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●2021年4月号
■ 当面する政治闘争について
    吉田 進

2021年度予算が成立し、国会は後半戦に移った。政治の焦点は、4月25日投票の補欠・再選挙(衆議院北海道2区、参議院長野選挙区・広島選挙区)、10月までに実施される解散総選挙に絞られてきた。
   
河井案里・克行夫妻の買収事件、元農相の収賄事件、国会議員の銀座クラブ訪問、桜を見る会をめぐる政治資金規正法違反、元総理の女性蔑視発言、総務省・農水省の接待問題など菅内閣は混迷を深めている。安倍内閣から続く権力構造のなかで生まれた「腐敗」「驕り」と指摘されているが、国民の生活、国民の意識と大きく乖離した政治を一刻も早く国民の手に取り戻さなくてはならない。
   
   

■1. 菅政権の混迷

昨年10月に行われた菅首相の所信表明演説は、日本学術会議の任命拒否問題、東京電力福島第一原発の処理水問題、危機的状況に陥っている財政の再建方針、社会保障の再構築など直面している政治課題に言及しないばかりか、国の将来が見えない空虚な内容であった。「自助・共助・公助・そして絆」というフレーズだけが耳に残ったが、新型コロナウイルスの感染拡大は、既存の政策の限界を浮き彫りにし、東京一極集中や格差拡大の弊害を改めて表面化させている。コロナ後に目指す社会の姿こそが問われているにもかかわらず、語るべきことを何も語らなかった。
   
新型コロナ対策では、11月末に経済を再生させるための観光支援事業「Go Toトラベル」の運用を見直さざるを得なくなった。しかし、その後の感染拡大は今までとは比較できない規模となり、2度目の緊急事態宣言を発令した。「対策が後手後手」との批判がよくされるが、その以前の危機管理能力、政権担当能力が問われている気がする。科学的な根拠に基づいて対策を決定し、その内容について、みずからの言葉で国民に説明し協力を呼びかけるという基本姿勢が欠如している。
   
3月に入り、緊急事態宣言の解除を行ったが、一都三県は延長を余儀なくされた。その際も、今後の筋道や戦略を示さず、内閣支持率や自民党内の顔色ばかり気にしているような対応であった。海外のリーダーのように国民にしっかり向き合う姿勢が菅首相には全くない。
   
国内においてもワクチン接種が始まり、感染収束への期待が高まっているが、ワクチン接種によって感染が抑え込まれて、経済や社会活動が短期間に元通りになるという考え方は楽観的過ぎるであろう。感染者数の下げ止まり、変異ウイルスの拡大、ワクチン接種の遅れなどが危惧されており、新型コロナウイルス対策は、今後も最大の政治課題である。
   
総務省の接待疑惑は、国民の政治不信を著しく増大させている。接待をした東北新社とNTT、接待を受けた官僚・元大臣などが「行政をゆがめた事実はない」などという答弁を繰り返している。しかし、国民はだれも信じない。みずからの利益がないのであれば、そもそも接待など行わないし、接待の基本構造は広い意味で「贈収賄」である。しかも、接待をした側には、菅首相の長男がおり、接待を受けた側には首相側近の内閣広報官が含まれていた。菅首相は、国会でお詫びを述べたが、何が問題であったか、何を詫びなければならないのかほとんど分かっていないように聞こえる。野党の追及に対し「全く問題なない」「指摘は当たらない」「回答を控えさせていただく」を繰り返し、事態が不利になったときには謝罪するパターンを繰り返している。みずからが主導して疑惑や不正をただすのではなく、「批判をそらす」「乗り切る」ということ以外考えていないかのようである。
   
東北新社は外資規制違反を巡って、NTTはドコモの完全子会社化を巡る癒着・接待であったと見る方が妥当であろう。身内である当該省庁で調査などできるはずがなく、第三者による徹底的な真相究明をはかるべきである。
   
   

■2. 直面する政治課題

新型コロナ禍における国民生活、とりわけ労働者の置かれている実態は深刻である。しかし、労働運動が低迷しており働く人たちの実態がほとんど明らかにされない。コロナ禍における労働者の実態は厚生労働省の調査などでしか分からない。しかも、厚生労働省の調査結果がマスコミで報道される際には、「実際にはこの数字の数倍と見られる」という注意書きがその都度付け加えられる。労働組合の報告等は、正規社員のことに限定され非正規社員のことはほとんど取り上げられない。そもそも、非正規労働者の多くは組合に加入していないし、ほとんどの労働組合で課題となっていない。
   
新型コロナウイルスの感染拡大により経済活動が制約され、多くの人が解雇や減収で苦境に立たされていることは間違いない。そのしわ寄せが非正規雇用の労働者、フリーランス、外国人労働者など弱い立場の人に集中するのは当然すぎることである。医療、介護、福祉など人々の生活を支えるエッセンシャル・ワーカーと呼ばれる人たちの過酷な労働実態もコロナ禍で浮き彫りになった。
   
