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●2017年10月号
■ 暴走する安倍政権の打倒に全力を挙げよう
     社会民主党幹事長 又市征治

   

■1. 臨時国会冒頭解散を糾弾する

安倍政権は、森友・加計学園問題(安倍首相の政治の私物化)や防衛省のPKO日報隠蔽問題の追及を恐れて先の通常国会を強引に閉会した。したがって4野党は、憲法五三条に基づき6月22日に臨時国会の召集を要求した。しかし安倍政権は、8月3日の内閣改造を挟んで約3カ月間これに応じようとしてこなかったが、ようやく9月28日に臨時国会を召集する意向を示した。
   
この臨時国会では、新たに判明した“モリ・カケ疑惑”の真相解明、防衛省の隠ぺい体質の究明はもとより、緊張を高める朝鮮半島情勢とこれに対する日本の対応、失敗したアベノミクスと今後の経済方針や「働き方改革」や「人づくり革命」などの中身、2年後に迫った消費税10%の可否などをめぐる論戦が求められた。
   
ところが、安倍首相が臨時国会で所信表明演説はじめ一切の質疑も行わず冒頭解散を画策していることが判明し、4野党は、急遽20日、幹事長・書記局長会談を開催し、これを非難するとともに

  1. 所信表明演説と代表質問、予算委員会質疑、党首討論を行うこと、
  2. “モリ・カケ疑惑”解明のため、安倍昭恵氏、加計幸太郎氏の証人喚問を行うこと、
  3. 各大臣の所信表明と質疑を行うこと、
  4. 北朝鮮の核実験・ミサイル発射問題について全党出席の党首討論を行うこと

が不可欠であると確認し、与党と大島衆院議長に申し入れた。
   
もとより私たちは衆院解散そのものに反対ではない。しかし冒頭解散となると、話は別である。それは、内閣を改造し「仕事人内閣」と称しながら前述の 1.〜3.の最低限の仕事を放棄し、またこれまで北朝鮮の核・ミサイルの危機を連日煽りに煽ってきたが、突如“選挙をやっても大丈夫だ”という自己矛盾をまったく国民に説明していないからである。つまり、国民への説明責任を放棄し、総理自身の“モリ・カケ疑惑”の追及を逃れるための疑惑隠し解散、解散権の乱用・政治の私物化と言わざるを得ない。
   
そもそも安倍首相は、8月以降、

  1. 一定の内閣支持率の回復、
  2. 「小池新党」の選挙準備が整う前、
  3. 4野党共闘の進展状況

――の三点を総合的に判断し、年内の解散・総選挙を決断すると見られてきた。その際、臨時国会開催は避けられず、とすれば“モリ・カケ疑惑”への野党の厳しい追及は免れない。また10月22日の衆院3補欠選挙(青森4区、新潟5区、愛媛3区)で1〜2議席取りこぼせば安倍首相自身の命取りになりかねない。つまり安倍政権が追い詰められかねない状況にあった。
   
ところがここへきて、北朝鮮の核実験・ミサイル発射が相次ぎ、これに対する国民の不安を煽って“強い政府”を演出することで、一定の功を奏し内閣支持率が40%台に回復してきた。また民進党がさみだれ的離党騒ぎで低迷し、前原新代表の野党共闘への曖昧な発言で野党共闘は恐れるに足りない。そして「都市部で50議席前後を獲得する」と予想される「小池新党」の旗挙げも道半ばだ(9月中に結成の動き)。だから、多少無理しても“今なら勝てる”と判断し、理不尽な冒頭解散を決断したと思われる。
   

■2. 4野党共闘構築に向けた概要と到達点

16年9月23日、参院選結果と民進党の役員交代を踏まえ、4野党党首会談及び幹事長・書記局長会談を開き、「これまでの4野党党首会談及び幹事長会談の合意事項をしっかり踏まえ、次期衆議院選挙についてもできる限りの協力を行う」ことに合意した。
   
同年11月9日、早期の解散・総選挙もあり得るとの観点から、4野党幹事長・書記局長会談で選挙協力の基本方向を論議した。共産党は、

  1. 政策協定、
  2. 相互協力・相互推薦、
  3. 連合政権構想(政権問題で前向きな合意)

