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●2011年2月号
■ 1%配分増を求めた連合2011春季生活闘争
  善明 建一
 

連合は2010年12月2日に開催した第59回中央委員会で、2011春季生活闘争方針を決定した。 これを受けて、傘下の産別労組は2月までに要求を決定し、3月決着をめざして本格的な労使交渉が行われる段階になっている。
 
連合が決定した2011春季生活闘争方針のポイントは、

  1. 全労働者の労働条件の改善に取り組む、
  2. 賃金水準を重視した取り組みを徹底し、賃金水準がピークであった1997年水準の早期復元をめざす、
  3. 非正規労働者は時給ベースで正社員を上回る賃上げ、
  4. 「パート共闘」を軸に、「非正規共闘」を立ち上げ、非正規労働者全般の待遇改善の取り組みを展開する、
  5. 共闘連絡会議(5つの共闘組織)で闘争態勢を強化し、各産別の代表銘柄(職種、年齢、勤続)を整備するとともに、新たに「中堅代表銘柄」を設定する
など、2010年春季生活闘争の総括から、一歩前進した内容、取り組みが提起されている。 実はこの方針は、2010年10月21日の連合中央執行委員会で「2011春季生活闘争の基本構想」として確認され、これを同年11月1〜2日の2011春季生活闘争中央討論集会に提起され議論されてきた経過がある。議論では、
  1. ピーク時賃金水準の早期復元と2011春季生活闘争ベア要求との関係、
  2. 「非正規共闘」の運動強化と具体的取り組み、
  3. 代表銘柄の拡大と情報開示のあり方、

などが中心的に議論されたが、これらの意見を踏まえて、中央執行委員会の議を経て12月2日の連合第59回中央委員会に補強して提案されたものである。
 
こうした2011春季生活闘争方針をめぐる論点と決定された方針の特徴、その課題などを検討することにする。
 

■1. 2011春季生活闘争の意義と取り巻く情勢

(1) 2011春季生活闘争の意義
まず2011春季生活闘争方針に示されている春季生活闘争の意義について、「はじめに」で、次のように述べられているので長くなるが紹介しておきたい。
 
「……長期間に及ぶ家計と企業のバランスの歪みは、労働者の雇用・生活を切り崩すとともに、日本経済の行き詰まりという結果をもたらした。賃金はピーク時から大幅に下落し、その結果、消費は低迷、国内需要は大きく縮小した。……だが、経営側は、ミクロの論理に終始し、総額人件費の抑制による国際競争力強化という従来のやり方を変えていない。こういうやり方をこれ以上つづければ、低成長とデフレのわなから抜けだすことはできず、近い将来、所得はより一層の『減少局面』を迎え、国民は現在の生活レベルを落とさざるを得ない必要に迫られる。そうなれば日本は崩壊への道を歩むことになりかねない。
低下をつづける賃金を速やかにピーク時の水準まで復元し、企業部門から家計部門への所得移転をはかると同時に、この間もっとも犠牲になってきた非正規労働者の雇用と生活を向上させなければならない。成長を取り戻し、そして、その成長の適正な配分が消費拡大へとつながる好循環にしていかなければならない。
2011春季生活闘争は、国民の暮らしや生活に蔓延する『閉塞感』を打破するとともに、日本経済をデフレ循環から脱却させ、活力ある社会への転換、『希望と安心の社会づくり』(2010年12月2日、第39回連合中央委員会で決定されたもので、これは01年10月の第7回連合大会で決定した21世紀ビジョン『労働を中心とした福祉型社会』を発展させた連合の新しいビジョンとされている)をめざしていく」
 
と強調されている。
 
(2) 2011春季生活闘争を取り巻く情勢
「1. 取り巻く情勢」では、経済情勢と労働者状態を次のように分析し、2011春季生活闘争の課題を明らかにしている。

  1. 景気判断は10月以降、先行き不透明
    実質国民総生産(GDP)は、2010年7〜9月期、年率換算で3.9%増となったが、急激な円高や株価の低迷、海外経済の動向などに加え、国内ではエコカー補助金・エコポイント対象減などの景気刺激策廃止による需要の反動減の懸念もあり、10-12月期ではマイナス成長になるとの見方もある。
    日本銀行短観で先行き(10年12月)の業況判断をみると、大企業、中小企業も「悪くなる」が増える傾向にあるが、特に中小企業の厳しさがうかがえる。
     
