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●2019年9月号
■ 野党共闘を院内外から深化させよう
     小笠原 福司

   

■1. はじめに

参議院選挙を終えて、「安倍政権と違うもう1つの選択肢を国会論戦を通じて訴えていけば、今の政治状況を大きく変えることができる」「野党がばらばらでは、巨大な与党には対抗できない」との立場で、8月20日立憲民主党(以下、立憲と略す)の枝野幸男代表と国民民主党(以下、国民と略す)の玉木雄一郎代表との会談がもたれた。
   
そして、衆参両院で統一会派を結成することで合意をした。衆院では、野田佳彦前首相が代表を務める「社会保障を立て直す国民会議」も加わる見通しと報道されている。
   
6年半を超す長期政権のおごりと緩みは明らかで、強引な国会運営や公文書の隠蔽、改ざんなど、立法府をないがしろにする振る舞いが続く。森友・加計問題の解明も、全く進んでいない。国会論戦を軽視し、先の通常国会では、野党から予算委員会の開会要求に応じぬまま、参院選になだれ込んだ。こうした暴挙、民主主義の蹂躙が続く中で、今回の統一会派を組む目的として、真っ先に「行政監視という野党としての役割を果たす」(枝野、玉木両代表)ことを挙げた。そして、憲法の規定に基づき、臨時国会の早期招集を要求し、本格的な論戦を挑むことが問われている。
   
   

■2. 安倍政権下における統一戦線の発展を辿る

さて、参議院選を終えて「1年以内に衆院選挙が……」と取り沙汰される昨今、政権交代を視野に入れた統一戦線、野党共闘の深化が問われる。第二次安倍政権下における統一戦線運動の発展、すなわち4年間に亘る野党共闘の構築の努力から何を学ぶのか、以下述べてみたい。
   
その焦点は、九条改憲に向けた「戦争法の成立」、なし崩し改憲を安倍政権が策動してきたことにある。14年7月の「戦争法案」の閣議決定を受け、12月非共産党系(平和フォーラム、戦争をさせない1000人委員会)、中立系(解釈で憲法九条を壊すな――実行委員会)、共産党系(戦争する国づくりストップ――憲法を守り生かす共同センター)の3団体を中心に協力団体も含めて約30団体で、14年12月、共闘組織である総がかり行動実行委員会が発足をした(日本の社会運動の歴史の中で、3潮流の共闘は画期的なことであり、確実に新しいステージに入った――総がかり行動実行委員会 共同代表 福山真劫氏)。
   
福山氏の提起にあるように、3団体を中心に約30団体の国会前の共同行動が、当時の民進党をも行動に参加させた。そして、連合も国会周辺で集会を開催するまでに発展した。まさに「憲法九条改憲を許さない」幾百万人もの大衆の力が「新しいステージ」をつくったのである。
   
そして、総がかりと連帯して闘った5団体(学者の会、立憲デモクラシーの会、ママの会、シールズ、総がかり実行委員会)が、15年12月、戦争法案反対運動を経て、政党との連携を求めて、市民連合を発足させた。この市民連合の画期的なことは、日常の大衆運動は当然としても、選挙闘争で共産党を含む野党共闘をつくりだしたことである。そして、16年の参議院選挙(11勝21敗)、17年の衆議院選挙を戦い、今次7月の参議院選挙において市民連合が仲立ちとなり、4野党1会派による「13項目の共通政策」を掲げて戦うまでに発展したことである。
   
そこで、統一戦線を支える主体の労働運動、とくに連合内外における運動の現状と課題について考えて見たい。これは、「総評解体、連合発足」にあたって我々の総括として「連合内外から総評労働運動の継承・発展をめざす」としてきた実践の総括、1つの考察でもある。
   
まず連合「外」における運動、すなわち総がかり運動の到達点、発展として注目すべき点は、「平和課題中心の運動から、貧困・格差という生活課題に対象を拡大することが、求められています。その取り組みの中にこそ総がかり運動の新しい息吹が確実に見えてきます」(共同代表 福山真劫氏『社会主義』19年2月号)との提起であった(具体化として、共通政策の中に、最賃の1500円、8時間働けば暮らせる働くルールの確立、若い人々が安心して生活できるように公営住宅を拡充する、などが掲げられた)。
   
