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●2016年6月号
■ 参議院選挙を全力で戦い抜こう
   吉田 進

   

■「異質」な安倍内閣

昨年は「戦後70年」の節目の年であった。日本人にとって「戦後70年」とは一体何であったのか。いろいろな言い方はあるが、多くの犠牲者を出した太平洋戦争の敗戦を受けて、「再び戦争はしない」という70年であったと思う。それは保守・革新を問わず全国民の共通の願いでもあったはずだ。
   
しかし、この「戦後70年」を根底から覆し、壊そうとする人たちが台頭してきた。「戦後レジームからの脱却」を唱える安倍首相を中心とした勢力である。
   
安倍内閣は、一昨年7月に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い、アメリカ等の行う戦争に日本が参加できるとした。昨年9月には、「戦争法」と呼ばれ多くの憲法学者から「違憲」と指摘された安保関連法を強行成立させた。まさに立憲主義、民主主義を否定するもので断じて許すことはできない。そして、安倍首相は衆参両院の審議の中で、みずからの任期中に改憲を行うと公言している。
   
安倍内閣は、戦後のどの内閣とも異なる「異質」の政権である。
   

■ アベノミクスの破綻は明白

安倍内閣の経済政策アベノミクスがもたらしたものは、貧困の増大と格差の拡大だけであった。総務省「家計調査」の実質消費支出は、昨年12月で前年同月比▲4.4%、本年1月▲3.1%、2月1.2%、3月▲5.3%と大幅なマイナス傾向が続いている。なぜ、消費支出が減っているのかといえば、働く人の実質所得が減っているからである。「家計調査」でサラリーマン世帯の実質収入をみると、昨年12月で前年同月比▲2.9、本年1月▲1.3%、2月▲2.4%、3月0.3%となっている。
   
アベノミクスは、「大胆な金融緩和で為替を円安に誘導し、物価を上げる。そうすれば、実質賃金が大きく低下するから、輸出競争力が高まり、自動車や電機などの輸出産業が輸出拡大で潤う。輸出産業は、生産波及効果が大きいから、結果的に他の業界も潤い、労働需要が増加する。すると、失業率が下がり、労働力需給がひっ迫して、賃金が上昇して、一度下がった労働者の実質賃金が復活して、消費が拡大する」というものだった。
   
しかし、労働者の賃金は上がらなかった。一部の大企業は賃金が上がったものの「トリクルダウン」は起きなかった。大企業は過去最高の利益を更新し続けているが、次の不況に備えて、もっぱら内部留保を蓄え、海外での事業展開などに専念した。財務省の「法人企業統計」によれば、資本金10億円以上の大企業の内部留保は、毎年増え続け2015年12月末では300.35兆円になっている。
   
危機感を持った政府・日銀は、「マイナス金利」の導入に踏み切ったが、逆効果を生み出し、円高の進行、株価の下落という状況に陥っている。もはや、アベノミクスは破綻したと言ってもいい。
   
国民の生活改善、「将来の安心」を担保する政治をつうじて、GDPの6割を占める個人消費を増やしていくことを基本にする以外に経済再生の道はない。
   
しかし、厚生労働省の調査結果によれば、生活が苦しいと感じている世帯の割合は2000年に入ってから5割を超え始め、その後も増加し2011年以降は6割を超えている。また、年収200万円未満の民間労働者は、1100万人を超えている。
   
非正規労働者は2015年平均で1980万人となり、雇用者に占める比率は37.5%となっている。正社員になりたくてもなれずに非正規社員で働くしかない、何年働いても年収200万円未満から抜け出せない労働者が増え続けている。
   
この非正規労働者の賃金を始めとした雇用改善の闘いに関連するが、16春闘では民間大手産別のベースアップ額は1500円前後の妥結となっている。「最高益を更新」と言われている中にあって、この金額での妥結で果たして非正規労働者の賃金改善に波及するのだろうか。組織労働者の果たすべき社会的役割について、連合を始めとした労働運動の責任は重いといえる。
   
拡大する非正規雇用に歯止めをかけ、正規雇用中心の雇用形態へ戻すことや賃上げなど具体的施策が実行に移されなければ、貧困の連鎖は止まらない。非正規労働者の問題は、彼らの苦しい生活実態と同時に、持続可能な社会の発展そのものを揺るがす問題となっている。
   

■「一億総活躍社会」の欺瞞

昨年9月、安倍総理は、「アベノミクス第2ステージ」として「一億総活躍社会」を打ち出した。少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持する。そして、「一人ひとりの日本人、誰もが、家庭で、職場で、地域で、もっと活躍できる社会を創る」というものだった。あまりにも現実とかけ離れているために、さすがにメディアも批判的な報道を行った。
   
