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●2009年3月号
■「働き方」の崩壊から私たちは何を求めるか
  緊急提言・「雇用安定基金」の立ち上げ等がんばろう
―― 保坂展人衆議院議員に聞く
     

善明 最近の日本経済をおそう不況のなかで最大の課題の1つは雇用問題です。「派遣切り」、「雇止め」などが問題になっていますが、そもそもどういう働き方をするかということが議論される必要があります。その上で、労働者派遣法の抜本的改正が必要ですが、これを改正する場合、雇用期間の定めのない働き方、終身雇用が基本であろうと思います。この間問題になっている派遣法はどうあるべきかといえば、基本は正規と非正規の均等待遇を、どう勝ち取っていくかが1つですね。2つは悪法とはいっても現に派遣法は存在しており、これで非正規労働者が首を切られているわけですから、これにどのように歯止めをかけるのかの対策は必要です。三野党でだされた緊急雇用等関連四法案、また民主党も含めて新たな法案を考えられているようですが、雇用保険の適用、雇用調整助成金の対象化を含めたセーフティネットをどう張っていくかです。3つ目は、02年ごろ話題になりましたが、ワークシェアリングの問題です。これらの点について、少し総合的体系的な対策のあり方についてお伺いしたいと思います。

■ 緊急に「雇用安定基金」の創設を

保坂 08年9月以降に起きた事態というのは、アメリカ的金融システムの瓦解ですね。サブプライム問題で弱りかけていた世界経済を直撃して、製造業の中枢を打ち砕くような消費の急激な減少をもたらした。それに対して各国の製造業、自動車メーカーであるとか様々な企業がいっせいに減産体制に入っている。
 
《社民党の緊急提言》
 日本で話題になった派遣切りというのは、10月ぐらいの段階、風邪を引きかけたかなというときに、雇止め――契約更新をしないという問題であるとか、派遣で来なくていいよ、というのが始まっていたわけです。社民党としてはいち早くそういう現状をとらえて、これは雇用対策をしっかり提案しなければいけないということで、緊急提言をまとめたわけです。
 
 昨年夏頃は、社会保障費を2200億円定期的に削減するという予算枠のなかで、財務省をはじめとして雇用保険への国庫拠出をゼロにという案が優勢でした。一方で非正規労働者が雇用保険の枠外に置かれている状況がありました。企業で働く正社員の場合は就業したその日に労働保険の手続きがとられるのに対して、非正規労働者、派遣は一年を越えて働く見込みがあるかないかがハードルになっている。1年を越えて働いた人でないと雇用保険に加入できていない。あるいは受給申請しても、「1カ月待ち」となる。条件の悪い企業のあっせんを断ると「自己都合」とされて、さらに「3カ月待ち」となる。セーフティネットがもっとも掛かっていなければならない人たちが逆に高いハードルが引かれている。そういう状況を具体的に指摘して、いくつかの改善案を出しました。
 
《雇用促進住宅の全戸開放を》
 その柱は、1つは雇用促進住宅の全戸開放です。戦後労働運動の総本山といわれた三井三池の闘いがありましたが、最終的には炭鉱の閉山が進んでいきました。総評50年史などを見ると、当時の国会ではずいぶん丁寧な議論がなされて、「国策の変更ではないか、だったらきちっとやれ」ということで、引越しの費用、交通費、どこに住めばいいのか、と議論されました。そのなかで最初はテントから出発して、全国に雇用促進住宅というのが作られました。炭鉱離職者については、三年間の最低生活の保障がある形を取ったわけです。最後に三井三池炭鉱を離職した方が97年までいた、そこまで制度が生かされてきたと聞いています。
 
 今回の取組が歴史的にどういう意味を持つのかを一緒に考えていきたいと思います。
それまでは解雇撤回、元の職場で働き続けることというのが争議の目標であったと思うのですが、それが果たせずに炭鉱職場を離れざるをえない、そういうときのセーフティネットというのは解雇を受け入れる敗北主義ではないかという批判が当時もあったと聞いています。
 
《大分キヤノン調査で見えたのは、市民の支え》
 今回の派遣村に至る前に、社民党の調査団として大分キヤノンに入ったわけです。キヤノンに入って驚いたのは、地元の大分合同新聞が、市民が匿名で100万円をカンパし、「たいへんな人のために使ってください」とか、高校生がカンパ箱をもって街頭で支援を訴えるとか、自治体が期間は1カ月ですが雇用を呼びかけるとか、あるいは民間の企業が空いているアパートを開放して住むところがない人はどうぞとか、報道していた。この報道の仕方は、明らかに被災をした人たちというとらえ方なんですね。阪神大震災、中越地震ではたくさんの人が家を失い、全国からボランティアがかけつけて支援をしたという記憶がありますけれど、被災した人たちに対しては、「あんたが悪い」という議論はおきないように、派遣切りにあった人たちに対しても起きていないと感じました。
 
