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●2013年6月号
■ 地方交付税・賃金削減阻止の取り組み
   自治労山形県本部 五十嵐光彦
 

■1. はじめに

政府は、2013年度予算編成に先立ち、1月24日に給与関係閣僚会議・臨時閣議を開催し、「平成25年度における地方公務員給与については、国家公務員の給与改定及び臨時特例に関する法律(24年度法律第2号)に基づいて国家公務員の給与減額措置を踏まえ、各地方公共団体において、速やかに国に準じて必要な措置を講じる」よう要請した。
 
今回の賃金削減問題は、私たち自治体労働者にとって、この間の賃金抑制と今年4月からの「退職手当削減」に続く賃金削減問題であり、組合員1人ひとりの生活設計への影響など極めて大きな問題である。
 
自治労山形県本部としては職場からの取り組みを軸として、春闘期から県公務労協や連合山形と連携し、賃金削減が地域経済に与える影響について自治体・商工団体への要請キャラバン行動などの取り組みを行ってきた。今回の賃金削減攻撃の基本的な問題点とこれまでの取り組み経過について報告する。
 
 

■2. 基本的な問題点

(1) 憲法九二条の地方自治の本旨に反し、地方交付税の持つ機能を否定するもの
 
「自治」とは、自らのことを自らの手によって決定し、執行することである。自治体には国から関与を受けることなく、国から独立した団体として地方行政を処理する権限があり、これが憲法九二条に掲げられた「地方自治の本旨」である。自治体の首長の任務には、予算の「調製」と「執行」があり、これは首長専属の権限である。そのなかには自治体職員の人件費をどの程度にするかについても当然含まれるものである。1月24日の閣議決定では、前述のように、「国家公務員の給与減額支給措置を踏まえ、各地方公共団体において、速やかに国に準じて必要な措置を講じるよう『要請』する」としているが、本来これは、あくまでも国から自治体への「お願い」でしかない。
 
今回特に問題となるのは、その「要請」に地方交付税削減という手法を用いたことである。自治体間は、面積や人口、地理的条件や経済的要因などにより財政力に大きな差がある。地方交付税は、その財源の均衡化を図るための制度であり、自治体の固有かつ共通の財源である。そのため、国は地方交付税の使い道を自治体に強要することはできない。今回政府は、各自治体の交付税算定のもととなる「基準財政需要額」(自治体運営に必要と想定される金額)のうち、職員の給与に関する部分を削除している。結果として、地方交付税もその分減ることになる。これは、地方交付税を、地方公務員の賃金削減の手段として使おうということに他ならない。財政基盤の弱い小規模自治体ほどその影響を受けることになることから地方6団体も反対している。
 
(2) 賃金は労使間の交渉で決めるべきで、労使自治への不当な介入
 
地方公務員の賃金は、労使間の交渉で決着し、自主的に条例で定められているものであり、今回の措置は、労使自治に対する不当な介入である。麻生財務大臣は、この間、「どのような自治体であっても、国の給与水準を超えてはならない」という趣旨の発言を繰り返しており、自治体の自主性を完全に否定している。また、自民党は、「人事院勧告制度尊重」を公約に掲げながら、国家公務員・地方公務員を含めて賃金削減により総人件費を大幅に削減しようとしており、全く矛盾していると言わざるを得ない。人事院勧告制度という労働基本権制約(剥奪)の代償措置を無視するのであれば、労働基本権の制約(剥奪)そのものを見直すことが不可欠である。
 
(3) 10年間で、地方自治体は、国をはるかに上回る行政改革(賃金や人員など総人件費抑制)を行っている
 
2002年の小泉政権による「三位一体改革」以降、この10年間で地方交付税は、都道府県全体で約1.6兆円、市町村全体で約1.6兆円が削減された。国が2012年から2年間、臨時特例法により削減する効果額は約0.6兆円に過ぎないことから、地方自治体の首長からは、「国家公務員の給与削減は『瞬間風速』で一時的なものだ。これと単純に比較して地方が高いというのは理屈が通らない」の発言も出ている。また、「集中改革プラン」や市町村合併などにより、職員数も減少の一途をたどっている。この10年間で都道府県全体(一般行政職)は18%、市町村全体(一般行政職)は16%の人員削減を行っている。
 
(4) 疲弊した地域経済にマイナスの影響を与える(山形県内経済にとって、総額171億7000万円のマイナスの影響)
 
地方交付税減額措置により地方公務員の賃金が国家公務員と同じように下がれば、疲弊した地域経済にさらにマイナスの影響を与えることとなる。
 
実際どの程度マイナスの影響を与えるのかということで「山形県地方自治研究センター」として試算を行い、地元マスコミでも取り上げられた。試算によれば、国家公務員と同様の措置(2012年度から2年間、月給平均7.8%、一時金10%の減額支給)が、山形県内の地方公務員(県、市町村、警察など)3万1500人に対して実施されれば、総額146億4500万円の給与が減額され、県内地域経済に与えるマイナスの影響は総額171億7000万円になることが明らかになった。その内訳として、
 
