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●2018年9月号
■  統一地方選、参議院選に向け準備を
     吉田 進

   

■ 政治の劣化・腐敗

7月22日閉会した通常国会は、国民にとってストレスの溜まる内容であった。森友・加計学園問題では、「誰が嘘をついているのか」が焦点であった。国民が求めたのは、「嘘をつかないこと」「真相究明」であったが、安倍首相は「丁寧な説明」という言葉を繰り返しただけであった。「公正」「公平」であるべき行政が歪められたのではないかという国民の疑問には何一つ答えなかった。噛み合わない議論は、国会や政治そのものの信頼を著しく低下させた。そして、終盤では「数の力」で、「働き方改革関連法案」「カジノ法案」「公職選挙法改正案」などの重要法案を次々と強行成立させた。
   
こうした政治の劣化・腐敗を生み出した原因は、「一強」と言われる安倍内閣にあることは言うまでもない。「一強」はある種の「独裁」であり、そこに首相周辺の意を酌んで動く「忖度」が生まれ、「隠ぺい」「改ざん」「虚偽答弁」へとつながっていく。財務省、防衛省、文科省などの不祥事に対して、安倍首相は「うみを出し切る」と言いながら全く不誠実な態度に終始し、国会閉会後も問題は次々と出てくるありさまである。
   
まとまり切れない野党にも責任がないとは言い切れない。「数の力」がモノを言う国会運営であることは理解するが、野党がまとまって大きな世論を作っていくような戦術もあり得るはずだ。しかし、それを壊すかのような一部野党の対応もあった。先の総選挙で、自己保身のため道を誤り希望の党へ走った旧民進党議員は、その総括・自己批判をしない限り支持を取り戻すことはできないし、前には進めないのかもしれない。
   
また、メディアの責任も大きい。「森友・加計問題以外にも議論すべき課題があるはずだ」「審議拒否は良くない」というような論調は、結果的に安倍政権に救いの手を差し伸べているようなものである。政治が腐敗し、「自浄能力」を失った巨大与党に対して、「徹底抗戦」以外の対応などあるはずがない。官僚の「忖度」と批判しながら、一部メディアも政権に「忖度」していると見られても仕方がない。不正・疑惑等に対して徹底究明するというメディア本来の姿勢を貫くべきである。
   
   

■ 国会運営の横暴

重要法案はほとんど審議が深まらず疑問を残したまま強行採決され、国会運営上の大きな汚点を残した。
   
とりわけ乱暴だったのは、衆議院の定数を6増やす公選法改正である。あからさまな党利党略の法案であった。「1票の格差」を是正する抜本改革とは相反する。こうした問題は与野党の幅広い合意形成が絶対条件であり、多数政党がみずからに都合の良い制度を作るようでは民主主義の土台が崩れてしまう。
   
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案も多くの疑問が残ったままである。この法案に関しては、のちに「間違いだった」と批判されるのは目に見えている。これから決まる政省令などのルールが遵守される保証はなく、犯罪の増加、反社会勢力の介入などの懸念も残る。安倍首相は、「成長戦略の目玉」だと言うが経済効果に否定的な見方も多いし、カジノが「成長戦略の目玉」ではあまりにも情けない。「賭博」を容認する法律を作り、一方でギャンブル依存症対策に取り組むというのは、どう考えても矛盾している。
   
働き方改革関連法案も同様である。そもそも「過労死」が社会問題となるなかで時間外労働の規制が検討されたが、適切な基準だとは到底思えない。また、一部の専門職を労働時間規制の対象から外す高度プロフェッショナル制度も、経済団体が高く評価していることからして、この先対象を拡大していく狙いが見えてくる。また、この法案は審議過程で明らかになったが、厚生労働省の提出したデータが全くずさん(一部は恣意的利用)であり、法案の根拠さえ疑いたくなる内容であった。さらに、導入要件など肝心な点は今後、労働政策審議会等、国会の関与なしで決められることになっており禍根を残した。
   
