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●2018年3月号
■ 安倍政権下での九条改憲反対で広範な戦線を
     松永裕方

   

■ 若者の「保守化」と高い棄権率

最近、若者の「保守化」ということがよく言われるようになった。世論調査などの数字はどうだろうか。
   
先の総選挙での共同通信の出口調査によると、比例代表東京ブロックの投票先では、10代の47.2%、20代の42.1%が「自民」と回答。一方、30代〜70歳以上の世代では20%台後半から30%台だった。ANNの出口調査でも、10代の47%、20代の49%が自民党に投票したという同じような調査結果が出ている。
   
朝日新聞の世論調査(17年10月)でも、30歳以下の世代は他の世代と異なり、自民党の次に希望の党を支持し、「改革」を志向し、憲法改正に賛成するものが多い。安倍首相が掲げる憲法九条に自衛隊を明記する改正案についても、全体では「反対」49%に対し「賛成」36%と、反対が上回っているのに対して、18〜29歳のみが、「賛成」49%、「反対」34%と、賛成が上回っている。
   
このように若者の自民党支持率は高く、「保守化」の指摘は当たっているように思われる。従来、「保守」派とは基本的に現体制あるいは現状維持派で自民党に代表され、「革新」派とは現状の改革、変革を主張する人々で、社会党や共産党などを指していた。このほかに「リベラル」という言い方があるが、これは「保守」と対立する概念では必ずしもない。だが言葉の定義はさておき、このように自民党支持が突出して高い若者の状況から、「保守化」というのは当然だが、そう簡単に言えない面もある。「保守」、「革新」の捉え方に、世代間に違いがあるように思われるからである。
   
この点で興味ある調査結果がある。読売新聞と早稲田大学現代政治経済研究所の共同調査(17年7月〜8月)によると、40代以下は自民党と日本維新の会を「リベラル」な政党、共産党や公明党を「保守的」な政党だと捉えている。これに対して、50代以上は、自民党や維新の会を「保守」と捉え、共産党を「リベラル」だと捉えているなど、大きな「断層」が生じている、という。
   
この調査では、首都圏の国立大学院生の次のような発言も紹介されている。
   
「安倍政権の経済政策(アベノミクス)や憲法改正、積極外交、内閣人事局の設置などは今までになく、維新の大阪都構想や地方分権(道州制)など、どちらも改革志向にある。一方、その抵抗勢力である民進党や社民・共産党はリベラルとは逆のところにいると思う」、と。また、自民党政権は、働き方改革やデフレ脱却など、日本の景気や雇用状況を改革しようとしている。官製賃上げなどで市場原理に介入し、長時間労働規制など労働者の権利を守る改革も実行している。安全保障の見直し、消費増税、改憲ですら、若者には「革新」に見えるのに対して、護憲を訴える社民党や共産党は「保守」あるいは「現状肯定派」に見えている、というのである。
   
毎日新聞の特集記事(17年11月13日)でも、安全保障の見直し、消費増税、改憲などを「改革」と捉え、これを主張する自民党が「革新」に見えており、護憲を訴える勢力は「保守」に映っていると指摘している。だが一方では、今の若者には、論争を避ける傾向、不満を口にせず、現体制維持への志向が強いとも述べられている。改善している就職状況が、政権交代で変わるようなことは避けたいという気持ちも、自民党支持になっているという。
   
このように、共通しているのは若者には自民党支持が多いこと、そしてそれは保守支持というより、「改革」への支持という感覚が強いということである。これらの調査では、経済政策も改憲も、安全保障法制も労働法制改革も、すべてが「改革」の言葉で評価され、これに反対することは「保守的」とされる。安倍政権は誕生以来、「アベノミクス」に始まり、秘密保護法、集団的自衛権の行使容認、これにもとづく「戦争法」、さらに労働法制など、矢継ぎ早にことをすすめてきたが、若者にはこれらによって自民党が「改革」派に見え、自民支持の理由になっているのである。
   
