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●2010年9月号
■参院選総括から統一自治体選挙闘争へ
  広田貞治
     

■ はじめに

来春の自治体選挙まで7カ月である。参院選の敗北と異常な酷暑に心身ともに疲弊感を感じているが、いつまでもそんなことを言って候補者擁立と準備活動に少しでも手を抜けば候補者の数も当選率も下がることは火を見るより明らかだとして、反転攻勢をめざして奮闘している仲間が各地にいる。ややもすると惰性に流されがちであろうが、1日も早く共に闘う候補者を擁立し、金がなくても足と運動で勝利を勝ち取る雰囲気を全党で創り出したい。また確率は低いが、ねじれ国会と民主党内が混迷を深めると、来春に解散総選挙という事態もないとは言えない。あるいは財政再建で消費税増税を急ぐ状況判断を民主党政権が下せば、任期満了を待たずに解散ということは十分ありうる。
 
住民福祉と地方自治の観点からも、次期国政選挙準備の観点からも、組織的支持基盤を失った社民党は自治体議員の増大と前進に全力を上げる以外に活路はないであろう。
 

■ 革新のジリ貧感を増幅した参院選挙結果

参院選で投票率は低下した。政治不信の反映であろう。投票した選挙民の多くは保守中道の政党の中から選択をしたといえるのではないか。自民党の議席増は民主党の連続的なオウンゴールによるもので、得票率では民主党に大きく負けたままである。両党に飽き足らない人は公務員たたきを専らとする新自由主義の「みんなの党」を躍進させたが、社民、共産両党は後退した。組織力のある共産党は今日の情勢では勝利できると踏んでいたのに手痛い敗北を喫し、総括が遅れている。社民党は組織、財政力、運動力の低下が著しく、いいことを言っても実現力に大きな疑問を抱かれ、得票や議席を増やすどころか減らす結果になったといえよう。
 
選挙民のこの選択は何を意味するのか、諸資料や生の声から類推してみる。一向に良くならない日本ならびに欧米先進諸国の経済社会の下で、程ほど以上の暮らしをしている人は現状維持でやむをえないと考えている。中間層は薄くなったと言ってもまだ厚い。暮らしに追われているだけの人は社会構造の矛盾を理解できず、政治的無関心は増幅し、沈潜する怒りは資本に向かわず「安定した既得権の上に胡坐をかいている公務員」に向けられがちである。その総和として政治不信は増幅したが左バネは働かず、生活保守化から政治的保守化が進んだと見るべきであろう。寺島実郎氏が指摘するようにマスコミの劣化、一部悪質化もこれに追い討ちをかけている。批判的投書を含め、マスコミ批判も必要ではないか。
 
非正規労働者など底辺諸階層が立ち上がり、連合などの組織労働者がともに闘う連帯意識が強まるにはまだ機は熟していないが、前進の兆しは見えている。いつの時代も「闘いが生まれてしかるべき情勢」と「闘いの発生・高揚」にはタイムラグがある。現在はその狭間と見るべきであろう。こうした状況下でどのような政治的戦略、戦術で乗り切っていくかが当面の鍵である。財界は民主党を財界寄りにし、法人税減税と消費税増税を民主党政権にやらせ、労働の規制緩和を現実的に許容させようとしているようだ。すぐに自民党の政権復帰はないと見るからであろう。連合労働運動がそれを超克できるよう提起したい。
 

■ 来春までの政治情勢はどう動くか

8月、長野県知事選で民主、社民、国新が推した阿部氏が僅差ながら当選した。9月の民主党代表選挙から、臨時国会、予算成立の来春までの通常国会など政治情勢の見通しが、自治体選挙と次期国政選挙をにらんで各党の立ち位置をきめる大きな要素となる。菅政権は年度内税制改革案策定を断念したものの、財政難や社会保障財源の確保を口実として消費税率引き上げ容認気分の醸成は加速され、公務員バッシングが一層強められるであろう。一方でわれわれが望む法人税増税や所得税の累進性強化復活、労働者派遣法改革、郵政改革、子ども手当てなど生活に身近な課題も山積している。
 
普天間の辺野古への基地移転案はどうなるか。8月末の原案決定は先送りされたが、9月名護市議選や11月沖縄県知事選、オバマ来日が今後の帰趨を左右しよう。鳩山のお粗末な政治主導が外務・防衛両省の官僚に押さえ込まれ、党内保守勢力に巻き返されて、従来の自民党政府と変わらないものに押し戻された。また、藩国連事務総長やルース米大使も参列した広島平和記念式典後の記者会見で菅は、北朝鮮や中国を意識しつつ「核抑止力は当面必要」との不用意かつ確信犯的発言を行い、長崎でも同様の発言を繰り返した。それでも、長崎では「非核三原則の法制化」は検討していきたいと言わざるを得なかった。
 
8月10日の日韓併合100年に関する謝罪談話は戦後補償や北朝鮮との国交正常化に触れないものであったが、村山談話を踏まえたものであった。古文書の返還(引渡し)も含め、韓国やアジア諸国の一定の評価を得るものであった。日米韓の関係は複雑であるが、日本が東アジア共同体を展望するなら、その阻害要因にならないよう日米関係を見直し、ドイツ並みの地位協定の抜本改定を行い、安保条約が不要になる情勢を創出していく外交方針に切り替えるほうが賢明であろう。沖縄県民の経済や雇用を多面的に支援して基地経済からの脱却を図ると同時に、朝鮮半島の安定と自主的平和統一の展望に日本は謙虚に協力すべきであろう。
 