今後の政治日程は、秋の臨時国会、年明けから始まる通常国会、4月の統一自治体選挙、7月の参議院選挙と続いていくが、まさに重要な時期を迎えている。
   
   

■ 朝鮮半島の緊張緩和とイージス・アショア配備

東アジアとりわけ朝鮮半島をめぐる情勢は、歴史的な転換点を迎えている。日本政府やメディアは、「非核化」の進展を疑問視するような態度をとり続けているが、朝鮮半島の緊張が半年余りで一変したことを素直に評価すべきである。あたかも朝鮮半島の緊張が続いた方がいいかのような安倍政権の態度は、大きな流れのなかで、日本だけが「蚊帳の外」に置かれてしまうことになりかねない。「拉致問題」では日本が「被害国」であるが、過去の植民地支配に関しては日本が「加害国」であることを自覚し、日本が東アジアの安定・平和にどう関わっていくのかが問われている。北朝鮮に「非核化」を求めるならば、筋を通して国連の「核兵器禁止条約」を批准すべきである。
   
米軍と自衛隊の一体化、5.3兆円にまで膨れ上がった軍事費について、政府は「北朝鮮の核・ミサイル開発に備えるため」としてきたが、朝鮮半島情勢は大きく変化している。もはや、前提が崩れているにもかかわらず従来の方針を変えようとせず、むしろ拡大・強化しようとしている。
   
とりわけ、地上配備型迎撃システム(イージス・アショア)の配備は、米軍と自衛隊の軍事一体化をさらに進めるという戦略的意図を持つものである。政府は、昨年12月に2基導入を閣議決定しており、秋田県と山口県に配備するとしている。しかし、秋田県や山口県萩市は、「イージス・アショアが逆にテロの標的になるのではないか」という懸念から配備反対を政府に申し入れている。
   
防衛省は当初、1基800億円と発表していたが、搭載ミサイルを含めた総額は維持費等含め4600億円を超えるとみられる(18.07.31朝日新聞)。莫大な費用とともに、前提であった朝鮮半島の情勢が大きく変化していることも踏まえ、イージス・アショア配備反対の運動を全国から強化しなくてはならない。
   
   

■ 正念場の参議院選挙闘争

9月の自民党総裁選挙では安倍首相が三選を果たし、最後の力で改憲に突き進むことはほぼ間違いない。これに歯止めをかけられるかが参議院選挙の最大の争点である。
   
第一に、野党共闘である。長野県(定数1)においても動きが始まっているが、「1対1の対決構図にしなければ勝てない」という点は野党各党・市民団体の共通認識になりつつある。これに反する対応をした政党は、「利敵行為」と批判され県民から見放されていくであろう。
   
6月10日投開票の新潟知事選挙は、「市民と野党の共闘」で戦った池田千賀子氏と自民・公明が推した花角英世氏の一騎打ちとなった。しかし、徹底的な「争点隠し」、相手候補を誹謗する悪質なデマ宣伝、のべ148人にのぼる国会議員投入などを背景にした自公候補に惜敗した。本年2月の名護市長選挙も同様であったが、定数1を争う選挙において野党共闘をしても厳しい状況が生まれている。「1対1の対決構図」でようやく互角の戦いに持ち込めるというのが現在の力関係であり、候補者一本化は最低限の絶対条件である。
   
昨年の衆議院選挙では、希望の党が野党共闘を壊す役割を果たした。来年の参議院選挙にむけては、再び国民民主党などを利用して野党の分断を図ろうという安倍政権の狙いは明らかである。それは、先の通常国会において随所に現れた。つまり、野党が候補者を一本化して戦えるのか、それを分断できるのかという与野党の攻防はすでに始まっていると見なくてはならない。
   
