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●2018年1月号
■ 2018年、その歴史的位置と課題
     立松 潔

   

■ 明治150年とは

今年、2018年は明治維新から数えて150年である。政府は明治150年を祝う記念行事を準備中だという。確かに明治維新によって日本は封建制から近代資本主義社会への転換を進めたのであり、重要な歴史的転換点であることは否定できない。しかし、富国強兵を掲げた明治政府の下で軍事力の強化を進めた日本は、やがて欧米列強との帝国主義的領土拡張競争へと突き進み、太平洋戦争を経て破滅への道をたどることになる。日米開戦は1941年、明治維新より73年目のことである。
   
現代日本は1945年の敗戦をきっかけに戦前の過ちを反省し、国民主権、基本的人権の尊重、恒久的平和主義を掲げる現行憲法を制定し、平和国家として新たな歩みを開始した。しかしながら現在の安倍政権は、軍国主義体制の確立に向けて、相次いで反動的な立法や政策を強行し、危険な方向へと日本を向かわせようとしている。そしてそのような中で今年は敗戦後73年目を迎えることになる。
   
2006年9月に成立した第一次安倍内閣は、「戦後レジームからの脱却」というスローガンを掲げ、教育の管理・統制強化や憲法改悪への地ならしとも言うべき政策を強引に推し進めた。06年12月の教育基本法改悪と防衛庁の省昇格、07年5月の憲法改正に向けた国民投票法の制定、6月の教育改革関連三法の改悪などがそれである。
   
この第一次安倍政権は07年7月の参議院選挙で大敗して過半数割れとなり、わずか1年で福田内閣へと交替した。しかし今回の第二次安倍政権は、12年12月に発足してから軍国主義化に向けた政策を相次いで打ち出し、日本を危険な方向へと引きずり込んでいる。それはまず13年11月成立の国家安全保障会議設置法と同年12月成立の特定秘密保護法である。これにより、国防や外交・安全保障上の重大問題についての情報を国家安全保障会議が一元管理するとともに、それを国民の監視の目から遠ざける体制を構築したのである。
   
安倍内閣はさらに2014年4月に防衛装備移転三原則を閣議決定して、それまで憲法の平和主義の下で日本政府が守っていた武器輸出禁止三原則を撤廃した。条件付きで武器輸出を認めることで、兵器産業を強化しようというのである。そして15年9月には憲法違反の戦争法(安全保障関連法)を強行採決により成立させた。従来の「専守防衛」路線から集団的自衛権の行使容認へと政府の方針を強引に転換したのである。さらに昨年6月には共謀罪法を強行採決しているが、これは反政府的な運動の弾圧にも利用されかねない危険な法律である。
   
こうして着々と反動的・軍国主義的な体制の確立を進めている安倍政権は、いよいよ平和憲法の改悪に乗り出し、日本の軍事国家への転換を完成させようとしている。安倍首相は昨年5月に、憲法の九条一項(戦争放棄)と二項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むとの加憲案を表明し、国会の憲法審査会での検討へと動き出した。戦前の日本は明治維新から数えて73年目で太平洋戦争という破滅の道へと突き進んだのであるが、まさに敗戦から73年目の年に、安倍政権は憲法改悪の実現という危険な道を突き進もうとしている。
   
安倍首相は憲法に自衛隊を明文で書き込むことは現状の追認にすぎないと宣伝する。しかし、これは大きな間違いである。まず第一に現在の憲法のままであれば自衛隊を廃止することは憲法違反にならないが、いったん憲法に自衛隊の保持が規定されれば、その廃止は憲法違反になる。さらに加憲案では、「我が国の平和と独立並びに国および国民の安全を確保するために自衛隊を保持する」との規定を加えるのが有力である。しかし、このように憲法に規定されれば、たとえば「他国の軍事的脅威に対抗できない現在の軍備は憲法違反である」との口実で、軍備拡大に歯止めが効かなくなる恐れがある。安倍政権の真の狙いは、改憲により日本の軍事大国化を推進することなのである。日本を再び誤った道へ向かわせようとする安倍政権の策動を許すかどうか、これが明治150年を迎える今年最大の課題に他ならない。
   

■ 金融危機20年と雇用悪化

情勢の深刻さは経済においても同様である。そして、日本経済の現状を正しくとらえるには、20年前の1997〜98年に起こった金融危機とその後のデフレ不況の深刻な影響を理解することが重要である。97年11月の連続金融破綻では、証券準大手の三洋証券、都市銀行である北海道拓殖銀行、四大証券のひとつである山一証券、地方銀行の徳陽シティ銀行が相次いで破綻した。そして98年には経営危機に陥った日本長期信用銀行と日本債券信用銀行の破綻処理が行われている。日本経済のデフレ不況が深刻化し、格差と貧困の拡大が進むのはまさにこの時からである。
   
この1997〜98年の金融破綻の影響は金融界だけにとどまらない。深刻なクレジットクランチ(信用収縮)が生じ、多くの企業が貸し渋りや貸し剥がしにより倒産に追い込まれたからである。銀行総貸出残高は98年1月の533兆円から06年1月の384兆円まで、97カ月(8年1カ月)にわたって対前年同月比で減少を続けている。
   