少子高齢化に歯止めをかけると言っても、年収200万未満の若者たちの多くは結婚ができない、子供を産んで育てることができない実態に置かれている。「1億人」「希望出生率1.8」等という数字を根拠もなく言うこと自体無責任である。しかも、「労働力の供給」「経済規模」「経済の持続可能性」のためにと言われたのでは、メディアからも皮肉られるのは当然である。
   
「保育園落ちた」という匿名ブログが話題になり、国会でも取り上げられたが、まさにこれが現実である。「女性の活躍」は、特定の人が管理職になったなどという問題ではなく、女性労働者への差別待遇の実態を解消し、子育てしながらでも安心して働ける条件を社会的に整備しなければ何も変わらない。ちなみに男女間の賃金格差は、男性を100とした場合、女性は75%弱という水準が続いている。
   
大都市と地方の格差も年々拡大している。「ローカル・アベノミクス」と称して、地方の活性化を図るとしているが、活性化どころか地方は疲弊していると言っても過言ではない。私の住んでいる150世帯ほどの町内でも、小中学生の数は20人に満たず、75歳以上の高齢者は100名に届こうとしている。しかも、その多くが「独居」「老老」という実態である。子供たちは仕事を求めて都会に住んでいるため一緒に住むことは不可能である。こうしたなかで、「介護離職」が大きな社会問題となっているのであるが、こうした現実と無関係に「介護離職ゼロをめざす」と言っても空しいだけである。
   
地方自治体はさまざまな工夫をして努力しているが、基本的に国の政治は「地方分権」ではなく「中央集権」的な方向に進んでいるし、30年〜40年後には全国の半数近い地方自治体が消滅するという予測まで出ているのである。
   
「一億総活躍社会」は、こうした実態とかけ離れた欺瞞である。
   

■「戦争をさせない1000人委員会」運動

一昨年の集団的自衛権行使容認の閣議決定以降、新しい形態の運動が始まった。シールズを中心にした若者たち、子どもづれの母親など幅広い人たちが国会前に集まり、その運動は全国に広がり今も継続している。そして、かつてのように「党・労働組合主導」「動員」ではなく、「自主性」「手作り」「市民感覚」を重視している点が特徴といえる。
   
「戦争をさせない1000人委員会」は、そのなかでも中心的役割を果たしている。長野県における運動は、県段階での活動と同時に、県内12地区に「地区1000人委員会」が作られ、網の目のような組織になりつつある。私の居住している地域でも元教師、住職、牧師、商店主等々25名が呼びかけ人となって活動している。事務局は、民間労働組合役員などで担っており、会員は100名を超えている。5月3日には、「憲法を守ろう!大北市民行動」を実施した。九条の会と共同開催であったが、150名ほどの参加者で盛り上がった。リレートーク、スタンディングなどを行ったが、長野県野党統一候補である杉尾秀哉さんも特別参加した。
   
「戦後70年にわたって、他国の人を殺さず、殺されなかった歴史が終わるかもしれない危険性が高まっています」「長野県内でも野党統一候補が決まりました。戦争法を作った安倍内閣とこれに反対する多くの県民のたたかいです」「将来の子どもたちから、『あのとき二度と戦争をしないという国を、戦争をする国になぜ変えてしまったのか、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんたちはなぜ踏みとどまってくれなかったのか』と言われないために、一緒に頑張っていきましょう」という内容のアピールも採択した。
   
現在は、地元紙と提携しながら「時代の証言者になってください」の取り組みを始めている。戦争の悲惨さを語り継ぐ運動で、旧満州から戻られた女性の体験談等がすでに掲載され反響を呼んでいる。
   
「戦争をさせない1000人委員会」などの市民運動は、確かに組織性はないが、いろいろな人の意見はきちんと聞く。そして意見の違いがあっても排除せず粘り強く議論を継続する。時間がかかるが、そのやり方が幅広い結集の基本になっている。
   
一方、労働組合の関係者はみずからの言葉で語らず、「組合の方針だ」とよく言う。「組合の方針」の中身を聞くと、「会社の利益を守るため」という考え方が依然として根強い。そして、「考え方が違うから」として排除の論理を持ち出し、気に入らなければ運動から離れるケースもままある。
   
すべてがそうだと言うつもりはないが、労働組合は今こそ企業内に留まらずに、市民運動等に積極的に参加し、学び、みずからを変えていく努力をしないと組織率を上げ社会からの信頼を取り戻すことはできない。
   

■「野党統一候補」擁立で自公と対決

このような運動の延長線上で、「野党統一候補」を擁立する流れが生まれた。「一強多弱」という政治の現状は、従来のようにそれぞれの政党が候補者を出して戦ったのでは、結果的に「自・公」与党を利することが明白ななかでの共闘の模索であった。全国32の「1人区」での取り組みが進んでいるが、現段階では28まで統一候補が成立をしている。危機感を持った与党は「野合」との批判を強めているが、この間の流れ、運動の積み上げと発展を踏まえるとむしろ必然と言える。
   