《「雇用安定基金」を提案》
 社民党大分県連合と地元労働組合の皆さんと、キヤノンの門前で、突然の解雇に対する抗議行動をやりました。そして翌日、大分キヤノンの社長と東京本社の専務がきて、話し合いの場を持ちました。 キヤノンの方はいろいろ制度論を言いました。「私たちは解雇したわけではない。偽装請負の批判があったので、完全な請負ということで工夫をしてきた。したがって、労働省告示三七号で、何という人が働いているのか、知らないのです。業績は急速に落ち込んでいますから、減産の指示はしましたが、誰を解雇したということは分からないのです」。
 
 私は「御手洗氏もそう言っていますが、それで許されますか? 皆さん方の企業が大分に進出してくるときに、県からいくらの助成金をもらっていますか。地域の経済、雇用に対してもたいへんな悪影響です」と言いました。そして地元新聞の報道などを上げて、「市民は災害としてボランティアで対応してくれている。しかし、災害というけれど、天災ではない。雇用の急激な投げ出しは、企業が主たる原因をつくったと断じざるをえない。キヤノンは何もしないのか」と言うと、キヤノンの専務は「胸を痛めています」というわけです。「胸を痛めているだけではダメです」、「どうすればいいんでしょう」というので、「仮称ですが、雇用安定基金みたいなのを作ると自治体が呼びかけたときに、応分の額を出したらどうですか」と言ったわけです。そしたら「必要なことだと思うから、前向きに考えたい」という返事でした。九州ローカルではけっこう報道されたようです。
 
 それを、社民党に持ち帰って議論したのですが、「企業にお金を出させると解雇を正当化させてしまうのではないか」という慎重意見も出されました。私は事態が大きく変わっていることを説明しました。構造改革という名のもとで、労働市場の究極の規制緩和がなされてしまった。派遣労働者は、派遣先は雇用していない形です。ましてや請負労働者は、キヤノンが言うように直接雇用していない。今回の提案はその責任を突いているわけです。「解雇撤回しろ」と言っても、雇用していないので、そうはならないわけです。職を失って、住む所を失って、途方にくれている人たちがいて、市民や自治体が何とかしようというのに、内部留保33兆円(自動車・電機等主要16社で)を抱えている企業が何もしないということでいいのか、と言ったわけです。
 
 ただ、「内部留保を抱えているからといって、企業がお金を出すと、首切りの免罪符として正当化されてしまうのではないか」という意見が強く出されたのは事実です。もっと議論を深める必要があると思っています。
 
 企業にお金を求めないことで「解雇するな」といっても、すでに大量に解雇してしまったんです。09年になってからだって、ソニーが、日立が、と、どんどん斬っています。ここを止めることに総力をあげないといけないのではないかと思います。
 
 雇用安定基金といった場合、応分の額とはどれだけか。非正規労働者の半年分の賃金、人によって額は違いますが、150万から200万円の6カ月分を出す。間接雇用ですから、企業の社会的責任とはそういうことだと、キヤノンに言ったわけです。
 
 私たちが会ったキヤノンの専務が朝日新聞のインタビューでこう答えていたのです。「自分たちは間違っていた。間接雇用だから法的責任はない。だからといって、経団連会長の企業がばかばか切るのは拙い。そのことに対しても社会的責任を負うべきだ」。これは彼らに良心があるからというよりは、私たちが強く批判し、それに同調する声が大きく、それが彼らにも響いたからです。テレビコマーシヤルで、「人間的な、共生の企業」と言ったところで、それは嘘っぱちだとなったからだと思います。
 
《世論に押されたキヤノンは》
 そしてキヤノンは、期間工については半年間、賃金の85%は保障する、それでは嫌だという人には150万円の支度金を出すことになりました。これで十分かということはありますが、非正規で切られる人はゼロで、引越し費用も出ないわけですから、請負で言えば発注元、派遣で言えば派遣先の企業が、人間として扱うことです。キヤノンの専務が言っていたのですが、10年前もこんな事態があったというのです。その時は、希望退職で、退職金の割り増しとかいろいろ工夫したというのです。ところが今回は「全く負担なし、ゼロ」ですからね。
 
