■ サイト内検索


AND OR
 
 
 月刊『社会主義』
 過去の特集テーマは
こちら
■ 2017年
■ 2016年
■ 2015年
■ 2014年
■ 2013年
■ 2012年
■ 2011年
■ 2010年
■ 2009年
■ 2008年
■ 2007年
■ 2006年
■ 2005年
■ 2004年
■ 2003年
■ 2002年
■ 2001年
■ 2000年
■ 1999年
■ 1998年


 


●2017年6月号
■ 安倍政権の暴走阻止に全力をあげよう
   ――「共謀罪」法案を廃案に――
     小笠原 福司

   

■1. 急速に進む改憲策動にどう抗するか

・(1) 九条改憲に向けた戦略がどう貫かれたか
   
安倍政権は、13年11月に国家安全保障会議(NSC)創設関連法を成立させ、省庁にまたがる情報を一元化して官邸主導で安保、外交政策の決定を行えるようにした。そして、12月に特定秘密保護法を成立させ、情報を特定秘密に指定してNSCで政策決定を行い権力の集中を図った。
   
14年4月には武器輸出三原則の見直しを47年ぶりに行い、武器の開発と生産・輸出を新たな市場に成長させる道に舵を切った。この輸出に向けての案件もNSCで秘密裏に可否を判断する。そして、集団的自衛権の行使容認の閣議決定という解釈改憲を14年7月1日、日米防衛指針の締結(15年4月)、15年9月に安保関連法制の強行成立。防衛装備庁発足(同10月)と続いた。
   
16年夏の参議院選挙で改憲勢力の3分の2を確保し、衆参での3分の2を確保した。11月には自衛隊にPKOの新任務を付与して、「PKO参加五原則」(戦闘状態に陥る)が崩れている南スーダンへの派遣を強行した。この間の国政選挙においては、経済政策を前面に出した戦いなど巧みな「目くらまし」を行い、マスコミへの「圧力」、あるいは巻き込みつつ、世論操作含めて進めてきた。これが3年余の「戦争をするための国づくり」である。
   
さらに、今通常国会において犯罪を計画段階で処罰する趣旨を盛り込んだ「共謀罪」、組織犯罪処罰法改正案を3月21日に閣議決定し、自公が維新の会の修正を受け入れ5月23日に衆議院本会議で強行可決をした。これは、「テロ」に名を借りた改憲勢力(労働運動、市民運動)の広がりに対抗する権力側の弾圧を意図したものだと言える。
   
また、文部科学省は、学習指導要綱で18年度から、道徳を教科化する。それに向けて教育勅語(1890年10月30日に公布され、第二次世界大戦終了に至るまで55年間、教育と道徳の絶対基準とされ、核の部分は国家のため、お上のために身を捧げることが世のためになる)を、「憲法や教育基本法に反しないような形で教育勅語を教材として用いることまで否定されることではない」と政府答弁書が閣議決定された。さらに、教育勅語を幼稚園などの朝礼で朗読することを、「問題のない行為であろう」(義家弘介・文科科学副大臣)と述べている。1948年の衆参両院で教育勅語の排除・失効を決議したものを「閣議決定で覆す」という憲法違反が堂々とまかり通っている。
   
そして、5月3日安倍首相は憲法改正に向けて「2020年という施行目標」を表明し、九条一項(戦争放棄))、二項(戦力不保持と交戦権否認)を維持したうえで、三項に自衛隊の存在を明文化する(もともとは公明党の主張)との新たな方針を示した。これは、市民や野党を分断すると同時に、自衛隊の存在を認めることにとどまらず、海外での武力行使を無制限にできるようにすることにある。
   
また、高等教育の無償化にも言及した。憲法二六条は「義務教育は、これを無償とする」と定め、この範囲を広げることを禁じてはいないので、民主党政権下で高校無償化を実現した。もっぱら維新の会の取り込み、と言われている。
   
このように自公維の三党による憲法九条改悪策動が着々と進められている。
   
   
・(2) 安倍政権の支持率の「高さ」の内実
   
90年代初頭にバブルが崩壊し、グローバル競争が激化し、新自由主義的政治の本格化に伴い利益誘導を打ち切るなど、自民党は自らの支持基盤を切り崩した。さらに、選挙制度改革によって自民党の比較的弱い大都市の議席が増加、地方の小選挙区の優位も安定しない状況がうまれた。
   