また、デフレ不況期には金融収縮や内需縮小だけでなく、円高の進展や公共事業の削減も製造業や建設業に打撃を与え、企業倒産を増加させた。企業倒産件数は、97年には1万6467件にのぼり、その負債総額は初めて10兆円を超え14兆400億円になった。そして97年から04年まで7年連続で企業倒産1万5000件以上、負債総額10兆円以上の年が続いたのである。その後景気回復に伴い企業倒産件数は減少したものの、08年9月のリーマンショックをきっかけとする世界同時不況により再び増加し、08年の倒産件数は1万5646件を記録し、その負債総額は12兆2900億円となったのである。
   
このようなデフレ不況の深刻化で最も被害を受けたのが労働者である。失業率は97年12月の3.5%から上昇を続け、01年6月には5%に達し、03年の6月のピーク時には5.5%となった。01年6月から03年11月まで連続30カ月も失業率5%台が続いたことになる。完全失業者数は97年12月には239万人だったが、98年11月には300万人を超え305万人となり、その後04年10月まで72カ月間連続で300万人を超えたのである。それ以降景気回復によって、いったん失業率は低下に向かったものの、08年9月からの世界同時不況により再び雇用は悪化する。失業率は09年4月から10年1月まで20カ月連続で5%以上を記録し、失業者数は09年2月から11年7月まで連続30カ月で300万人を超えたのである。
   
日本の雇用システムでは正社員の採用は新規学卒者が中心で、中途採用は狭き門となっている。したがって失業期間は長期化しやすい。運良く正社員として中途採用されたとしても賃金など労働条件が転職前より悪化するのが普通である。しかも非正規雇用での再就職先しか見いだせない場合も少なくない。
   
特に90年代後半からのデフレ不況深刻化とともに、雇用の非正規化が急速に進展したことが事態を一層悪化させた。非正規雇用の占める割合は95年は20.9%だったが、金融危機以降急増し、2000年が26.1%、05年が32.6%になり、その後も増え続け10年には34.3%、15年には37.4%になったのである。こうして多くの労働者が再就職後は失業前より劣悪な生活環境を甘受せざるを得ず、中間層から下層への転落を余儀なくされたのである。
   

■ 窮乏化する国民生活と自殺者の急増

デフレ不況の深刻化が国民生活に及ぼした悲惨な影響は、自殺の急増である。警察庁生活安全局の「自殺の概要資料」によれば、それまで年間2万人台前半ぐらいで推移していた自殺者数は、97年の2万4391人から98年には3万2863人へと一挙に35%も増加し、その後2011年まで14年間連続で3万人台を続けたのである。そして、このような自殺者の増大をもたらしたのが、金融危機をきっかけとする経済の悪化と国民生活の窮乏化であった。
   
「経済・生活問題」を原因とする自殺者はバブル末期の90年には1272人だったのが、95年には2793人へと急増し、さらに97年の3556人から98年には6058人へと一挙に70%も増加している。そしてその後2011年まで15年間連続で6000人以上を記録したのである。ピークは2003年の8897人であるが、この年の「経済・生活問題」での自殺の要因を見ると、「負債」が5043人と最も多く、次が「生活苦」の1321人、「事業不振」1041人、「失業」610人、「就職失敗」183人、「倒産」96人の順となっており、不況の長期化が深刻な影響を与えていたことがわかる。 もう一つ注目すべき点は「勤務問題」を原因とする自殺の増加である。97年の1230人から98年には1877人へと52.6%も増加している。しかも、経済生活問題による自殺者が景気回復とともに04年以降減少するのに対し、「勤務問題」による自殺は景気回復後も高水準を続け、07年には2207人となり、15年まで9年連続で2000人台を記録したのである。
   
勤務問題による自殺の理由を詳しく見ると、2016年時点で最も多いのが「仕事疲れ」の29.9%、次が「職場の人間関係」の24.2%、「仕事の失敗」18.7%、「職場環境の変化」12.4%の順となっている。人減らしが進む中で長時間労働や労働強化が進み、過労自殺やパワハラ、いじめなど職場の人間関係の悪化に伴う自殺が増えているのである。さらに従業員に過重な労働負担を押しつけることで選別しようとする悪質なブラック企業の増加も、勤務問題を原因とする自殺増加の大きな要因である。
   

■ 日本企業の変質・ブラック化

1997〜98年の金融危機から今年で20年、08年の世界同時不況勃発からは10年になる。大企業は最高益を記録し、株価も上昇、企業倒産件数は減少、有効求人倍率は上昇して人手不足が深刻化している。金融危機で打撃を被った金融資本や大企業はたしかに復活したように見える。しかし、多くの国民の生活は依然として改善していない。実質賃金は98年から低下を続けているし、格差や貧困問題が深刻化し、長時間労働やサービス残業など労働現場も劣悪なままである。そしてその背後にあるのが、ここ20年間に進んだ日本企業の変質・劣化(ブラック化)である。
   
