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●2016年5月号
■ 参院選勝利・改憲阻止に総力を挙げよう!
   社民党幹事長・参議院議員 又市 征治

   

■ 選挙をめぐる情勢の特徴

安倍首相は、3月2日の参院予算委で「私の在任中に憲法改正を成し遂げたい」と強い意欲を示した。これは、今回の参院選で改憲勢力が3分の2を確保し、自民党総裁任期(18年9月)までに衆・参両院で憲法改正発議と国民投票の実現をめざす決意を示したものだ。そのために参院選勝利に向けて国費投入を含め様々な策を打っている。
   
例えば、

  1. 沖縄の辺野古新基地建設強行策の「和解」の演出で6月の沖縄県議選対策と島尻参議員(大臣)の援護、
  2. 最高裁の「違憲判決」回避に向けた姑息な衆院選挙制度改革関連法の今国会での成立対策、
  3. 参院選の前哨戦となる北海道5区の衆院補欠選挙(4月24日)必勝に向けた物量作戦

などを進め、その上で

  1. 経済政策・アベノミクスの失敗(経済成長率の低迷、実質賃金の低下、消費の低迷などから消費増税も困難になど)を覆い隠す「一億総活躍プラン」と10兆円規模の緊急経済対策(5月中旬)、
  2. 反対が強いTPP(環太平洋経済連携協定)と関連法案の次期国会への先送り、
  3. 5月26、27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の「成功」キャンペーン、
  4. これを前後して消費税10%増税の再延期

……などを検討している。
   
それだけにとどまらない。安倍首相はこれらの効果を見極めつつ、参院選で3分の2以上の議席を獲得するため、相乗効果を狙って衆・参同日選挙も模索してきた。そのため、慎重論の山口・公明党代表から「総理が(同日選挙を)決断されれば容認する」言質を取り付けた(3月30日)。したがって、安倍首相が「これで勝てる」と判断すれば、国会最終日(6月1日)に衆院解散を断行し、7月10日の同日選挙も思い描いていると見られる。こうした見立てで与野党ともに既にその準備に入っている。
   
ただ、ここへきて想定外のことが起きてきた。1つは「勝てる」と読んでいた衆院北海道5区の補欠選挙の苦戦・野党連合の善戦であり、2つ目に4月14日に発生した熊本・大分大地震の甚大な被害である。これらは安倍首相が「政治空白」を生じる衆・参同日選挙を決断する大きな足かせとなろう。まさに「政治の世界は一寸先が闇」である。
   

■ 今次選挙闘争の意義

まず、今回の参院選は、安倍政権の暴走を止めるための闘いである。もし、この選挙で自公連合を勝たせる(議席増を許す)ことがあれば、政治的には、これまで3年半の安倍政治を国民が許容したことを意味する。すなわち安倍政権が進めてきた庶民には増税・大企業には減税も、格差と貧困を拡大したアベノミクスも、憲法違反の戦争法制も、安全・安心の保証もない原発再稼働・原発推進も、沖縄の民意を踏みにじる新基地建設も、「すべて国民は認めてくれた」と安倍首相が開き直ることは明らかである。何としても「安倍暴政はNO!」の民意をこの選挙で示し、野党が勝利しなければならない。
   
因みに、自公両党の改選議席は59(非改選は77)で、3分の2(162議席)に届くには85議席の獲得が必要だが、これにおおさか維新の5と、日本のこころを大切にする党の3、新党改革の1、その他3を加えると、この5党で73議席をとれば3分の2に達する。つまり3年前に自公は77議席を獲得しており、この再来を断じて許してはならない。
   
それだけにとどまらない。今回の参院選は、戦後70年にわたる日本の平和国家としての歩みとその礎である平和憲法を変えさせるのか阻止するのかが係った重大かつ歴史的な政治決戦である。
   
