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●2010年8月号
■参院選挙結果と混迷を深める政治状況
  柏井一郎
     

■ 民主党の敗北に終わった参院選挙

 第22回参院選は、昨年9月に民主党が政権を獲得し、連立政権が誕生して以降、初の全国規模の国政選挙として戦われた。民主党は管直人首相が設定した勝敗ライン54議席プラスαを大幅に下回る44議席にとどまり、連立を組む国民新党の議席を含め、与党は参院の過半数(122議席)を大きく割り込む結果となった。
 
 党派別の当選者数は図表の通りであるが、まず民主党から分析してみると、選挙区で28議席、比例区16議席で44議席、これに非改選議席を加えて改選前の116議席から106議席となった。1人区で8勝21敗となり07年参院選の23勝6敗から大きく後退したことが大きい。
 
 自民党は選挙区で39議席、比例区12議席で、51議席、これに非改選議席を加えると改選前の71議席から84議席となった。1人区での大幅議席増が大きく、これで自民党は改選第一党となった。
 
 みんなの党は選挙前1議席から、11議席と大きく飛躍した。内訳は選挙区で3議席、比例区で7議席である。公明党は選挙区3議席、比例区で6議席となり、非改選議席を加えて21議席から19議席と議席数は後退した。
 
 社民党は比例区だけで2議席となり、非改選議席2議席を加えて4議席となった。これで参院での代表質問の権利を失うことになった。共産党は比例区だけで3議席、非改選議席を加えて6議席である。国民新党は議席獲得はならず、非改選議席のみの3議席となった。とりわけ国民新党の「一丁目一番地」である郵政改革法の成立を期して、郵政研の強力な支持で擁立した長谷川憲正候補は国民新党の政党票が少なすぎて落選した。
 
 4月に自民党から離党して、相次いで誕生したミニ政党を見ると、たちあがれ日本は比例区で1議席を確保し、非改選議席を加えて3議席である。改革は比例区で1議席を確保し非改選議席を加えて2議席である。日本創進党は議席獲得はならなかった。
 
 これを与野党の勢力分野で見ると、与党は110議席、野党は132議席となり、与党は過半数に12議席足りず、衆、参国会の多数が違う「ねじれ国会」の再来となった。
   次に各政党の支持団体を見ることにする。民主党は11人の連合労組候補を擁立し、10人が当選している。自動車総連と電力総連はそれぞれ20万票を超えている。なかでも電力総連は前回の07年を上回る得票である。ただし、他の候補は前回より大幅に票を減らし、07年に50万票を獲得した自治労はほぼ4分の1に、情報労連は30万7000票から半減、日教組も22万5000票から13万9000票に落ち込んでいる。これで連合候補の得票数は前回の189万票から159万票へ減少した。
 

(資料1・クリックで拡大します)
 
 一方、業界団体では、政権交代に伴って民主党候補を推薦した日本医師連盟、歯科医師連盟、全日本トラック協会の候補者は票を伸ばしていない。自民党支持に残った日本遺族会の候補者も23万票から13万2000票に、全国建設業協会も22万7000票から14万9000票に減らしている。
 
 このように全体的に見れば、労働組合や業界団体の「集票力」は落ちていることである。業界団体は民主党政権になってから、公共事業予算の縮小などの影響で、メリットが少なくなったことが大きく、また、労働組合では賃金闘争、リストラ合理化で有効な闘いが組織できていない反映だと考えられる。労組役員、活動家の指令指示型運動では、限界があることを示している。
 

■ 政権発足から10カ月間の国民の審判

 参院選は昨年9月に発足した連立政権の10カ月間の国民による「中間評価」という側面を持って戦われるはずであった。民主党は参院選直前に鳩山由紀夫首相、小沢一郎幹事長が辞任し、菅直人首相を誕生させた。これによって支持率はV字回復し、これを持って参院選を戦い与党過半数議席の獲得に挑んだ。
 
 潮目が変わったのは6月17日、菅首相が会見で唐突に「消費税10%」を打ち出してからである。野党から批判が強まる中で、菅首相の発言が何回もぶれたことで、支持率も急落した。菅首相は選挙敗北について「私が消費税にふれたことが唐突な感じを持って国民に伝わった。事前の説明が不足していた」と、民主党の大きな敗北は、「消費税10%」発言が大きな要因であったことを認めた。
 
