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●2016年4月号
■ 前半国会の攻防と後半国会の課題
   社会民主党企画局長 横田 昌三

   

■ 前半国会の攻防

1月4日に召集された第190通常国会は、3年間にわたる「アベ政治」そのものの危険性を浮き彫りにし、参議院選挙に向けた争点を鮮明にさせていく機会とすることが求められていた。前半は、「一億総活躍社会」に向けた「新三本の矢」に基づく対策や低年金者への3万円支給という選挙対策のバラマキが盛り込まれている2015年度補正予算案が焦点となった後、5兆円を超える過去最高の軍拡となった防衛予算などの2016年度予算案や、法人実効税率の引き下げの前倒しなどの問題を抱える税制改正関連法案などの審議が焦点になった。社民党はじめとする野党各党は、衆参の予算委員会などの論戦で安倍政権の暴走の実態を徹底的に追及した。
   
まず「戦争法」そのものの問題点、民間人船員の事実上の徴用問題、自民党憲法改正草案の問題点や緊急事態条項の危険性、会計検査と特定秘密保護法の矛盾、辺野古新基地建設や思いやり予算の問題点などをただした。
   
経済面では、景気や雇用の実態とアベノミクス、GDP600兆円の実現可能性、消費税と軽減税率の問題点、TPP協定の経済効果分析や農業対策の根拠、TiSA(新多国間自由貿易)協定の問題点などをただした。特に国民生活に関して、マイナス金利の影響、GPIFの運用リスク上昇と将来の年金への影響、最低賃金や介護報酬の引き上げ、総労働時間の上限規制、児童扶養手当や子ども医療費助成の充実、子ども・子育て支援新制度で決まっていない0.3兆円の財源の確保策、給付型奨学金の創設などについて、積極的な提案を行った。そのほか、衆議院選挙制度改革や企業団体献金の禁止問題、軽井沢スキーバス事故問題、東京電力福島第一原発の汚染水処理、再就職支援会社が退職勧奨支援も行っている問題、同一労働同一賃金と地方交付税の算定にトップランナー方式を導入することの矛盾などについてただした。
   
甘利前経済産業相や遠藤五輪相の献金問題、高市総務大臣の放送停止命令発言、丸川環境相の除染目標を巡る発言や環境省の職務を巡る発言、TPPを巡る岩城法相の立ち往生や、林経産相の「勉強不足」発言、島尻沖縄北方相が歯舞諸島を読めなかった問題、石破地方創生相が法案の提案理由を読み間違えた問題、宮ア謙介衆議院議員の不倫報道による辞職、丸山和也参議院議員の米大統領に関する差別発言など、不祥事も相次ぎ追及を強めた。
   
野党の努力にもかかわらず、安倍政権は不誠実な答弁を繰り返し、軽減税率導入による新聞への懐柔や表裏のテレビへの圧力などのマスコミ対策も功を奏していることなどもあって、安倍政権を追い込むまでには至らなかった。
   

■ 野党共闘の強化と社民党

安倍政権の暴走政治を止めるためには、5野党がそれぞれの伸長を図るだけでなく、「小異を残して大同に就く」(社民党・又市幹事長)立場に立って、32の1人区で野党候補の一本化を実現することが不可欠である。「戦争法」に反対する市民団体からも、野党の選挙協力の実現が強力に求められてきた。しかし、民主党と維新の党の合流問題や共産党の「国民連合政府」構想と共産党との協力への抵抗、生活の党が提起した「オリーブの木」構想と小沢代表への不信感などもあって、選挙協力への動きははかばかしくはなかった。そこで、昨年12月20日に「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が結成された。
   
一方、共産党とは組めない、廃止法案は対案とセットで出すべきなどとして、民主・維新の2党だけで「戦争法」廃止法案提出する動きが急浮上した。社民党は、廃止法案を野党共闘と市民との連携の試金石として野党5党で提出すべきだと様々なルートで働きかけた。そして、社民党の吉田党首が2月15日、野党共闘について協議するため、民主、維新、共産、生活、社民の5野党党首会談を行うことを提案したことを受け、2月19日、5野党の党首会談が実現し、