その中心は旧総評系の産別、単組であり、そこが中心となり共産党系の市民運動、沖縄の辺野古新基地建設反対闘争、脱原発・再稼働反対の闘いなど、安倍政権の政治反動に抗する様々な分野の闘い、運動を1つにまとめあげることに成功をしたといえる。さらに、社民党との連携をもとに野党各党への働きかけ、信頼関係づくりを土台として野党共闘の結集にむけた粘り強い説得、強化に向けた地道な努力が積み上げられてきたことは言うまでもない。
   
平和フォーラムが中心となり発展させてきた「安倍政権下での改憲阻止」の闘いは、言うまでもなくすぐれた政治闘争である。そして、質的、量的な発展を展望して「貧困・格差問題という生活課題へと運動領域の拡大」が目指された。これはかねてからの「課題」とされていたが、総評解散、連合発足時の「平和運動に限る」との不文律から中々踏み出せないことであった。
   
がしかし、これもまた客観的情勢の深化によって、「貧困・格差問題と平和憲法を守ることは一体」(護憲闘争の幅を広げる役割)との認識の共有化が中央指導部段階では図られたということではないだろうか。そして野党共闘という国民的な広がりを追求する中心的役割を担っている。これが連合「外」における発展の特筆すべき内実といえる。
   
さて、連合「内」はどうか。昨年の国会で出された「働き方改革」を巡る闘いから考えてみたい。裁量労働制の拡大については敵失もこれあり提案されなかった。時間外労働の上限規制は、民間大手が800時間から900時間の協定を結んでいる現実などを背景として、不本意な上限規制(「過労死ライン」を法律が超える)の成立に連合は内部の反対がありながらも賛成をした。高度プロフェッショナル制度については年収条件をつけて強行採決をされたが、年収条件の引き下げで連合傘下の大半の労働者が対象になるとの危機感もあり、「職場で導入をさせない闘いを組む」とこだわる姿勢を堅持している。
   
そして、この「働き方改革」をめぐる攻防を通して浮かび上がったのが「36協定」の点検・見直しという課題である。認知度が4割程度、そのうち締結も半分程度と「過労死」「過労自死」の規制、撲滅には程遠い実態が明らかになった。連合は、19春闘から「36協定」の点検・見直し、そして社会的に認知を広げる運動の展開を始めた。これを意識的にタダ働きをなくし、過労死の防止にもつなげることである。さらにこの広がりは4月から施行された不本意な「時間外労働の上限規制」を空洞化させることになる。これは、「職場の労働実態の調査・点検」抜きには進み得ない。いわゆる「合理化」に反対するかつての職場闘争の手がかりになるといえる。また、この「36協定」の点検・見直し運動は、労働3団体の共闘として取り組みも進みつつある。さらに深化が求められている。
   
独占資本の生き残りをかけた国内外における熾烈な「合理化」競争は、労働者への搾取強化を必然的に伴いながら今後も止むことなく続く。それはまた今まで以上に広範な労働者が立ちあがらざるを得ない客観的条件をつくりだす。無論、簡単には進まないが、そうした視点で連合「内」における運動の強化を通して、野党共闘の主体強化につなげる意識性こそ求められているのではないだろうか。
   
   

■3. 野党共闘の深化をどう図るのか

はじめにでも述べたが、立憲、国民、「社会保障を立て直す国民会議」の衆参における統一会派の動きに対して、自民党からは「数合わせの野合」「基本政策の違いの棚上げ」など、安倍首相が参院選の遊説でも主張していた同様の批判が出されている。マスコミ各紙の論調も似ている。
   
しかし、参院選で4野党1会派は「13項目の共通政策」を結び、国民に提示した。これを土台として統一会派を軸に国会内の論戦を堂々と自公政権に仕掛けることができる。大切なことはぶれずにこの「13項目の共通政策」を財源の裏付け含めて深化させ、自公政権に対峙する論戦を国会で行い、国民に野党共闘の可視化を促し、「もう1つの選択肢」を提示することである。
   