昨年9月19日、安倍政権は数を頼んで安保関連法案を強行成立させ、この3月29日これを施行した。周知のように、憲法第九条一項は、「日本国民は、…国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と謳い、二項で「戦力の不保持、交戦権の否認」を規定している。これは、文字どおり国民の総意であり、国際社会への宣言でもある。ところが安倍政権はこの国是を覆し、わが国が攻撃されていないにもかかわらず集団的自衛権を行使して自衛隊を海外の戦闘地域に出動させる、つまり「武力による威嚇又は武力の行使」を行うというのである。だからわが党はこれを憲法違反の「戦争法」と命名し糾弾してきた。
   
しかし、安倍首相は広範な国民の声を無視し、前述した「在任中に憲法改正を成し遂げたい」と決意を述べ、憲法九条を改正すれば「他国を武力で守る集団的自衛権の行使を全面的に認める」(3月1日衆院予算委)と、公然と改憲の本音を語っている。
   
これが果たして改憲を党是とする自民党の総意であろうか。ここに興味深い調査結果がある。朝日新聞が昨年11月下旬に行った自民党員・党友への意識調査(1245人)によると、

  1. 「党員や党友の意見は、党の運営や政策に十分反映されているか」の問いに、十分反映されていないが54%、十分反映されているが28%であり、
  2. 「自民党に一番力を入れてほしい政策は何か」の問いに、景気・雇用と社会保障がともに30%で、憲法改正は6番目で6%に過ぎない。そして
  3. 「憲法改正を早く実現した方がよいと思うか」の問いに、急ぐ必要はないが57%、早く実現した方がよいが34%であり、
  4. 「憲法第九条を変える方がよいと思うか」の問いに、変えない方がよいが43%、変える方がよいが37%

となっており、改憲を急ぐ安倍首相と党員・党友との大きなずれが浮かび上がる。
   
そもそも憲法とは、主権者・国民が政治権力の専制支配を防止し、個人の権利や自由を守らせるために政治権力を縛るものである。だが安倍首相はこの立憲主義を蹂躙し、「最高権力者は私だ」と胸を張る戦後最悪の国家主義者、歴史への反逆者である。したがって、衆院で改憲勢力に3分の2を握られている現状を踏まえると、「安倍改憲」に反対する野党が参院で与野党逆転を追求し、少なくとも改選121議席の過半数以上を勝ち取って安倍首相を退陣に追い込むことが今日的使命である。
   

■ 市民と連携する野党共闘の中の社民党

明白な憲法違反の安保関連法案の提出から昨年9月の強行採決に至る過程で、安倍政権の立憲主義、平和と民主主義を踏みにじる強権的な姿勢が鮮明となった。これに対して、これまで政治的発言を控えていた憲法学者や法曹界、学生やママたちなど広範な人々も全国で声を上げて行動を起こし、「新たな平和運動」がつくり出された。こうした「戦争法案撤回」を求めてきた運動は、法案成立後、「戦争法廃止」を求める方向で継承され、その実現のために参院選での選挙協力を含めた野党共闘を強力に求める動きに発展してきている。
   
こうした動きを受けて、まず共産党は昨年9月、「戦争法廃止・7・1閣議決定の撤回」で一致する政党による「国民連合政府」構想を打ち出した。しかし、他の野党はこの一点で「国民連合政府」をつくる構想は非現実的だし、むしろ1人区にも候補者を立てるための理屈付けの主張ではないかと懐疑的であった。そもそも民主党と維新の党は共産党との協力に拒否感が強く、むしろ両党の「合流」を優先する姿勢にあった。このように、野党共闘・選挙協力については極めて困難な状況にあった。
   
こうした状況の中、社民党は、昨年10月8日、『国民の期待に応え、野党の大胆な選挙協力を呼びかける』と題する指針を公表し、各野党との党首会談や幹事長会談はじめ陰に陽に五野党の共闘形成を粘り強く働きかけてきた。
   
その要点は、

  1. 今こそ「小異を残して大同に就く」立場から院内外で野党共闘を進めよう、
  2. 「市民連合」などの期待に応え、安保法制廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を五党の共通目標にしよう、
  3. 参院での与党の3分の2を阻止するため、少なくとも32の1人区で野党候補の一本化を図ろう