にもかかわらず14年12月、16年7月の国政選挙で勝っている理由は何か。自民党支持はどんなに下がっても30%位に留まっている。その内実は、20年以上にわたる新自由主義的政治の恩恵を受けてきた大都市部を中心にした大企業管理者をなど15%位の固定支持層。後の15%位は「他に選択肢がない」ため支持している、との分析がある(直近でも安倍政権の支持率は55%前後と「高い」が、「安倍氏以外に適当な人がいない」「代わるべき政党がない」と、半数を超える人々が消極的「支持」である)。
   
他方で、野党の支持率の平均は民進党10%前後、共産4%前後、社民、自由で2%前後と、合計で16%前後である。野党共闘を成立させ自民党の固定支持層と並び、後は具体的な政策による支持をどう広げるのかである。
   
野党共闘として共通政策の確認にもとづく、選挙区ごとの棲み分けによる候補者擁立を行い、幅広い戦線から「安倍一強」政治に戦いを挑むことは、今日的な主体的条件に適応した戦いだと確信できる。
   
   
・(3) 改憲阻止の統一戦線運動の強化を
   
一昨年の戦争法案廃案に向けた市民と野党との共闘の前進は、今までにない大きな広がりを組織した。そして、総選挙をにらんで四野党共闘による自公を中心とした改憲勢力の3分の2阻止にむけた共通政策も作られ、選挙体制づくりが進みつつある(4月5日、安保法制=戦争法廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回、立憲主義の回復、子育てや雇用、社会保障、「原発ゼロ」、憲法改悪阻止など、また「共謀罪」法案の廃案、「森友学園」問題の徹底追及でも共同し、連帯を広げていくことで一致した)。
   
そこで3分の2阻止に向け問われている課題は、「多くの非正規労働者、未組織労働者、さらには組織労働者の中でも若い層への広がりは弱い(自民党支持が第1位)」と総括がされている点である。「失われた20年」を分析すると、「中間層の没落」(欧米とも共通)による二極化が見て取れる。さらにワーキングプアと言われる層のポピュリズムへの傾斜とも関連して、子育てや雇用政策を改憲阻止・憲法を暮らしに活かす観点から訴え、これらの層をどちら側が組織するのか、が総選挙結果を大きく左右するといえる。
   

■2. 17春闘から労働運動の課題を考える

・(1) 17春闘中間結果の教えるもの
   
連合は新たな要求スタンスとして、物価上昇率や経済成長が十分でなくても、「日本経済の自律的成長や人材確保に向け賃上げを優先する、社会的役割春闘」として闘い、4年連続のベアを獲得した。
   
連合の賃上げ集計結果の特徴は、300人未満の中小労組において、「賃上げ分」「定昇相当分」とも昨年同時期比プラスであると同時に、「賃上げ分」が大企業組合を上回っている点である。「2016年から進めてきた『大手追随・大手準拠などの構造を転換する』運動が着実に前進してきている」(中間まとめ─素案)との評価がなされている。
   
内需関連や中小労組は「大手追随・大手準拠からの脱却」を目指して連合の2%要求を守り、共闘体制を昨年以上に強めてきた。特に、300人未満の中小組合は前年同期比38増の1553組合が要求を出し、その水準は7914円、3.21%であった(自動車、電機などは1%要求)。こうした努力が前述した結果を生み出している。
   
経団連は働き方改革を巡る多様な回答として、総額人件費の内で子育て世代、若年など6種類を挙げ、ベアの配分を提起するなど、ベア抑制と労働者間の分断を狙っていた。
   
これに対して連合は、全員の賃金を引き上げるベアと、働き方改革への組合員のニーズにこだわる交渉強化を提起。非正規労働者の均等待遇や、ワークルールの改善など約30項目を設定した。特徴的な動きとして、電機連合は有期雇用労働者4千数百人の無期転換を目指す。NECは、休息時間を10時間から11時間に延ばすことを決めた。NTTは正社員と契約社員に同一の食事手当3500円を新設した。KDDI労組は、昨年は一律5万円だった契約社員の一時金を、正社員と同じ月給の3カ月分を要求し、一律10万円で妥結した。などである。
   