さらに、若年層のもう一つの特徴は、選挙の投票率が低いことである。16年の参議院選挙では、全年代の投票率が54.7%であったのに対し、10代は46.8%、20代は35.6%、30代は44.2%となっている。17年の衆議院選挙では、全年代の投票率が53.7%であったのに対して、10代は40.5%、20代は33.9%、30代は44.8%である。20代の投票率は特に低い。
   

■「改革」志向と「現体制維持」

こうして、現代の若者の特徴として、「改革」志向と、他方における棄権率の高さが示す政治的無関心を指摘することができる。政治的無関心というのは、現体制の容認につながるから「現体制維持」派ということもできる。「改革」志向と、「現体制維持」という、相矛盾する傾向が同時に存在するということである。だがこれは矛盾というより、社会の現実の反映であると言ってよい。「改革」志向は、若者が置かれている現状への不満の強さを表している。一方、政治的無関心とは、改革を望んでいても、その実現を託す方法が分からず、また自民党を信頼するに価するとも考えられずに棄権している、と見ることができるからである。
   
だが、保守化と低投票率が示す無関心層の増大は、若者だけの問題ではではない。09年以降に行われた衆参6回の国政選挙の投票率はすべて5割台で、13年以降は5割台の半ばにも達していない。他の先進諸国では見られない低投票率のもとで安倍政権が続き、右傾化が進展しているのである。保守化と無関心層の増大は、若者に限らない日本社会全体の今日的問題点である。なお付言すれば、保守化が進み、教育内容が変わり、労働組合の労働者教育もなくなった中で、若者だけが「革新」的になるはずはなく、問われているのは労働者運動の後退である。
   
いわゆる政治的「無関心層」が動くとき、予想もしない変動が起こることを、すでにわれわれは一度ならず経験している。その最近の経験が、09年の民主党連立政権の誕生である。この政権交代は、小泉「構造改革」が推進した新自由主義的政策への勤労国民の不満と怒りの爆発によるものであった。競争至上主義の新自由主義的政策によって資本の利潤は増大したが、賃金は低下し続け、非正規雇用の増加による雇用の劣化、負担増と弱者切り捨て、貧困と格差拡大等々、社会的矛盾が噴出し、さらに将来不安と閉塞感が社会を覆い、資本主義の非人間性があらわになっていた。こうした中で人々は変革を求めて投票したが、当時の民主党がこの変革の担い手となり、約69.3%という比較的高い投票率によって、政権交代が実現したのである。08年のリーマンショック後に、非正規労働者の大量解雇が起き、無慈悲な「派遣切り」が世間を騒がせたが、犠牲の多くは青年労働者であった。この時の選挙も若者の投票率は相対的に低かったが、12月の寒空の下に放り出された若者の怒りの声が、閉塞感に覆われていた人々の心を揺さぶり、社会を動かす原動力となったのである。
   
低投票率を一挙に上げる方策などは無論ないが、しかし大衆運動をおこし、人々の積極性を呼び覚ますことはできる。現代資本主義は何時でも何処ででも矛盾が爆発する可能性を持つ社会となっており、運動を起こす条件がある。また、このほかに、投票率を高める具体的な取り組みが必要である。それは野党共闘の推進である。
   

■ 安倍政権下での改憲反対

安倍首相は、年頭の記者会見で「今年こそ新しい時代への希望を生みだすような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示する」と述べた。安倍首相の本音は、今年中に原案をまとめて国会の発議を待ち、国民投票を来年の参議院選挙と同日に実施したいということであろう。
   
今年はまさに改憲阻止闘争の正念場である。安倍首相にはこれを急ぐ理由があるからである。来年は参議院選挙があり、この選挙を経ても必ず参議院で与党が3分の2の勢力を確保できるという保障は何らない。だから、衆参で3分の2の勢力がある間にすすめてしまいたいというのが、安倍首相の本音であろう。兎にも角にも改憲の実績を歴史に残したいという、強い名誉欲に駆られている首相にとって、この好機を逃す手はないからである。
   
