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●2020年3月号
■ 社民主義勢力を残し拡大しよう
  ―― 野党再編をめぐる課題 ――
         宝田 公治

   

■1. はじめに

第201通常国会が1月20日に召集された。安倍首相は施政方針演説で、今年開催される東京五輪・パラリンピックに繰り返し言及し、「国民一丸となって新しい時代へともに踏み出していこう」と呼びかけた。安倍首相の常套手段「目先を変え争点をぼかす」である。
   
一方で首相主催の「桜を見る会」の私物化疑惑は、公文書管理法違反が明らかになり、公職選挙法違反や政治資金規制法違反が問われ、カジノを含む総合型リゾート(IR)事業を巡っては、当時担当だった秋元元内閣府副大臣が収賄容疑で逮捕(さらに5人の国会議員に疑惑、内1人は認めた)された。また、昨年10月、河井法務大臣・菅原経産大臣が公職選挙法違反の疑惑で辞任に追い込まれたが、これらには一切謝罪も言及もしなかった。これまでの森・加計問題や公文書の隠蔽・改ざんと同じく「隠蔽体質と権力の私物化」の反省は全くない。世論調査でも、「桜を見る会」の首相の説明に「納得できる」12%、「納得しない」71%(JNN 2/3)である。
   
さらに、辻元衆院議員の質問に安倍首相は「意味のない質問」とヤジを飛ばし、謝罪に追い込まれた。「安倍政権の終わりの始まり」とも論評される状況が起こっている。
   
また、アベノミクスについても都合のよい数字だけ並べての自画自賛はこれまでと全く変わらない。しかし、財政健全化については「引き続き25年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス:PB)の黒字化をめざす」と宣言したが、政権発足時の黒字化目途としての20年度を25年度に先送りしている。しかし、実質の経済成長率1%前後を前提とすると、25年度にもPB 8兆円の赤字と試算されており、25年度の目標さえも達成できない。また、2019年の出生数は87万人を切った。少子化問題は、社会の持続問題でもあり、日本社会は大変な危機に陥っている。これら都合の悪いものについては、客観的なデータは示さない。そして、消費税を増税したにもかかわらず、内閣最大のチャレンジと位置づける全世代型社会保障制度は、高齢者に対する負担増と給付の切り下げである。これだけでもアベノミクスの破綻は明らかである。
   
これに対し、昨年臨時国会で、共同会派(衆院120人、参院61人)と共産党の院内共闘は、一定の成果をあげ、通常国会でも結束している。とりわけ「桜を見る会」では、国会答弁で安倍首相は後援会事務所からの参加者募集に対し「募集ではなく募っている」との意味不明答弁や、前夜祭(前日、ホテルで800人規模)の1人5000円の参加費支払いについて「契約主体は後援会ではなく、『参加者個人』である」と常識的には考えられない答弁を繰り返し、疑惑はさらに増し、首相を追い込んでいる。院内共闘をさらに強化し、国民の信頼を勝ち取ることが求められる。
   
これら共闘の成果があるにも関わらず、世論調査(北海道世論調査会)では、安倍政権の支持率は、昨年12月までは4カ月連続で下がっていたが、1月は、支持45.5%(前月比+1.3%)、不支持39.1%(前月比▲1.7%)、自民党支持率38.5%(+2.3%)と若干上がっている。ちなみに立憲民主党(以下立憲)6.8%(▲0.5%)、国民民主党(以下国民)1.3%(+0.4%)、社会民主党(以下社民党)0.6%(±0%)である。主要な政策や時事問題については安倍政権に批判的であるが、内閣・自民党支持率に大きな変動がないのは何故か。1つ言えることは、マスコミ各社が「もっと重要な政策の議論が必要だ」などと問題点をぼかしていることは看過できない。
   
以上のような状況の中で、12月6日、共同会派代表者会議終了後、突如、立憲枝野代表から国民・社民党・社会保障を立て直す国民会議(以下、社保)・「無所属フォーラム」に対して「合流」の呼びかけが行われた。
   