4月24日投開票で行われた衆議院北海道5区補欠選挙の結果は、参議院選挙の前哨戦と位置付けられ注目された。町村信孝前衆議院議長の死去に伴う「弔い合戦」であったこと等を考えると、池田真紀氏が惜敗したものの「野党統一候補」の効果は大きかった。
   
しかし、民進党や連合の中で「共産党と一緒にやりたくない」という声が大きくなってきている。また、原発をめぐる政策などを理由に支持しないという労働組合が存在することも事実である。さらに、与党側からの分断攻撃も強まっている。
   
しかし、これらを乗り越える以外に安倍内閣の暴走を止めることはできない。単なる既成政党間の協力ではなく、「戦争法」を作り、改憲を押し進める安倍内閣とこれに反対する多くの国民の戦いという原点に立ち戻るしかない。政党レベルでいえば、民進党、共産党、社民党、生活の党などによる選挙協力ではあるが、一番大きな勢力は、今まで政治・政党とは距離を置いてきた「市民」「無党派層」であることを忘れてはならない。
   
「野党統一候補」を擁立すれば互角に戦えることは実証済みであるが、確実に勝つためには、そこからもう一歩進めて「一緒になって戦い、運動を盛り上げる」以外にない。安倍内閣の政治姿勢、政治手法に危機感を感じている多くの国民の思いを真正面から受け止めることが野党、労働組合に強く求められている。
   

■「統一戦線運動」の時代を迎えて

「再び戦争はしない」という「戦後70年」が根底から覆されようとしているなかで、われわれの側の運動もまた変化せざるを得ない。それぞれが、みずからの正しさを主張するだけでなく、共通の敵にむかって共同戦線を組まざるを得ない情勢になっている。安倍政権の暴走に対して、それを阻止する政治戦線の構築が求められているということである。「大同団結」「統一戦線」等の言葉も使われ始めた。参議院選挙の「野党統一候補」は、まさに「政治的統一戦線」の始まりと言える。
   
そこで大事なことは、共通の目標・政策をしっかりアピールしていくことである。安保関連法の廃止、立憲主義を守る、安倍内閣での改憲反対、格差社会の是正等が現時点の一致点であるが、さらに議論を深め国民に分かり易いものにしていかなければならない。すでに、「安保関連法廃止」をはじめ、「介護職員等の処遇改善法案」「児童扶養手当拡充法案」「保育士等の処遇改善法案」「長時間労働規制法案」「選択的夫婦別姓制度を導入するための民法改正案」などを野党共同で国会に提出しているが、こうした取り組みを積み重ねていくことが大事である。
   
安倍内閣に対する批判がある一方で、世論調査による内閣支持率は一定の水準を維持している。その理由のなかで、「他に選択肢がないから」が半数近くにのぼっているのはなぜか。3年3カ月にわたる民主党政権に対する悪いイメージが国民の中に根強く残っていること。与党に対置する具体的政策が明確に示されていないことなどが挙げられる。
   
単に候補者を一本化しただけでなく、共通目標にむかって総がかりで戦っている姿を国民にしっかりと示すことが何より重要である。「過去の選挙での各党の得票数を合計すれば勝てるはずだ」というような判断もあるが、それほど甘くはない。「大同団結」「統一戦線」は、すべての考え方を一致させ組織を統一しようというのではなく、お互いの違いは認め合ったうえで重要な共通目標を実現するために協力し合うということである。「排除の論理」を持ち込むことは、敵を利するだけである。
   

■ 戦いをつうじて社民党の活路を

社民党が存亡の危機にあることは今も変わりはない。「比例250万票、2議席」は何としても最低獲得しなければならない目標である。現職候補者のどちらが議席を得るのか、などという内向きな姿勢では展望は拓けない。「野党統一候補」擁立によって選挙区において与野党が激突する流れのなかで、その要としての存在感を示し、社民党を訴えることが何よりも重要である。過去に、選挙区で候補者がいないなかでの戦いを余儀なくされ、結果として比例選挙の広がりをつくり出せない苦い経験をしてきた。今回は、選挙区での「野党統一候補」を擁立したことによって、全党員が外に向かって一歩足を踏み出す条件は出来た。
   
熊本地震などの影響で、衆・参同日選挙の可能性は無くなったとの見方もあるが、今だもって不確定である。しかし、そう遠くない時期に解散・総選挙が行われるのは間違いない。参議院選挙で自・公与党の3分の2議席確保を阻止し、その流れのなかで衆議院選挙に勝負をかける、ここでも最低3分の2の阻止という戦略的な戦い方が求められる。
   
こうした一連の戦いをつうじて社会民主主義勢力の要としての社民党の活路を切り開く以外にない。 かつて経験したことのない政治情勢のなかにあって、われわれは何をすべきか、いま一人ひとりに問われている。直面している参議院選挙闘争への総決起を、党員、支持者に呼びかけたい。
   
(2016.5.20)
   
   

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