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●2018年2月号
■ 第196通常国会の焦点と課題
     社会民主党企画局長 横田昌三

   

■ 暴走を加速する第四次安倍政権

1月22日、第196通常国会が召集された。昨年11月の特別国会では、森友・加計学園疑惑の追及も、衆議院では、文科委員会が1日、予算委員会が2日開かれたにすぎなかった。元々与党側は、首班指名だけで1週間程度で閉じようとしていたが、それでは半年以上も実質的な国会論議が行われず、第四次安倍内閣の閣僚も所信を語らない異例な事態となることから、社民党はじめ野党が強く申し入れ、12月9日までの会期39日間で合意した経過がある。しかし、結局は安倍首相の外遊も相次ぎ、実質的な審議は極めて不十分なものとなった。
   
しかも与党側はよほど質問されたくないのか、自民党は、野党の質問時間を短縮しようと、「与党2 対 野党8」だったこれまでの慣例を、衆院予算委では「与党36%・野党64%」に変更した。野党の質疑時間の短縮は、政権や行政に対する国会のチェックや追及の機能を低下させ、少数会派の発言権を封殺することにつながる。「今まで以上に謙虚な姿勢で真摯な政権運営に努める」といいながら、国会をないがしろにしようとする安倍内閣の姿勢は許されない。
   
第四次内閣発足時の会見で、憲法改正に向けて与野党の協議を呼びかける方針を表明した安倍首相は、12月26日、在任期間戦後3番目の長さとなり、2018年8月の自民党総裁選で3選を図り、通算首相在職日数の歴代最長記録を目指している。安倍首相は、18年の年頭会見でも、「今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく」との決意を示し、明文改憲に向け、さらに暴走のアクセルを加速している。今後、

  1. 今通常国会(大幅延長の可能性も)または秋の臨時国会で改憲案発議→国民投票、
  2. 19年通常国会で改憲案発議→参院選と同時の国民投票

を想定しているものと見られる。
   
しかし、共同通信の昨年11月の世論調査では「安倍首相が3選して首相を続けてほしい」は41.0%に対し、「続けてほしくない」が51.2%で上回っている。また、1月中旬の共同通信の調査によると、

  1. 安倍首相の下での憲法改正に反対が54.8%(賛成33.0%)、
  2. 憲法九条に自衛隊を明記する改正に反対が52.7%(賛成35.3%)

といった国民の批判状況がある。野党と市民の共闘を進め、国民の力で安倍政権に終止符を打ち改憲発議を阻止することは十分可能である。
   

■ 2018年度税制改正案及び予算案の審議

2018年度税制改正案は、総選挙に勝ったらあらゆる増税が信任を得たとでもいわんばかりに、給与所得控除の縮小による年収850万円超のサラリーマンの増税やたばこ税の増税、森林環境税、国際観光旅客税の創設という「個人向け増税」のオンパレードとなった。十分な説明もないまま、「取りやすいところから取る」安易な手法は問題である。憲法二五条の生存権を保障するための基礎控除に所得制限を設けたことは、社会に分断をもたらしかねない。格差是正や低所得者対策というなら、税額控除方式への転換や、最高税率引き上げや累進制の強化を目指すべきである。
   
また、所得税負担率は1億円を境に高所得者層ほど低下している現状にありながら、株などの譲渡益や配当などにかかる金融所得課税が20%のままなのも疑問である。大企業の内部留保(利益剰余金)が400兆円を越え、18年度から法人実効税率が29.74%に引き下げられる状況において、さらなる法人税減税(政策減税)が実施されるが、賃上げや設備投資促進効果は期待できるのか。
   