   

■2. 若干の経過

立憲枝野代表から、「共同会派を結成し、臨時国会では成果を上げ、相互理解と信頼関係も醸成され、理念・政策も共有している。今後より強力に安倍政権と対峙し次期総選挙で政権を奪取するため、会派結成で合意した考えに基づき、幅広く立憲とともに行動し闘ってほしい」との呼びかけがあった(あくまでも「吸収合併」)。各代表は「提案を重く受け止め持ち帰り検討する」とした。
   
社民党は、同月19日に常任幹事会を開催した。ここでは

  1. 次期総選挙前の政党一本化をめざす方向で、党内議論を進める。
  2. 党組織の維持、主要政策の一致を最大限求めていく。
  3. 党員・党組織がまとまって移行できるよう最大限の努力を払う。

とした。その主な理由として、「社民党が国政政党として存続することは、極めて厳しい。党の組織・運動・理念を新たな党で生かし、反映することが『党の存続』につながる」との判断からであるとした。
   
その後のブロック事務局長会議では、全国連合の進め方に対し、全員から疑念や反対が出され、確認を次のように修正した。

  1. 「政党一本化をめざす方向で党内議論」→「呼びかけを重く受け止め、党内議論」
  2. 「まとまって移行できる」→「まとまって行動できる」

とした。
   
社民党最大の支持労組である自治労党員協は、2回の臨時県代表者会議を開き、「絶対に譲れない政策・理念・運動・組織の継続を担保条件に、『立憲と合流すべき』と意見反映を行っていく」という「下部討議案」を継続協議とした。「合流すべき」主な理由として「社民党の党勢が著しく衰退し、組合員に社民党を支援することを納得してもらうことに苦労している現実」をあげ、今日の社民党の現状や自民党一強体制を招いた要因の1つに労働組合の質的量的弱体があるとし、「政治闘争の強化」を訴えている。
   
1月16日、社民党と関係ある13単産との懇談会においても「党が分裂することなく、大きなかたまりになってほしい」という意見が圧倒的であったと言われる。
   
1月上旬、立憲と国民は、長時間にわたる3回の党首会談を行った。そして20日、国民は両議院総会を開催し、24人が「合流決議」を提出した。これに対し国民の中の原発推進派の合流反対もあってか(?)結論を出せず、21日、立憲・国民幹事長会議で「継続協議」としたが、「頓挫」との論評もあり先は見通せない。立憲枝野代表は「政策をすり合わせるというならこれまでどおり、別々の党でやればよい」とあくまでも「吸収合併」を主張している。
   
社民党では、1月20日を締め切りとした合流問題に対する意見書を33県連が提出した。また、全国幹事長会議でも様々な意見が出され、それらを集約して、1月31日、大会第1号議案「『よびかけ』についての今後の対応(案)」を各県に発出した。その特徴は、社民党の統一と団結を守ることを基本に、

  1. 党員・党組織がまとまって行動できるよう最大限努力することとし、合流の是非の判断は、次期臨時大会で行う。それまでの間、党内議論を継続・豊富化する。
  2. 党の置かれた危機的な現状をはじめとする「党内議論を行う上での共通認識」を一致させ、合流の是非にかかわらず、社会民主主義の理念・政策、運動、組織を次世代に継承し、広げるために何が必要か議論を深めていく。具体的には、直面している危機的現状をどう乗り越えるか見出していかねばならない。
  3. 立憲と国民の合流協議は、現時点での合流は困難となったが、両党の協議の状態も考慮する必要がある。
  4. 党内議論を深めるため、理念と政策・地方組織・党員制度・運動・機関紙活動・専従者など、かりに合流した場合どうなるか協議を行い、情報の提供を行う

としている。
   
   

■3. 社会主義協会としての立脚点

社会主義協会(以下、協会)は規約第2条(目的)で「協会は世界の平和と日本における国家権力の平和的移行を通じた社会主義社会実現のため、理論的・実践的な研究・調査・討議を行い、日本の労働組合と大衆運動、社会主義運動の発展、階級的強化に努力する」と規定している。
   