第二は、統一自治体選挙との結合である。すべての政党に共通することであるが、4月に行われる統一自治体選挙で結果を出さずして参議院選挙での前進はあり得ない。
   
長野県内でも今年に入って、いくつかの市町村議会議員選挙が実施された。社民党は、4月の上田市議会議員選挙で29歳の新人候補を2回目の挑戦で当選させることができた。直後の中野市議会議員選挙では、新人・元職の2名を当選させた。この選挙は、結果的に無投票となったが、地域での日常的な活動の成果であることに変わりはない。
   
県議会議員選挙については、保守系が議席を取っている「1人区」がいくつかある。また、保守系が独占している「2人区」もある。これらについて、国政選挙と同様に野党共闘で戦うべきという議論が始まりつつある。「安倍九条改憲反対」の候補者をどれだけ作れるのか、他の野党、市民運動との協議を急がなくてはならない。
   
市町村議員選挙への立候補者が減り、定数に満たない傾向が強まっている。立候補者を作れば地方議員を確実に増やせる情勢となっている。しかし、60歳で退職して政治の道を歩みたいが、10数万円の議員報酬では生活できないので諦めて「再雇用」等で働くしかないという仲間もいる。こうした状況を乗り越え、4月の統一自治体選挙と7月の参議院選挙を結合させて戦うことが重要である。
   
第三は、比例選挙である。さまざまな業界・団体・労働組合等から候補者を出し比例票を増やしていくという戦術は与野党問わず変わらないだろうが、従来のような組織の締め付けによる効果は弱まっている。むしろ、マスコミ等による影響が強まっている。このことは、昨年の衆議院選挙で、選挙運動らしいことをほとんどしなかった立憲民主党が県内で20万票を超えたことでも明らかである。
   
比例選挙を取り組む場合、選挙区候補(推薦・支持候補)を持たないのは最悪である。選挙区の戦いをせずに比例選挙だけで得票を伸ばすことはあり得ない。みずからの公認候補を出せば当然のこととして比例票は自動的に積み上げることができる。しかし、公認候補でなく野党統一候補であっても、取り組み次第では一定の比例票を出すことは可能である。「野党共闘に埋没してしまっては比例票が出ない」という意見もあるが、選挙区選挙と比例区選挙は一体であり、野党共闘の中心に座り、存在感をきちんと示すことこそ重要である。
   
第四に、野党共闘のあり方についてである。野党共闘と言っても、各県・地域によって状況が異なる。長野県においては、県段階に「信州市民アクション」がある。県労組会議(平和フォーラム)から共同代表、事務局を出し中心的な役割を担っている。松本市を中心とした地域には「本気でとめる戦争!中信市民連合」がある。各地区(松本・安曇野・大北・塩尻・木曽)の市民団体で構成されているが、労組会議・社民党が加わる「1000人委員会」も重要な役割を果たしている。
   
2つの組織は、ともに「安倍九条改憲反対」「安保関連法、共謀罪法の廃止」「格差是正」を共通目標にしているが、すべてで一致しているわけではない。とりわけ、「自衛隊」「日米安保条約」などでは既成政党とは考え方が異なる。「災害救助などで活躍している自衛隊が違憲なのか」「朝鮮半島が平和になれば日米安保条約はなくてもいいのか」という疑問も出される。改憲問題では、「改憲自体を反対するのか」という意見も多い。市民団体は、「反対」「阻止」と言うような断定を嫌い、「みんなで考えよう」というような訴え方をする。多様な考え方を取りまとめていくのは容易ではないが、粘り強い議論をつうじて幅広い大きな運動が作られていく可能性も高く、昨年の総選挙(長野2区は社民党候補)では大きな力を発揮した。みずからの頭で考え、みずからの言葉で語り、異なる意見にも耳を傾け全体をまとめていく、こうした活動の中心を担っていくという構えがわれわれに求められている。
   
