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●2008年9月号
■行き詰った新自由主義から社会民主主義へ
  秋の政局・総選挙の課題を探る
            広田貞治
   
 

■ はじめに
 7月、8月と猛暑が続き、エアコンや水着が売れ、海水浴場がにぎわっていたというが、全体的な不況感はますます深刻化している。原油高などによる世界的不況の進行で、日本も貿易黒字が半減、賃金や年金の低下の中での消費者物価の急上昇で国民生活は苦しさを増し、百貨店売り上げダウンなど消費の冷え込みも深刻である。中小零細企業や農漁民も営業を続けられるかどうかの瀬戸際に立たされている。
 
 また、秋葉原、八王子と続く非正規労働者による通り魔無差別殺人事件、派遣をめぐっての違法行為の蔓延、大手保険会社の不払い、産地偽装や振り込め詐欺、マルチ商法、教員採用や教頭・校長昇任をめぐる教育委員会の構造的腐敗、など社会病理現象は枚挙に暇がない。自殺の高止まりは相変わらずで、生活保護世帯の増加に、窓口で相談を受けても申請を絞る指導が強まっている。国民の「生活不安を感じる」比率は7割を超えた。
 
 7月上旬の洞爺湖サミットは、世界経済を急速に覆い始めたスタグフレーションに何の打開策も見出せなかった。原油高や食料品高は中国やインドなどの消費増大に伴なう需給逼迫も一因だが、アメリカのサブプライム・ローンの破綻でファンドなどの余剰資金が投機的に注入されている影響が大きい。アメリカ主導の新自由主義によるグローバリゼーションが世界的に貧富の格差や労働者・農民の生存の不安定を増大させた。それが経済の成長発展の阻害要因になり、信用経済のギャンブル的性格が破綻を招いた。南北間の格差拡大に加え、各国内での格差も拡大しており、民族や宗教および資源争奪も絡んで紛争・内乱・暴動などの頻発につながっている。サミットの無策は先進国だけでの世界支配の限界を示している。
 
 それをカムフラージュする意味で期待された地球環境問題でも「2050年までに半減」という遠い将来の抽象的な合意がやっとで、具体的なことはなんら確認されなかった。
 
 議長国である日本の福田内閣の責任とは言えないが、困難な状況になんら解決の糸口を見出しえない指導力不足を改めて白日の下にさらした。サミット直後の世論調査でも、福田内閣の支持率20%台はほとんど変わらず低迷を続ける結果となった。
 
 こうした情勢を受け、8月1日、大幅な内閣改造を行ったが、顕著な支持率浮揚にはつながっていない。秋に向かって、臨時国会の会期と補正予算、来年度予算そして、解散総選挙が最大の関心事となる。総選挙は今後の国民生活や経済をどうするのかが最大の争点となる。


■ アメリカ一極支配は終焉を迎えている
 アメリカは日本に最も大きな影響を与える国であるが、イラク・アフガン侵略の泥沼化などブッシュのレイムダック化と歩調を合わせるように経済も混乱し、そのユニラテラリズム(単独行動主義)や世界の一極支配者としての地位が終焉を迎えようとしている。
 
 EUは、EU憲法を緩めたリスボン条約もアイルランドの国民投票で否決され、一体化に暗雲が漂っている。しかし、ユーロはドルと円に対して上昇を続け、経済、外交、環境問題などで対米独自性を強めている。
 
 BRICsと呼ばれる新興経済国家の比重は次第に大きくなってきている。特に中国やインドが単なる「安い労働力による世界の工場化」から、市場としても成熟し、同時に、自動車や電子製品など産業ハイテク化へのテイクオフを図り始めている。大きな困難を抱えているが、世界を変えていくインパクトは両国とも年を追って強めるであろう。資源大国であるロシアやブラジルも次第に影響力を発揮するであろう。中南米反米政権は次第に力をつけて来ている。
 
 東南アジアでは、アセアン(10カ国)+3(日・中・韓)さらにインドを含めて、今後の通商・通貨などの協議を深めていく傾向も強まっている。朝鮮半島も、六カ国協議の進展、テロ支援国家指定の解除など朝米関係の正常化が進めば、最後の冷戦終焉地となる。
 
 こうして、世界各国は対米関係を重視しながらも、世界を広くにらみ対米追随から卒業しようとしている。10年前の通貨危機を境に外資導入や決済通貨の多様化を進め、アメリカを排除しないが介入は許さなくなっている。WTOのドーハラウンドでは、輸入農産物のセーフガードをめぐって、アメリカはインドや中国、アフリカ諸国と対立し、合意目前で決裂した。
 