1984年に約600万人だった非正規労働者は2000万人を超え、労働者全体の4割に達した。女性に関しては約5割である。人件費を抑え、雇用の「調整弁」にできる非正規労働者は、企業にとって都合がいい。
   
一方で、こうした非正規労働者の拡大とともに広がったのは貧困である。年収200万円以下のワーキングプアーは1100万人にものぼる。こうした人たちに「自助」を言うのは、政治の役割をみずから放棄することにほかならない。余力を失い困窮している労働者を鞭打つものである。「まずは自分で」が強調されすぎた結果、生活保護世帯やホームレスに対するバッシングが常態化した。「自己責任で生きていけない人は駄目な人」「他人に迷惑をかけてはいけない」という空気は「助けて」と言えない息苦しい社会を生み出している。
   
非正規雇用は自治体や国の機関でも増えている。市役所、町村役場等で働く職員も約半数が非正規である。ハローワークで就職相談を担当している職員も非正規が多い。公共部門の仕事を低賃金で不安定な雇用に置き換えていけば、公的サービスの低下を招くことは避けられない。
   
働く人の雇用や生活の脆弱さは、社会を根底から不安定にする。消費や経済に与える影響等はもちろん、ますます深刻になっている少子化問題も若者層の労働実態と無関係ではない。こうした状況を変えるためには、政治の力とあわせて労働組合の運動が不可欠である。みずからの待遇改善と同時に、社会全体にも目を向け「社会正義」を求める労働運動が強く期待されている。
   
新型コロナ対策のため、あまり取り上げられないが菅政権の改憲、防衛・安全保障政策等は極めて危険であることを忘れてはならない。言うまでもなく菅政権は安倍政権を引き継いでいる。単に引き継いでいるのではなく、安倍前首相とともに直接政権を担ってきたのであり、めざす方向や政策が変わることはあり得ない。ただし、政治的力関係の変化によって政策を変更したり、断念したりすることは当然であり、われわれの運動の目的でもある。
   
菅首相の改憲への意欲は、所信表明演説でもほとんど語られていないが、自民党は改憲を「結党以来の党是」位置付けており、改憲4項目として

  1. 九条への自衛隊明記
  2. 大規模災害時の内閣権限強化など緊急事態条項の創設
  3. 参議院の合区解消
  4. 教育の充実

を掲げている。
   
昨年12月、自民、立憲民主両党は、焦点になっている国民投票法改正案について「通常国会で何らかの結論を得る」ことを合意している。立憲民主党は、「結論を得るといっても採決を約束したわけではない」と表明しているが、国民民主党や日本維新の会の動向もあり予断を許さない。「改憲そのものに反対するものではない」との立場で国民投票法の問題に踏み込んでいくことは、現在の与野党の議席数からして、改憲への「突破口」を許すことにつながる。後半国会の大きな課題である。
   
2021年度予算はコロナ禍で経済が低迷するなか、国債発行で大幅な財源不足を補う実態になっている。しかし、防衛費だけは5兆3422億円と過去最大であることを見逃してはならない。政府は、秋田・山口両県に予定していた「イージス・アショア」計画の断念など防衛政策の混乱のなかで、代替策としてイージス艦2隻の新造、敵の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ・ミサイル」開発計画を昨年末に閣議決定している。解散・総選挙への影響を懸念して、あえて「敵基地攻撃能力」の明記をせずに、「専守防衛」の理念をなし崩し的に転換させたものである。

   
   

■3. 4月補欠選挙について

共4月8日告示、25日投開票の補欠、再選挙が実施される。参議院長野選挙区は、新型コロナウイルスによる羽田雄一郎参議院議員死去に伴う選挙である。故羽田雄一郎氏については、2019年の参議院議員選挙で「市民と野党の統一候補」として戦い、約14万票の大差で自民党候補に勝った経過があるだけに、野党各党はもちろん「信州市民アクション」に結集する多くの市民団体も「負けられない戦い」という意気込みが強い。また、羽田雄一郎氏が新型コロナウイルスのPCR検査をすぐに受けられなかった状況の中で命を落としたことを受け、「弔い合戦」との空気のなか、実弟の羽田次郎氏(51歳)を擁立することとなった。
   
しかし、羽田次郎氏が「世襲候補者」であることは間違いなく、また、異例の短期間で手続きを進めたため、カギを握る市民団体の信頼感が不十分であることも事実である。「羽田次郎と三野党、信州市民アクション政策協定調印式」が行われたのは2月27日であり、出遅れも指摘されている。さらに、政権与党側はこの選挙に対し、かつてないテコ入れを準備している。「4月補欠選挙の結果は、次の総選挙に直接反映される」という自民党幹部の声も聞こえるなか、激戦になることは必至である。
   
2月27日に調印した「政策協定」は、「立憲主義を回復し、憲法を暮らしと政治に生かし、競争と自己責任の社会から、いのちと人間の尊厳を守る社会へ」というスローガンを掲げ、具体的な政策は次の7分野にまとめられた。