2017年度補正予算案と18年度当初予算案は、補正では、防衛費を2345億円も膨張させる一方、当初予算案で社会保障費の自然増分を1345億円も削減するなど、「防衛費は青天井、社会保障は削減ありき」という姿勢が露骨である。さらに、生活保護基準を改定し生活扶助費を削減したことは、憲法二五条が保障する生存権を侵害するものであり、断じて容認できない。8月末の概算要求に盛り込まれず、衆院選でも丁寧に・謙虚に説明されないまま、米トランプ大統領の「米国製軍事装備の大量購入」という圧力に屈したかのように、「専守防衛」を大きく逸脱する、敵基地攻撃能力につながる長距離巡航ミサイル関連経費やイージス・アショア関連経費が計上された。補正予算は、財政法二九条で特に緊要となった経費の支出のためと規定しているのに、ミサイル防衛関連経費を、査定が甘いとされる補正予算に「飛ばす」ことは、国民に分かりづらい粉飾的な手法である。当初予算案における防衛費は6年連続で膨張し、過去最大の5.19兆円となったが、補正予算案もあわせれば5.43兆円規模にまで拡大する。
   
国民の暮らしや人権を切り捨てる一方、軍事大国化につながる予算を許さず、アベノミクスの生み出す、大企業と中小企業の格差、都市と地方の格差、正社員と非正規社員の格差拡大などを食い止める「ボトムアップの予算」を目指し、国会での論戦に挑んでいかなければならない。
   
また、引き続きモリカケ疑惑に加え、スーパーコンピューターの助成金詐取事件、リニア中央新幹線の入札談合事件などの徹底追及が求められる。
   

■ 労働者のための「働き方改革」を

安倍首相が「『働き方改革』国会」と名付けたように、最重要政策に掲げているのが「働き方改革」関連法案である。
   
「積極的平和主義」と言って「戦争法」を強行した安倍政権であるから、「働き方改革」といっても、働く者のためではなく、「世界で一番企業が活動しやすい国」のため、大企業のためのものである。実際、労働者派遣法の改悪を始め、労働者保護ルールを改悪してきたのが安倍政権である。昨年6月には、安倍首相は、「不合理な待遇差を是正することで、人のやる気につなげていく」、「非正規のときには無かった責任感が、正規になって生まれてくる。これはまさに経営側にとっても生産性が上がっていく。売り上げが増えていく、利益が増えていく、成長していく、必ずプラスになるはずである」などと述べ、非正規労働者は、責任感がなく、やる気がないといわんばかりの暴言を吐いた。非正規労働者の現場を理解していないし、安倍政権の「働き方改革」が、「企業にとって柔軟な働かせ方」、「企業にとっての生産性向上」のためのものであることは明らかである。
   
高度プロフェッショナル制度及び裁量労働制の対象業務拡大をセットにした「残業代ゼロ」・「定額働かせ放題」法案を、罰則付きの残業時間の上限規制法案とともに労働基準法改正案として一本化して、さらに同一労働・同一賃金など7つの法案も抱き合わせで一括法案として提出・成立を目指している。性格が異なり、重要な内容がいくつもある法案を一本化し一括で審議するのは、一つ一つの審議時間を短くし、問題点が国民に明らかになる前に通してしまうとともに、野党に何でも反対を印象付けるためだろう。
   
労働時間、休日、深夜の割り増し賃金の規制を取り払う高度プロフェッショナル制度は、8時間労働制が適用されず、時間外労働や休日労働をしても、残業代が出ないこととなり、過労死しても自己責任とされてしまうなど、長時間労働を助長することになることは明らかである。「一部の高年収・専門職」にとどまらず対象が拡大されれば、広範な労働者が「残業代ゼロ」で働かされることになりかねない。また、裁量労働制は、「ノルマあって裁量なし」が実態で、長時間労働・「サーピス残業」の温床になっている。裁量労働制の対象業務の拡大は、「定額働かせ放題」を目指すものであり、成果を出すために、労働者を時間と体力の限界を超えて働かざるを得ない立場に追い込みかねない。
   
残業時間の上限規制の法制化は画期的だが、これまでの月45時間、年間360時間(三六協定特別条項付で無制限)を原則としつつ、繁忙期には特例で年間720時間を認め、2〜6カ月の平均で休日労働を含めて月80時間、1カ月では休日労働を含めて100時間未満の残業を認めており、きわめて不十分なものと言わざるを得ない。健康確保措置の中身も不明確であり、過労死の遺族の方からも労災認定基準の過労死ライン容認として批判が出ている。
   