  2. 2010年9月期中間の企業収益は回復傾向
    法人企業動向調査によると、2010年4〜6月期の経常利益は全産業(金融・保険を除く)で83.4%の増益(前年同期比)となり、3四半期連続で増益となった(筆者――その後、2010年9月期中間決算が出そろったが、上場企業のうち大企業《650社》は、リーマン・ショック前の中間決算水準に回復している)。
    増益企業は、自動車、電機など外需型産業が好調で、内需型産業の収益構造は依然として厳しい状況は変わっていない。
     
  3. 依然として続く賃金の低下
    厚生労働省の「毎月勤労統計」で2010年に入ってから現金給与総額の動きをみると、所定外労働時間の増加と一時金の回復により1%前後の増加で推移している。しかし、所定内給与は09年頃の1%超の減少から改善傾向がみられるものの0.2%前後の減少が続いている。
    現金給与総額を1997年と2009年の長期で比較すると、一般労働者で5.1%減少となっている。賃金構造基本統計調査でみても賃金水準の低下傾向は明らかで、同調査(一般労働者)の所定内賃金を労務構成の変化の影響を除いた推計値で、97年と09年を比較すると、全産業・規模計で7.0%減少、1000人以上規模で5.8%減少、10〜99人規模で9.1%減少している。
    また、家計調査の賃金(実収入)と支出(消費)の動きをみると、97年と09年を比較すると、実収入は12.9%減少、可処分所得も13.9%減少、消費支出は10.8%減少している。
     
  4. 厳しさが続く雇用情勢
    完全失業率は2010年6月の5.3%をピークに除々に低下し、9月は5.0%となったもののその水準は依然として高い。有効求人倍率も0.5倍台となっており、厳しい雇用情勢が続いている。
    特に学生の就職活動は厳しいものがあり、高卒では2011年春卒業の有効求人倍率は、0.67倍で前年同期比を0.04ポイント下回り、調査開始(85年3月卒)以来6番目に低い結果となっている。
    また、若年層(25歳以下)の失業率は若干下がったとはいえ、8.0%に達し、失業者数は44万人に達するなど若年層の雇用の深刻さは変わっていない。
    雇用形態別に2010年4〜6月期の雇用者数(労働力調査)をみると、正規労働者は前年同期比2.4%減少したのに対して、非正規労働者は前年同期比3.4%増加し、相変わらず非正規化の動きが続いている。
    しかし、派遣労働者はこの間激減し、2008年の10〜12月期には146万人であったものが、2010年4〜6月期には90万人となっている。
     
  5. ワーク・ライフ・バランスの現状
    所定内労働時間は、これまでのピークに比べ1割以上も低い水準にあるが、2010年に入り2ケタの増加基調(産業計)となっている。製造業は3月に61.1%増となるなど猛烈な勢いで所定内労働を増加させてきた。
    これに比例して賃金不払い残業もなくならない。2009年度の賃金不払い残業の是正企業は1221社、支払い総額は116億円超となった。有給休暇の取得率も相変わらず低く、2009年は47.1%にすぎない。
    連合は2010年に減少した労働時間をもとの長時間労働に戻させないために、ワーク・ライフ・バランスを実現する運動を引き続き推進するとしている。
     

■2. 産別労組に促している具体的取り組み

連合2011春季生活闘争方針で提起されている春季生活闘争の意義と取り巻く情勢をみてきたが、次に肝心な2011春季生活闘争の取り組み、その内容を検討してみる。
 
(1) 97年の賃金水準に復元させる取り組み
連合は、2011春季生活闘争を「すべての労働者の労働条件の改善」に向けた2年目の闘いとして位置づけ、配分を求め、より社会性を追求した運動を展開する。そのことでデフレからの脱却を図り、労働者への配分の歪みを是正し、個人消費を喚起し、経済の活性化を図っていくとしている。
 
その上でマクロ的観点から、すべての労働者に1%を目安に配分を求め、労働条件の復元・格差是正にむけた取り組みを行う。これは厚生労働省の「毎月勤労統計」の現金給与総額(年平均5人以上)の報酬はピーク時の1997年に比べ、5.1%下がっている(就労形態計はマイナス12.3%)ことが根拠にされている。
 
賃金水準の復元という名目で、賃金構造維持分に加えて、1%を目安に配分引き上げを求める。これは直接的な「ベア要求」に限定せずに、各単組の置かれた状況なども勘案して、福利厚生や一時金、諸手当を含む総原資の1%配分増加を求め、早期のピーク時への賃金水準復元をめざすことを産別労組、単組に促していることが、2011春季生活闘争方針の特徴である。
 