さて、今号の特集で全国各地から参院選を戦った報告が掲載されている。それに学びつつ8月号に続いて野党共闘の深化に向けた問題意識を以下、述べたい。
   
1つは、マスコミ各紙でも分析されているが、1人区で野党共闘の組むことによる相乗効果である。朝日新聞の7月24日付では、「野党共闘効果 票数1.14倍」との分析を掲載している(野党の比例獲得票の合計よりも、統一候補の票がどれだけ多いかの分析)。勝利した10選挙区の平均は127%。その力は無党派の6割以上の支持を得、さらに自民、公明の支持者にも食い込んでいるとのこと。もう1つは、競り勝ったところでは全国平均の投票率よりも10%〜15%前後高かったことである。自公に対して対抗軸を明確に示すことで、県民の政治参加を促している。別稿、秋田の「イージス・アショア反対の声を響かせる」の報告はまさにその代表である。
   
2つには、全国的に共通しているぶつかりとして、「共産党との共闘は出来るのか」という点である。特に、地方においては当然連合が野党共闘の仲立ちとなるが、旧同盟系の産別においては、「共産党とは同席出来ない」と頑なな態度が依然として多いとの報告である。
   
そこを突破した報告に学ぶと、支持産別の思惑を乗り越える県民の支持、声の広がりということにつきる。県民、支持者の声(背景にある実態と要求)こそ野党共闘成立の条件であるし、そこに依拠することで結集も出来るし、広がりもつくり出せることが学べる。その意味で、旧態依然とした民間大産別の思考(企業主義)、態度(独善的)は百害あって一利無しである(県民からすれば自民党の強権政治となんら変わらない)。
   
3つには、いわゆる1人区の激戦と分析されていた選挙区では、安倍首相、菅官房長官を始めとして「大物」、「人気者」が一度ならず二度、三度選挙応援に入った。それに対して野党共闘側はあえて候補者本人が前面に出て、なおかつ普通の県民・市民がマイクを握って、自分の言葉で応援をする選挙戦が展開されている(余談だが、安倍首相が二度も入った選挙区では、自民支持の聴衆は動員できても、勝利につながってはいない)。これは、マスコミが報道している「選挙戦術」の問題ではなく、政治離れ、無関心層の増大による民主主義の「危機」が叫ばれる中で、克服に向けた1つのあり様を教えている。
   
このスタイルが「自らの問題として政治参加を促す」流れを呼び起こしている(「れいわ」の無党派層への浸透、広がりという教訓も同様ではないのか)。無論、候補者が地元に密着した人。県下をくまなく回り、県民の要望、声、実態に触れ、「上から目線」「札束でほっぺたを叩く」などという姿勢とは真逆で、寄り添い「不平・不満、喜怒哀楽」を共有しつつ支持を訴えている。こうした候補者の発掘も求められている。
   
最後に、1人区の激戦を戦い抜いた県からの報告で共通しているのは、「数年間に及ぶ県段階での野党共闘の積み上げ」が土台となって、今次参院選での勝利につながっていることである。前述したが、「院内における野党共闘」の闘いと一体となった院外の野党共闘運動を中央と連動しつつ、どう各県段階で組織化をするのか、という課題が突き付けられている。
   
無論、各県段階における野党共闘運動の形態の統一をということではなく、全国的に共通した運動課題を前に出しつつ組織形態は県段階のこれまでの歴史、運動を踏まえて組織化をする以外にない。大切なことは「運動を前に出した野党共闘」の組織化ということである。そのことが戦線への結集、強化の基本だということが学べる。
   
   

■4. 社民主義政党、勢力の結集と強化

最後に今後の政治闘争の局面は、「政権選択」としての衆院選をどう戦い、安倍政権を打倒するかである。安倍政権の任期は後2年ばかりだが、昨今では「12月にも解散総選挙が……」などという報道もなされている。本来安倍首相には「解散権」なるものはないが、これをチラつかせつつ政権への求心力を維持する策動ともいえる。
   
