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●2013年8月号
■ 参院選挙で自・公圧勝、衆参で過半数を制する
   柏井 一郎
   

■ 自民党一強体制で、ねじれ解消

第23回参議院選挙が、7月21日に投開票され、昨年12月の衆議院選挙で復権した安倍自民党が、今年の6月の東京都議会選挙に続いて、圧勝した。今回の選挙は、まさに国民による安倍自民党の信認投票という様相すら呈し、自民党一強体制を生み出すことになった。
   
今回の改選議席は選挙区73、比例区48の121議席をめぐって、比例区は12政党から162名、選挙区は無所属を含め270名が立候補して戦われた。
   
その結果は、図表1の通りで、自民党は、改選議席34議席を31上回り、65議席を獲得し、新勢力は115議席(公示前勢力84議席)となった。公明党は、改選議席10議席を1議席上回り、11議席を獲得し、新勢力は20議席(公示前勢力19議席)となった。これで自・公合わせて135議席となり、過半数を制することになった。
   

(図表1・クリックで拡大します)
   
民主党は、改選議席44議席から27議席減の17議席となり、新勢力は59議席(公示前勢力86議席)となった。みんなの党は、改選議席3議席を5議席上回り、8議席を獲得し、新勢力は18議席(公示前勢力13議席)となった。日本維新の会は、改選議席2議席を6議席上回り、8議席を獲得し、新勢力は9議席(公示前勢力3議席)となった。共産党は、改選議席3議席から5議席上回り、8議席を獲得し、新勢力は11議席(公示前勢力6議席)となった。社民党は改選議席2議席から1議席減の1議席となり、新勢力は3議席(公示前勢力4議席)となった。生活の党は、改選議席6議席から6議席減となり、新勢力は、2議席(公示前勢力8議席)となった。みどりの風は、改選議席4から4議席減となり、参院の議席(公示前勢力4議席)を全て失った。諸派は改選議席2議席から1議席となり、新勢力は1議席(公示前勢力2議席)となった。無所属は、改選議席5議席から2議席となり、新勢力は(公示前勢力6議席)3議席となった。
   
自民党は、選挙区で47議席、比例代表で18議席を獲得し、1人区では、岩手、沖縄を除いて全勝し、複数区でも東京、千葉など大都市圏では、積極的に候補擁立を行い2人当選させた。千葉では45年ぶりに2議席を獲得した。一方、民主党は参院で初の第一党となった6年前に初当選した現職の候補者が次々に落選した。都市部で苦戦し、東京選挙区では結党以来、初めて議席を失うなど、東京都議会選挙での結果をそのまま引き継いで、壊滅的な敗北を喫した。民主党は、2009年の衆議院選挙の惨敗から、立ち直ることができていない。有権者から「民主党政治はもうこりごりだ」という不信の声は根強く聞かれた。
   
その結果選挙区、比例代表を合わせて17議席しか獲得できず、27議席を失うという大惨敗を喫したのである。
   

(図表2・クリックで拡大します)
   
比例代表では7議席の当選者であるが、連合が推薦した産別労組からの立候補者9人中、6人が当選している。日教組、情報労連、電機連合、自動車総連、自治労、電力総連から立候補した候補者であるが、得票数をみると、前回の2010年の産別労組推薦候補者の得票数と比較して、どの産別労組候補も票を伸ばしている。だが、基幹労連、JP労組、UAゼンセンの候補者はいずれも票を減らし落選している。これは産別労組の力が落ち込んでいることの反映だと思われる。
   