例えば私鉄総連は「1人平均約2.0%(定昇相当分)プラス2500円(ベア分)」の7600円の賃上げを要求する。JAMは賃金構造維持を基本に、ここ数年の賃金低下7500円を5年以内で復元するとし、2011春季生活闘争ではこれに見合う1500円以上の水準引き上げを要求することを単組に促している。
 
一方、電機連合は2011春季生活闘争で賃金改善の統一要求を見送り、傘下の労組は「定昇の完全実施や賃金体系の是正」を優先して交渉に臨むことになる。賃金改善交渉で影響力のある自動車総連も同様で(日産労組は実質的に1000円の賃金改善を要求)、基幹労連は、隔年で交渉しており2011春季生活闘争では賃金改善を要求しない。
 
このように連合方針である1%を目安とした配分増要求は、評価できるが、産別労組によってまちまちであり、連合方針との隔たりが大きく統一闘争とはなりえていない状況である。これでは「親メーカーの労組より高い賃金要求を使用者に説明することはできない。大手がベア要求をしない中で、中小で取り組みができるのか」という中小労組に少なからずある連合方針に対する不満は解消されず課題は残されたままになっている。
 
また、すべての組合が取り組むミニマム運動課題は、昨年と同様に、

  1. 賃金カーブ維持分の確保、
  2. 非正規労働者を含めた全労働者を対象とした賃金をはじめとする待遇改善、
  3. 企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げ、
  4. 産業実態を踏まえた総実労働時間の短縮、時間外・休日労働の割増率の引き上げ等

――を挙げている。
 
(2) 非正規の賃金は正社員を上回る引き上げ
非正規労働者の労働条件改善については、従来の「パート共闘」を中心に、新たに「非正規共闘」を設置し、取り組みを展開するとされていることが、2011春季生活闘争方針のもう一つの特徴である。
 
具体的には、

  1. 非正規労働者に関するコンプライアンスの徹底については、すべての組合が取り組む、
  2. 非正規労働者の正規化の促進をはかるため、正社員登用制度の創設をはかるとともに、パートタイム労働者だけでなく、派遣労働者等間接労働者全体を含む非正規労働者の労働条件の改善の取り組みを展開する、
  3. 非正規労働者の労働条件を正規労働者に近づけるために、均等・均衡を踏まえて、正社員と変わらない働き方をしている労働者は、時間給ベースで正規労働者を上回る賃金の引き上げ(時給40円)、福利厚生の適用・充実を追求していく

――など、「すべての労働者を視野にいれた闘争」の充実を図ること、その闘争の進捗と結果についての報告や情報開示を徹底することを提起されている。
 
「パート共闘」の「2011重点項目」では、

  1. 昇給ルールの明確化、
  2. 一時金の支給、
  3. 正社員への転換ルールの明確化・導入、
  4. 通勤費・駐車料金、
  5. 慶忌休暇、
  6. 正社員と同様の時間外割増率適用、

などを挙げている。
 
(3) 企業内最低賃金と到達すべき水準
全労働者の労働条件改善のために、企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げをはかる。企業内最低賃金は、その産業に相応しい水準で協定し、これをもとに特定(産業別)最低賃金の水準引き上げに結びつけていくとして、一八歳高卒初任給の参考目標値として、一6万3000円を提示している。
 
同時に介護やサービス産業など第三次産業分野の新設を図っていくなど、格差是正、均等待遇に向けた大きな柱に最低賃金の水準引き上げが位置づけられている。また、公契約基本法・公契約条例の制定、下請け法などに関する取り組みも強化するとされている。 連合が掲げる「誰もが時給1000円」や全国的な地域別最低賃金の引き上げ、成果配分、正社員との格差是正等を勘案し、絶対額1000円程度。地域別最低賃金引き上げ額の目安……A・Bタイプ:40円(昇給込み)、C・Dタイプ:20円を要求する。
 
さらに中小・地場の取り組みとして、到達すべき水準値(参考)として以下の通り設定している。
 
  25歳:  19万0000円
  30歳:  21万5000円   1歳1年格差
  35歳:  24万0000円   5000円
  40歳:  26万5000円
 