――ということであった。
   
そうした努力の積み上げの結果、2月19日、民主、維新、共産、社民、生活の五党党首会談にこぎ着け、以下の画期的な合意に達した。

  1. 安保法制廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を共通目標にする
  2. 安倍政権の打倒を目指す
  3. 国政選挙で現与党とその補完勢力を少数に追い込む
  4. 国会対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う

水と油ともいうべき民主・維新両党と共産党の選挙協力含む前記の合意は歴史的なことである。また当日、安保法制廃止法案を五党共同で提出した。
   
そして翌日からの社民党第15回定期大会には、枝野民主党幹事長、今井維新の党幹事長、志位共産党委員長、小沢生活の党代表が来賓として勢揃いで挨拶を述べ、野党共闘の強化を象徴する大会となった。社民党が野党の接着剤・「要石」の役割を果たしていることを鮮明にしたのである。
   
その後の共闘の具体化は、五野党幹事長・書記局長会談(連携協議会)で進めることになった。まずは、参院選の前哨戦となる北海道5区の衆院補欠選挙の勝利に向けて各党が力合わせをすることを申し合わせた。次いでわが党から「3月20日頃までに32の1人区の候補一本化、野合批判に答える共通政策策定が必要だ」と提起し、その合意の上に協議を進めることになった。これを受けて共産党は、「政権の問題は横に置いて選挙協力の協議に入りたい」「戦争法廃止を各党の公約にする前提で、1人区の候補は取り下げる」と言及するに至った。その結果、32の1人区中、無所属統一候補擁立は15選挙区、民進党候補への一本化は17選挙区の見通しとなった。まさに「小異を残して大同に就く」こととなった。
   
これにより、「安倍一強」への対抗軸が明確となり、これまで選挙に冷めていた人々からも期待をされるようになった。その上でいま一つ、比例代表選挙でも一定の野党共闘を実現し、「政治が変わる」期待感を広げる必要がある。できれば、民進、社民、生活の三党と諸政治勢力による「統一名簿方式」(いわゆる「オリーブの木」「桜の木」構想)が望ましい(共産党はこれには参加しないとしている)。この実現に向けて社民党は積極的にコミットしていきたい。
   

■ 参院選の「共通政策案」

前述したように、わが党は、2月23日の連携協議会(幹事長・書記局長会談)で「32の1人区の候補一本化、野合批判に答える共通政策策定」が必要だと提案し、合意した。もとより国民の期待が「安倍一強への対抗軸」としての野党共闘であるから野合批判は当たらないが、いざ選挙戦となったときに訴える政策がバラバラであっては野党共闘の実を上げることにならないからである。
   
そこで私からは、重ねて「小異を残して大同に就く」観点に立ち、国民多数が求める主な政治課題についての五野党の「共通政策案」として、以下の叩き台を提案した。

  1. 「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」の憲法三原則を遵守し、立憲主義と民主主義の回復を目指す。
  2. 憲法違反の安全保障法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を目指すとともに、憲法理念に基づく外交・安全保障政策を推進する。
  3. アベノミクスで広がった格差と貧困の是正のため、低所得者支援、非正規雇用の正規化、最低賃金改善などの諸施策を講じ、景気回復につなげる。
  4. 国民生活と国民経済の回復を図るため、2017年4月からの消費税10%への引き上げは行わない。また、「応能負担の原則」に基づいて不公平税制の抜本是正等を進め、税源の拡充を図る。
  5. できるだけ早期の原発ゼロを目指し、再生可能エネルギーへのシフトを促進する。また原発再稼働は、国の責任の明確化、実効性ある避難計画の確立及び核廃棄物の最終処分場選定プロセスの開始を前提とする。
  6. 沖縄の民意を蹂躙した辺野古新基地建設は中止する。困難となっている在日米軍の再編合意については米国との再交渉を求める。