また、協会の理論と運動の指針としては、「社会主義協会の提言」がある。協会の基本路線は、「『反独占、民主主義擁護、反帝国主義戦争の統一戦線』の形成、強化をつうじて、平和的な形態での社会主義政権の樹立をめざす」というものである。
   
そして、2002年3月、基本路線を継承しつつ、情勢の変化に対応した「社会主義協会提言の補強」(以下「提言の補強」と略す)を決定した。その中で、社会主義と社会民主主義の関係については、「社会主義社会の実現をめざす社会主義と資本主義の漸進的改革を続けるという社会民主主義との理論の違いは明確である。しかしどちらも主に労働者という基盤の上に立ち、当面の運動では一致できる。また広範な支持者からも運動の統一を求められ、そうしなければ独占資本の政治勢力には勝てない」とし、そのうえで「『提言』は、統一戦線を提起しているが、それは基本的方向性を述べているのであって、統一戦線には特定の名称や形態があるわけではない。しかし、思想・信条・政治的立場を異にする様々な人々が、共通の目標をめざして協力関係を強めることは常に変わらぬ重要性を持っている」としている。
   
また、戦前からの協会の伝統としては、山川均「無産階級運動の方向転換論」(1922年)いわゆる「大衆の中へ!」がある。その中では「社会主義運動と労働組合運動の第一歩は、まず無産階級の前衛たる少数者が進むべき目標をはっきりと見ることであった。そこで次の第二歩においては、我々はこの目標に向かって無産階級の大衆を動かすことを学ばねばならない。大衆が何を要求しているかを的確に見抜かねばならない。大衆の行動を離れては革命的な行動はなく、大衆の現実の要求を離れては、大衆の運動はない。『大衆の中へ!』は無産階級の運動の新しい標語でなければならない」としている。これらに立脚し、今日の合流問題を考えたい。
   
   

■4. 合流問題の論点

社民党は日本における有力な社会民主主義政党である。そして、社民党には多くの協会員が所属し、運動の強化に努力している。しかし、社会党時代からの長期低落、最近では国政政党として「存亡の危機」にあり、2019年参院選ではかろうじて「政党要件」を確保したが、厳しい現状に変わりはない。そうした中で、協会が「提言の補強」にある統一戦線の強化について研究し、また、その主たる対象である社民党の強化に協会員党員が努力するのは当然のことである。
   
社民党中央の認識は、「このままでは国政政党として存続できない」ということである。しかし、このことを合流の理由にすることには、批判が多い。12月19日、常任幹事会が立憲からの「よびかけ」に応じ、「次期総選挙での政党一本化をめざす方向で党内議論を進めていく」としたことに対し、全国から「前のめり」「合流ありき」と反対が殺到した。いくら「年内に結論を求められていた」としても、あまりにも性急な提案であり、その日の午後のブロック事務局長会議で「重く受け止め、党内議論を進めていく」と修正したり、1月29日の全国幹事長会議で又市征治党首が「説明資料がたりないまま急いで提起した」ことを謝罪したのは妥当な姿勢である。
   
そこで、論点の1つは、「全国政党とし存続するには、以前厳しい現状」すなわち「崖っぷちの状態」を冷静に受け止める必要がある。そのうえで、合流しようがしまいが、日本に社会民主主義勢力を残し、広げるためには、このことの克服なしにはなしえないことを認識することである。
   
香川では、昨年参院選を戦うにあたり、一昨年の夏から、それまでの国政選挙における得票率の低下の原因を「党員が地域や労組で自信を持って社民党(社民主義)を訴えられていない」という重い現実を率直に受け止め、参院選方針づくりを行ってきた。方針の柱は