・1 県内産業の生産額が75億7100万円減、雇用は554人減
地方公務員の消費支出が減ることによって、産業別生産額が、第一次産業で1億1300万円、第二次産業で6億700万円、第三次産業(特に商業・サービス業)で68億5100万円減額となる。そのうち、市町村で最も大きい影響を受けるのは、山形市の20億6300万円で最も少ない自治体で1700万円である。また、この影響による雇用者の減少は県全体で554人(うち第三次産業488人)で最も多い山形市で141人となる。
 
・2 県外からの購入額が39億3000万円減
県民及び県内の企業は、消費行動や生産活動をする上で、県内のみならず他の都道府県や海外からも様々な買い物をしている。地方公務員の給与減額が実施されれば、その購入額が減り、購入先に対してもマイナスの影響を及ぼすこととなる。このことは、県外の自治体が同様の給与削減を実施した場合も、山形県からの購入額にマイナスの影響を与えることとなる。
 
・3 県や市町村の税収や社会保険料が24億4500万円減収
・4 将来の消費支出が32億2200万円減
住宅や車の購入、子どもの教育費など長期的な積立やローン返済に充てる資金にもマイナスの影響を及ぼし、将来の消費が下がることにつながる。
 
 

■3. 職場・地域からの具体的取り組み

(1) 組合員の賃金・生活実態を踏まえて労使交渉強化
 
前述のとおり、今回の賃金削減問題は、この間の賃金抑制と今年4月からの「退職手当削減」に続く大幅な賃金削減問題である。県本部としては、たたかい方やその結果如何では組合脱退者も出かねない問題であるという危機感と構えを持って、組合員・単組・県本部一体のたたかいを重視し、春闘段階から自治労本部提起を受け取り組んできた。
 
本格的には、3月14日の今春闘の対自治体闘争山場を終えて、3月15日に県本部拡大闘争委員会を開催し、4月2日を統一要求書提出日、4月10日から25日を交渉ゾーンとし、4月26日を全国統一行動日(一時間ストライキ)として各単組に提起した。単組からは、「全国各県本部で本当にストライキを配置できるのか。ストライキ体制確立に向けた学習会や意思統一の場を丁寧にやって欲しい。10年以上ストライキを実施していない中で本当にストができるのかという組合員からの声が多い。ストを経験している先輩・OBの協力が必要だ。ストを実施した場合地域のなかで孤立してしまうのではないか不安である」などストライキ配置に対する不安を訴える発言が相次いだ。一方で、「どこまでやれるか分らないが、これ以上の賃金削減は許せない、執行委員会や職場委員会で議論しスト準備を行っていきたい」などの前向きな発言もあり、ストライキについては、各単組それぞれの力量に応じて一歩前の課題を設定し取り組むこととした。
 
その後、各総支部・ブロック毎の会議や県本部執行部による単組オルグを徹底しながら取り組みを進めた。
 
また、県本部として、4月中旬には、公務労協や組織内県議会議員などと連携し、県知事・県市長会長・県町村会長に対する要請行動を行ってきた。県知事からは、「国の交付税削減による給与削減の強制は極めて遺憾である。県としてどうするかは検討中である」。県市長会長からは、「事の発端は民主党政権時代に国家公務員の給与削減を行ったことではないか。県市長会・全国市長会としても皆さんと同じ見解であり国に対し地方交付税を削減しないよう要望している。具体的対応は県の動向を見ながら検討していく」。県町村会長からも、「皆さんと同じ見解である。私としては給与を削減したくない。できれば県町村会として統一対応ができないかどうか話し合っていきたい」。など我々と同じ見解を引き出すことができた。
 
こうしたなかで、統一要求書の提出については、自治体単組でいえば、県職連合をはじめ三六単組のなかで、時期を若干ずらしながらも全ての単組で提出し、当局へのストライキ申し入れは二三単組での提出となった。ストライキ申し入れについては、初めての経験となる単組執行部が大半であったが、まずは、ストを構えて、ストを背景にして交渉を行うことを重視してきた。また、各単組の交渉と当局からの回答に応じて、各単組がどこまでできるのかという一歩前の課題を設定して取り組み、最低でも時間外職場集会を開催することとした。
 
その後、当局との交渉・協議は三五単組で実施され、4月26日の統一行動については、各自治体首長ともに、「国からの地方交付税削減は遺憾である。賃金は削減したくない。他市町村の動向を見て引き続き、継続して労使合意を前提に交渉・協議を行う」などの回答が多く、29分時間内食い込み集会が一単組、勤務始業前や昼休み時間、勤務終了後などの時間外職場集会の開催が三五単組となった。全体として一単組で削減提案があったが引き続き継続して交渉していくこととなり、5月連休以降の第二次山場に向けて継続して交渉を行うこととなった。
 