賃金引き上げ要求目安としては、賃金カーブ維持分を策定可能な組合は、その維持原資を労使で確認する。これが困難な場合は、賃金カーブの維持分として4500円を要求する。また、賃金水準の低下や格差などの状況に応じて、賃金改善分として1%を目安に要求し交渉を展開するとしている。
 
(4) ワーク・ライフ・バランスの取り組み
ワーク・ライフ・バランス実現に向けて、次の課題を提起している。総実労働時間短縮では、

  1. 労働時間の上限規制(特別条項付き三六協定)を徹底する、
  2. 休日増をはじめとする所定労働時間の短縮、労働時間管理の徹底、年次有給休暇の取得促進、
  3. 割増率の引き上げ――時間外労働が月45時間以下30%以上、月45時間超50%以上(対象期間が3カ月を超える1年単位の変形労働時間制は、月42時間超を50%以上)、休日50%以上

とされている。
 
両立支援の促進では、

  1. 2012年6月末まで、3歳までの子を養育する労働者に対する短時間勤務制度と所定外労働の免除制度、介護休暇制度の導入が猶予される100人以下の企業について、積極的な制度導入に取り組む、
  2. 改正育児・介護休業法の定着に向け、契約期間が一年以上の有期契約労働者への適用を促進する。育児休業、介護休業、子の介護休暇、短時間勤務、所定外労働時間の免除、介護休暇の申し出や取得により、労働者が解雇されたり、昇進・昇格の人事考課等で評価対象としない等、不利益取り扱いを受けないよう労使協議を行い、法の趣旨を徹底する、

などを挙げている。
 
ワークルールの取り組みでは、

  1. 労働関係法令の遵守の徹底(パート・有期契約・派遣・請負労働者等について、労働者派遣法、パート労働法や、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」をはじめとする労働関係法令)、
  2. 六五歳までの雇用確保、
  3. 障がい者雇用の促進、

などを挙げている。
 

■3. 政策・制度を「運動の両輪」として

政策・制度闘争は、「2011春季生活闘争における賃金・労働条件改善の取り組みを『運動の両輪』として、強力に進める」とされている。
 
具体的には、

  1. デフレ脱却・消費回復に資する経済対策(新成長戦略の推進による新たな雇用創出と安定的な名目成長の実現、地域活性化に向けた中小企業・地場産業・農林水産業の育成)、
  2. 労働者派遣法改正案の早期成立、
  3. 中期的な視点に立った最低賃金引き上げの実現、
  4. 求職者支援制度(トランポリン型の「第二のセーフティネット」)の確立、
  5. 有期労働契約の労働者保護のルールにつていての法整備、
  6. 公正な取引関係の実現(公契約基本法と公契約条例の制定)、
  7. 税制改革(所得再分配機能の強化及び不公平税制の是正、納税者権利憲章の制定と社会保障・税共通の番号制度の導入)、
  8. 労働基本権の回復など民主的な公務員制度の確立、

などを挙げている。
 
これらを強力に推進していくため、政府との各レベルでの政策協議(「政府・連合トップ会談」、「政府・連合定期協議」、「省庁別協議」)や民主党との政策協議などを通じて意見反映を行う。また、労働者派遣法改正案の早期成立や求職者支援制度の確立に関する世論喚起に向け、中央集会・街頭宣伝を含む各種広報活動を精力的に展開する。
 
地方連合会においても「運動の両輪」や2011年4月の統一地方選挙との連携を意識し、早期に実施可能な政策課題に取り組みつつ連合本部・構成組織と一体となった総合生活改善闘争を推進する。
 

■4. 闘争態勢――闘いの進め方

(1) 5つの共闘連絡会議と有志共闘の役割
5つの各共闘連絡会議を中心に、総がかり態勢で労働条件の復元をめざすために、すべての産別・単組が力を結集し春季生活闘争を展開していくように強く促している。そのために有志共闘は前段の回答における相場形成にその役割を積極的に果たしていくとされている。
 
一方で新たに設置する「非正規共闘」の主な任務は、均等・均衡処遇の実現に向けた取り組みや派遣労働者のための労使協議を行っていく。また、直接雇用者に対しては、前述したパート共闘方針の六つの重点項目を中心にした取り組みを展開する。
 
ちなみに2010春季生活闘争で非正規労働者に関する要求もしくは取り組みを行った組合は、3161組合(2009年比プラス685組合)である。これは連合が2010春季生活闘争方針で「すべての労働者を対象とした労働条件の改善」を打ち出したことが大きく、これを契機にして産別労組・単組が非正規労働者の処遇改善に向けて、大きな一歩を踏み出すことになったということができる。
 