  1. 安全保障関連法の廃止と集団的自衛権の行使を容認する閣議決定の撤回を5党の共通目標にする、
  2. 安倍政権の打倒を目指す、
  3. 国政選挙で現与党とその補完勢力を少数に追い込む、
  4. 国会での対応や国政選挙などあらゆる場面で5党のできる限りの協力を行う、

の4項目で合意するとともに、これらの達成に向けて、幹事長・書記局長で協議・具体化していくことを確認した。しかも、共産党・志位委員長からは、1人区の調整に当たり「思い切った対応をとる」ことや「政権の問題は横に置いて選挙協力の協議に入りたい」などと表明した。そして衆議院国会対策委員長がそろって廃止法案を提出、夕方の総がかり行動には5党の幹事長・書記局長が勢揃いした。
   
翌20日からの社民党第15回定期大会では、民主党・枝野幹事長、維新の党・今井幹事長、共産党・志位委員長、生活の党・小沢代表が来賓として挨拶を述べ、野党共闘の強化を象徴する大会となり、社民党が野党の「要石」としての役割を発揮していることをアピールすることができた。歴史的ともいえる党首会談と4項目の合意の背景には、又市幹事長の快気祝いを名目に2月4日に開かれた5野党の幹事長・書記局長会談があり、社民党の努力が大きく貢献していることは間違いない。2月23日の5野党幹事長・書記局長会談では、「5野党連携協議会」を週1ペースで開くことを確認し、共産党は、「戦争法」廃止を各党の公約にする前提で、1人区の候補取り下げに言及した。また、社民党からは、1人区の候補一本化は3月20日までに行うべきであり、5党の共通政策が必要と提案して合意をみた。3月4日の「5野党連携協議会」では、参院選宮城選挙区の桜井充予定候補を5野党統一候補の第1号として決定・発表するとともに、他の1人区での調整・一本化を加速することを確認した。また、社民党・又市幹事長は、「野合」批判に答えるとともに、「地元間の協議を前進させるためにも、本部レベルでの政策協定を結ぶことが必要だ」として、以下の6項目

  1. 安倍政権が蹂躙する立憲主義と民主主義の回復
  2. 憲法違反の安全保障法制の廃止
  3. アベノミクスで広がった格差と貧困の是正、
  4. 国民生活と国民経済の回復のために消費税10%への引き上げ反対、
  5. 早期の原発ゼロ、再生可能エネルギーへのシフト促進、
  6. 沖縄の民意を蹂躙した辺野古新基地建設は中止など

からなる「5野党の共通政策(案)」をたたき台として提案し、共通政策について作業を急いで進めていくことが確認された。
   
また、衆参ダブル選挙の可能性も想定し、衆院選小選挙区での協力のあり方についても議題にのぼり、衆院小選挙区の調整の考え方を整理していくことになった。そして、「5党と市民の連合」VS「暴走して危険な自公とその補完勢力」という「対決の土俵」を明確にするべく、3月9日に「安保法制反対諸団体との意見交換会」(第4回目)が開催され、5野党の幹事長・書記局長が出席した。
   

■ TPPと衆議院選挙制度改革

参院選の前哨戦として4月24日に行われる衆院北海道5区補選では、「TPP、安保、保育園」の3点セットが自民党を直撃している。3月19日に会期150日間の折り返しを迎え、後半国会の焦点として、TPP、選挙制度改革、「戦争法」廃止法、消費税、保育問題を取り上げたい。
   
3月24日の衆議院本会議でTPP特別委員会が設置され、TPP協定及び関連法案が今後の論戦の中心になってくる。しかし、2013年4月の衆参両院の農林水産委員会決議で、「10年を超える期間をかけた関税撤廃も含め認めない」としたコメや牛・豚肉、乳製品など農産物重要5項目の「聖域」が本当に守られているのかどうか、経済効果や農産物への影響を巡る政府試算は正しいのか、ISDS条項などの懸念や公共調達、医療、食品安全など農業以外の分野がどうなっているのかなど、問題は山積している。非公開となっている部分も含め、内容を全面公開させていくことも必要である。特に、野党の協力が進む1人区は農業問題の影響が大きく自民党の公約違反に対する批判やTPPへの不安も根強い。国民の視点でしっかり追及し、TPP協定の承認断念に追い込んでいかなければならない。
   
