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●2013年10月号
■ 第185回臨時国会の焦点と私たちの課題
   社会民主党政策審議会 事務局長 横田 昌三
   
   

第183回通常国会が6月26日に閉会して以降、4カ月近くも国会は開かれていないが、成長戦略の発表や福島第一原発の汚染水問題と事故の収束、TPP、一連の安倍外遊、そして消費税増税問題等々について、全く国会・国民に説明がない。また、参議院選挙で自民党は現行制度最多の65議席を獲得したが、原発再稼働は規制委員会の判断、社会保障は国民会議の議論というように国民が関心のある重要課題は隠し、TPPや原発、沖縄基地問題は現地とのねじれを抱えていた。
   
にもかかわらず、安倍政権は、「新しい自民党が国民の信任を得て勝利した」、「国民が政権の安定と強い政策実行力を求めた」と評価し、衆参安定多数確保と最大3年間国政選挙はないという環境から、「千載一遇の好機」・「黄金の3年間」であるとして、「戦後レジームからの脱却」と「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指す、「新しい国」づくりを加速している。
   
10月15日召集予定の第185回臨時国会は、「成長戦略実現国会」と位置づけられているが、前述したように消費税率の引き上げ、社会保障制度改革による負担増、TPPへの参加、集団的自衛権の憲法解釈変更と日米軍事同盟の強化、原発再稼働や事故収束と汚染水問題などの重要課題も山積しており、まさに「戦後最大の大転換期」としての覚悟を持って臨む必要がある。
   
   

■ 労働者や利用者、住民犠牲の「成長戦略」

成長戦略を具体化するため、民間投資の拡大、新市場の開拓、事業再編の促進、の3つの柱を中核にした政策パッケージとして、人材・技術・資金の成長分野への円滑な移動を実現する「産業競争力強化法案」が提出される。
   
具体的には、先端設備についてのリース手法を活用した支援、あらかじめ事業計画の適法性を確認する「グレーゾーン解消制度(仮称)」の創設、「企業単位」で特例措置を講じ実効ある規制改革を可能とする「企業実証特例制度(仮称)(企業版特区制度)」の創設、ベンチャーファンドに出資する企業への支援、大企業から独立する人材を支援する専門家チームの創設、地域のリソースを活用した起業・創業への支援、国立大学のイノベーション機能強化などがあがっている。損益通算の対象範囲を他社との共同出資会社にも広げ法人税額を圧縮できる税制改正も検討されている。
   
露骨な企業支援策が並んでいるが、事業再編とセットで労働力も成長産業へ移転させられる。個々人の労働者にとってみれば、企業の都合によるリストラや失業が前提で、再就職の支援はする、そしてそこも民間人材ビジネスの儲け先にするというわけだ。「成長戦略」、「成長産業」というのも、より金儲けができるかが基準であって、人間にとって社会にとって有用かどうかではない。
   
さらに、成長戦略の柱の一つである「国家戦略特区」の関連法案も提出される。国の成長戦略に基づき、内閣総理大臣主導で大胆な規制改革や税制優遇を進め、「世界の企業が日本に投資したくなるようなビジネス環境を作る」ためのもので、その地域の住民や労働者にとって、住みやすくなるか、働きやすくなるかとは全くの別問題である。
   
特区では、法人税の免除や地方税が最大ゼロになる制度などが提案されているなど、税制でも営利企業優遇となる。大手ゼネコンやデベロッパーが大規模再開発を提案しているように、各企業の利益拡大ありきである。また、大阪市は大阪府と共同で、労働時間や解雇規制などの労働法制の適用緩和、高能力・高収入従業者への五分五乗方式(所得税)の適用(累進課税の緩和)を図る「チャレンジ特区」、最先端の医療サービスを提供する「国際メディカル特区」、「先進医療の保険診療併用特区」なども提案している。しかし、最低の労働条件の基準を定める労働基準法はいわばナショナルミニマムのための強行法規であり、ある地域だけ緩和するのは許されるのか。
   