これについては、社民党、共産党、生活の党の三党は「TPP批准反対」を含めて大筋了解したが、民進党は大筋理解できるとしながら、支持団体等から異論が出るなどの理由で、未だ合意に至っていない。大事なことは、各党の独自政策を尊重することは当然だが、消費増税や原発再稼働などで賛否が分かれるようでは野党共闘・選挙協力の実を上げることにならないということである。したがって民進党には文言修正も含めて検討を求めている。
   

■ 「座して死を待つのでなく、起って闘おう」
  ――党の戦略・戦術(要点)――

以上述べてきたように、今回の参院選は、安倍政権による改憲を阻止しようとする政治勢力が与野党逆転を目指し、少なくとも改選121議席の過半数を勝ち取ることが目標である。その中で、わが党にとっては名実ともに党の存亡と政党要件をかけた闘いとなっており、「250万票以上、2議席以上獲得」は至上命題、絶対要件である。
   
そのために、候補者擁立に関しては、大筋、以下の方針を確認した。
   
【選挙区選挙】では、

  1. 定数3人区以上の人口の多い9選挙区で公認候補を擁立して闘い、比例区の党名票の底上げを図る。
  2. 1〜2名区では野党間の選挙共闘を通じて「改憲阻止」の議席の獲得を目指す。
  3. 無所属候補を推薦・支持して闘う選挙区では、必ず選挙・政策協定を締結し、比例区での得票増につながる方策をとる。
  4. 民進党など他党候補を推薦・支持して闘う選挙区では、最低限、政策協定の締結と比例区への協力(ギブ・アンド・テイク)を取り付ける。

【比例区選挙】では、社民党票の得票増を図るため、11ブロックで比例候補を擁立して闘う(現職以外の比例区候補は、従来と異なり、ブロック内の県・市町村で政見・政策と「社民党名」支持を訴える)。
   
また、250万票以上獲得に向けた運動としては、「戦争法制の廃止を求める2000万人署名」運動を、主体的に事前運動と位置づけ、統一行動期間を設けるなどして、社民党支持の拡大と結合して進めることなどを確認してきた。
   
しかし残念ながら、32の1人区における選挙協力については全国各地でわが党の努力が光るが、党自身の候補者擁立は選挙区で4名、比例代表で現職2名を含めて4名と極めて立ち遅れており、また運動も進んでいない。これでは250万票獲得・2議席確保はおぼつかず、まさに解党の危機と言わねばならない。
   
私は、2月の定期全国大会で、「今日、全国各地における主要な国民運動――反戦・反基地、反核・原水禁・脱原発などの闘い、平和運動センターの運動の中心はわが党の党員やシンパ層が担っており、このことに誇りと自信を持ってよい。だが、選挙になると、組織力量がない、資金がないなどの理由で候補者擁立を諦めたり、挑戦する意欲や努力を欠いていないだろうか。これでは、ただ手を拱いて解党を待つようなものだ。かつて激しい組織破壊を伴うマル生攻撃に晒された国労は、定期大会での中川委員長の「座して死を待つのでなく、起ってマル生に反撃しよう」の痛切な呼びかけに奮起し、反マル生闘争に起ち上がった。これが官公労はじめ総評傘下各単産の連帯感を触発し、74国民春闘のゼネストにつながっていった。今、そのことを想起せざるをえない。わが党は当時の国労と同じような状況にあるのではないか。歯を食いしばって、3人区以上の選挙区と11ブロックの比例区に候補者を擁立して、100日間、選挙闘争を闘おう!」と呼びかけた。
   
「平和・自由・平等・共生」の理念を掲げる社会民主主義は、ヨーロッパに見るように、まぎれもなく新自由主義・新保守主義の対抗軸であり、その前進が求められている。そのことに確信を持ち、1%の大企業と富裕層に奉仕する政治、戦争する国に向けた憲法改悪を阻止するために、改めて「座して死を待つのでなく、起って闘おう!」、全党員が二歩、三歩足を前に出して闘おうと呼びかけたい。
   
(4月20日記)
   
   

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