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●2019年8月号
■ 第25回参議院選挙を終えて
     小笠原 福司

   

■1. 選挙結果の特徴―改憲勢力の3分の2阻止

まず確認したいことは、7月21日、第25回参議院選挙の投開票の結果、与党が改選過半数を確保したものの、自民党、公明党、日本維新の会など改憲勢力は、国会発議に必要な3分の2を維持できなかったことである(改憲勢力の得票率の合計は58.22%で4議席届かなかった)。
   

(図表1・クリックで拡大します)
   
今参議院選挙の最大の焦点であった、「改憲勢力の3分の2阻止」に向けて、16年に引き続いて全国32の1人区すべてに「統一候補」を擁立した立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党、衆院会派「社会保障を立て直す国民会議」(以下、「5野党・会派」と略す)による野党共闘が、3年前の11議席には及ばなかったが、10議席を獲得し一定の効果を発揮したといえる。
   
安倍首相は福島での第一声から改憲を前面に押し出した街頭演説を繰り返し、かつてなく改憲が争点となった選挙であったといえる。その意味でも5野党・会派を中心とした戦いによって、「改憲勢力の3分の2阻止」を勝ち得たことのもつ意味は大きなものがある。無論、それは本格的な戦いの前哨戦でしかない。
   
2つには、「与野党ともに敗北を喫した」(朝日・社説、7月24日)と分析されているが、今回の参院選の投票率は48.80%となり、1995年の44.52%に次ぐ、戦後2番目の低さとなった(全国20選挙区が戦後最低を記録した)。候補者のすべての得票の合計を棄権が上回ったことになる。
   
安倍首相は「国民の皆様からの力強い信任を頂いた」と胸を張るが、自民党は選挙区の改選数74のうち5割にあたる38議席を獲得したものの、棄権した人を含む有権者全体に対する絶対得票率は18.9%と、第2次安倍政権下でのこれまで5回の国政選挙の絶対得票率は2割台で維持してきたが、今回初めて2割を割り込んだ。しかし、議席占有率は5割を超えている。
   
「安倍一強」のもと、多様な民意に向き合おうとしない強引な政権運営が続いていることと無縁ではない。今参院選にあたっても、国会論戦を回避し、「老後2000万円報告書」など不都合な現実にはふたをして、「安定か、混乱か」と、6年前以上の民主党政権をあげつらい、重要な政策について丁寧に国民に問いかける姿勢はほとんどみられなかった。
   
野党側も32の1人区で統一候補を擁立して、一定の効果はあったが、共通政策に基づく明確な争点をアッピールできず、より多くの有権者を糾合するうねりを起こせなかったことの反省、野党共闘の深化が問われている。
   
「与野党の区別なく、代議制民主主義の基盤を掘り崩す深刻な事態と受け止めるべきだ」との指摘が共通して識者から出されているが、まさに的を射ていると言える。
   
特筆すべきは、4月に結成された「れいわ新選組」(以下、「れいわ」と略す)が2議席を獲得し、政党要件を確保した。「40歳代以下の支持者が6割を超える」との分析。「格差、貧困」に焦点をあて訴え、既成政党への不満・批判の受け皿となったことは間違いない。なお、NHKから国民を守る党が1議席を得た。政党要件を満たさない諸派が比例で議席を得たのは現行制度では初めてである。
   
3つには、各種調査からみる民意の動向である。朝日新聞が21日に全国で実施した出口調査の分析では、比例区は自民が分厚い支持層をまとめ、無党派からの一定の支持を、特に20代から30代の若者から受けている。一方の野党は、比例区では無党派層の支持が分散。1人区で競り勝った統一候補は、無党派層を取り込んでいる。
   
立憲民主党(以下、「立民」と略す)は無党派からの支持は自民にほぼ並び、議席の大幅増につながった。共産党(以下、「共産」と略す)は前回よりも減らした。日本維新の会(以下、「維新」と略す)は前回のおおさか維新の会と同程度。社民党(以下、「社民」と略す)は前回と同程度だった。なお、社民は改選議席1議席を獲得し、政党要件である比例代表の得票率2%をわずか0.1%上回り政党要件を確保した(17年衆院選は1.69%)。比例の歩留まりは、国民民主党(以下、「国民」と略す)と同様に7割だった。
   
32の1人区では秋田、沖縄、愛媛など野党統一候補が勝利したが、いずれも無党派層、さらには公明党(以下、「公明」と略す)、自民党(以下、「自民」と略す)層にまで食い込んでいることがわかる。また、前述したがれいわが無党派層に限ってみると、10%を取り込んでおり、公明、国民、共産、社民を上回っている。ただ、無党派層の支持は自民、公明は前回の参院選から大きく変わってはおらず、比例区でれいわが支持を広げた背景には、他の野党支持層からの流入があったとみられる、との分析である。ここでも野党の無党派への働きかけ、政策の響き(特に、実態と思いの共有化)含めて問われていたと言える。
   
   