また、衆議院の選挙制度改革については、1月14日に衆議院選挙制度に関する調査会から、小選挙区で6、比例区で4、あわせて定数を10削減したうえで、より人口割に近いアダムズ方式の導入で小選挙区定数を都道府県に配分することを柱とした答申が出され、各党内での論議が続けられてきた。安倍首相は、選挙制度改革が実現していない場合でも「解散権は縛られない」との認識を重ねて示すとともに、アダムズ方式そのものの導入への自民党内の反対を2020年まで先送りすることで押し切り、15年国調に基づき定数10減と区割り見直しを実施する意向を表明した。20年国調の結果が出るまでアダムズ方式に基づく較差是正を先送りし、定数削減を先行させることが最高裁の求めに適うのか。成立しなくても、法改正に着手しさえすれば違憲論を払拭可能とでもいうのか。同日選に備えるかのような安直な制度改正であってはならない。
   

■「戦争法」廃止法の審議と2000万署名達成で争点化を

政府は3月22日の閣議で、「戦争法」を29日に施行することを定めるなどの政令を決定した。「戦争法」は、憲法違反の疑いが拭えず、多くの専門家や国民が反対してきた。採決を強行した与党の姿勢にも、国民は違和感を抱いており、共同通信の2月の世論調査では、成立5カ月後の調査にもかかわらず、4割近くが廃止すべきだと答えている。
   
国民の不安や疑問に真摯に答え、野党の提起に真正面から受けて立つ与党は、野党5党が提出した廃止法案への「無視」を続け、たなざらしになっている。しかも安倍政権は、参院選での争点化を避けるため、駆けつけ警護などの実際の任務付与は選挙後に先送りするとともに、自衛隊と米軍が物資などを融通し合う日米物品役務相互提供協定(ACSA)の改定案の国会提出も先送りする方向である。廃止法案の審議を求めてあらゆる努力を講じるとともに、「戦争法」廃止の2000万人統一署名を進める市民運動との連携を強化し、「戦争法」廃止と立憲主義の回復を参院選の争点に押し上げていかなければならない。
   

■ 消費増税再延期と保育問題の浮上

安倍晋三首相は2月25日夜、麻生副総理兼財務相、二階総務会長、加藤一億総活躍担当相、佐藤国対委員長、河村衆院議院運営委員長ら政権の主要幹部と会食した。北村内閣情報官も同席し、「消費税増税の延期」を掲げた、衆参ダブル選への作戦会議が行われた可能性が取りざたされている。首相の経済政策ブレーンである浜田内閣官房参与や本田内閣官房参与も消費税再増税の延期を発信している。菅官房長官も、2月26日午後の記者会見で、増税で税収減が予想される場合、見送りもあり得るとの認識を示した。安倍首相の国会答弁も、増税先送りの条件として「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」としていたのを、「重大な事態とは背景に世界経済の大幅な収縮が実際に起こっているかどうか。専門的な見地からの分析も踏まえてその時の政治判断で決める」など、再延期を匂わすように変化している。伊勢志摩サミット議長としての勉強会を名目とした国際金融経済分析会合では、スティグリッツ米コロンビア大学教授が消費税の増税延期を提言した。
   
確かに今の経済状況で消費税率引き上げは行うべきではない。しかし、景気条項を廃止して退路を断ったのは安倍首相自身であり、景気回復を実現し、税率を上げられる環境を作るといったのも安倍首相である。消費税増税の再延期をするのであれば、解散の争点にするのではなく、経済政策の大失敗を理由に退陣するのがスジではないか。
   