 だが民主党の敗北の要因は、消費税問題だけではない。昨年の衆院選挙で、国民は政権交代を選択し、民主党政権に日本の将来を託したが民主党はその期待に応えていないことが、「消費税10%」発言と重なって、国民の不信を増長し、さらに広がったものと考えられる。衆院選挙の「マニフェスト」で約束したことを次から次へと修正し、参院選に向けて手直しされた施策は、マスコミ、そして自民党などが執拗に繰り返すバラマキ批判とも相まって、民主党の政策は、国民には「将来のビジョン」が見えなかったことも大きな要因である。
 
 また、「政治と金」の問題や普天間飛行場移説問題で迷走を続けた鳩山政権9カ月の反省が、菅首相をはじめ民主党からは、ほとんど聞かれなかった。民主党トップの2人が選挙後、何事もなかったように復権することに、国民は大きな懸念を抱いたのである。
 
 すなわち「民主党らしさ」の看板であった「国民の生活が第一」という基本理念がすっかり色あせて、消費税増税や法人税引き下げ、普天間問題など、自民党との違いが不明確となり、「自民党化」していく民主党政治への批判である。菅首相は選挙最終盤で、「政局の安定」を訴えたが、国民はその前に民主党のダッチロール政治に反省を求め、菅首相が持ち出した消費税増税が規律なき政治につぎ込まれることを容認しなかったのである。
 
 この裏返しで、みんなの党は、民主党が言わなくなった天下り禁止、官僚政治からの脱却、また、不徹底な無駄の排除、行革・地方主権改革などを批判して、これに共感を覚える国民意識をうまく組織して都市部で躍進したということである。比例区で前回に比べ民主党は約480万票、自民党は約247万票減らしているが、これがそっくりみんなの党に移った計算になる。
 
 1人区は、もともと自民党は伝統的に組織力が強いところである。だが自公政権の新自由主義的構造改革で、地方は疲弊の一途であり、農林水産業、中小・零細企業、商店・小売り業などの経営を悪化させ、さらに地域住民の生活、雇用の悪化、格差と貧困の増大は著しいものがある。民主党政権に期待するものがそれだけ強かったのであるが、この10カ月間の政治で、その面での手当を示すことができず、立ち遅れたという面も否定できない。
 
 自民党の1人区での勝利は、自民党が過去の失敗を心から反省し、出直しに成功したからとは思えない。自民党勝利の内実は、昨年9月の衆院選で離れた自民党支持者の回帰であり、公明党による自民党の全面的支援に負うところも大きい。中央では選挙協力は解消されたが、地方では自民党と組んで「選挙区は自民党、比例は公明党」のバータ選挙を行っている。出口調査では公明党支持層の60%が自民党候補へ投票していることが明らかになっている。
 
 ただ民主党は敗北したが、比例区では、自民党より438万票も多いことは、国民の民主党への期待は相変わらずあることを示している。
 
 社民党は参院選マニフェストで、連立政権の中で政治の「品質保証」として果たしてきた8カ月の成果を訴えた。また、「もっと生活再建10の約束」を掲げて戦ったが、その内容は社会民主主義的理念にもとづく政策で一貫しており、この面でのブレはない。だが二大政党制の流れの中で、しかも少数政党の悲哀で国民のアッピール度が弱く、今回も議席増には至らなかった。だが今後、政治状況が混沌とする状況が続くことが予想される中で、社民党が主体性を発揮していけば、社会民主主義的理念は、幅広い国民の支持を得られる状況であることは間違いない。いかに力をつけていくかが今後も大きな課題である。沖縄の比例区で最も多く票を集めたのは、驚くことなかれ社民党であり、ここに社民党のなすべき運動の方向が示されている。
 

■ 「ねじれ国会」の行き詰まりで早期衆院解散も

 菅首相は「結果を真摯に受け止め、もう一度再スタート、政権にあたらせていただきたい」と、民主党役員会で続投の意思を表明した。その上で内閣改造や党役員人事は、九月に予定されている党代表選後に先送りした。代表選に向けて、民主党内では、執行部の責任論が浮上している。これで党内論争が激化することになれば、菅内閣の支持率は選挙後37%、不支持率は46%(朝日新聞社調査)と急落しており、これに拍車をかけることになりかねない。そうなれば菅首相の求心力は一層弱まり政局への影響も避けられなくなる。
 
