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●2008年11月号
■深刻な経済危機下の総選挙
  佐藤 保
   
 

■1. 社会・経済的矛盾を激化させた新自由主義

 アメリカの金融危機が、ヨーロッパをはじめ、全世界に波及し、世界資本主義経済は、1930年代の大恐慌以来の、極めて深刻な危機的事態、世界恐慌に突入しつつある。アメリカ、ヨーロッパと共に、世界資本主義の主要な一翼である日本も、むろん例外ではない。

 19世紀末には、長期の大不況、1930年代には、深刻な世界恐慌に、見舞われながらも、資本主義は、第二次世界大戦後も1970年代初めまでは、螺旋状に上向線を描いて、発展し続けた。それが、1970年代を境に、一時的な上昇はあっても、明らかに、下降局面に転じ、質的にも、量的にも、衰退的傾向を、きざし始めた。万物は、生成し、発展し、消滅する。資本主義も例外ではない。資本主義も、いつかは必ず、新しい社会構成体に、とって代わられざるをえない。それは、歴史の必然であって、何びとも、どんな力も、その流れを止めてしまうことはできない。政治の力、国家権力で、一時的に、この流れを止めることができたとしても。
 
 1980年代から30年間、サッチャー、レーガン以来の「新自由主義」は、「福祉国家」と、それを立ち上げ支えてきた、労働組合、労働者運動を、激烈な攻撃で破壊し、弱体化し、資本主義体制の立直しをはかった。だが、その結果は、体制の立直しどころか、かえって事態を悪化させ、資本主義の社会的、経済的矛盾を激化させただけであった。社会的・経済的格差の拡大、労働者、勤労者の労働と生活の諸条件の劣悪化、貧困問題、環境問題などの深刻化等々、そして、資本主義社会の土台を揺るがすような金融危機、大恐慌の発生である。


■2. 総選挙を労働者状態改善の突破口に

恐慌は、資本主義経済の、本質、その基本的仕組み、基本的矛盾に発する、いわば業病であって、資本主義の仕組みそのものを変革しない限り、どのような政策によっても、避けることはできない。政治の力、国家の政策によって、その発生を遅らせたり、その震度を、激化させたり緩和させたりすることはできても、恐慌そのものを、根絶することはできない。

 経済危機、恐慌は、資本に打撃を与えるだけでなく、国民生活に、甚大な影響を及ぼす。とりわけ重要な問題は、資本主義社会のなかで、日常的に資本家階級に搾取され、抑圧されている労働者、勤労者が、恐慌時には、より深刻な大量失業、賃金切り下げ等労働条件の劣悪化、社会保障の改悪、増税、中小・零細企業の倒産等々によって、耐え難い犠牲を強いられることである。

 保守政党は、資本、大資本にたいしては、公的資金の注入などによって、手厚く保護し救済をはかるが、労働者には、なにもしないか、形だけの保護策をとるだけである。労働者運動が大後退し、労働法制が改悪されるなかで、日本の労働者状態は、長年にわたって極度に悪化してきたが(本誌10月号、松永論文、畑論文参照)、さらに、重圧が加わることになる。

 この重圧を跳ね返し、労働者状態改善の突破口を開くことが、今次総選挙の第一の重要な課題である。そのためには、自民党政治に終止符を打ち、野党、とりわけ、労働者状態の改善に最も積極的に取り組んでいる社会民主党の前進を、勝ち取ることが不可欠である。労働者状態の改善が、全勤労者の生活改善と深くかかわっていることは言うまでもない。

 いま1つ、平和と民主主義の問題がある。保守勢力の、憲法第九条改悪の策動は、一時的に息を潜めているだけで、消えてしまったわけではない。民主主義への攻撃は、さまざまな形で、公然と行われている。労働法制の改悪は、民主主義と基本的人権に対する、時代錯誤の許し難い挑戦である。この課題でも、社会民主党の責任と役割は、極めて大きい。


■3. 福祉社会実現のための社民党の前進を

 日本国民は、その6割弱が「北欧のような福祉を重視した社会」を、「望ましい社会モデルとして考えているという世論調査(山口二郎・宮本太郎「日本人はどのような社会経済システムを望んでいるのか」[「世界」08年3月号])がある。 国民の6割弱が、「北欧のような福祉を重視した社会」を望んでいるのに、日本の現状は、この願望から、はるかに、かけ離れたところにある。何故だろうか。

 一言でいえば、労働者の組織力が、弱いからである。早い話、スウェーデンの労働組合の組織率は約80%なのに、日本は20%程でしかない。しかもスウェーデンでは、専業主婦がいないうえ、パートや派遣労働者、学生、失業訓練中の労働者、失業者でも、殆どが労働組合員だという。他方、日本では労組員の大部分は、大企業の正社員と公務員で、低賃金で劣悪な労働条件を強いられている非正社員や、小・零細企業の労働者などの組織率は、極めて低い。さらに、政治面でも、スウェーデンでは社会民主党が強力で、長期にわたって政権を担っているのに、日本では労働者の利害を代表する政治勢力が弱く、保守勢力が政権を独占し続けている。スウェーデンで高い組織率が維持されている一因として、失業保険制度を労組が管理していることがあると思われるが、これも労働者階級の政治的影響力の強大さを、示しているといえよう。

「福祉を重視した社会」を築くには、労働組合など労働者の組織力を、強化することが不可欠である。社民党など、労働者、勤労者の側に立つ政治勢力を強大にし、その影響力の拡大をはかることも重要である。

 では、どうすればよいか。ことの重要性は理解できたとしても、実行するのは容易ではない。日常的な努力が大事なことは言うまでもないが、総選挙は、その努力を結実させ、次の一歩を大きく踏み出すための重要な闘いである。総選挙で、社民党など労働階級の側に立つ革新政党を大きく前進させ、労働者運動の前進に少しでも有利な政治的環境を、整備しよう。そのためにも、今次総選挙での、社民党の前進を、強く訴えたい。

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