脱時間給制度や裁量労働制の拡大は、勤怠管理型から成果重視型、時間賃金から出来高賃金への転換の一環であり、「非正規をなくす」というのも、労働時間ばかり長くて成果を出さない正社員自体をもっと見直していくということでもある。「2017年版経営労働政策特別委員会報告」の副題が「人口減少を好機に変える人材の活躍推進と生産性の向上」というように、財界が目指す「多様で柔軟な働き方の実現」は、人口減少における搾取する対象である労働力の確保と生産性の向上が狙いであり、安倍政権の「働き方改革」も、「生産性革命」や「人づくり革命」とあいまって、企業の成長や利潤拡大を目指すための人材づくりである面を捉える必要がある。
   
痛ましい過労死や過労自殺が相次ぎ、重大な社会問題となっている我が国においては、労働者の健康と安全を確保するための最低限のルールである労働時間規制を揺るがすことは断じて許されない。働く者の尊厳と家族的責任の観点から、ディーセント・ワーク(人間らしい尊厳のある働き方)とワークライフバランスの実現、雇用のセーフティネットの強化が必要である。労働者の声を踏まえた真の「働き方改革」を実現するため、すべての労働者を対象とする実効ある「労働時間の量的上限規制」や「24時間につき、最低でも連続した11時間の休息時間」を義務化する「休息時間(勤務間インターバル)規制」などの長時間労働抑止策を法的強制力のある形で導入すべきである。
   

■ その他の重要課題

通常国会への政府提出法案は64本、条約は10本の予定である。「働き方改革」関連法案以外では、カジノ設置のための手続きや規制を定めるIR実施法案、特別措置法案、生産性向上や行革・民営化を推進する法案、生活保護基準切り下げの生活保護法改正案、精神保健法改正案、成人年齢引き下げの民法改正案などが焦点になる。民意を無視して強行される辺野古新基地建設問題や米軍機事故の多発問題、新しいエネルギー基本計画なども徹底追及が必要である。
   
カジノを中心とするIRの制度設計のための実施法案について、治安や青少年への影響に対する懸念、経済成長や地方振興に利用することへの疑問も置き去りにされ、国民の理解も広がっていない。カジノ解禁の是非も含め、慎重かつ丁寧に議論をやり直すべきである。
   
行革・民営化推進の法案では、自治体が運営する上下水道や公共施設の運営権を売却する際、自治体議会の議決を不要にし、国から借りた資金の繰上償還も認めるPFI法の改正も予定されている。新事業をやってみたい企業を後押しするために、政府が規制を一時的に停止する規制の「サンドボックス」の制度化のための法案も提出される。また、水道事業の統合・広域化を促進するための水道法改正案は、水道施設の老朽化対策を推進するとして、民間の資金とノウハウを最大限活用する公共施設等運営権方式の採用を促す規定を追加しているが、放漫経営や災害、、撤退、倒産リスクや、外資に譲り渡す危険性、水道現場の労働者の雇用や労働条件などの問題について慎重に議論すべきである。
   

■ 明文改憲を阻止しよう

安倍首相は、北朝鮮の危機を煽り、政権浮揚に利用し、悲願である明文改憲に結びつけようとしている。しかし、安倍首相が「2020年改憲」案として打ち出した4項目は、昨年末の自民党憲法改正推進本部の論点とりまとめでは、両論併記で条文案の提示までできなかった。3月の自民党大会までに自民党案を決定すべく党内論議を進め、その後憲法審査会で各党間の論議を深める方向である。
   
また、公明党は、自衛隊の明記に対し、慎重姿勢を強め国民合意の必要性を強調している。希望の党や日本維新の会は、改憲テーマとして「知る権利」や地方分権、教育無償化などを挙げており、改憲勢力の中でも改憲項目や優先順位について一致していない状況である。
   