保守二大政党化に対する疑問の大きい中で「国会議員が身を切る」として衆議院80、参議院40議席を(比例区で)削減し少数政党を排除しようとする菅民主党の動きは断じて許されない。1票の不均衡の是正対策も含め、小選挙区比例代表併用制に選挙制度を変えるべきであろう。社民党は7月下旬に6項目合意を確認した国民新党に加え、共産党、公明党など他の少数党と協力して制度改悪を阻止する闘いに力を入れるべきである。
 

■ 連立政権の功罪を精査し、戦略的政治対応を

今後の道を定めるためにも、社民党が連立離脱までの8カ月余りを冷静に総括しておく必要がある。予想に反して財源の捻出が思うに任せず公約実現に難渋し、首相の言動がお粗末だったのを除くと、生活面など多くの政策で前進し悪化を食い止めたといえよう。
 
国鉄問題の解決は24年に及ぶ国家的不当労働行為との闘いに苦吟してきた国労組合員と日本労働運動に大きな救いと展望を与えた。バラマキとの批判がある子ども手当ても、エコポイントやエコカーと同様、生活再建に役立ち消費購買力を多少とも引き上げ、内需拡大に役立っている。ただし、子ども手当て増額より保育条件などの整備のほうが雇用も含めて有効だとの見解の方がより正しい。最賃、労働者派遣法抜本改正もささやかに前進しつつあった。こうしたことを考えれば、今後も共通する政策(連立政権発足時の10の柱、33項目の合意など)については社民党が積極的に政府・民主党に働きかけるべきであろう。自民党政治に戻してはならないし、民主党の保守化を安易に進めさせないためにもである。
 
社民党の実現力の不足は政府の良い政策には協力して補うほかにないのは冷厳な事実である。「公約を裏切り保守化した民主党には一切協力しない、すっきり野党として批判だけ」では支持勢力の要求に応えられず、政治にならない。雇用の拡大や安定、社会保障の維持向上、不公平税制の是正と国民の分担、地方分権などを主要テーマとして、多くの生活課題でパーシャル連合に積極的に対処すべきであろう。その時忘れてならないのは、支持協力労組、退職者会、新社会党や革新無所属自治体議員、市民運動体などとよく協議し運動を起こしながら、その運動を国会、地方議会に反映することである。そうすれば、成果を運動者と共有できる。
 
とくに連合内での社民党支持勢力が身動きできない状況を徐々に克服する道を模索することは、すぐ成果が見えなくても科学的社会主義者のとるべき道である。全労協も市民運動も大事にすることは言うまでもない。もちろん、安保政策や改憲問題などで社民党の党是を放棄することはできないが、それ以外で勤労国民の生活や権利、環境に関する問題では1つ1つの改善・改良には積極的に提言し協力することが求められている。困難な状況は続くだろうが、道が完全に閉ざされたともいえない情勢である。当面は比例議席を増やすことを軸に、他党との協力で小選挙区でも勝利できる術を模索しなければなるまい。辻元氏の離党はきわめて残念であるが、その原因を考察し、議員候補者の悩みも踏まえて方策を考慮すべきである。
 

■ 困難な時ほど大局的合意で党の求心力を

敗北、停滞が長く続き、指導部に乱れが生ずると、「党はもうだめか」とか「つくづく嫌になったがいまさら離党も人生を否定するようで嫌だ」と活動と思考の停止に陥る党員が増えやすい。議員は無所属や大政党へ流されたり、支持者の要求実現のために与党化しがちである。機関の幹部は戦略戦術を立てられず、惰性的な機関運営が続くかもしれない。どこかで突破口を切り開こうとしない限り党の前進はなく、暫くのモラトリアムに入ることになる。突破口を切り開くには党内民主主義と意思統一、そして自治体選勝利が必要である。
 
来春の統一自治体選挙は今まで以上に困難に直面している。高齢で勇退する現職議員の後継者探しも難渋しているし、健康上の問題をかかえながらもう1期頑張らねばという同志もいる。そういう情勢の中で若い新人候補も少なからずいる。いずれにしても、早く公認や推薦を決定し、新人候補は金がなければ足と頭を使い、運動で仲間(選挙の中心になれる人を5人)を作りつつ、当選票の2倍を2回歩くくらい(半分は留守)個々面接するといった血のにじむ努力が必要であろう。その努力の中から住民の要求を掴み、選挙戦、選挙後の議会活動に活かす基礎的なものを身につけることができる。
 
首長選では、社民党は中軸に座れないが、安易に現職の保守系首長を推薦せず、より良い首長を幅広い民主勢力の一員として送り出すべきであろう。その過程で多くの住民の実態を知り声を聞くことができる。その輪の中で、公務サービスは公務員労働者でと言い切れる状況を少しでも作り出し、自治体職員に対する合理化や自治体議員削減などの攻撃にも対処し反撃することができる。公契約条例制定など民間労働者の条件の最低基準を守ることも忘れてはならない。自治体選挙勝利は全党を勇気づけ、次期国政選挙に力となる。
 
党の基本組織の弱体化、組織的支持基盤の縮小といった状況を跳ね返すには、共同戦線を拡大し、一致できる政策での政府への積極的協力で、連合内でも社民党支援ができるような状況を作り出すことが必要である。囲碁に「屈して伸びよ」という言葉があるが、迂回や妥協をしながら先の展望を切り開いていくという、真に政治や社会を変えるための戦略的戦術を鍛えていかなければならない。
 

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