1980年代には新卒一括採用・(定年までの)長期雇用・年功賃金を特徴とする人材重視・雇用重視の日本的経営こそが日本経済の強さの源泉であるとされ、海外からも「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされた。しかし、バブル崩壊後90年代の半ば頃になると、まったく正反対の評価が支配的になる。終身雇用制などという硬直した制度が、停滞分野から成長分野への人材の移動を阻害して不況を長引かせ、年功制による賃金コストの上昇が企業経営を圧迫しているというのである。
   
そのような日本的経営に対する批判を背景に、1995年には日経連(日本経営者団体連盟)が「新時代の『日本的経営』」のなかで、雇用柔軟型グループ(非正規雇用)の活用と、長期蓄積能力活用型グループ(正規雇用)の削減=少数精鋭化の方向をうちだしたのである。そしてこの時以降、正規雇用削減と非正規雇用の増加が急速に進むことになる。95年からの20年間で正規雇用は491万人減少し、代わりに非正規雇用が966万人も増加したのである。
   
そして、金融危機後のデフレ不況の深刻化とともに、生き残り競争に駆り立てられた企業が、大規模なリストラによる正社員削減と、非正規雇用の活用による賃金コスト引き下げを推進する。このような動きを象徴するのが日産自動車を経営危機から救ったとされる、ゴーン改革である。98年3月に日産自動車のCOO(最高執行責任者)に就任したカルロス・ゴーンは、日産グループ全体で従業員2万1000人(全体の14%)もの削減と、系列部品メーカーの切り捨てによる部品購入先(当時1200社)の半減という大リストラを敢行し、経営再建に成功する。そしてこれ以降、カルロス・ゴーンは日産の救世主としてたたえられるとともに、企業経営の模範とされるようになった。情に流されて首切りや下請け切り捨てを躊躇するのは経営者失格であり、ゴーンのように大胆なリストラによって経営を建て直し、株主の期待に応えることこそが経営者のつとめであるというわけである。
   
バブル期までは雇用を守ろうという経営者の意思が、新規事業や関連事業を生み出すことにつながり、企業の発展を支えたとされていた。しかし、デフレ不況期には逆に儲からない部門は早めに切り捨てる「選択と集中」こそがあるべき経営の姿とされることになる。その結果、企業は不採算部門からの撤退を次々と進め、失業率を押し上げたのである。
   
他方、唯一の勝ち組で高収益をあげていたトヨタ自動車は、2002年の春闘でベアゼロ回答を行い、従業員への利益の還元に慎重な姿勢を取るようになる。これ以降、当然のように他の企業もそれにならい、05年以降の景気回復期には多くの大企業が史上最高益をあげたにもかかわらず、それが賃金の引き上げにつながることはなかったのである。
   
以上のように日本企業から雇用や人材重視の思想が薄れるとともに、労働基準法を無視し、労働者に過酷な労働条件を押しつけ、使い捨てするような悪質なブラック企業も繁殖を続けることになる。また、昨年あいついで日本メーカーの検査不正やデータ改ざんなどの不祥事が明らかになったが、それも日本企業の体質劣化を示すものにほかならない。
   
たとえば、昨年9月に明らかになった日産自動車の検査不正事件は、工場で完成した車の安全性を最終チェックする完成検査を無資格者が行っていた問題である。日産自動車ではゴーン改革以来、毎年各工場現場に労務費の低減率が「必達目標」として示され、それを実現するため人減らしが進められていたという。このような厳しい人員削減の完遂のために完成検査員の不足が恒常化し、法令違反である無資格検査が常態化していたのである。
   

■ 安倍ポピュリズムの欺瞞性

政府はアベノミクスの下で景気が回復し、デフレ状態からも脱却しつつあると胸を張るが、ブラック化した日本企業の体質は変わっておらず、非正規雇用の増大が進み、人手不足の中で正規雇用労働者の過重労働は一層深刻化している。政府が打ち出した「働き方改革」は経済界の抵抗により、長時間労働の規制も非正規雇用の処遇改善(同一労働同一賃金)も極めて不十分な内容にとどまっている。そして経済界の強い要望により、残業代ゼロ法案(高度プロフェッショナル制度)など、労働条件悪化をもたらす法律の成立すらもくろまれている。今後国会で審議される「働き方改革」に関する法改正に対し、批判と監視の目を強めなければならない。
   
昨年の森友学園問題や加計学園問題などのスキャンダルで、安倍政権に対する国民の批判的な視線は強まっている。それに対し安倍首相は、一億総活躍社会の実現、地方創生、働き方改革、生産性革命、人づくり革命など目新しいスローガンを次々と掲げ、ポピュリズム的手法で国民の期待を煽り、国会での多数を武器に強引な憲法改悪へと突き進もうとしている。
   
安倍政権の真の狙いがどこにあるのか明らかにし、安倍ポピュリズムの欺瞞性を暴き、国民に向かって訴えていかなければならない。そして安倍政権による憲法改悪への策動を阻止すること、これが本年最大の課題である。

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