったとは思わない」、「全く問題があったとは思わない」は合わせて1割強。自民党支持層でも、7割超が「問題があった」と回答した。
   
政治家は「旧統一教会との関係を絶つべきと思うか」との問いには、「関係を絶つべき」は86%に上り、「関係を絶つ必要はない」は7%。自民党支持層でも「絶つべきだ」は77%で、「絶つ必要はない」の12%を大きく上回った。
   
岸田政権が本気で教団との関係を断つつもりなら「内閣総辞職、解散総選挙をすべき」(作家の島田雅彦談)との指摘は至極もっともだ。それに値する事態である。
   
   

■ 3.立憲野党に問われる課題

・(1) 大衆の力で臨時国会の早期開催を
   
8月18日立憲、共産、国民民主、れいわ、社民、有志の会の6党・会派が衆院議員126人の連名で、憲法五十三条に基づき臨時国会の召集要求書を細田博之衆院議長に提出した。要求書では、物価対策や、新型コロナウイルス第7波への対応、国論を二分している「国葬」問題、統一教会と閣僚や自民党議員の関係、日本周辺の安全保障、頻発する豪雨災害など山積する重大な課題での国会議論を要求した。
   
なお、参院でも6会派と、無所属議員の77議員が連名で臨時国会要求書を尾辻秀久議長に提出した。
   
衆参いずれかの総議員の4分の1以上の求めがあれば、内閣は召集を決定しなければならない、と憲法五十三条では定めている。少数派の意思を尊重し、立法府による行政監視機能を全うさせることが、この規定の目的である。8月初めに召集した臨時国会を、岸田政権はわずか3日で閉じた。論戦を避け、国会を軽視する姿勢は、安倍・菅両政権に共通した特質のひとつであり、憲法53条に基づく要求への対応は、「丁寧で寛容な政治」「聞く力」を掲げている岸田首相の政治姿勢が問われている。岸田首相がコロナに感染したが、回復次第速やかに臨時国会を開催すべきである。
   
   
   
・(2) 国民の命と暮らし、平和を守る戦線構築を
   
参院選では自民党や維新の会が議席を大幅に増やし、衆議院に続いて参議院でも改憲勢力が3分の2超となった。立憲野党は、「改憲勢力の3分の2阻止」を目標として戦ったが、「敗北」したといえる。
   
最大の「敗北」の要因は、「国民が求めている課題に応えれず、支持を得られなかった」ことにつきる。だがしかし、ここに来て前述した世論に見られるように、岸田政権の支持率が「黄金の3年間」どころか、一気に30%台に落ち込んだ。この世論とどう繋がり、岸田政権と対峙する幅広い戦線を構築するのかが喫緊の課題となった。
   
世論と繋がる課題は前述したが、一つは物価高から暮らしを守ること。二つは、コロナ感染拡大から命と雇用を守ること。三つは、立憲主義(憲法十九条、二十条を中心に)に反する「国葬」を許さず、自民党と反社会的なカルト集団との癒着を断ち切り民主主義を取り戻すこと。四つは、来年度防衛費予算の増額(「事項要求」を100項目以上盛り込むなど一気に軍拡への道を歩む)に反対すること。などの要求を掲げて、岸田政権と真正面から対峙する戦線の構築である。
   
   
   
・(3) 野党共闘の再構築に向けての課題
   
課題は、立憲を筆頭にして立憲野党(共産、社民、れいわ)がそれぞれの主体性を強化しつつ、野党共闘の再構築をするしかない。その課題は前述の通りである。「国民の命と暮らし、平和を守り、九条を頂点とした改憲を阻止する」ということである。
   
そのためには、立憲野党の院内共闘強化と並行して、それを支える平和フォーラムなど産別・労組、さらには脱原発、反基地闘争など全国に存在する反戦・平和の地域闘争などとの共同闘争を組織することである。とりわけ平和フォーラムの母体である旧総評系の産別・単産の再結集・強化が問われている。この結集、強化なくして立憲野党を軸とした幅広く、強固な統一戦線は出来得ない。こうした観点から中央と地方が連動して戦線構築を急がねばならない。
   
   

■ 4.正念場を迎えた労働運動の課題

・(1) 今こそ労働3団体が統一して闘う情勢
   
22年度の最低賃金は全国平均で31円引き上げられ、時給961円になる(前年度に比べ3.3%アップで過去最高の伸び)。経済協力開発機構(OECD)の統計によると日本の最低賃金は韓国(1162円)より下で、円安効果で時給1049円。年収ベースの最低賃金の統計でもやはり日本は10位以下の218万円と発展途上国レベルに沈んでいる。
   
さらに、OECD調査の「世界の平均給与(年間)」を見ても日本は見劣りがする。
   
ルクセンブルク―― 1025万円、
アメリカ―― 994万円、
アイスランド―― 963万円、
スイス―― 927万円。
   
日本は543万円で韓国(596万円)、イタリア(551万円)より下に甘んじている。
   
低所得世帯ほど物価高のしわ寄せを大きく受け生活困窮を強いられる。それはGDPの半分超を占める「個人消費」を冷え込ませ、物価高と景気の後退というスタグフレーションに陥ることになる。「インフレ手当」の要求、そして23春闘に向けて「最低5%程度の賃上げ要求」(生活必需品の値上がり分)を掲げて、労働3団体の統一要求、統一行動の組織化を考える時ではないのか。今こそ「失われた30年を取り戻し、労働運動の社会的な役割りを果たす時」である。
   
   
   
・(2) ストライキで闘う欧州労働運動に学ぶ
   
インフレ率が10%近い英国では、郵便会社ロイヤル・メールの通信労働組合が大幅な賃上げを求めて8月に4日間のストライキを行った。会社の近年最大の5.5%の賃上げ提案に、組合側は、生活水準の急激な低下を理由に拒否し闘っている。鉄道労働者も18日にストを実施。会社側の「5%以上の賃上げ」回答を不服とし、9月初旬にもストで闘うとのこと。ロンドンの地下鉄労働者、港湾労働者も8、9月にストを予定。ドイツの航空大手のルフトハンザの地上勤務労働者2万人はストで闘い、1人当たり月額約5万1000円〜6万8000円を勝ち取っている。
   
こうした欧州の労働運動に学ぶ時ではないだろうか。
   
   
   
・(3) 中小、未組織労働者と連帯して闘おう
   
東京商工リサーチが8月16日に公表した債務の過剰感に関するアンケート調査によると、約3割の企業が「過剰債務」と回答。最も多かったのが「道路旅客運送業」で85.0%。次いで「宿泊業」81.2%、「飲食店」77.1%、「娯楽業」68.7%。規模別では、中小企業が31.7%と、大企業の15.6%の2倍に上った。
   
過剰債務が事業再構築の足かせとなっている企業は、大企業で21.4%、中小企業で33.4%に上る。新たな資金調達がしにくい状態が長引くと、事業継続を断念する『あきらめ型倒産』が増える可能性がある」と分析されている。
   
地方経済をこれ以上疲弊させないためにも政府・自治体における倒産防止に向けた取り組みの強化が求められている。また、地域最低賃金の確定に向けて、答申よりも1円でも引上げる取り組みが求められる。これらの課題は地方からの連合をはじめとした地域運動、立憲野党との共同闘争として組織化する課題ではないだろうか。
   
(8月22日)
   

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