■2. 参議院選挙の争点と引き継ぐ課題

参議院選挙の争点は、何であったのか。そして、与野党の主張から今後の課題について考えてみたい。
   
1つは、公的年金だけでは「老後資金が2000万円不足する」とした金融庁ワーキンググループの報告書問題を発端に、公示直前に争点として急浮上した年金問題である。野党は報告書を受け取らないとした安倍政権の対応に批判を強め、「減らない年金」「最低保障年金の確立」「マクロスライド制の廃止」(年金の給付水準を自動的に抑制する)、自分で将来の年金を積み立てる制度への移行などを訴えた(残念ながら5野党・会派としての共通政策としてはまとまってはいない)。
   
安倍首相は、「この6年間、経済政策によって、雇用は380万人増え、年金の支え手が400万人増えて、保険料収入は増えた」とアベノミクスの「成果」と絡めて主張した。そして、「打ち出の小づちはない」と現行制度への理解を求めた。その内実は、増えた働き手のうち55%はパートやアルバイトなど非正規で働く人々が占める。そのうち75%が年収200万円未満である。「この国から非正規という言葉を一掃する」と安倍首相は何度も訴えてきたが、役員を除いた働き手に占める割合は18年平均で37.9%となり、過去最高の水準になっている。
   
その内実は、年金では生活できない高齢者と、「高すぎる学費、親の収入源」でアルバイトをせざるを得ない学生の増加である。
   
今後の課題としては、雇用破壊、劣化を改善することによって、真の意味での「年金制度の支え手」になることである。その為には非正規雇用から正規雇用への転換、中小民間に働く労働者の賃金の底上げ(大手と中小の公正取引の実現)、さらには最低賃金の当面全国一律1000円、出来る限り早い時期に1500円にするなど。また、年金制度の改正によって「最低保障年金」の創設と「減らない年金制度」への改正が求められている。その詳細は、別稿の伊藤周平氏の論文を参照頂きたい。
   
2つには、消費税の増税問題である。この間、財務省を中心に、「増え続ける社会保障費を賄うには財源は消費税しかない」と繰り返し宣伝されてきた。「消費税の社会保障財源化」が明確に打ち出されたのは、2012年の「社会保障・税一体改革」(民主党政権のもと)であった。
   
参議院選挙でも、「国民年金保険料の未納問題」(将来の低年金・無年金者の増)「非正規労働者と無職者の増大」(雇用が不安定で低賃金だが、保険料は定額のため逆進性が強く、納付が原則で未納・滞納が多くなる)など、雇用の劣化と密接に関連していることが浮かび上がった。
   
さらに、「社会保障の費用の大半を借金で賄っている」かのように説明されるが、国債を含めた歳入全体から支出され、所得税や法人税などの税収によっても賄われている。なのに消費税収を用いるということは、これまで社会保障に充てられてきた法人税収や所得税収が浮くことを意味する。つまり、消費増税分の大半は、法人税や所得税の減税などによる減収の穴埋めに使われたことになる(詳細は、『世界』八月号、伊藤周平氏の論文を参照のこと)。
   
参院選で論戦にもなったが「応能負担原則」「最低生活費非課税原則」にもとづき、社会保障の主要な財源は、累進性の強い所得税や法人税などに求めるべきで、大企業、富裕層への課税を強化する税制改革が必要となる(野党の13項目の共通政策にもある)。
   
3つは、憲法改正である。安倍首相は、「衆参の憲法審査会において議論がされないことは、国会議員として職務の怠慢である」とまで主張し、改憲議論の土俵に引きずり込もうと野党批判を強めた。
   
「憲法違反の安保法制が強行採決され、現に存在している。今の違憲状況を棚上げにしておいて、『その条文を変えます』は、これこそ無責任な議論の仕方だ」(立憲民主党・枝野幸男代表、7月3日党首討論会)。「『議論しません』と主張する政党はあまりないのではないかと思います。そうした分け方を設定しても、有権者にはいまひとつ響かないのでは」(公明党・山口那津男代表、7月1日)と疑問を呈した。
   
憲法審査会が動かない責任は誰にあるのか。安倍首相は17年5月、改憲派の集会にメッセージを寄せ、自衛隊の九条への明記と、20年施行を主張した。18年11月には、下村博文・自民党憲法改正推進本部長がテレビ番組に出て、「率直に議論さえしないなら、国会議員としての職場放棄ではないか」と野党批判。今年の4月には、萩生田光一・自民党幹事長代行がインターネット番組で、「(天皇陛下の)ご譲位が終わって新時代になったから、少しワイルドな憲法審査を進めていかないといけない」と述べ、議論すべき前提を自らが壊し、野党の猛反発を招いた。
   
では、「議論を重視」と主張する安倍首相はどうであったか。政府は15年秋、野党の臨時国会の要求に対して、外遊日程などを理由に見送った。17年9月、臨時国会召集日に衆院を解散。所信表明や代表質問、審議などは行われず、「森友・加計の疑惑隠しだ」と野党は抗議した。いずれも安倍首相は議論をさけ、憲法で義務付けられている国会での説明責任を果たしていない。
   