もし国民投票が、来年の参院選と同日実施ということになれば、法の不備をそのままに実施される可能性が高い。国民投票法には、公職選挙法が選挙活動に課しているような規制はなく、広報活動にも制限はない。改憲案が提示されれば広報活動が活発になるのは当然だが、これに一定のルールや規制がなければ、財力の差がそのまま広報活動の差になるだろう。自民党と財界はその財力に任せて、テレビや新聞など、あらゆるマス・メディアを動員して広報活動を展開するであろう。テレビのコマーシャルのように、長期間にわたりのべつ幕なしに宣伝されれば、世の中の雰囲気が変わってしまう可能性がある。
   
さらにもっと大きな、そして根本的な問題点は、この法律には、投票率が何%以上でなければ成立しないといった、成立要件がないことである。仮に投票率が40%程度であれば、20%をわずかに上回る賛成でも改憲が成立することになる。国民の5分の1程度の賛成で改憲が実現するという、とんでもない事態さえ予想される。そんなことになれば、最高法規としての憲法の権威は地に落ち、将来に大きな禍根を残すことになる。今国民の間に、憲法改正を求める強い要求や気運があるわけではなく、国民投票を急ぐ理由もない。まして是が非でも参院選と同日実施でなければならぬ理由などはどこにも存在しない。
   
いくら何でも、こんな不備な法のままで国民投票を実施すべきではない、という世論を喚起する必要がある。国民には知る権利がある。国民が改憲の必要性も、その緊急性も分からないままに強行するようなことは論外である。もしこれを無視して強行すれば、改憲案は否決されるだろうという状況を、ぜひともつくりださなければならない。改憲案が否決されれば、安倍首相がその職にとどまることはできまい。ことを急いで失敗すれば、当分の間改憲は遠のき、改憲に失敗した首相として歴史に名を遺すことになるだろう。名誉欲に駆られた安倍首相が最も恐れるのは、否決が残す不名誉である。安倍首相が否決の可能性を感じ、それに怯える状況をぜひとも作り出す必要がある。
   
立憲民主党の枝野代表は、安保法制で強引に憲法解釈を変えたことを批判し、立憲主義を踏みにじる安倍首相に改憲を言う資格はないと批判している。枝野氏は民主党時代に、憲法九条二項に自衛権を明記する私案を提出したことから改憲派ともいわれてきた。その意図は集団的自衛権の拡大解釈を防ぐことにあったにせよ、九条二項をそのままに自衛隊を明記するという安倍首相の悪知恵に利用された面がなくもない。だが、立憲主義の立場から、安倍政権の下での改憲には反対という立憲民主党の立場は明確である。それが明らかであったからこそ、先の総選挙でも選挙協力が行われ、支持を集めたのである。
   
安倍政権は、安保法制で従来の憲法解釈を強引に変えて立憲主義を踏みにじっただけではない。沖縄では辺野古移設を強行するため、米軍再編交付金を沖縄県や名護市を飛び越えて直接自治会に交付し、地域ぐるみ公金で買収するという地方自治法違反、憲法違反を平然と行ってきた。また、森友学園、加計学園問題で明らかになった行政の私物化、情報隠しで、国民主権は著しく損なわれた。このように憲法を守らず、立憲主義を踏みにじる安倍政権には改憲を主張する資格はないということである。
   
さらに、安倍首相は九条改憲を提案した理由を、「自衛隊が違憲かもしれない」などの議論の余地をなくすためだとしてきた。だが、それが否決されたら自衛隊の違憲性が確定することになるという指摘に対して、安倍首相は国民投票でたとえ否決されても、自衛隊は合憲であることは何も変わらないと答弁した。九条改憲の必要性も緊急性もないことを首相自身が暴露したに等しく、さらに、政府の政治判断で自由に憲法解釈を変えることができるという考えを表明したのである。このような憲法解釈は立憲主義に悖るとして、民進党も希望の党も反対を表明している。
   