これに抗して野党は院内外の共闘体制をどう強化しつつ、困難を極めるが全国289ある小選挙区の統一候補者づくりを進めなければならない。また、述べてきたが「13項目の共通政策」をさらに具体的に絞り込み、安倍政権に代わりうる「連立政権政策」を策定しなければならない。
   
その基本は、「13項目」に示されているが、ポストアベノミクスとしてまさに社民主義的政策と言っても過言ではない。この4野党1会派の共通政策から「連立政権政策」へと発展させるには、今日的には社民主義思想が背骨となる必要がある。それは、この間本誌でも度々取り上げられてきたが、現代資本主義の経済・社会システムがもはやこの国の存続をも脅かす事態を招いているからである。
   
一言でいえば、「あらゆる階級、階層の生存の不安定性の増大、そして平和への危機」を惹起させ、人間らしい雇用、賃金・労働条件の保障、将来にわたる安心の社会保障の拡充、また非正規労働者、低年金生活者に代表される最低限度の衣食住と文化などを享受させることが出来ない「現代資本主義の行き詰まり」が根底にある(より本質的な問題は、有り余る富の中で、その富を有用に使えない矛盾。「豊富の中の貧困」という事態が誰の目にも明らかになりつつあり、この社会そのものを問題にせざるを得ない客観的条件の深まりが見てとれる)。
   
この状態から我々は出発し、経済、政治の分野における様々な改良の闘いを積み上げ、野党共闘を基盤とした連立政権下における政治の経験を通して、「格差、貧困、二極化、将来不安の増大」のない平和で、公平・公正な社会を築かねばならない。そうした立場で4野党1会派で共有したのが「13項目の共通政策」であった。それを今次参院選で国民に提示した。その責任は大変重いものがある(何処まで自覚されているかは図りきれないが、筆者の13項目から政権政策を絞り込むべきという主張は、前述した受け止めによるものである)。
   
この社民主義的政策の実現には、その中心となる社民主義政党の存在が不可欠である。今日的に言えば、立憲、社民、共産がその極に位置するといえる。但し、これまでも幾度となく経験してきたが、資本主義の「危機」が深まれば深まるほど、その「危機」を糊塗し、資本主義の存続を意図する政党づくりが行われてきた。この度も立憲と国民、「社会保障を立て直す国民会議」の統一会派によって、社民主義的要素が薄められ、中道「保守」政党(独占の戦略は、保守二大政党制、あるいは穏健な中道「保守」政党の育成ということではないだろうか)への誘導という攻撃が内外から強められることへの注視が必要と思われる。
   
そう捉えるならば、連立政権の背骨を社民主義思想とするためには立憲、社民党、共産党の果たすべく役割はますます重要となる。その意味で、今後の局面はこれまで以上に社民主義政党、勢力の結集、強化が大きな課題とならざるを得ないと思われるがどうだろうか。
   
最後に、野党共闘の深化とそれぞれの党の主体性の強化をどう統一的に図るのかという課題である。具体的には統一候補の当選を勝ち取る戦いに全力を挙げつつ、比例票の拡大による議席増をどう勝ち取るのかである。
   
全国の先進的教訓では、統一候補の必勝に向けて黒子に徹して戦うことで信頼が勝ち取れると報告されている。無論、連立政権の共通政策実現に向けた各党の果たすべく役割を明確にすることが大前提である。その意味では、野党各党の独自政策の深化も問われている。
   
さらに職場、地域に最も近い自治体議員の配置である。一言でいえば、「地方自治の確立」に向けた日常活動を通して信頼と支持を勝ち取ることである。
   
そして、これが発展、強化に向けた試金石になるが、これらの活動を支え、担う党員の拡大と組織化である。苦言を述べると立憲の県・市段階の党員は議員のみ、他はSNSで本部とつながる立憲パートナーズという組織論で、野党第一党と言えるのか。政権を取り、担うと言えるのか、大いに疑問である。より情勢が深まれば早晩この課題が支持者、支援者から問われることになる。
   
(8月22日)
   
   

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