共産党は、選挙戦で「自共対決」を掲げ、自民党との対決姿勢を鮮明にして戦った。これが功を奏して、組織票に加え、無党派層を引きつけて政権批判票の受け皿となった。選挙区では15年ぶりに議席を獲得するなど、議席を倍増した6月の東京都議会選挙に続き、都市部での躍進を果たした。東京では12年ぶり、京都、大阪でも15年ぶり、特に大阪では若い新人候補が初当選している。これで非改選と合わせて11議席で、法案の提出権を得ることになった。朝日新聞の出口調査から、無党派層の投票行動を図表3でみると、「支持政党なし」と答えたいわゆる無党派層は、全体の20.3%である。その票がどこに向かったかをみると、今回の比例区で民主党は無党派層から12%しか集めていない。自民党、みんなの党、日本維新の会、共産党に次いで5位にまで落ちている。第一次安倍政権当時の2007年参院選挙で、民主党は比例区で無党派層の51%を引きつけて圧勝している。ところが、今回は自民党が23%、みんなの党が17%、日本維新の会が15%、共産党が13%となっており民主党を上回っている。このように政権批判の受け皿として、民主党が必ずしも第一の選択肢ではなくなったことを裏付けている。また、昨年の衆院選挙で無党派層の票が比例でトップだった日本維新の会は、今回、15%にとどまり、3位に後退している。
   

(図表3・クリックで拡大します)
   
日本維新の会は、橋下徹共同代表の旧日本軍慰安婦をめぐる発言で大きく失速したが、改選2議席は4倍の8議席まで増加した。だがかつての勢いを取り戻すことは容易なことではなく、自民党の「補完勢力」としてのパフォーマンスだけでは浮上できるとは思えない。それだけに民主党やみんなの党を巻き込んで野党再編をしかけ、「次の衆院選挙の時に勝負をかける」と思われるが、それまでこの党が維持できるかどうか、不透明である。
   
生活の党、みどりの風は、今回の参院選挙で「消えてなくなる危機を深めている」現状との指摘もある。生活の党は、今回は議席を失ったが非改選2議席を有しており、衆議院は7議席を維持している。小沢一郎代表は、「大変厳しい結果。事実としてきちんと受け入れて、3年後の総選挙で政権交代を目指す」と参院選挙後の政界再編に意欲を示しているが、その足下で党解体の危機は深まっている。みどりの風は、衆議院の2議席のみとなり、党消滅の危機に立たされている。
   
社民党は、選挙区に5人、比例区に4人を擁立して戦ったが、比例代表を1人かろうじて獲得し、獲得票は、125万5235票(得票率2.4%)で、前回衆議院選挙より、さらに得票数は落としている。これで参議院の議席は3人となった。福島みずほ党首をはじめ候補者を中心にして、「護憲、脱原発、反TPP、消費税でぶれない社民党」、「1%の人の政治から99%の人が大切にされる政治の実現」を力強く訴え、支持拡大をはかる努力を行ったが、安倍自民党批判の受け皿になることはできなかった。ただ、福島みずほ党首が、どこの演説でも、「社民党の前進でリベラル勢力結集の要になりたい」と訴えたことは、今後の社民党の生き残る方向を指し示している。社民党の支持基盤が脆弱化したと言われて久しいが、支持者、支持組織をいかに強化、拡大していくか、そのために支持者、市民と日常的に接し、連帯する運動をいかに強化していくか、すなわち政策を基本にして、これを実現していくための党の力量をいかに強化していくか、その方途について全党的な総括運動が強く求められていると言えよう。
   
さらに今回の参院選挙総括で見落としてはならないことは、投票率の低下である。今回の参院選挙区の投票率集計では、52.61%(21日発表)である。前回の2010年参院選挙の57.92%を5.31ポイント下回り、戦後3番目の低さとなっている。沖縄以外の46選挙区すべてで前回より投票率が低下している。
   
この原因は、選挙前にマスコミが一斉に報道した「自民党の圧勝」という予測記事が大きく影響したこと、さらに安倍晋三首相が、後でも述べるアベノミクスの経済政策以外は、全て参院選挙後に先送りしたことで、安倍自民党政治の信任投票となってしまった。これは自民党の選挙戦術が功を奏したと片づけるわけにはいかない。自民党の圧勝という結果は、このままでは自民党の横暴な政治を許しかねなく、そうなれば今後の日本政治に大きな禍根を残すことになるからである。
   
