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●2021年8月号
■ 自民党政府は無能と化していた
    伊藤 修

■ ばかな大将、敵よりこわい

自民党政府は長年、自分たち以外に政権担当能力はない、安心してまかせろといってきた。国民の多くも、方向には異議があるにしても運営能力はそうかな、と思ってきたのではないか。だから政権党なのだろう。
   
しかし、コロナの猛威を前に混乱と愚策を連発、安倍8年のもとで本当の無能、多くの人命を奪うまでの無能に成り下がっていたことが、白日の下にさらされている。
   
昔と同じではない。変わったのだ。そのことに、国民の多くも、われわれも、ボーっとしていたのかもしれない。
   
日本政府の約1年半の対コロナ政策をふりかえって、致命的な誤りはどこにあるのか、これからどうすべきかをまとめてみる。もちろん筆者は医療は素人で、勉強に努めてはいるがくわしいことはわからず、基本レベルのまとめにとどまる。経済対策については少しはものをいえる。なおこれはオリンピック前・7月18日の原稿で、この先どうなるかわからない。右、了解を乞う。
   
政府自民党は混乱を連発している。マスク会食監視隊、酒販の抑圧、とりわけ取引金融機関から脅しをかけさせるなどの超法規的ヤクザ政策は、当然にもきびしい批判を浴びた。それらと並行して、収賄、買収、公私混同、ねつ造・隠ぺいなど民主主義の最低線を踏みやぶる無法の輩が、政権中枢やその周辺にオンパレードだ。
   
安倍前首相は山ほどの疑惑を前に逃亡したうえ慢性ネトウヨ病ではしゃいでいる。二階幹事長は「Go To」の首謀者だそうだが、上から目線でしゃべるたびに反発を買う。菅首相……筆者は誤って過大評価していた。安倍を支えるすご腕軍師だと思っていたが、まともに問いに答えないごまかし専門要員だっただけで、「実力」はいま露呈した。安倍にならい「やってる感」で支持をつなぐ戦術を狙ってワクチン勝負!と吹いてみたもののワクチンが不足で破綻、地方の現場から批判が噴き上がるという最低ぶり。
   
この連中、責任を認めず(感じず?)謝りもしない。人間として腐っている。コロナと戦うには政府への信頼が不可欠だが、それを壊している責任は重大だ。ついでに橋下徹・元大阪市長/府知事も、大阪医療崩壊の悲劇の元凶のくせに連日テレビで偉そうに評論とはどういうことか。犯人を解説者にしてどうする? マスコミ猛省せよ。
   
混乱より深刻なのが無能愚策だ。まず医療対策、ついで経済対策、の順で整理しよう。
   
   

■ 感染防止策――検査・隔離・ワクチン

台湾や韓国は対策優等生とされていたが、ここへきて感染がふえているようだ。もう大丈夫、マスクも外すぞと喜んでいた国が一転、と状況は日々変化している。
   
さりながら最初から現在まで、日本がコロナ対策で駄目な例なのはまぎれもない。では現在時点でみて、医療面の対策で肝心なことは何だったのか?
   
初期の段階では、PCR検査で感染者を見つけ出し、隔離する、が要点であった。中国は、十数人のクラスターが発生しただけでも大都市をロックダウン(都市封鎖)して外との接触を遮断、内では感染者を隔離、というやり方で、伝染を抑え込んだ。コロナは「ステルス感染症」(ステルス戦闘機はレーダーでも発見されない戦闘機)で、無症状の感染者がおり、この人たちが市中で伝染を広げてしまうから、検査による発見が肝になる。検査と隔離――これが世界の定石。
   
日本は定石に反して検査をしなかった。意図的に。当時の安倍首相はこれを「日本モデル」と誇ったのだから。
   
一体なぜ? 筆者が読んだ範囲では次のような説明が説得的だ。厚労省医官や国立感染研からなる「感染ムラ」という伏魔殿がある。ここが戦前の陸軍の結核対策ベースで今もきているため、ステルス性のコロナに対応しない。また自分たちが独占している情報、権限、予算を死守しようと傘下の保健所ルート以外に手を触れさせまいとする。このあたりは「原子力ムラ」と同じ構造である。その中継所の仕事を割り当てられた保健所は大幅に弱体化させられていた。大阪などは3分の1に減らされた。対応不能。
   
また医療機関の受け入れ余力がないので検査をさせない。陽性でも入院できず、自宅待機で苦しんでいるうちに亡くなる人も出ている。
   
医療機関の患者受け入れ不能、医療崩壊状態も、去年からずっと直らない。周知のように日本のベッド数そのものはすごく多いが、コロナ病床は極少だ。ごく少数の受け入れ機関と医療関係者の善意、無理を重ねる奮闘によってのみ支えられている。大型病院でも公営病院でも受け入れない。患者がこわがって来なくなり、売上げが減ってしまうから。といっても医療機関を非難するのではすまない。ベッドは空けても、必要な人員(医師・看護師)や関連設備が手当てできない。転用や応援の体制が国として準備されてないからだ。何よりもコロナ治療に資金を集中投入する国のサポートがない。
   
そうこうするうちに世界ではワクチン接種が進む第二段階に入った。今はワクチン接種が焦点で、世界的にみるとその不足、いわば「ワクチン格差」問題が重大である(本当はWHOはこういう問題を解決すべきなのだ)。
   
ここでも日本は失敗している。ワクチン不足の原因は、第一にトップ(日本は首相)が交渉の前面に出なければならないのに遅れたこと、第二に日本の役所手続きが煩雑すぎること、らしい。緊急時対処がまったくできていない。あなたたちは何のためにいるのか?
   