大北地域では、7月に30数団体が参加し、「七夕まつり」を開催した。9回もの実行委員会を積み重ね、「いのちと平和フェスティバル」というスローガンで一致し成功させることができた。「安倍九条改憲阻止など主張を明確にしなければ意味がない」という意見も多かったが、「幅広い人たちとつながることが大事」ということで何とかまとまった。各ブースでの展示、物資販売、メインステージでの音楽発表などで盛り上がった。漠然とした集まりであったかもしれないが、参加団体のつながりは大きな輪になった気がする。改憲阻止にむけての力に必ずなると思う。
   
第五は、こうした運動に対する労働組合の参加状況である。県労組会議を通じて組織的には運動に加わっているが、1人ひとりの組合員の参加はあまり良くない。
   
労働組合の社会的影響力の低下が言われてきたが、市民運動をはじめとする人たちのなかで労働組合の評価が低いことに驚かされた。電力会社の労働組合が原発再稼働を目指していることに象徴されるように、もはや労働組合は企業を守る「利益集団」と見られているのかもしれない。
   
現場組合員も、「組合離れ」の状況にあることは間違いない。仕事の忙しさとともに自己解決の傾向も強まっている。多くの企業、職場では非正規労働者の割合が年々高まっているが、正規の労働者と非正規の労働者が同じ職場で「混在」しているところに大きな問題がある。しかも、非正規労働者172万円、正規労働者486万円(国税庁による16年平均年収調査)というように格差は拡大の一途である。非正規労働者は正規労働者に対し、「あの人たちはわれわれとは違う人たち」と感じている。正規労働者は「われわれは努力して正規労働者になった勝ち組である」というような感覚をもっている。民間、公務員を問わず、企業・職場内で労働者がみごとに分断されているのである。
   
こうした状況を克服することなくして労働運動の再建はあり得ない。当たり前のことかもしれないが、「内向き」の運動を克服するためには、企業を越えた交流が必要である。かつて、総評青年運動は企業内労働運動を克服するための交流活動を積極的に取り組んだ。一部単産からこれをやめさせるための激しい妨害があったが、本質的には経営側の意を受けてのことであった。労働組合の社会的地位を取り戻すためには、原点に立ち返った交流・連帯活動から始めていく以外にないように思う。
   
7〜8月は「非核平和行進」「反核平和の火リレー」などの運動があり、市役所前に集まった若者たちを激励した。以前に比べると若干小規模になっているが、若者たちが集会・デモに取り組んでいる姿を見て少なからず感激した。
   
われわれ自身も労働組合を批判するだけでなく、どう関わりを持っていくのかが問われている。社民党県連合の幹事会でも、支持労組役員を呼んで抱えている課題等を聞く機会を作っている。また、県会共闘を定期的に開催し、県政に反映させる労働組合の要求を議論している。こうした地道な取り組みを通じて支持協力関係を強化していくことが重要である。
   
   

■ 統一自治体選挙・参議院選挙に全力をあげよう

社民党にとって次期参議院選挙はまさに「党の存亡をかけた」戦いである。「比例区で2%以上の得票率確保」は、政党要件を満たす最低限の目標となる。かつて経験したことのない厳しい情勢であることは言うまでもない。しかし、「こうすれば必ず勝てる」というような「うまい手」などない。他の野党との「合流論」をすべて否定するつもりはないが、この時点でそのような議論が出ること自体、危機的状況をさらに加速させるだけである。どんなに厳しくても、出来ることを全力でやり切るしかない情勢である。
   
長野県連合は、「市民と野党の共闘をみずからが担い統一地方選挙・参議院選挙を戦い抜く」という大会方針を決定したが、「野党共闘」「市民と野党に共闘」に積極的に関わり有権者に見える形で存在感を示すことが重要である。また、統一自治体選挙と参議院選挙を一体のものと位置付け取り組むことが大事であることは言うまでもない。支持労組・支持団体等との連携を強めることはもちろん重要である。そして、何よりも全党員・支持者が危機感と決意を共有しあい、一致協力して戦う態勢を作り上げることである。統一自治体選挙・参議院選挙にむけた準備を急ごう。
   
(8月20日)
   
   

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