――の三点を主張した。これに対し社民党は、

  1. 4野党の「共通政策」の合意、
  2. 早期の小選挙区の「すみ分け」調整・確定、
  3. 候補者の推薦・支援は選挙区の実態に即して柔軟で効果的な方策、
  4. 不一致である連合政権構想は棚上げすべき

――の四点を提案した。
   
民進党は、「各党の意見も含め、できる限りの選挙協力の協議を具体的に進めていこう」と引き取り、また「市民連合」参加の諸団体との意見交換会を再開すること、選挙協力について、共通政策の豊富化や現場に即した協力など各党の意見を踏まえ、議論を加速化することを確認した。
   
同年12月26日、次期衆院選での「できる限りの協力を加速」するため、4野党幹事長・書記局長会談を開き、共闘について「地方の事情も考慮し必ずしも相互推薦にこだわらない」、「政権問題を選挙協力の入り口の条件にはしない」との発言もあり、

  1. 早急に4野党の共通政策の合意を図る、
  2. 小選挙区のすみ分け協議を急ぐ、
  3. 選挙協力はそれぞれの選挙区の実情に即した効果的な形をとる

――ことで大筋合意した。その上で、選挙区の候補者調整を図る「選対実務者協議」を立ち上げること、野合批判をはね返すための政策的裏付けの必要性から、4野党共通政策の整理を図り市民連合とも合意するため「政策実務者協議」を立ち上げることが民進党から提案され、確認した。
   
今年4月5日、4野党と市民連合との意見交換会を行い、これまでの意見交換・要望を踏まえ、民進党がまとめた「『市民連合が実現を目指す政策』に関する4党の考え方」(14課題)について確認した。
   
6月8日、4野党党首会談で、「協議を加速させ、4野党が協力して候補者調整を行い、一致したところを順次発表する」ことに合意した。
   
以上のように紆余曲折を経ながらも、わが党が中心となって「安倍一強政治」に対抗する野党共闘構築の努力を積み上げてきたと言える。
   

■3. 安倍政権の4年半から総選挙の争点を考える

   
・(1) 「アベノミクス」のもたらしたもの
安倍政権は5年前に、「デフレからの脱却」を掲げ、経済政策「アベノミクス」(大胆な金融緩和・機動的な財政出動・成長戦略)を打ち出した。社民党はアベノミクスを、大企業の国際競争力を強めるもので、デフレ脱却は出来ないと批判した。
   
我々はデフレからの脱却には、国民の可処分所得を増やし消費と内需を拡大することが不可欠、と主張した。この4年半、大企業は毎年過去最高益を更新し、今や内部留保(利益剰余金)は400兆円(国家予算の4倍!)と、莫大な富を貯めこんでいる。
   
その一方で、

  1. 低賃金の非正規雇用が全労働者の4割、2000万人を超え、
  2. 実質賃金は低下・停滞が続き、
  3. 社会保障の改悪・国民負担増が続き、
  4. そのため世帯の消費支出も低迷し、国民の7〜8割が「景気回復の実感がない」と回答し、
  5. 大企業(資本金10億円以上)の労働分配率は43.5%と約46年ぶりの低水準

となった。
   
つまり「アベノミクス」は格差と貧困、将来不安を拡大させ、その失敗は明らかである。安倍首相は雇用の改善を声高に主張するが、それは団塊世代の大量退職と若年労働力不足の結果に過ぎない。
   
   
・(2) 消費税10%反対 ―― 財政赤字の原因は何処に
「社会保障拡充のため」と称して1989年に3%消費税が導入され、現在まで8%に引き上げられた。しかし、この間、年金・医療・介護などの改悪や負担増が強いられてきた。政府は「予想以上の社会保障費の増大」と説明するが、この27年間の消費税収は328兆円、同期間の法人税の減収は271兆円である。つまり消費税収の大部分(8割以上)が法人税減税の穴埋めに回った勘定になり、社会保障の後退につながっている。
   
そもそも国の財政赤字は、歴代政権による野放図な公共投資と法人税の減税(1987年の43.3%から現在は23.4%に半減)、所得税の減税(最高税率は、1987年は5000万円超には60%課税が、現在は4000万円超は45%に引き下げられた)が主な原因である。
   