2010年パート共闘会議は、5年目を迎え、同年6月末までに要求及び解決内容の集約が可能な18産別(オブ2産別を含む)によって構成された。取り組みは前述したパート共闘方針の6つの重点項目に集約されるが、パートタイム労働者等の待遇改善に取り組んでいる組合数は、パート共闘以外の6産別・205組合を含む、21産別・2619組合(09年18産別・2249組合)となっている。
 
そのうち時間給の引き上げについては、1138組合が要求し、254組合が前進妥結となったが、時間給換算で可能な367組合(タイプ含む、424組合)の要求引き上げ額は、27.44円(単純平均)、妥結額は11.35円(タイプ含む、単純平均)となった。引き上げ額は09年と比較した場合、2.13円下回る結果となったが、厳しい環境の中で一定の成果をあげたといえる。
 
パートタイム労働者を含む全従業員対象の企業内最低賃金協定の取り組みは、2010年においては294組合が要求し、234組合で協定が締結され230組合が前進解決している。また、派遣、請負労働者に関する労使協議等を行った組合は、1239組合にのぼり間接雇用労働者に対する取り組みも進みつつあることを示している。
 
だが連合全体からみた場合、「非正規労働者」との連帯運動はきわめて不十分でようやく昨年から運動強化に向けて取り組みが始まったというのが現状である。
 
組織拡大は、8産別・103組合で3万1803人の拡大となり、厚生労働省の「労働組合基礎調査結果」(10年6月)で推定組織率は18.5%で前年と同じとなった。パート労働組合員数は70万(前年比8万4000人増)、推定組織率が前年比0.3%増の5.3%である。
 
(2) 新たに「中堅代表銘柄」の設定
2010春季生活闘争では、「代表銘柄」とし62の銘柄を設定したが、2011春季生活闘争では、これに加えてあらたに「中堅代表銘柄」を設定し、さらに、非正規労働者の時給と正規労働者の月給をつなぐための指標としての時間当たり賃金を示すとしている。「代表銘柄」は、ナショナルセンターとしての役割として、大括りの職種別、業種別賃率を形成していくことを目的としたものである。
 
2010春季生活闘争では、具体的な賃金指標を公表したことで、分かりやすい運動につながったことへの評価もある。共闘連絡会議を中心に、交渉前段の取り組みとして中核組合(395組合)の賃金水準、賃金カーブ維持分(定昇およびその相当分)の開示を行った。これは中核組合の賃金カーブ維持分、賃金水準を参考にしながら、全ての組合で賃金カーブ維持を確保しようというもので、同時に「上げ幅」の運動から「絶対水準」をめざした運動へ切り替えて行く上で大きな意味があり、連合全体でこうした運動を推進したことの意義は大きい。 これを強力に推進していくために、2011春季生活闘争でも共闘連絡会議代表者会議、書記長・事務局長会議を適宜開催し、中小・地場組合に対して効果的に相場を波及させるための協議を行うと提起されている。2011春季生活闘争では、こうした企業を超えた運動を継続しさらに前進させなければならない。
 

■5. 春季生活闘争を単組、地域から組織しよう

2011春季生活闘争は、産別労組、単組、そして地方連合会の総がかりの闘いが強く求められている。連合は「非正規共闘」運動を強化していくために、間接雇用労働者に向けた取り組み事例集を発行している。これには16産別・単組から派遣労働者を中心とする処遇改善の具体的取り組みが報告されている。
 
この事例集の発行は、昨年の11月1〜2日の連合中央討論集会で出された「非正規労働者の均等待遇に向けた取り組みの意義は理解するが、単組段階では何をしてよいかわからないとの意見が多い」との声に応えたものである。これをみる限り真剣できめ細かい取り組みが産別労組、単組で始まっていることがわかる。
 
そこで強調されていることは、非正規労働者の実態をつかむこと、交流することが第一歩であることが異口同音に言われていることである。こうあるべき論から、なにができるかを議論し、正規労働者が自らの課題として非正規労働者の労働条件改善要求を組織していく段階にようやくなり始めていることを強く感じさせられる。
 
2011春季生活闘争では賃金水準の1%改善が必要だという指摘に止まらずに、具体的に生活改善に向けた譲れない要求を遠慮なく企業側に要求し、統一闘争として闘うことである。産別、単組、職場、地域から2011春季生活闘争を精一杯組織しよう。  

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