第二次の山場は、各単組での4月26日までの到達状況を踏まえ、6月議会前決着とし、4月末から5月2日にかけて各総支部委員会・ブロック別会議を開催し意思統一を行った。5月連休明けから県本部執行委員会や単組オルグを徹底し、5月7日から28日までを単組交渉ゾーン、5月29日を統一行動日(1時間ストライキ)としている。
 
これまでの交渉・協議のなかで、5月17日現在、賃金削減を実施する旨の具体的提案を受けて交渉を行っているのが二単組、実施しない方向で検討している自治体が9自治体、実施したい方向で検討している自治体が8自治体となっている。大半の自治体が県や他自治体の動向を見て対応を検討中となっている。多くの自治体首長は、「国は地方自治体に対して賃金削減をしなくてもペナルティーはないとしつつも、ペナルティーが来るのではないかという不安を持っている」のが率直な気持ちである。
 
来週(5月22日)から各単組は本格的な交渉に入ることとなるが、職場組合員からすれば、この間の賃金抑制や人員削減など厳しい賃金実態・生活のなかで、労働組合に対する期待は大きい。この期待感に応えるためには、引き続き職場から組合員自ら参加する大衆運動の構築、拠点単組の設定など県本部統一闘争として単組・県本部一体のたたかいが重要である。あくまで賃金削減阻止、最低でも6月議会提案見送りを到達指標として、6月議会最終日まで交渉・協議など、たたかいは続く。
 
(2) 連合山形との連携強化
 
公務員の賃金削減は民間職場、地域経済に大きく影響することから連合山形と連携した取り組みを行った。
 
具体的な取り組みとして、1つは、「地方交付税削減反対、公務員賃金削減阻止」を課題として、4月15日から3日間の日程で、県内二班に分かれて、連合地域協議会単位に「連合キャラバン行動」を行った。県公務労協三役と連合各地域協議会三役で街宣行動を行いながら連合山形会長名で県内全ての自治体首長と商工団体(商工会・商工会議所など)に対する要請行動を行った。県公務労協三役と民間出身の連合地域協議会三役の共同行動として行うことができた。また、自治体のキャラバン隊受け入れの日程調整などは単組三役が対応し、要請先の自治体で首長自ら対応するところが多かった。当然要請行動には単組三役が同席した。4月26日の山場を前にしたこの取り組みを通じて単組三役の構えや真剣さも増してきたように感じる。
 
2つ目は、連合山形としてのキャラバン行動を踏まえ、4月26日の山場に向けた総決起の場として、4月20日に、「地方切り捨て反対総決起集会」を開催した。土曜日の午後からの開催であったが、連合傘下の民間労働組合からも多くの参加を頂き全体で450人の参加となった。集会前段に公務労協として市内デモ行進も実施した。
 
こうした2つの取り組みを連合山形として実施することができたことは「産別自決」の克服に向けて一定の成果であり、今後の連合運動強化につながる取り組みである。一方で、中小民間労組の役員からは、「そうは言っても、公務員はまだ良いよね。我々より賃金高いし」という声が聞こえてくる。ここをどう克服していくかが課題であり、お互いの賃金や生活実態を交流し共有化するなかから、賃金や生活実態改善に向けた共同行動・共同闘争の積み上げが重要である。
 
(3) 県内商工団体に対する要請行動
 
今回初めての取り組み・試みとして、地域経済に与える影響という観点から、県内全ての自治体の商工会と商工会議所を訪問し要請行動を行ってきた。
 
要請内容は、「政府が進めようとしている地方交付税の削減及び地方公務員の給与削減は、地域経済に多大な影響を及ぼすため、実施しないよう当該自治体首長に要請して頂きたい」という内容である。
 
多くの商工団体は要請内容について理解を示していただき、7つの商工団体で要請書に署名し、当該首長に提出した。訪問先の商工団体の皆さんからは、「景気が良くならず大変ですよ。年々シャッターを閉じる店が多く会員数も減少している。アベノミクスは地方に関係ないし、消費税は全国一律で不公平感を感じる。公務員は給料が高すぎると思うが、国から地方に来る金が減るのは困る。市役所の人はもっと地元商店街で買い物をして欲しい」などである。
 
アベノミクスは大都市を「優遇」し、地方交付税減額(公務員賃金削減)はさらに、大都市と地方の格差を拡大していく。そして、消費税は全国一律で地方経済をさらに衰退させる。そのことが実感できた。
 
こうした状況のなかで、地方における「統一戦線」とまでは行かないが、反自民の立場での地方からの共同行動(民主主義運動)としての成果はあったと思うし、今後に活かしていきたい。
 
なお、基本はあくまで、職場からのたたかいであり、職場からの取り組みを軸に地域に打って出る行動としての試みである(5月17日記)。
 

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