このように、安倍政権の下での九条改憲反対・立憲主義を守れという一点で、準与党の日本維新の会を除くすべての野党が結集する条件が成熟しているのである。
   

■ 重要性を増す野党共闘

すでに述べたように、棄権率の高さは、若者だけの問題ではない。国政選挙でも5割台という低い投票率が、安倍政権を支える力となっているからである。
   
09年の総選挙以降の3回の総選挙の投票率は、09年より10〜17%も低くなっている。12年総選挙の投票率は09年より約10%も低く、14年は12年よりさらにマイナス6%、17年はそれからわずか1%程度回復したに過ぎない。ところが自民党の得票数は、09年が約1881万票、12年約1662万票、14年1766万票、17年約1856万票と、投票率の大きな落ち込みにもかかわらず1800万票前後で推移している。政権に復帰した12年の投票率は、09年より約10%も低かったが220万票減にとどめ、その後も投票率の低下にもかかわらず、1800万票前後を維持しているのである。
   
歴史学者の小熊英二氏は、朝日新聞の論説記事(17年10月26日)で、「日本人は右が3割、左が2割、中道5割」という安倍首相周辺の見方を紹介しつつ、この比率は選挙結果に合っている、と述べている。14年衆院選の小選挙区の票は、自公に維新を加えた「右」が約3000万票、4野党(民主、共産、社民、生活)が約2000万で、投票率は約5割だから、「中道5割」の多くは棄権したことになる。
   
だから、「この状況だと、リベラル(2割)は必ず自公(3割)に負ける。野党が乱立すればなおさらだ」、と。
   
この状況は、どんなヘマをやらかしても固い支持層があるという、トランプ政権と似ている。いずれにしても、「右」に大きな変化がないとすれば、5割の「中道」を動かすほかに方法はない。つまり投票率を高めることである。
   
結果が分かり切った選挙には行きたくないものである。野党乱立の小選挙区選挙、地方自治体の首長選挙などがそうであった。これでは棄権が増え、投票率が低下するのは当然である。小選挙区であっても、人々に変化の可能性を感じさせる取り組みが必要なのである。その一つが、小選挙区での野党共闘の推進である。小選挙区選挙では、野党が乱立すれば自民党の勝利になるのは自明のことである。16年の参院選の1人区で野党が善戦したのは、共闘の成果であったのは周知の通りである。17年の総選挙では、民進党の事実上の解党騒動で野党共闘の多くが崩壊したが、そのまますすんでいれば、自公の絶対多数を阻止する十分な条件があった。ちなみに、自民+公明の比例区の合計票に対する、民主+共産+社民+生活の合計票の割合をみると、12年選挙では62.1%であったが、14年には72.8%となり、昨年の総選挙では、立憲、共産、社民、それに希望を加えると102.2%と自公を上回る結果となっている。野党共闘がなっていれば、多くの小選挙区で勝利する可能性があったことを示す数字である。
   
社民党支持者からつい最近、社民党は立憲民主党と一緒になるべきではないかと聞かれたことがある。筆者は即座にこれを否定し、次のような意見を述べた。もしまた野党の離合集散があれば、国民の批判は野党に向かい、野党の自滅となって自民党を再び喜ばせることになるだろう。枝野氏はこれがよく分かっているから、このような話には乗らないと言っているのではないか。今やるべきことは共闘の推進である。16年の参院選で野党共闘ができたのは、社民党の熱心なそして粘り強い努力があり、共産党も柔軟な態度をとったからだ。こうした成功があったから、先の選挙に向けて民進党を分裂させ、共闘を崩壊させようとしたのではないか。セクト主義や反共主義などさまざまな障害があり、共闘を成功させることは容易ではないが、その役割を果たせるのは社民党であり、これを推進する役割を果たす中で今後の展望も開けるのではないか、と。今必要なのは、立憲主義を踏みにじる安倍政権下の九条改憲反対の一点で一致する勢力が結集し、広範な戦線を構築することである。党の離合集散ではなく、野党共闘を推進することである。
   
   

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