  1. 新型コロナウイルス感染症の収束に向け、国民の命と健康、暮らしを最優先した対策を進めます。
  2. 立憲主義を回復させ民主主義を再生、憲法九条の改定に反対します。政治に透明性と公正を取り戻します。
  3. 社会・経済政策は、市場重視の新自由主義から転換し、社会保障による再分配政策によって、格差是正と貧困対策を強めます。
  4. 東京一極集中の集権型社会を変え、地方分権社会に転換します。
  5. ジェンダー平等、LGBTs(性的少数者)など、すべての差別の解消、人権が尊重される社会をめざします。
  6. 日米同盟に偏った外交を改め、東アジア諸国との関係を改善します。アジアにおける軍事的緊張の緩和に取り組み、対話と協調の積極的な平和外交を推進します。
  7. 地域における防災・減災、流域治水対策をすすめ、災害に強い郷土をつくります。過疎化対策拡充と小規模自治体への支援を強め、働く場の創出と産業の活性化をすすめ、地域住民への福祉型施策を拡充し、持続可能な地域社会をつくります。

7分野にはそれぞれの具体的課題があり計27項目におよんでいる。これに対し、国民民主党や連合本部から批判が出された。
   
1つは、3.の中の「原発のない社会と再生可能エネルギーが主役の社会をつくります。2050年までに再生可能エネルギー100%を実現し、原発ゼロ社会をめざし、分散型でエネルギーを供給・消費する地域社会をつくります。原発再稼働は認めません。福島原発事故の廃炉作業は、安全性を最優先にすすめます。徹底して脱炭素化をすすめ地球温暖化の防止対策で世界をリードします」という項目である。もう1つは、6.の中の「日米同盟に偏る外交姿勢を是正する」という項目である。
   
「ゴールは100年単位」「原発ゼロは理想だ。政権を取るのに夢物語ではいけない」「日米関係は外交の基軸だ。夢想論を言っても支持されない」「支援を再考する」などの発言が相次いだ。地方における「市民と野党の共闘」に対する中央からの圧力・妨害と受け止められても仕方ないような行為である。
   
こうした中、予定候補者や県内関係者からは、「政策協定を尊重して戦っていく」との表明があらためて行われた。「原発ゼロ」に関しては、福島第一原発事故から10年の節目で極めて重要な政策である。3月の全国世論調査では国民の76%が脱原発志向という結果も出ている。「原発ゼロ」を曖昧にした政策協定はあり得ない。また、日米同盟に関しても沖縄基地建設に直結する問題であり同様である。
   
さまざまな困難は今後も続くであろうが、それらを乗り越え、今日まで積み上げてきた「市民と野党の共闘」という枠組みを維持しながら、可能な限りきめ細かい地域ごとの対話集会を積み重ね、勝利につなげていくことが重要である。
   
一方、これらの動きに呼応するかのような形で自民党は、「選挙のために政策を売り渡す野党連合に屈してはならない」と批判を強め、21日に開く党大会で「民間労働組合との関係強化」を方針に織り込もうとしている。
   
   

■4. 解散総選挙にむけて

衆議院選挙が目前に迫っているが、いま2つのことが求められている。
   
1つは、候補者一本化である。「小選挙区制」という選挙制度のなかで、野党側がそれぞれ候補者を出したのでは、与党候補に勝つことは容易ではない。2016年の参議院選挙から始まった「野党共闘」はその選択の正しさを実践で証明した。ここに加わらない野党は、与党候補を利する結果を生むことからして「野党」ではなく「与党補完勢力」となる。
   
もう1つは、政策協議である。衆議院選挙は「政権選択選挙」である以上、これを抜きに「野党共闘」を進めることは許されない。相手側から「野合」と批判されても仕方ない。「連立政権」を目指すのか、そこまではいかないのかという情勢判断はあったにしても、政策協議をしないというのは筋が通らない。
   
しかし、これに関して「共産党とは政策協議をすべきではない」という動きも具体化している。「候補者一本化はしてほしい、しかし、政策協議はやらない」というのはどう考えても理解できない。共産党を擁護しているのではなく、「排除の論理」を持ち込んだら「市民と野党の共闘」は成立しないということである。取り組みの遅れが指摘されているなか、野党各党は野党共闘をめぐる諸問題を早期に解消し、闘争体制の確立を急ぐべきである。
   
私の居住している地域では、毎月3の日の「スタンディング行動」を様々な人たちで続けている。時々、市町村議会に対して意見書採択の陳情も行っている。昨年12月議会では、「米軍機の低空飛行訓練中止」「核兵器禁止条約の批准」など取り組み成果をあげた。また、毎年7月には「いのちと平和」をテーマにしたイベント「七夕まつり」を開催している。
   
こうしたなか、4月の参議院補欠選挙、衆議院選挙にむけて、野党、市民団体、労働組合、退職者会などで活動を開始した。予定候補者との対話集会、街頭演説会、ポスター張り、個人演説会等をいま準備している。「要求で一致」から一歩進めて、共通の敵に対して闘うことを通じて「仲間意識」を作っていくような粘り強い活動が求められている。
   
(3月20日)
   
   

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