 政府・与党は臨時国会を7月30日に召集し、当初参院議長の選出に留めるとしていたが、野党の攻勢でこれまでの慣行を破り、予算委員会開催には応じるようである。野党は議長を含め、各委員会人事でも攻勢を強めており、国会運営は厳しくなることは確かである。いずれにしても与野党による本格論戦は代表選後に改めて召集される臨時国会で行われることになる。
 
 来年度の予算編成作業が本格的に始まるが、「ねじれ国会」の再来で、予算案は衆院で可決されても、予算関連法案は参院で否決されれば成立しない。自公政権では、衆院で3分の2の議席を持っていたので、衆院で再可決することが可能であったが、与党は衆院で3分の2の議席を持っていないからである。いずれにしても、野党が結束して反対すれば政府提出法案は1本も通らなくなる。
 
 そこで与党は、政策ごとの連携を模索することになるが、自民党、公明党、みんなの党は、民主党の「マニフェスト」の白紙撤回、もしくは大幅修正(農家の個別所得補償、子ども手当、高校無償化、高速道路無料化など)が必要だとしており、今後の与野党間の調整が課題になる。
 
 来年度予算編成で、政府の財政運営戦略に盛り込まれた「中期財政フレーム」で、11年度の歳出額は国債の元利払い費を除き10年度と同じ約71兆円以下、新規国債の発行額も今年度(約44兆円)以下に抑えるとしている。これを踏まえて7月20日に予算の概算要求基準の骨子をまとめ、各省庁は8月末に概算要求を提出し、年末の予算案決定にむけて政府内の調整がはじまる。
 
その際に11年度で約1.3兆円程度増加する見通しの社会保障費や新たなマニフェストの施策の財源をどう確保するかが課題となる。菅首相は「強い社会保障」を唱え、介護や保育分野などに財源を投入し、雇用を増やす方針であるが、すでに社会保障費は10年度予算で前年度比9.8%増え、23.7兆円を計上し、一般歳出の半分を超えている。また、子ども手当の「満額支給」は断念したが現物サービスも含め上積みするとしている。公約している農家への個別所得補償を本格実施するには約5000億円が必要になる。
 
 一方で概算要求では、既存事業の削減が焦点になるが、各省庁の抵抗は強いといわれている。公共事業は「コンクリートから人へ」の理念を実現するため、10年度予算で前年度より18.3%削り、5.8兆円まで減らした。前原誠司国土交通相は、「公共事業をさらに削減することは納得しかねる」と表明している。また、地方財政計画に基づいて支出される補助金の削減も難しい。国家公務員の総人件費「2割削減」が実現すれば、約1兆円の財源を確保できるとしているが、これは痛みを伴うもので連合は反対している。
 
 政府は秋口から特別会計を対象に「事業仕分け」を実施するが、これでどれだけの財源効果が見込めるかは分からない。また、株式・債券などの有価証券の売買に課せられている優遇税制見直し、所得税の最高限度額の引き上げなどに切り込んでいくことができるかどうかも課題となる。
 
参院選で大きな争点になった消費税を含む税制抜本改革は、枝野幸男幹事長は選挙結果を受けて参院選前に「消費税を含む税制改革案を年度内にまとめる」としていたことを事実上先送りした。さらに郵政改革法案は法案提出そのものが不透明になっている。労働者派遣法改正案にも、自民党、みんなの党などは反対している。8月末には、日米政府が合意した普天間飛行場の移設先の位置や工法を決める期限を迎える。日米政府で合意できたとしても、実現には地元の理解がなければ進まない。沖縄では九月に名護市議選、11月には県知事選が行われる。その結果次第では、政府はさらに窮地に追い込まれる。
 
 この夏から秋にかけて政府・与党は綱渡りの政局運営が強いられることになり、政局の行き詰まりで何が起こるかわからず衆院解散もありうる状況となる。
 
 ただ言えることは「ねじれ国会」が問題ではなく、この民意を受けて国会の中で各政党が「日本の将来のあり方」を示し、いかに国民の立場に立った政治を行うかの論戦が問われているのである。その面でも「ねじれ国会」を生かしていく社民党の新たな役割は高まっていることは確かである。
 
(7月16日、脱稿)

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