遅きに失したが、今となっては、手続きを迅速に通るようにする一方、ほかの何より最優先で首相が頭を下げて回ってとにかくワクチンを確保すること。のたのたするな。すぐ動け。
   
   

■ 経済対策――要請するなら補償しろ

世界中の各国でコロナのため行動が制限され、経済活動も落ち込んだ。一段落した中国とアメリカがまず大幅に回復しつつあるのに対し、日本経済の落ち込みは大きく、かつ回復も遅い。100%政府の誤りに責任がある。ほかのどこに原因がありうる?
   
落ち込みの特徴は、第一に影響が深刻、第二に被害が一部に集中して「まだら模様」になっていることだ。
   
筆者は東京下町・荒川に住んでいるが、飲食店、零細企業、町工場が去年から続々廃業した。「ああ、ここもか」の連続だ。駅前の地場の老舗居酒屋2軒が閉めて、1つもなくなってしまった。大変だ。「歳もとったし、そろそろ……」と考えていた店が「この際に」というケースがほとんどだろう。統計上も廃業が高水準にある。倒産は少ないともいうが、倒産は払いきれない借金を残した場合であって両者は異なる。これから倒産がふえてくる可能性もある。
   
人の動きが減るので、飲食、商業、交通、観光、文化といった分野で客が減り、売上げが減る。アルバイト、パート、正社員の順で解雇も出る。反対に、薬、食品工業、電器などは売れ行きよく、また大企業全般もコストをカットして利益を貯めている。これが「まだら模様」だ。
   
一時期、感染防止と経済が対立するかのようにいわれた。その前提で政府は「経済を回す」といったのだが、それは「死人を出しても」という意味だったわけである。
   
しかし、よく参照されるニッセイ基礎研究所の世界コロナ対策ポイントをみると、「感染がひどいと経済被害も大きい」という大傾向がある。中南米と南欧が悪い。当たり前といえば当たり前か。防止と経済は二律背反でないのだ。なお日本は49カ国のうち29位と下位で、去年より大幅に下がった(ずるずる長引かせて回復が遅い)。感染者は少ないが、そのうち死に至る率(致死率)が高い。
   
最悪なのは「Go Toで経済を回す」という策で、経済政策論として基本の誤りだった。なぜなら、これは、「消費を補助して→売上げを支え→所得を支える」政策である。しかし、補助された消費は人を動かし、感染を広げてしまう。殺人政策である。正解は、売上げ支持と所得支持を連結させず、切り離す(デ・カップリングde-coupling)こと、被害を受けた所得を埋める給付だけをする政策、つまり「所得補償」である。大学の経済政策論で教えるはずだ(政策を論ずるつもりなら拙著『経済問題がわかる』労大新書くらいは最低限マスターしている必要がある)。
   
昨年度のGo To関連予算は2.6兆円あったが、1.8兆円(7割)が未執行に終わった(使い残しの総額は30兆円と異例)。政策として誤っていた証拠である。
   
1人10万円の一律給付金(予算13兆円)も同じく誤りだ。第一に、配達を除けば、やはり人を動かして所得を補償しようとするので、殺人政策だ。第二に、被害は「まだら」の特定部分なのだから、全体に金をばらまいても効果は小。消費税減税を含む減税も、同じ理由で効かない。ムダ金になる。
   
経済活動、GDP、国民所得(以上は同じことだが)は去年5%低下した。金額で30兆円くらいにあたる。今年も(今のところ)同じようなものだろう。これが特定部門に集中している。ならば、所得が減ったところへピンポイントで直接に所得補償するのが当然の政策である。雇用を守るための雇用調整助成金(雇調)も効いている。
   
東京でのデモのプラカード「要請するなら補償しろ」はまったく正しい。正当な要求、主張である。政府はことあるごとに処罰しようとするが、その前に、やることをやれ。
   
これら売上げ減少に対する事業向け補償だけでは足りない。たとえば大学の新入生は「雇用を守る」対象にもならず、アルバイトできずに苦しい(ここにはいろいろな問題があるが)。したがって個人所得補償も必要である。
   
所得補償は、所得減少の正確な実態を把握しにくいという問題があるといわれる。これに対しては、経済学者は、緊急に概算(簡単な見積もり)で前払いしておき、次の納税時にくわしい結果数字をチェックして調整すればいいと提案している。そうだろう。
   
これだけでなく、コロナ一段落後は緊急財政出動――これは必要だ――のあとの税収入が大事になるが、所得のまだら増減が大きいのだから、「所得に応じた負担を累進で」の原則がふだん以上に重要になる。
   
   

■ どうする――野党統一緊急政策

自民党政府の底知れぬ無能が、さすがに国民に知れ渡りつつある(世論調査で「対策を評価しない」が多数)。しかし、では野党にまかせよう、とはなっていない。まかせて大丈夫とは思えず、あきらめて、支持なし層がふえる。
   
そこで、選挙に向けて候補を統一するだけでなく、統一政策(最低限、緊急なコロナ対策について)を決め、自民党よりはましかもしれないと思えるだけの信頼を得ることだ。要点は、右に考えてきたように、医療では検査と隔離とワクチン、経済では所得補償、である。
   
統一にあたっては、独自の考えにこだわらないふところの深さが大事だ。また、野党議員が個人プレーに走って1人でも国民の反発を買えば全体の信頼を損ねる。この件に限ってでも、最低限の規律=意思統一が必要である。
   

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