つまり「大企業と富裕層には減税、庶民には増税」の政治がまかり通ってきたといえる。
   
   
・(3) 原発再稼働、原発輸出に反対 ―― 安全は二の次
安倍政権は、福島第一原発事故の原因が未解明なまま、原子力を成長戦略に位置付け、電力不足もないのに原発の再稼働、原発輸出を推し進めている。電力会社と原発産業の利益を優先し、国民の安全・安心は二の次という無責任な姿勢、政治を続けている。
   
溜まり続けた17000トンの使用済み核燃料や廃棄物の最終処分場も未だ決まっていない。にもかかわらず再稼働で核廃棄物を増やし続けることは、子々孫々に危険をつけ回すきわめて無責任な所業である。
   
   
・(4) 「戦争ができる国」への転換阻止
一昨年安倍政権が強行した安保法制は、憲法が禁じている集団的自衛権の行使を一部容認して、海外での同盟軍支援や自衛隊の武力行使の範囲を拡大するもので、「戦争ができる国」への転換を図る違憲立法・「戦争法」である。
   
これによって、米国と共に自衛隊を海外に派遣し、自衛隊が戦地で人を殺し殺される危険性が増大し、また海外で活動するNGOや商社マン、旅行者などがテロに遭う危険性を高め、敵対国から日本自身が攻撃を受ける危険性を増大させた。もしトランプ米政権が北朝鮮の核・ミサイル開発(アジアの平和を脅かすもので断じて認められない)を武力で屈服させようとして、米・朝両軍が日本海で衝突した場合、日本は集団的自衛権によってこれに巻き込まれる。北朝鮮は、当然、在日米軍基地や原発などを攻撃の対象とする。となれば日本は壊滅の危険を招くことになる。
   
また、安倍首相は、「2020年改憲」を表明し、「憲法九条一項、二項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」意向を示した。この狙いは、多くの国民が「専守防衛」に徹し、日頃は災害救助や非軍事の国際貢献に携わる自衛隊を許容している現状に便乗して、「戦争法」で変質した「集団的自衛権を行使する自衛隊」を憲法に明記し、九条一項・二項の空文化を狙うもので、国民騙しの悪辣な策謀であり、断じて容認できない。
   
その他では、森友学園・加計学園問題は、政治や行政の私物化そのものであり、国会として一連の経緯を検証し、疑惑を解明すべく関係者の証人喚問を含め、真相究明に全力をあげ政治不信を払しょくしなければならない。
   

■4. 社民党の選挙政策と獲得課題

   
・(1) 社民党の選挙政策の重点は何か
前述した、安倍政権の4年半年の政治がもたらしたものに対し、社民党の基本的政策としては以下のように考える。
   
   
[1]:くらしと雇用の立て直しを最優先に
国民総生産(GDP)の6割を占める個人消費を増やし、内需を拡大して景気回復を図る。そのため、大企業には大幅賃上げを求めつつ、政治的には、

  1. 正規・非正規の格差是正への転換。
  2. 時給1500円を目指し、早急に1000円以上の最低賃金の実現と中小企業支援。
  3. 年金・医療・介護、子育て制度の改善と国民負担の軽減。
  4. 高等教育の無償化や給付型奨学金制度の確立

などで、国民の実質可処分所得を拡大する政策を進める。
   
   
[2]:消費税10%は反対、不公平税制の是正で財源確保

  1. 所得税の累進性や金融証券課税の強化(年約6兆円)、中小企業を除く法人税率引き上げや租税特別措置の見直し(年約5兆円)などで10兆円以上の税収増を図る。
  2. 大企業の内部留保を外形標準課税対象として2%程度課税する(約7兆円)。
  3. 不要不急の公共事業の見直しや「専守防衛」を逸脱した防衛費を縮減する。

――などで財政再建と社会保障の拡充を図る。
   
   
[3]:原発再稼働に反対、脱原発の目標年次を定める
国策で始めた原発は、脱原発の目標年次(2020年代)を早急に定め、再生可能エネルギー確保政策をとる。その技術力は十分にあり、廃炉に40年もかかるので雇用問題も生じない。
   