   
・(2) 中間結果から言える課題は何か
   
今春闘の2%を割り込み定昇プラス1000円強という結果では、「ベアの実感はなく」、消費は伸びないだろう。今後も、円安やエネルギー価格の上昇によって物価は上がる見込みであり、消費はますます冷え込むことになりかねない。
   
経営側は、「17年3月期決算最高益更新か?」との予想が出されていた今春闘でも、一貫して欧州の社会・経済不安、トランプ大統領の保護主義、円高不安などを強調し、「ベア否定、抑制」を主張した。2005年〜10年の景気が悪い時は「原資がない。定昇の維持すら厳しい」という主張を繰り返してきた。なお、17年3月期上場企業決算では、今世紀初の減収・最高益を挙げている(その利益は系列の中小企業から搾り取ったものでもある)。
   
やはり経営状況云々よりも、第一に組合員の生活の改善、そこに根差した「生計費原則」(連合はリビング・ウェイジ─最低の生計費の基準にすべき、との位置づけ)による要求づくりである。こうした組合員1人ひとりの力を結集した闘いを通して社会的な影響力も広げることが出来る。
   
次に、今春闘でも「ベアは要求の3分の1に削られながら、一時金は満額に近い」という妥結が多くみられる。やはり安定した収入は月例賃金であり、その継続的なアップが見込めないと、消費に積極的にはなれない。また、社会的な波及効果は望めない。その意味でも民間大手産別を筆頭に月例賃金重視の闘いに集中すること、それが社会的役割春闘として今日強く求められている。
   
最後に、5月9日時点の非正規労働者の時給引き上げは単純平均20.27円で昨年同時期比2.17円プラス。月給3620円(同321円増)の回答を引き出している。この流れを最低賃金の引き上げに繋げていくことである。
   
   
・(3) 安倍政権の「働き方改革」――その本質は
   
安倍政権が「一丁目一番地」の政策課題に位置付ける、働き方改革の実効計画が3月28日決定された。安倍首相は「労働法制史上の大改革」。連合も経団連も「労基法70年の歴史の中で画期的なこと」と絶賛している。
   
時間外労働については罰則付きの上限を新設しているが、繁忙期の上限は「月100時間未満」という内容である。休日労働を含めれば「年960時間、毎月80時間」まで働かせることが可能であり、製造大企業などの職場で横行している800〜900時間という異常な実態に「お墨付き」をあたえるものといえる。「過労死をさせよ!ということを認める法案でしょうか」(電通社員の高橋まつりさんの母親)との指摘。「過労死ライン」超の長時間労働を容認する基準では、生命と健康を守る歯止めにはならない。
   
同一労働同一賃金については、基本給・一時金について企業の判断による「違いに応じた支給」をすれば良いとし、非正規労働者・女性労働者への差別と格差が固定化されている。格差の不合理性の立証責任を企業側に負わせることはせず、待遇差について雇い入れ時や雇い入れ後に企業が説明すれば良し、としている。
   
終業から次の始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル」は、時間も示さない努力義務で、歯止めにならない。現在、時間外労働規制の適用除外となっている自動車運転者、建設業は5年後に先延ばしになった。研究開発業務は引き続き適用除外と「抜け穴」を設けている。
   
最低賃金は時給1000円を目指すとしつつも、達成まで数年かかる「年率3%程度」(順調にいっても2023年に達成する)という従来の速度を変えず、地域格差是正の立場はない。
   
「非雇用型テレワーク」など、労働法の保護や雇用保険・社会保障の枠外に追いやる、「雇用関係によらない」使い捨ての低賃金・不安定就労の拡大も企てられている。
   
この残業上限規制法案は、今秋の臨時国会にホワイトカラーエグゼンプションと、長時間残業の弊害が指摘される企画業務型裁量労働制の営業職への拡大適用が、セットで提出される恐れがある。いずれにしても「画期的なこと」として、受け入れられる制度ではないことは確かである。
   