安倍4項目のうち、高等教育の無償化や参議院選挙区の合区の解消、緊急事態における国会議員の任期の特例は、憲法自体を変えなくても実現はでき、「本丸」は九条である。しかし自衛隊の明記は、災害救助や非軍事の国際協力が国民から評価されている自衛隊の存在を単に規定するものではなく、安倍政権が強行した違憲の「戦争法」に基づく集団的自衛権行使とセットであり、アメリカとともに海外で戦争できる自衛隊である。まさに、九条を死文化させ、平和主義を空洞化し、立憲主義を放棄させる狙いがある。
   
立憲野党(社民、立憲、民進、共産、自由の5党)の連携・共闘を図り、「安倍九条改憲NO! 全国市民アクション」と連携を強化し、2年前の「戦争法」を上回る運動を構築できれば阻止は十分可能である。憲法審査会では、暴走するアベ政治の違憲性、平和憲法が活かされていない現実の状況、国民投票法や憲法改正の問題点等を徹底的に明らかにしていかなければならない。そして「安倍九条改憲NO! 3000万人署名」運動を通じて、平和を目指す全ての市民の総結集を図り、改憲発議を断念させ、万が一の国民投票でも否決できるようにするため、全力をあげたい。
   

■ 野党共闘の再構築へ向けて

野党勢力は、総選挙での民進党の分裂・希望の党と立憲民主党の結成で混乱が続いている。総選挙を戦わなかった民進党は崩壊の淵に立ち、希望の党との統一会派結成に一旦合意したが、両党とも党内がまとまらず交渉は決裂し、分裂含みの様相となっている。立憲民主党は、「永田町の数の論理には与しない」として、党勢拡大・組織整備を優先している。日本共産党は、総選挙で割を食ったこともあり、次期参院選での野党共闘路線か独自路線かを模様眺めしている。6野党の国対委員長による連絡会では、国会対応や法案対応についても意思統一を図っているが、総選挙前より各党間の距離が開いている感じは否めない。
   
今必要なことは、安易な院内多数派形成や統一会派結成、政党の合流ではなく、九条改憲阻止や脱原発など一致する課題で野党共闘を強化し、その延長線上に参院選での選挙協力と前進を展望していくことである。社民党は、野党共闘の要石として、19年参院選に向け32人の1人区の一本化や立憲野党の政策協議について働きかけを強めている。
   
自民党は、昨年の特別国会で実施した野党への質問時間の削減を通常国会でも続けるのに加え、審議時間の短い党首討論を重視し、安倍首相の委員会出席を減らそうとしている。疑惑の追及を避け、国会論戦から逃げようとする与党の姿勢を許さないことでは十分共闘できる。また、「共謀罪」廃止法案の共同提案については野党間の対応が別れたが、「働き方改革」については結束して国会運営に臨む方針を決定しており、高度プロフェッショナル制度反対などの点で共闘を図り、対案を共同提出できるよう努力している。
   
また、細川・小泉両元首相らが顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が原発ゼロ・自然エネルギー基本法案の提出を呼びかけているが、立憲民主党なども原発ゼロ法案の提出を目指しており、かつて脱原発基本法案を超党派で共同提出した社民党も大きな方向性は一致できるとして、一本化に向け努力している。
   
モリカケ疑惑の追及のためのPTは合同とはならず、各党でそれぞれ設けられている。一方、社会保障予算の削減問題では、野党が共同でヒアリングや申し入れを行った成果もある。また、野党幹事長・書記局長会談の開催がなかなか実現しない中、市民連合が間に入って各党の幹事長・書記局長との意見交換会を開いたこともある。一つ一つ積み上げながら野党共闘の再構築を図っていきたい。
   
自民党は憲法改正案の国会発議に向け、この通常国会が重要になるとみており、9月には首相が3選を見据える自民党総裁選も控えている。社民党は、今通常国会を「アベ政治」の暴走の危険性を浮き彫りにしていく機会として、憲法改悪を決して許さず、いのちと暮らし、雇用、地域を守る活憲運動を展開し、「憲法を活かす政治」の実現に向けて全力で奮闘する決意である。
   
   
(1月22日)
   

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