消費税率を8%に引き上げながら社会保障の削減が続いているが、匿名ブログの「保育園落ちた日本死ね!!!」という書き込みをきっかけに、待機児童問題が急速に政治問題化してきた。安倍晋三首相の「匿名である以上確かめようがない」という答弁をきっかけに、抗議の声が広がり、国会前での抗議行動にまで発展した。民主党はじめ野党側は、待機児童問題解決のためには保育士の確保が必要であり、まず全産業労働者の平均賃金より月10万円も低い保育士の待遇改善の法改正を訴えている。一方、安倍政権が進めようとしている企業主導型保育所は、子どもの健康や安心より女性労働力の確保を優先し、保育をビジネス目的に変えようとする問題がある。安保法制に反対するママの会からも、保育の問題のようなきわめて身近なテーマで安倍政権との違いを打ち出すべきとの提案が出されている。
   
内閣支持率は3月中盤の調査で、急に低下している。特に女性の支持率が落ち込んでおり、国民の心配や不安の切実度を無視し、耳障りのいい言葉を打ち上げる政権の姿勢が見透かされてきている。景気回復の実感がないという回答も7〜8割を占めており、地に足のついたところから、安倍政権の欺瞞性を暴いていくとともに、国民の共感を得られる積極的な提案を行っていくことが求められている。
   
2009年の与野党逆転・政権交代の原動力の背景には、野党共同で議員立法を提出し、政権交代したらこういうことを実現するということをアピールしたことがある。「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」「児童扶養手当法及び国民年金法の一部を改正する法律案」、「法人税法の一部を改正する法律案」など、野党5党の法案の共同提案が特に暮らしに身近な課題で相次いでおり、こうした動きを進めていきたい。
   

■ 社民党の存亡をかけた闘いに向けて

今次参院選は名実ともに社民党の存亡をかけた闘いであり、比例代表で党首と副党首の現有2議席を死守するには、250万票以上獲得しなければならず、比例票の7割を占める「党名票」(社民党票)をのばすことが至上命題である。そのためにもブロックごとの「政策宣伝マン」であり「オルグ候補」であるブロック担当比例候補の擁立と、人口の6割近くを占める3人区以上での公認候補擁立が必須である。また、1人区や2人区で、無所属統一候補や他党候補の推薦などが進むと、社民党が埋没し、比例の「党名票」獲得が弱まることが懸念される。社民党の「見える化」とともに、比例票の底上げ・拡大に向け、候補者・党が一体となって、党の政策の浸透、候補者名や党名の支持拡大をはかるため、統一署名や街宣・集会、支持者回りなど事前の諸活動が重要である。
   
会期末は6月1日だが、参議院選挙を控え会期延長はしない方向であり、5月26日から27日にかけて第42回先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開かれることから、国会審議は事実上5月下旬に終わることになる。残業代ゼロ制度を導入する労働基準法改悪法案や年金制度改革法案、盗聴法拡大法案など、国民から不人気な法案については、無理をしない方向で臨むことが取りざたされている。また、選挙を前にして、最後のバラマキとでもいうのか、保育施策の充実を含む一億総活躍プランや緊急経済対策をとりまとめ、2016年度補正予算を編成することも報じられている。
   
「憲法改正を在任中に成し遂げたい」と明言する安倍首相は、衆参ダブル選挙を打ってでも改憲発議に必要な3分の2以上の勢力を衆参で確保し、改憲によって米国とともに「戦争する国」づくりを進める構えである。党名変更して20年のこのときに、日本社会党以来71年の歴史を無にするわけにはいかない。「平和・自由・平等・共生」の理念を掲げる社民党こそが、新自由主義の対抗軸であり、戦争の放棄や幸福追求権、生存権などを規定した日本国憲法の理念が活かされる政治の実現に全力をあげていかなければならない。このまま安倍政権の暴走が続くとどうなるのか、社民党はどういう政治や社会を目指すのか、国民の意識に沿って、リアルにわかりやすく訴えることが必要である。同志の皆さんが、権力や資本の横暴に対抗する人間的な運動・闘いに立脚する党の役割・存在意義に確信を持ちあい、参議院選挙で必ず勝利・前進し、党再建・再生を果たす決意で奮闘されることを期待する。
   
(3月23日)
   
   

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