TPP参加も見据え、企業の農業参入を促す方策として、企業の農地所有を特区に限って拡充する。また、耕作放棄地を買い取り生産法人に貸し出す「農地中間管理機構」を設けるため、「農地中間管理機構の整備に関する法案」も提出される。
   
成長戦略は、労働、保険・医療、農業等の、人間そのものや人間生活に係る分野が狙われ、「国家戦略特区」をテコに、従来やりたくてもできなかった規制が次々取っ払われようとしている。財界の負担軽減と利益拡大のための競争力強化は、労働者や利用者、住民犠牲の上に成り立つものであるとの本質を暴露していく必要がある。
   
   

■ 「社会保障のための消費税増税」論の破綻、「企業優遇、家計軽視」の経済対策

「社会保障と税の一体改革」によって、消費税率は2014年4月に8%へ、15年10月に10%へ、2段階で引き上げられることになっていたが、安倍政権は、争点隠しもあって、消費税増税法の「景気弾力条項」に基づき、9月の経済指標を見極めるとしてきた。その後、有識者や業界代表などから意見を聞く「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」を行ったが、首相自身は出席しておらず、慎重に検討して決断したとの演出のための出来レースに過ぎなかった。
   
9月10日、安倍首相は、消費税率引き上げによる景気への影響を和らげるためとして、経済対策の検討を指示し、10月1日にも予定通り消費税増税を行うかどうかの最終決断をするとしている。臨時国会ではその決断の是非、根拠、増税の影響、経済対策の中身などが大きな焦点となる。
   
経済対策は、5兆円超の規模で、所得者への現金の「簡素な給付措置」(0.3兆円)、住宅購入者への現金給付・ローン減税(0.4兆円超)、設備投資や賃上げを促進する政策減税の拡充等(0.5兆円)、中小企業の設備投資補助金の拡充(0.2兆円)、公共投資の追加(1兆円超)、政府が出資する投資ファンドの投融資枠の拡大、復興特別法人税の前倒し廃止(0.9兆円)、企業の新規設備にかかる固定資産税の減免等が実施の方向となっている。しかし、対策の大半は企業の減税と公共事業であり、「企業優遇、家計軽視」そのものである。低所得層への現金給付もほんのわずかな規模で1回限りである。
   
「日本がトップランナーになっていくように大胆な判断をしていきたい」としていた法人税減税については、「復興特別法人税」を1年前倒しで廃止することになり、実効税率の引き下げは2015年度以降に実施する方向となった。しかし、消費税増税が被災地の復興や被災者の生活再建に与える影響は大きいのに、復興特別法人税を廃止することは被災地軽視であるし、所得税や住民税増税がしばらく続くのに法人税だけやめるのは不公平である。企業の現預金は220兆円あり、7割の企業が法人税を払っていない中で、法人税率引き下げや「思い切った」設備投資減税、賃上げ減税の効果は疑問だ。消費税増税の転嫁に困る中小零細企業の負担軽減にもならない。固定資産税の減免も5年間免除で累計最大4兆円減るとの試算もあり、自治体財政に大きな影響を与えかねない。
   
さらに、消費税収入を当て込み、参院選で支援してくれた業界団体への「恩返し」のように、来年度予算の概算要求は100兆円にも迫る大盤振る舞いである。しかも、消費税増税が論戦になるのを避けるため、「15カ月予算」を理由に補正予算自体は臨時国会には出されないという。
   
一方、社会保障については、すでに年金の特例部分の減額や生活保護水準の引き下げが始まっている。そして、社会保障制度改革国民会議の報告に基づき、「社会保障制度改革プログラム法案」が提出される。70〜74歳の医療費自己負担1割特例の廃止、紹介状無しの外来受診には定額の自己負担、介護の一律1割の自己負担割合の見直し、「要支援1、2」の介護保険サービスからの切り離しなど、負担増と給付カットの痛みを強いる改革メニューが続々と打ち出され、年金についても、「最低保障年金」を柱とする抜本改革案を見送る一方、支給開始年齢の引き上げ、年金額を抑える「マクロ経済スライド」の強化等の給付抑制を検討課題として盛り込んだ。こうした改革メニューの方向性や実施時期等を担保するのがプログラム法案である。
   