 今回の世界同時不況の特徴ですが、成長産業の分野とか部門がなく、全部悪い。日本の製造業の緻密な生産システム、故障のない製品を素早く量産できるという力は、請負や派遣の労働者が賃金は安くても、教育や文化、風土もあって、まじめにこつこつ作るということがあったからで、今のように派遣や請負をかってに切り始めると、それが全部ぶっ壊れるよと、経済界と話しているのです。
 
 派遣村の実行委員会に参加した人たちと、この雇用安定基金について話したところ、「なるほどこれだよ、やるべきだ」となったわけです。経済界に基金を求める。すでに切った人については、寝るところ、食べるもの、そして再就職を支援しよう。これからの人に対してはある程度ブロックになる、雇用継続圧力ということで、派遣村の要求にもなりました。
 
 先日、社民党の重野幹事長が、民主党の菅直人代表代行と国民新党の亀井久興さんとで、日本経団連の副会長に求めに行った要請文の中に、この非正規労働者のための支援基金がありました。

善明 首切りは許さない、派遣法を元に戻せ、というのは基本ではあります。しかし、今首切られている人をどう救済するか、という問題があります。再就職をどうするか、雇用手当を出せとか、セーフティネットをどうするかが重要です。基本的なことは目ざすけれども、当面の救済策は必要ですから、支援基金の提案は良いことだと思います。
 
連合では昨年暮れの中央委員会で「政府の定額給付金を連合組合員から集めて支援基金を作れ」という発言がありました。これが反映されてかどうかは分かりませんが、年明けの中執で、組合員からカンパを集めることを決定し呼びかけています。これもある意味で基金だと思いますよ。
 

■ セーフティネットが必要な非正規は「枠外」の問題

保坂 私は、年金問題をずっと追いかけてきましたが、日本はこのところ、60年頃は違いますが、雇用保険に対して無関心だと思う。というのは一昨年の10月から自己都合による受給資格が半年間から1年に引き上がったんですが、問題にされなかった。雇用が流動化している中では労働者に不利益が生じます。ざっとカウントしただけで12万人、400億円前後が受け取れなかったわけです。新聞もちょっと書いたぐらいで、国会内外での集会1つ開かれていない。br>  
 解雇、きわめて生存権を脅かす事態からしばらく遠いところにいたからでしょう。官公労は雇用保険に入っていないので交渉対象にならかったし、大企業の労働者は二重三重に守られていて、雇用保険については問題になりにくかったんだと思います。
 
《「期間工は労働組合に入れない」!?》
 しかし、大分キヤノンでは、職安の募集案内に「期間工は労働組合の加入対象にはなりません」と書いてあるんです。昨年の12月国会で、「これはどういうことか」と追及しました。労働組合に入ってはいかんと職安が不当労働行為をやっているようなものでしょう。労働組合に入るような人は来ちゃいけないという表記にもとれる。舛添厚労大臣が「不適当だからすぐに撤去させます」と答弁したのですが、これをどう考えるかもあります。キヤノンには労働組合はあるのか。これだけ国会で話題になったら、世界有数の企業における労働組合であれば、「こんなことを職安に書かせたのはけしからん。期間工の皆さん、組合にどんどん入ってください」と声明を出したり、連絡をしてくるものでしょう。ところが沈黙をしているわけです。キヤノンの労働組合には、正社員しか入れない、期間工は直接雇用だけれども入れないわけです。これまでときどき入りたいという人が出たらしいんです。ところが、キヤノンの会社や労組としては扱いに困るんで、職安に求人票に何とか書けないのかと言ったらしいのです。職安もだらしないけれど、キヤノンも憲法違反の行為を、どうどうと、どこに書きましょうかと相談しながらやったというのです。
 
《同一労働格差賃金は許されない》
 この話は、ワーキングプアとか格差の問題と、とくに製造業の労働組合が、雇用の大きな格差に目を向けていないことの現れです。私は日野自動車にも行きました。正社員の年収が600万円、期間工が400万円、そして派遣は300万円に届かないというのです。工場を見せてもらいましたが、同じヘルメットに同じツナギを着て作業している。今の生産ラインは1台1台デザインの違うトラックを作っているんですね。横で見ていると、上から伸びてくる工具でねじを締めたり、部品を取り付けたりと、忙しいですね。まさに同一労働をしている。これで賃金が倍違うというのは、許しがたいことではないかと思うわけです。同一労働同一賃金というのが、日本社会ではかなりダメになってしまった。そのことをどう解決するのか。解決したいのは非正規の側で、解決しなくてよいのは正規の側ですよね。だけど、弱い立場の人が切られていくことに抵抗もできないし、痛みも感じないというような労働組合というのは、自らの権利も守ることはできないと思います。
 