再稼働の主張に対しては、最低、

  1. 半径30キロ圏内自治体との厳しい安全協定、
  2. 政府による実効性ある防災計画や避難計画の策定、
  3. 圏内自治体の住民投票による同意

の三要件が満たさなければ、再稼働には断固反対する。
   
   
[4]:憲法遵守・戦争法廃止、積極的平和外交

  1. 憲法を遵守して、安保法制を廃止し、領海・領空・領土の「専守防衛」に徹し、近隣諸国との積極的平和外交を進める。
  2. 北朝鮮の核・ミサイル問題は05年の「6カ国声明」の遵守を米・朝両国に求め、米朝間の不戦協定と国交正常化を促し、経済援助の実施と核・ミサイルの放棄を一体で実現するよう働きかける。
  3. 中国とは、両国間の共同宣言・声明に基づいて未来志向の関係改善を進める。
  4. わが党が提唱した“域内で問題が生じても武力行使は行わず、話し合いで解決する”「北東アジア総合安全保障機構」の実現を図る。

   
   
・(2) 4野党共闘のさらなる強化に向けた課題
   
次期総選挙の共通目標は、言うまでもなく「改憲勢力を3分の2割れに追い込んで、安倍政権を退陣に追い込むこと」である。
   
昨年の参院選では、4野党は、「小異を残して大同に就く」大局観に立ち、32の1人区にあっては、選挙協力の基本である「一定の共通政策の合意」の上に候補者を一本化し、4党の合同選対設置や共同演説会の実施などで安倍政権 vs 野党連合の対抗軸を明確にして、国民に政治が変わる期待感・現実感を広げ、積極的な政治参加を促す闘いを展開し、11勝29敗とともに比例区得票を588万票伸ばすなどの成果を上げた。前記のようにこの基本姿勢を衆院選でも継承することを確認してきた。
   
しかし、参院選と衆院選では共闘のあり方はおのずと異ならざるを得ない。参院選の1人区では統一候補を擁立して4野党と市民連合・労働組合などが総力を挙げたが、衆院選では289の小選挙区で極力4野党の競合を避け(すみ分け)、それぞれの党がその勝利に全力を挙げることが基本となる。選挙区で合同選対を組むことなどはできない。
   
改めて衆院選の野党共闘・選挙協力を整理すれば、

  1. 一定の共通政策の合意を図る(既に4党と市民連合との合意がある)、
  2. 小選挙区・候補者の競合を極力避ける「すみ分け」調整を早急に進め確定する、
  3. 推薦・支援等の選挙協力は各選挙区の実情に即した効果的な方策をとる

――ことである。
   
いま急がれるのは、2.である。現在、民進党にその努力を強く求めている。
   
   
・(3) 社民党の獲得課題
わが党は、「5議席以上の確保」を目標としている。これは願望でなく実現可能な目標である。それは、率直に言えば九州ブロックでの議席増と東北ブロックでの議席獲得である。そして19年参院選で比例代表2議席獲得を展望して、各都道府県で1名以上候補者の擁立を図って衆院比例票の拡大(昨年の参院選の154万票を185万票に)を実現することを目指す。そのために最低23選挙区に候補者を擁立する意向を野党3党に提示し、調整を図っている。何としても議席と得票増を実現して党の再建に弾みをつけ、安倍退陣の一翼を担わねばならない。
   
勝利が展望できない闘いが続く中で、闘うことへの萎縮や諦め傾向があることは事実であろう。その要因は、一言で言えば、労働者運動全体の低迷の現れと言える。
   
しかし、それを嘆いている暇はない。わが党がこれ以上後退すれば、九条改憲阻止、脱原発、反消費増税などの課題を共に闘う平和運動センター、脱原発運動、原水禁や反戦・反基地運動などがさらに弱体化し、政治反動・憲法改悪が一気呵成に進むことは火を見るより明らかである。それは断じて許されない。今度の総選挙は、日本における社会民主主義の政党の存続をかけた戦いでもある。
   
幸い、各県連合の努力により、今年に入ってから、定数減の厳しい状況の下でもわが党の自治体議員が増えている。読者の皆様、社民党支持者の皆様に共に戦いに総決起されることを強く訴える。
   
(9月22日談)
   

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