さらに、今年6月末までの通常国会では、予算成立後に予算委員会が開かれないまま閉会した。いわゆる「老後の資金問題」、秋田・山口へのイージス・アショア設置問題など国民生活と命に係わる問題での議論を放棄してきた。その政府・与党の姿勢こそ問題だといえる。
   
共同通信の出口調査では、「安倍晋三首相の下での憲法改正」について、反対が47.5%、賛成が40.5%。政党支持別で見ると、「反対」は自民党が18.1%、公明党は39.6%、日本維新の会でも「反対」が48.3%と「賛成」と拮抗している。安倍首相は争点化を図ったが、有権者の理解は進まなかったといえる。
   
いずれにしても、「改憲勢力が3分の2を割った」こと事態が、「改憲の議論を国会で最優先課題としてすべきものではない」ことを教えている。選挙戦でも野党が主張していたが、「現憲法が守られているのか、守らせることが政治の役割」ということにつきる。
   
   

■3. 今後の政局と課題を考える

図表2は朝日新聞が22、23の両日、全国世論調査(電話)を実施したものである。安倍首相に一番力を入れてほしい政策を5択で聞くと、「年金など社会保障」が38%で最も高く、「憲法改正」の3%が最も低かった。比例区で自民に投票したと回答した人に限っても、「社会保障」が39%で、「憲法改正」は4%だった。そして、「改憲勢力」の議席が、改憲発議に必要な3分の2に届かなかったことには、43%が「よかった」と答えた。「よくなかった」は26%だった。安倍政権のもとでの憲法改正には「賛成」31%で、「反対」46%を下回った。
   

(図表2・クリックで拡大します)
   
選挙の争点の項で述べたが、「安倍政権下における改憲反対」の再確認と同時に、3000万人署名運動のさらなる強化、社会保障の改革(税制改革含めた財源の裏付け含む)、消費増税の当面凍結などの主要な課題について5野党・会派の共通政策の中身の具体化と同時に、院外の大衆運動の組織化が急がれる それを裏付けてもいるが、安倍首相が進める政策には「不安の方が大きい」が55%で、「期待の方が大きい」32%を上回った。前回16年の参院選後の調査で同じ質問をした際の「不安」48%、「期待」37%と比べても「不安」が増えている。それだけ国民の生活、将来不安、窮乏化は深まっていることが分かる。
   
野党については、与党に対抗するため、「できるだけ1つの政党にまとまった方がよい」が37%、「別々の政党のまま協力する方がいい」が50%と、野党共闘のさらなる進化への期待が見て取れる。
   
2つには、5野党・会派を軸とした野党共闘の深化である。安倍首相は22日の選挙結果を受けての会見で、「憲法改正案の策定に向かって……強いリーダーシップを発揮していく決意だ」と21年までの任期中に強い執念をみせた。前述したように、世論は「安倍政権下での憲法改正」について反対が多数を占めていて、前述したように年金など社会保障、教育・子育て、景気・雇用である。
   
5野党・会派は、参院選に向けて13項目の共闘政策で合意し、国民に示した。問題はこの重点政策を財源の裏付け含めてより具体化する作業が求められている。それは、野党第一党の枝野代表も選挙後の会見で述べられていたが、衆院選挙に向けた政権選択の重点共通政策に深化させることである。そして、その政策にもとづく院内での改革に向けた自公政権との対峙、その前進を後押しする院外における大衆運動の組織化である。同時に衆院選にむけて289ある小選挙区での候補の一本化を進めなければならない。
   
最後に、野党共闘の深化をどう図るのか、問題意識を延べさせて頂く。一言で言えば、「国民からの信頼をどう得るのか」につきる。そのための課題と思われる点について以下述べる。
   
1つは、れいわの山本代表を中心とした訴え、活動に学ぶべき点があるのではないだろうか。それは、国民の働き様、生き様の実態にふれ、そこに立つことである。結党から4カ月余りで比例2議席の確保、その中心は40代以下の支持者である。就職氷河期の世代、奨学金の返済金を背負って社会にでた若者、ワーキングプアと称される年収200万円以下の若者など格差、貧困の真っただ中に追いやられている人たちに、人間の尊厳、労働者としての誇りを呼び起こす活動の組織化である。その思いに寄り添い、「自己責任」ではなく、社会の責任、問題とする共通認識を深める取り組みである。
   
2つには、前述したが5野党・会派(れいわも入れば6野党・会派)の重点政策を掲げて、例えば中央のみでなく全国的なキャラバン、行脚を行い、国民との対話を積み上げることである。そのことで「共通政策に魂を入れる」ことが出来るのではないだろうか。それは、また国民の中にもう1つの選択肢として野党共闘=5野党・会派の可視化を促すことになる。
   
3つには、野党共闘の中における立民、社民を中心とした社民主義的勢力の結集、強化をはかりつつ、迫りくる改憲への動きに対抗して、「改憲阻止」勢力の幅広い戦線の構築に向けた努力を生まずたゆまず積み上げることである。
   
そうした努力を通して安倍政権打倒にむけた主体を強化することである。その客観的条件は独占資本と安倍政権そのものがつくりだす。
   
(7月24日)
   
   

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