すなわち、自民党一強政治体制が確立され、自民党政治の暴走を押しとどめる政党が事実上、不在という状況を作り出しかねない。そのことが危惧されるだけに、野党の果たす役割が大きく問われることになる。
   
これとの関連で、今回の選挙から解禁されたネット選挙の評価である。各新聞社の出口調査によると、政党や候補者が発信したネット情報を参考にした人は(朝日新聞調査)、23%に止まっている。「みていない」などの回答が39%に上っており、ネット選挙の浸透はこれからのようである。
   
   

■ 危惧される安倍政権の「右傾化」への加速

安倍自民党が参院選で圧勝したことで、選挙中は封印し、全てを参院選後に先送りしてきた重要政策が、一気に動き出すことになる。
   
今回の参院選挙で有権者の関心が高かった政策は、朝日新聞の7月8日、調査(参院選挙で議論を深めてほしい政策を7つの選択肢から2つまであげてもらう)で、「景気・雇用」の50%が最多である。「社会保障」が39%、「原発やエネルギー」が30%、「消費税」が29%、「外交・安全保障」は16%、「憲法」は13%、「TPP」(環太平洋経済連携協定)は12%となっていた。「景気・雇用」と「外交・安全保障」を挙げた層では、自民党への投票がより多く、「憲法」を挙げた層では、自民党への投票が30%と最多で、民主党への15%、共産党への13%も目立っていた。
   
安倍首相の経済政策を「評価する」は、55%と高く、「評価しない」の23%を上回り、この傾向は選挙終盤でも変化はなかった。さらに同新聞社の出口調査では、安倍首相の「経済政策」を評価するは69%に達しており、「評価しない」は、24%とほぼ変わっていない。安倍首相の経済政策を「評価しない」層では、自民党への投票が14%に止まり、一方で民主党への投票が19%、共産党も14%となり、両党がアベノミクス批判層の受け皿になったことを伺うことができる。
   
選挙期間中の日本記者クラブの参院選挙党首討論会などの議論を聞いていると、憲法や経済などをめぐる議論がそれなりにあったが、一方で最も国民生活の身近な課題である社会保障問題、さらにこれにからめて先進国では最悪の財政再建問題は未解決のままで、このテーマそのものがほとんど議論されずじまいであった。社会保障制度改革国民会議が結論を選挙後に先送りしたこと、また、安倍首相は、来春の消費増税の最終判断を「経済情勢をみてから」と留保した。「現在の社会保障を維持するには、毎年1兆円の財源が必要になる。消費税10%でも早晩立ちいかなくなる」との説も流布されている。だが高齢者に痛みを求める政策を参院選挙で打ち出すと選挙に負けることになるので、難題は全て棚上げにして、選挙後に一気に増税路線に走るという、戦術を安倍自民党政権はとったのである。
   
従って、選挙ではアベノミクス経済政策の効果だけを宣伝し、「自民党は日本をとりもどす」と絶叫し、国民に批判が強い自民党の憲法改正草案については、「ここを修正すればいいということであれば、当然、考えていきたい」と、衆参両院とも3分の2の改憲勢力を確保するために、各党との修正協議で柔軟に対応する考えを示した。憲法九六条改正を巡っても、安倍首相は条文ごとに要件に差をつける案を含めて検討する考えを表明している。これに対して、日本維新の会の橋下共同代表は、「九六条の先行改正は必要」と明言するなど、首相との歩調を合わせながら、首相のぶれを批判した。自民党と連立を組む公明党の山口那津男代表は、九六条の先行改正について「やるべきではない。手続きより、どこをなぜ変えるのか議論する」とし、「加憲」の立場からこの議論に加わる意向を示している。
   
民主党の海江田万里代表は「九六条先行改正には反対だ」としつつ「政党間で努力をして、これならと納得できるものにしなければならない」と語っており、協議には応じる姿勢のようである。みんなの風は、改憲そのものに反対はしていないが、まず首相公選制、道州制の導入が先だとそれらを優先させることを主張している。共産党、社民党は、改憲には断固として反対の姿勢である。生活の党、みどりの風は、改憲には消極的で九六条改正には、反対の態度である。何よりも前掲の世論調査(朝日新聞)では、自民党の九六条改正に反対する国民は、48%に達し、賛成は31%に止まっている。
   