■3. 当面する労働者運動の強化に向けた課題

・(1) 「共謀罪」法案廃案に全力をあげよう
   
憲法が保障する思想・良心の自由、表現の自由などを侵害する「共謀罪」法案は5月23日衆議院本会議で自公維など賛成多数で可決され、闘いの攻防は参議院に移った。
   
衆議院の審議を通して法案は内心を処罰し、一般人が対象となるという問題点が鮮明になり、政府の主張する「テロ対策」ではないこともはっきりした。また、現行法のままでも国際組織犯罪条約締結は可能なことも明らかとなった。
   
特に、最も審議が集中した「計画」や「準備行為」、「組織的犯罪集団」という法案の概念について政府は説得力ある説明ができず、恣意的な運用で国民の権利が侵害され「何が罪に問われるかわからない」、ものも言えぬ監視社会への不安が急速に広がっている。直近の各社の世論調査でも「政府は説明責任を果たしていない」が8割弱、「今国会で成立させるべきでない」が6割前後を占めている。
   
こうした世論を背景に、憲法九条改憲を鮮明にした安倍政権による「戦争をする国づくり」と深く結びついた「共謀罪」法案を、参議院において廃案に追い込まねばならない。組織労働者が「労働運動の弾圧」、自らの働き続ける権利の抑圧ととらえて、その闘いの先頭に立つことである。
   
   
・(2) 「働き方改革」に職場、地域から反撃を
   
前述した「雇用破壊」を促進する「働き方改革」が提案される背景には、職場における長時間労働、ただ働き、年休など諸権利の自粛、そしてメンタルヘルスなど健康破壊の実態があり、とても「人間らしく、働き続け、生き続けられる雇用条件」が確立されていない現実がある。
   
焦点は長時間労働の問題である。年間総労働時間を労働者に直接聞いた「労働力調査」(総務省)によれば、年間で2300時間前後、週当たり44時間。実感としてはこれでも少ないが、EU諸国の1600時間前後と比べて日本は2カ月以上も長く働く異常な長時間である。
   
「過労死」という言葉は「長時間大国日本」の象徴だが、1つの目安は「週労働60時間以上」で男性正社員の6人に1人はそんな働き方をしている。男女計では400万人を軽く超えている。
   
過労死ラインといわれる月80時間以上の残業をしている企業の割合は、情報通信、専門技術サービス、運輸などを中心に全体の22.7%に達している。また、『長時間労働など勤務時間に起因する自殺者も年間2000人を超える状況が続いている(政府の『過労死等防止対策白書』)。
   
長時間労働が野放しになっている1つの理由は、三六協定のずさんな運用にある。いや三六協定の存在しない事業所が45%にも及んでいる。この実態が前述した「雇用破壊」の「働かせ方改革」がまかり通っている原因といえる(労働組合組織率17.3%と社会的影響力の弱さ)。
   
長時間労働の是正は、今日社会的なコンセンサスが得られている。問われるのは、連合・労働組合がどう運動を社会的に展開するのか、である。当面の闘いとしては、「三六協定」で許される残業時間については、厚生労働省が「週15時間」「月45時間」「年360時間」などの「限度基準」を定めている。まずはこれを企業側に守らせる闘いが求められている。この闘いの広がりは必然的に「働き方改革」を廃案にする力の結集となる。
   
   
・(3) 日常闘争の強化と護憲闘争との結合
   
労働組合の日常闘争としては、労働基準法、労働協約(運用も含めて)にそって職場実態の点検を行い、守られていないならどう改善をするのか、職場単位の話し合いをもとに改善運動を積み上げることである。
   
その際に、改めて現憲法との関連、二七条で、勤労の権利(一項)と労働条件は法律によって定めるという原則(二項)を定めている。この法律で定める労働条件は、憲法一三条の個人の尊重と幸福追求権及び憲法二五条の生存権の保障にふさわしい適正なものでなければならない。とある。まさに職場からの護憲闘争そのものといえる。
   
その取り組みと成果、課題を産別・単産を越えて交流し全体の底上げを図る取り組みを今こそ強める時である。その広がりを安倍政権の推し進める改憲策動との対決に意識的に繋げることである。
   
(5月24日)

本サイトに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。
Copyright (c) 2017 Socialist Association All rights reserved.
社会主義協会
102-0072東京都千代田区飯田橋1-8-8 ASKビル4階
TEL 03-3221-7881
FAX 03-3221-7897