 だから一部の組合ですが、バスの組合が、アウトソーシングされた路線の仲間も組合員化して、同一賃金にしろと迫っている事例も出てきています。しかし、民主党の支持基盤である自動車とか、電機の労働組合では、派遣法の改正、製造業の派遣禁止だけは言わないで欲しいというのがまだ強いですね。
 
《「包括的労働者保護法」が必要》
 派遣法改正では、製造業派遣を禁止しただけではだめで、登録型をやめるべきです。常用型派遣で、専門性があって働く側のイニシアティブで仕事を選べるような派遣から、登録型を入れたことで、労働ダンピングが起きてしまった。派遣法を根本から変えろといいたいのですが、キヤノンを見ていると派遣は入っていなくて全部請負なんですね。ですから、アウトソーシングをするときに、言葉は荒っぽいのですが、「外形標準課税」型でいくべきだと思うのです。工場の中で働いている人はみんな労働者だよ、と風呂敷で包むようにして、雇用に責任を持つという考え方がこれから必要になってくるのではないかと思っています。包括的労働者保護法です。
 
派遣をいじると請負に行く、請負をいじるとまたどこかに行く、それを逃がさないように、包括的に雇用責任を負わせるしくみをつくる必要があると思います。
 
《イギリスの「雇用安定制度」に学ぶ》
 
 基金の話に戻りますが、アメリカでの自動車とか電機製品の消費サイクルというのはひじょうに短かった。大事に乗れば10年〜20年動くものを2〜3年で乗り換えるという社会は、環境のことなど考えればほんとうに健全な社会なんだろうか。多分今回の世界同時不況で、昨年までのような製造業の元気さを取り戻すことを望むのはある種難しいのではないだろうか。むしろ望まなくていいのではないだろうかと思うわけです。すると、雇用の転換というのが必要になってきます。炭鉱の閉山のときにも失対事業というのがありましたが、草むしりとかではなく、食糧自給率がこんなに低いわけですから、農業労働者になるというのも可能性がある分野ですし、介護でも人手が足りない、ということがあります。時代の変化と共に、価値というものは工業製品だけではなく、人間として快適に生きることにも求められる。孤独な老後を過ごしている人も多いので、高齢化社会に見合った、相互扶助的なNPOもつくっていきたいなあと思うわけです。
 
 いずれにしても、雇用のシフトは簡単ではない。炭鉱で働いていた人は、炭住に住んでいて、購買部で買うからお金の流通もなく、ある種自己完結型社会だった。製造業も少し似ているかなと思っています。寮に入っているし、話をする仕事ではない。熟練はしてきますが、この工場がだめなら次の工場へと替わっていたはずで、介護労働ならあるといっても、すぐに介護労働につけるわけではない。一定のトレーニングは必要でしょう。農業でも、サービス業でもトレーニングをしながら、仕事を覚えてもらうという時に、半額の賃金を用意してもらって、あと半額は基金から出していくというやり方もある。イギリスで5万社が登録している制度があるんですが、そういうことも考えていかないといけない。
 
 それから企業が解雇しなかった場合に、雇用調整助成金をもらえる制度がありますが、とりあえず作る物がないのなら、社会的貢献をしてはどうかと思うわけです。例えば大型ダムではなく、河川の浚渫(しゅんせつ)とか、校舎の耐震工事とか、やらなければならないことはあるわけで、内需を作っていかないと難しいと思う。企業が雇用を継続して、当該自治体の仕事とかに出て行くことも考えていいのではないか。
 

■ 相互扶助を元にした社会構造の変換を

 ワークシェアリングというと、正規と非正規の格差の問題とか、リストラをしないで時短をして賃金も下げてやっていくと言われるけれど、社会全体が雇用危機に対して知恵を出していくなかで、製造業が牽引車であるという社会から、長いスパンで見れば、製造業も一分野であるという社会に変えていかなければいけないのではないか。
 