さて、参院選挙の結果を受けて、安倍首相は、持論の憲法改正に向け本格的に動き出す構えである。当面の焦点は、改憲案の発議要件となる衆参両院の「3分の2以上」の改憲勢力を、首相主導で確保できるかどうかである。
   
与党は衆院では3分の2以上を占めているが、参院は複雑である。首相は、参院の改憲勢力を結集して発議要件を過半数に緩和する九六条改正先行について各党の賛同を求める構えである。前述したが、日本維新の会は、同調する動きで、みんなの党も考え方では違いはない。民主党内にも同調する意見がある。ただ、連立を組む公明党は、簡単にはいかないようである。
   
こうした状況を踏まえ、首相は国民投票法の付則の見直しを今秋の臨時国会で目指すとしている。付則では、18歳以上としている投票権を公職選挙法などと整合させるように求めている。さらに集団的自衛権の行使容認である。首相は、私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」で検討を進める方針である。政権内では、秋に提言がまとまり首相が年内に憲法解釈変更を閣議決定、来年の通常国会で自衛隊法改正など関連法の整備に乗り出すと言われている。
   
また、原発・エネルギー政策では、前政権の「原発ゼロ」政策の転換をめざす自民党に対して、日本維新の会以外の他の8党は「脱原発」や「脱原発依存」を掲げて自民党を批判して参院選挙を戦ってきた。福島で自民党公認候補が当選したが、原発推進を正面から掲げて戦ってはこなかった。また、東京選挙区では、原発反対の1つに絞って戦った山本太郎候補者が当選したことなど、国民の中には依然として「脱原発」を求める声は、根強くある。
   
いずれ安倍内閣は原発再稼働を判断することになると思われるが、しかしながら自治体、そして地域住民の理解が得られなければ、一歩も進まない現状は変わらない。直近の国民世論調査では、自民党の策動する原発再稼働に56%が反対しているのである。
   
   

■ 幅広いリベラル戦線構築から反撃に転じよう

参院選挙で自民党がこれだけ圧勝したのは、民主党をはじめ野党、そして労働組合が国民生活防衛の先頭に立てず、国民から信頼されていない反映である。選挙前後の世論調査でも明らかなように、国民意識(民意)と選挙結果には、大きな乖離があることがわかる。決して自民党安倍政権の全ての政策が国民から支持されたわけではない。確かにアベノミクスに代表される経済政策を支持する国民の声は大きいが、これは閉塞感が漂う中で「日本経済を取り戻してほしい」という願望、期待にほかならない。日本銀行が市場のお金を増やす「金融緩和」を強めたことで円安・株高が進み、自動車など輸出産業の業績は上向いた。これで株式を持っている富裕層を中心に、もうかり、宝飾品や高級マンションが売れている。
   
だが円安で輸入品が割高になるため、電気代や食料品は値上がりし、また、金融市場の乱高下で住宅ローンの金利が上昇し、家計を圧迫している。物価は上昇し、企業の儲けは増大しているが、働く者の賃金は、この10年切り下げられ続けている。さらに、社会保障改革で、社会福祉は切り下げられ、消費税率引き上げが追いうちをかける。TPP参加で日本農業の破壊も深刻化する。
   
このようにアベノミクスの「副作用」はこれから広く深く拡大する。独占の利益確保を第一とする経済成長を促進するために労働移動を促進する労働法制の規制緩和、限定正社員制度の導入と裁量労働の対象範囲の拡大などは、かつての労働ビックバン(解雇の金銭解決制度など)の再来を思わせるものがある。
   
安倍自民党は参院選挙に勝利したから決して安泰でいられるはずはないのである。次の逆転に向けてわれわれはしたたかに、準備しなければならない。
   
(7月22日)
   

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