今まで、社会保障の安心・充実のために消費税の増税はやむを得ないと説明されてきたが、福祉は改悪先行で、公共事業拡大と企業の負担軽減に消え、社会保障のための消費税増税という「一体改革」自体破綻してしまっている。
   
国民生活には燃料代やエネルギー代、食料品等の値上げが相次ぐとともに、各種の公的負担増が襲いかかり、給料1カ月分が吹っ飛んでいく。GDPの6割が個人消費であり、賃金の引き上げや安定雇用の拡大、消費税増税撤回による、個人消費を中心とする内需拡大こそが有効だということをきちんと示していく必要がある。
   
臨時国会では法案は出されないが、産業競争力会議や規制改革会議、労働政策審議会等において、労働時間法制の緩和、「ジョブ型正社員」や、解雇の金銭解決ルールなど解雇規制の緩和、労働者派遣法の一層の緩和などの検討が進む。非正規雇用の拡大に加え、雇用がますます不安定化し、長時間過密労働が促進され、まさに日本全体の「ブラック社会」化が進む。労働者を犠牲にした成長戦略に対し、労働運動とともに厳しく対峙していかなければならない。
   
   

■ 進む解釈改憲・なしくずし改憲

いみじくも麻生副総理が「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と言ったように、現実は、解釈改憲・なしくずし改憲と憲法改正そのものの準備が進んでいる。その背景には、参議院では、今回の改選議席では81議席をとり3分の2を超えたものの、非改選を合わせると17議席足りない状況がある。
   
憲法解釈変更に慎重な内閣法制局長官の首をすげ替え、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)の議論を再開するなど、安倍政権は集団的自衛権行使の容認に躍起になっている。安保法制懇は年内に、集団的自衛権の行使を全面的に容認する内容の報告書をまとめる方向である。また、2013年版防衛白書や新防衛大綱中間報告等では、自衛隊に海兵隊機能を持たせたり、敵基地攻撃能力の保有を検討したりと、「専守防衛」を逸脱した「国防軍」化の方向が打ち出され、水陸両用部隊の整備や、無人偵察機、「ヘリ空母」、オスプレイ等の配備等が進められようとしている。その他、自衛隊装備の海外輸出解禁を目指し武器輸出三原則の撤廃等の動きもある。
   
法案としては、「四大臣会合」や「国家安全保障局」を新設し、「内閣情報局」とあわせて、国防・外交・安全保障に関し、情報収集・情勢分析から、中長期の戦略立案、緊急時の政策決定までを行うことを目指す「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案」が予定され、年末に「国家安全保障戦略」をまとめる方向である。
   
米国などからの円滑な情報提供・情報管理を行うため、「特定秘密保護法案」がセットで整備される。「防衛」、「外交」、「安全脅威活動の防止」、「テロ活動防止」の四分類に関する事項のうち「特段の秘匿の必要性」がある機密を「特定秘密」として指定し、漏らした国家公務員らに最高で懲役10年を科すなど厳罰化するものである。しかし、「特定秘密」の定義はあいまいで、「何が秘密なのかも秘密」となりかねない。機密保全の適性を評価するため、犯歴や経済状況などの個人情報も調査される。憲法で保障された国民の権利を損なう危険性があり、撤回を強く求めていく。
   
憲法改正国民投票法は、附則で、

  1. 選挙権年齢、成人年齢の18歳への引き下げ、
  2. 公務員の政治活動の制限緩和、
  3. 国民投票の対象拡大の検討

を「3つの宿題」としていた。今回、安倍首相が意欲を示す改憲への環境を整えるため、憲法改正国民投票の対象を「18歳以上」に確定する法案を臨時国会に提出することになった。
   
改憲策動と徹底的に対決していくため、こうした解釈改憲・なしくずし改憲の動きや、憲法改正の準備が進められていること、自民党憲法改正草案の危険性を国民に知らしめ、反対運動を盛り上げていかなければならない。
   
   