  1. 各地区の得票目標は、総支部の納得の下で決定する
  2. 「何を訴えたらよいのか分からない」との現状から、「格差・貧困の拡大」と「過重労働」の実態を掴み、「最低賃金1500円(年収312万円)」、「人間らしい働き方」を政策・争点にする
  3. 訴えかける相手は、これまでの党支持者、組合員などコアな人にしぼる
  4. 訴え方は「社民党で政策を実現できるのか」の声を重く受け止め、これまでの「社民党は○○を実現します」ではなく、「この実態を一緒に変えていきましょう」

とした。
   
しかし、結果は得票率3.11%であったが、下げ率は▲38.7%と全国ワースト1に近いものだった。この結果を重く受け止め今も総括運動を続けている。その中で明らかになったことの1つは、多くの党員・組合員が選挙で動いていない事実である。支持者を紹介する運動は選挙の基本・第一歩であるが、提出ゼロの党員が6割強、自治労香川で組合員の紹介者カード提出率は2016年参院選と比べ▲42.2%低下。「過重労働の実態をつかもう」との方針も自治労香川では取り組めていなかった。党も労組も「大衆の中へ」には程遠い状態だった。総括のポイントとして「方針には大きな間違いはなかったと考えている。しかし、その方針が何故、前線に伝わらなかったのか」今も議論を続けている。また、統一自治体選では、全勝したものの、4年前の15人から県議1人、市議2人、町議1人、計4人と戦う前から候補者を減らしていることも参院選の後退の一要因である。この克服のために、県内2カ所で候補者づくりの「政治塾」を始めた。
   
社民党として、昨年の統一自治体選、参院選の総括については、何を広げてきたのか、広げられなかったのか、また有権者は政治に何を求めているのか、我々の主張が広がる条件はあるのかなどについて、本誌で取り上げられてきた教訓的な取り組みに学び、社民党を強化する具体的な運動をつくらない限り、日本に社会民主主義を残し、拡大することはできない。このことを全体で共有し、実践に取り組むことが求められている。
   
論点の2つは、各政党の理念・基本政策についてである。この議論をすると「合流前提だ」との意見もあるが、合流しようがしまいが、統一戦線を考える場合、「提言の補強」にあるように「思想・信条・政治的立場を異にする様々な人々が、共通の目標をめざして協力関係を強めることは、常に変わらぬ重要性を持っている」、そのためには、各政党の理念・政策を研究・調査することは常に求められていることである。また、現在は連立政権の時代である。財界が求める保守2大政党づくりを阻止するためにも、野党共闘とりわけ社会民主主義的に強化することが求められている。そのためにも、社民党の国政政党としての存在が不可欠である。
   
最後に世論調査に一喜一憂する必要はないが、世論の動向を研究・調査をしておくことは重要である。北海道世論調査会の1月調査によると3社(NHK、共同、読売)の「立憲と国民との合流に期待するか」に対し「期待する」23.6%、「期待しない」66.8%、「立憲・国民・社民の合流に期待するか」に対し、「期待する」25%、「期待しない」40%(毎日1/20)、「3党の合流に大義はあるか」に対し、「ある」26.4%、「ない」(54.1%)とWスコア以上の差がある。現時点では世論は合流問題に冷ややかである。まずは、今通常国会で、野党共闘をさらに強め、野党間の信頼関係を高めつつ、国民の信頼を勝ち取ることが求められている。
   
以上3点について論点を述べたが、次に合流の判断が求められるのは、解散総選挙が近づいた時、早くとも東京五輪・パラリンピック後と考えられる。このことは社民党としてはていねいに議論する時間ができたとも言える。「合流」問題をめぐって、全国的に社民党の存在意義や強化について、かつてないほどの討論が行われている。統一と団結を基本に、討論の深まりによって「日本に社会民主主義(的)勢力を残し、拡大する」結論が導き出されることが求められている。
   
協会としては、上記の論点の研究・調査・討論を深めるとともに、マルクス主義に基づき現代資本主義の分析を行い、その根本原因を明らかにすると同時に、有権者に共有してもらえる改良政策について調査・研究・提言することに全力をあげねばならない。
   

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