 いずれにしても、アメリカ一極支配の終焉が始まり、新自由主義によるグローバリゼーションが重症のスタグフレーションを生み、打開できない行き詰まりに直面し、世界の潮目は大きく変わってきている。日本もこの潮目の変化に合わせなければ取り残されていく。


■ 国内でも明らかな潮目の変化

2006年、非正規労働者がガテン系労働組合を立ち上げて以降、今まで隷従のままだった負け組が多彩な闘いに立ち上がりはじめている。前進しかけたジェンダーフリーはバックラッシュに圧倒されていたが、職場での差別解消や離婚と年金など女性の生き方、働き方に僅かだが再び前進傾向が見られる。中小零細企業や農漁民も「このままでは暮らしていけない」と立ち上がり、政策の見直しと援護を強く求めている。
 
「厚生労働白書」もこうした労働者の実態と意識状況を踏まえ「成果主義が必ずしも成功を収めていない」「労働意欲は低下している」「非正規労働者の雇用の改善が必要」との見解を始めて明らかにした。7月末には、同省諮問機関「労働者派遣制度の在り方に関する研究会」は日雇い派遣禁止を柱とする答申を行った。これに対し、「経済財政白書」では「さらに改革が必要」として、間接的に現在の派遣の実態を擁護している。これは政府内の不協和音を現しているが、景況感も大幅に悪化して財界が困惑している状況を反映している。
 
「国内の労働条件を切り下げて内需が縮小しても、国際競争力の強化による輸出および海外投資先の利益でカバーすればよい」とした小泉・竹中の規制緩和路線と財界の「ブルーバード・プラン」は日本型労使関係を破壊してきた。しかし、この路線がもたらしたものは、一方での大株主や経営者の富であり、もう一方での「格差と貧困の拡大」そして「人間性破壊」であった。  
 そして、今日、(a.)アメリカなど世界経済の停滞の中ではもはや成り立たない、(b.)内需の冷え込みで日本の経済は停滞し、税収減で財政再建も見込みが立たない、(c.)幅広い国民の政府不信を克服できない、など、見直しを余儀なくされている。しかし、今春闘で、財界としては賃上げを是認しながら、個別企業では賃金を抑え込んでしまったように、政策変更は自らの利益を否定することになるので具体的に採りきれないでいる。
 
 独占資本は、企業内の労使(資)関係では圧倒的に自信を持っているが、社会レベルでは生活者・選挙民の投票行動・抵抗に頭を悩ませている。生活者・選挙民の大半は労働者である。労働者を中心とした幅広い協同の闘い(統一戦線)とその党が、現実を大きく変えるのに必要である。職場生産点ではないが、今日現在は国民生活を守るための政治闘争から労働者運動の再出発が始まると考えるべきであろう。
 
年金問題(記録の整理・是正、非正規労働者の加入、来年度における基礎年金の国庫負担の3分の1から2分の1への切り上げ、今後の全体設計と財源)、後期高齢者医療制度や医師不足など医療全般、さらには介護など社会保障課題が総選挙の最大の争点になる。
 
 6月の消費者物価は15年ぶりに1.9%と高水準になり、今後も消費が冷え込む中で上昇を続けそうである。賃金や年金は目減りが続いているのだから、生活は苦しくなり当然に財布の紐は固くなる。国民最終消費需要は、かつてはGDPの6割であったが、現在は5割に下がっている。消費が冷え込めば売り上げが減り、税収は減少する。こうした情勢下で、大企業や高額所得者、金融利得者優遇の不公平税制の是正抜きに消費税など大衆増税を行うことは、社会保障財源などといっても決して認められないだろう。
 
 30〜40年前であれば「資本主義・帝国主義は完全に行き詰った。社会主義は必然である」との主張が声高に展開されたであろう情勢である。しかし、小林多喜二やマルクスの本が少し売れているからと言って、勤労国民が社会主義に傾斜する条件は乏しい。問題は○○主義ではなく、生活権の保障であり、安定した雇用であり、将来展望である。それを破壊した新自由主義には退場を願っていることである。その限りでの潮目の変化である。「生活が不安」が7割を超える一方で、「まあ満足」が6割という国民意識を正確に捉えねばならない。