 「労働組合はかっこいい」と言われない時期が長く続いてきましたが、最近は「労働組合は必要だ。頼りになる」、「2人、3人でも労働組合だ」ということで、価値が再発見されている。小泉・竹中改革であれだけ吹き荒れた自己責任論がすっかり陰を潜めています。私たちは今度の総選挙を経て、もしかすると政権交代ができれば、安保政策等で小沢さんに危うい面も感じますが、この大不況をどう跳ね返していくんだという時に、日本型の相互扶助で地域の再建、雇用の創出ができないだろうか。これは保守政治家も考えているだろう。大分キヤノンに行ってみて、人に無関心な冷たい社会といわれながら、工場には大分の人はいなかったのに、その大分出身でもない若者たちに対して、大分の人たちは暖かかったんですね。それを見ると、資産ではないかと思いました。派遣村もそうですね。寒いなかでボランティアをして支えた。小泉・竹中的な自己責任ではなく、現実をもって押し返した。相互扶助の力であり、連帯の力だったんじゃないだろうか。社民党も、労働組合も、その力を国民的な運動にどうできるのか。横に押し広げていけるのかどうか。今は分断されていますが、年金削減で怒っている人たち、後期高齢者医療問題で怒っている人たち、派遣で切られた人たち、と社会のアチコチで不満と怒りの声はあるけれど、フランスのように、何百万人がデモをするようにはなっていないから、それが課題かなとは思います。
 
 とくに社民党の提案というのは、与党側も、あまり具体案がない民主党も取り入れているんです。ですから、この雇用の問題は、歴史ある専門店として頑張っていかなきゃいけないと思います。 善明 今の雇用情勢をどうすればいいのかという点では、EUは参考になりますよね、EUは昨年の11月に26年間の議論がようやく決着し労働者派遣指令が成立しました。その中心になる考え方は、派遣された労働者と派遣先の労働者の均等待遇原則です。これは正規、非正規を問わず同じ仕事をしていれば均等待遇でやりなさいということですよね。義務規定ですから、各国は2年後までに法案を作ってやらなければならないわけでしょう。
 
 それから、もう1つはドイツの例ですが、企業が操業短縮となったときに、政府は派遣労働者の解雇をふせぐために操業短縮手当の給付を昨年末に決めました。これは季節変動の激しい建築業などのための制度でしたが、これを派遣会社など他の業種にも適用しました。給付期間は6〜12カ月だったものを18カ月に延長しましたから、労働者は派遣先がなくなっても当面派遣会社からの解雇は免れ、所得がなくなることはありません。18カ月間は賃金の60、67%で面倒をみるのが基本で、各企業がそれに上積みします。IGメタルでは上積みで98%になるんですね。正規だけでなく、派遣も対象です。政府も援助するけれど、企業に責任を取らせるわけです。基金と同じだと思うんですが、EUなどに学びながらやることが必要だと思います。
 

■ セーフティネットを政治課題としてたたかおう

保坂 今はマスコミも派遣村などに好意的ですが、やがて地方財政が生活保護でパンクするという論調になるでしょう。たしかに今日のように激増すると、地方財政の10%以上が生活保護という形になっていますので、それもある意味しかたがない。それより雇用保険の弱点を何とかしなくてはいけないと思うのです。これだけの構造的世界不況のなかで3カ月しか出ないということです。4カ月めにはゼロという、そんな国はヨーロッパにはない。少なくとも6カ月は出る。その後は税財源の生活扶助に切り替わる。何時まで出るんだと聞くと、年金が出るまでというんですね。それはそれで別の問題も浮上してきますが、日本でも、失業保険と生活保護の間にもう1つのセーフティネット、欧州で「生活扶助」と呼ばれる社会的生活支援制度をつくれ、というのが現実的提案だと思います。均すと自治体の総支出を削減することにもなるし、生活保護より短期で、就業していくことができやすい制度として提案できると思います。

善明 労働組合の話ですが、高木連合会長もいい提案はされるんですが、電機連合は製造業派遣禁止には反対です。しかし、この事態のなかで、電機連合は非正規支援で1億円カンパをする。批判を交わすためと言う人もいますが、これは評価すべきと思います。問題は労働者の働き方がどうあるべきかの抜本的な議論を強めて、労働者全体の共通認識を図ることが必要です。先ほど述べた連合のカンパの取り組みもそうですし、こうした取組を通じて連帯意識をつくりあげ、共に闘っていく態勢をつくりだしていくことは可能です。

保坂 そこなんですよ。社会的連帯と相互扶助です。労働組合が真っ先にやって、企業を突き上げていくくらいのことがないといけない。br>

善明 連合の中にも、非正規の人との仲間の連帯を考える、正規労働者だけでは闘いにならない、非正規も含めて考えないと正規の賃金も下がるんだという、議論が広がっています。そういう意味ではこれらの問題は、優れて政治闘争の分野でもあるわけですから、社民党の役割は大きなものがあります。今日の保坂さんの具体的な実践を多くの国民、労働者に知ってもらい、社民党への支持、信頼を勝ち取っていくことが必要です。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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