■ 原発事故の収束・汚染水処理問題

安倍政権は原発再稼働、原発輸出に躍起になっているが、避難者は置き去りにされ、東京電力福島第一原発の事故は収束していないどころか汚染水や地下水の問題が非常に深刻になっている。参院選に影響を与えないように先送りしてきたが、五輪招致に影響しないよう、汚染水対策の「基本方針」を付け焼き刃で打ち出した。そして安倍首相はIOC総会で、汚染水は「完全にブロック」され、「コントロール下」にある、「(健康に対する問題は)全くない」などと大見得を切った。この発言は東電からも否定された完全な「ウソ」であり、原発事故の収拾と被災地の復興ができないなら、日本への国際的な信用が地に落ちかねない。
   
臨時国会では、これまでの対応と現状の把握、今後の具体的な対策とその負担のあり方などをただしていく。政府が前面に出て、海外の知見も借りながら、オールジャパンの体制で対処するべきだが、その費用は長年原発で莫大な利益を上げてきた東電に請求すべきであるし、払えないなら法的破綻処理をすべきである。あわせて、子ども・被災者支援法の「基本方針」案の撤回と再策定、原発事故被害についての時効の特例なども求めていく。
   
   

■ 自公政権に対抗する第一歩を切り開く

その他、分限免職処分の拡大や幹部人事の一元管理、内閣人事局の設置、地方公務員についての能力・実績主義による人事評価の導入等が盛り込まれた「公務員制度改革関連法案」が提出される。労働基本権の回復がないまま義務だけが強化され、代償機関である人事院が縮小されるのは問題だ。日銀総裁や内閣法制局長官人事に見られるよう、内閣人事局構想は、人事の恣意性を強め、公務員の政治的中立性を侵しかねない。
   
TPP参加についても、国会の場で交渉の現状と見通しを含めきちんとただす必要がある。 継続審議になっている生活保護法改正案や生活困窮者自立支援法案、電力自由化のための電気事業法改正案に加え、いわゆるカジノ法案や、公正競争確保法案、タクシー特措法改正案などが議員立法で出される見込みである。一方、交通基本法案など、野党が共同で提出し継続審議となっている法案の行方は厳しい。
   
ねじれが障害になっていると言いながら、ねじれが解消したとたん、首相の施政方針演説を1回にするとか、大臣の国会出席を減らすなどの「国会改革」が与党から提案されている。国会を通じた国民への説明責任の観点から、安易には認められない。数の力を笠に着た、安倍政権のやりたい放題にどう立ち向き合っていくのか。
   
今回の参院選の自民党の絶対得票率が17.72%に過ぎないことを見れば、「全権委任」されたとはいえない。しかも、各種世論調査では、原発再稼働も、集団的自衛権行使も消費税増税も安倍政権の方針に反対が多い。安倍首相に一番に取り組んでほしい国内の課題は「景気回復」が35%であって、安倍首相が執念を燃やす「憲法改正」は3%に過ぎない(毎日新聞7月世論調査)。国民の80%の人が安倍政権成立以来、景気回復の実感を持てないとの調査もある。加えて、国民が自公政権に対抗する新たな政治勢力を強く望んでいることも明らかである。
   
今後、「アベノミクス」の実態があらわになり期待が失速し、消費税増税をはじめとする負担増が生活を襲い、原発事故処理やTPPの対応などで政権が行き詰まる可能性は高い。安倍政権が進める憲法改悪・右傾化、新自由主義的政策の遂行に対する国民の怒りや要求を吸い上げ、国民世論と政権の大きなねじれを突くとともに、安倍政権の「新しい国」づくりを徹底的に批判し、それに代わる対抗軸を示していくことが求められている。参院選の真摯な総括の上に、社民党自身の再建を図りつつ、平和・脱原発・国民生活擁護などの主要課題で一致できる多様な勢力との連携を模索し追求していく必要がある。当面、生活の党などとの統一会派をはじめ、重要政策課題で一致する野党間の共闘を強化するとともに、院外でも中道左派・リベラル勢力の結集に向けての第一歩を踏み出していきたい。

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