■ 秋色濃い福田政権

 福田内閣はサミット後も、支持率は20%台、不支持率は50%台のままであった。しかし、来年9月までには総選挙を行わなければならない。そこで、乾坤一擲、大幅な内閣改造を行い、挙党体制による、自称「国民生活重視」の「安心実現内閣」をスタートさせた。1年前に総裁選を争った麻生を幹事長に起用し、政権浮揚を狙ったが、改造直後の世論調査では顕著な浮揚効果はなかった。麻生は総選挙敗北で共倒れになるか、選挙前に顔のすげ替えで総理になるかを賭けて引き受けたとの見方が多い。
 
 公明党は来年7月の都議選にも全力集中したいから、年末年始解散総選挙を唱える。インド洋上での補給支援法を3分の2で再可決するのは選挙にマイナスと判断、臨時国会は9月下旬開会でよいとし、8月末を譲らない伊吹幹事長の更迭も求めた。福田政権は対米関係で補給支援法を延長したいから頭が痛い。公明党の動向は微妙で、改造内閣の環境相に斉藤前政調会長を送り込んだが、「情勢次第では民主との共闘・連立もありうる」「要は、国民にとって良い公明党の政策を実現すること」といった言動・雰囲気が強まっている。公明党の協力で小選挙区で勝ってきた自民党にとっては、さらに頭痛の種である。公明党はまず、この間の自民党と組んだ悪政の総括を行うべきで、それ抜きに豹変することは許されない。
 
 選挙を意識し、補正予算ならびに来年度予算で、秋に打ち上げる「総合経済対策」を裏打ちしたいであろうが、財源が乏しい中では本格的なものにならず、つまらぬバラまきは「無節操だ」との批判を受ける。7月末に発表され新内閣の目玉だとされる「5つの安心プラン」も、目新しいものはなく、財源も担保されていない。大変な難問である。
 
 福田新体制では、中川元幹事長ら「上げ潮(新自由主義的成長)路線」派が一掃され、与謝野元官房長官ら「財政再建(社会政策実現のための増税)」派が要職を占め、小泉・竹中路線は終焉を迎えた。景気対策を優先して財政出動も是認し、プライマリー・バランスの黒字化2011年実現を先送りするようである。道路特定財源の一般財源化や特別会計の見直しを行いつつ、財政出動も行い、その上で社会保障の維持には消費税率アップが必然だとの世論喚起に努めると思われる。旧保守主義への部分回帰である。
 
 財界は、規制緩和による労働コスト削減で利益を上げてきたので、「国際競争力の低下」につながると言って、賃金の引き上げ、法人税の引き上げ、社会保険料の負担増には反対を続けたい。とは言っても、外需が大きく翳ってきた今日、内需拡大は必要だ。そのためには、労働賃金や社会保障を改善しなければならない。こうした矛盾に困惑している財界には欧米の政権交代の歴史に学び、「民主党にやらせてみようか」という気分も生まれているようだし、もはや業界の締め付けは建設業でさえ利かなくなっている。


■ 政権交代は十分ありうる

 現状に対するオールターナティブ(対案=もう一つの日本)が求められ、政官業癒着を残した新自由主義的政治を絶って新風を送るべき状況は熟している。すでに概術した生活課題に加え、人間性豊かな教育と情報格差の是正、子育て支援と青年に希望を与える政策、地球環温暖化防止・環境保護、消費者行政の一元化・充実などの実現を望んでいる。
財源は、(a.)省庁などの税金の無駄遣いの徹底的な削減(道路特定財源の一般財源化や特別会計の見直し、談合根絶を含む)、(b.)地方分権を進め、中央の縦割り行政および中央と地方の二重行政によるムダの排除、(c.)高額所得者の所得税の累進性や資産課税の復活強化がある。さらに、国民には分かりにくいが、(d.)社会主義インターなどと協調して、先進各国での足並をそろえた法人税の引き上げやヘッジファンドの暗躍を防ぐトービン税の導入、(e.)日本の過剰資本の「円キャリートレード」によるファンドの動きの規制と課税強化、が必要である。こうした政策を実行する政権が待望されている。
 
 政治変革の主体も生まれつつある。先に述べたように、非正規労働者や名ばかり管理職が生き続けるために立ち上がり、政治に参加し始めた。連合など正規労働者の意識が、企業意識に縛られながら、自らの生活条件確保のためにも、社会全体の崩壊現象を回避するためにも意識に変化を生じ、非正規の闘いに支援を送っている。中小商工業者や農林・水産業者もほんの一握りを除くと自民党離れが進んでいる。今まで人気投票的に投票したり、棄権したりしていた有権者が自らの命と権利をかけた闘いを起こし、「自助努力」や「個人的解決」ではどうにもならないので、政治に解決策を求めるようになっている。
 
 こうした状況は臨界点に近づきつつあり、野党の対応が的確であれば、総選挙に勝利し政権交代が実現する可能性は十分にある。民主党・小沢は政権交代を最優先の戦略と位置づけ、大連立破談後は自民党との野合を否定するポーズをとり続け、一定の成果をあげている。社民党や共産党も医療制度や非正規労働者の問題等で、内容的には民主党より的確な政策を提起している。社民党は、院内では民主党と共産党がすぐ物別れになりそうなのをまとめて共闘の膠役を果たしている。マスコミはその役割を黙殺しているが、やがて必ず評価される。現在、政権交代を他の野党とともに実現する役割と条件を持っている。
 
 ワーキングプアの温床となっている労働者派遣法の抜本的改正、そして、文化的な最低限の生活を保障する最低賃金法制度の確立、長時間過重労働を規制する労働時間短縮なども政治転換で実現しなければならない課題である。
 
 政治に興味を持たない青年層が自らの闘いに立ち上がって、それが政治と分かちがたく結合していることを理解したときに生まれる活動力は、新しい政治的力を生み出す。退職していく団塊の世代もまた秘めたる1960年代後半のエネルギーを内蔵している。こうした力をどう引き出すかが、政策面でも運動面でも選挙戦を左右する。党員が奮闘する主体的努力が今まで以上に必要だが、「小異を残して大同につく」幅広い共闘や共同戦線が求められていることも今まで以上に重視すべきである。


■ 政権交代の意義

 政権交代が実現しても、交代した新政権が前政権とあまり変わらずで、具体的な生活改善や将来展望を含む変革感を国民に与えないのであれば、たちまち再度政権を失う。世論調査でポピュリズム政治を続けるのも将来展望を見失う。それでは政権交代の意味がない。
 
 これまで述べてきた諸課題の解決に努めることが第一の責任であるが、同時に、個々の政策を超えて、政治・経済の枠組みを変える理念や社会観を訴えることも必要である。福祉社会が(a.)人間性豊かな連帯感を社会に取り戻し、(b.)安定した消費購買力を提供して内需拡大を助け、(c.)労働力総体の力量を向上させる要因となり、(d.)経済の成長・発展にトータルでプラスになり、(e.)したがって、単なる財政支出ではなく税収にもつながる、との考え方を、分かりやすく繰り返し宣伝することである。これは、北欧諸国で実証済みであり、経済・社会・政治全体の枠組みを徐々に、しかし大きく変えていくものであり、環境問題も人権問題も前進しうる。そうしたことが政権交代の役割である。
 
 民主党には多くの点で「自民党と変わらない」心配があり、それは社民党や共産党のみならず多くの国民が認識しているところである。税制では「法人税増税」や「高額所得者の所得税の増税」、「資産・金融利得課税の強化」には切り込まない。派遣労働では、社民党や共産党、国民新党まで一致した製造業での原則禁止などに対し、派遣業者とその職員層(連合に組合加入)に気兼ねして緩和を求め、統一した院内共闘を乱している。九条改憲に向けた「憲法審査会促進議連」の顧問を鳩山が、副会長を前原が担っている。小沢を含め、国際貢献を論拠に九条改憲に基本的には賛成であり、国連決議を踏まえたアフガンPRTなどへの自衛隊派遣には賛成なのである。
 
 個別の海外権益やシーレーンを守るだけでなく、世界の政治大国として、アジアで中国に対抗する勢力として、また国連安保理常任理事国入りのためにも、一定の軍事大国になろうとの考えは「保守勢力」に根強く残り再生産されている。しかし、世界情勢の大きな変化の前に、時代錯誤化しつつあり、大きな影響力はなくなっている。にもかかわらず、情勢次第、たとえば選挙結果によって政界再編や大連立がありえるし、2010年以降、いつでも、何かの事件を契機に、海外派兵の恒久法が制定されたり、大宣伝によって改憲の国民投票が行われる危険性は残されている。
 
 したがって、共闘・棲み分けを行って選挙勝利を目指すべきだが、政権交代の選挙結果が出たとしても、社民党は民主党の内閣に対しては政策協定の上で閣外協力にとどめるべきである。大連立の場合は閣外協力も問題外である。問題は政治の根本的枠組み(パラダイム)転換を行って国民の要望や期待に応えることである。決して、保守二大政党による政権のたらいまわしを手助けすることになってはならない。
 
 社民党の政治的役割はあれこれの対処療法的政策羅列だけではなく、こうした状況を大きく変える政治理念をも同時に訴えて勝ち抜くことである。マニフェストもそうしたものにすべきである。

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