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●2008年1月号
■ 新春討論会
   08年を労働者運動反転の年に
   
                                           
出席者
山崎耕一郎
(社会主義協会代表代行)
伊藤 修
(埼玉大学教授)
広田 貞治
(政治運動部会)
小笠原福司
(労働運動部会)
善明 建一
(社会主義協会事務局長)
 

■ 新しい政治情勢をどうみるか

善明 〇八年は、〇七年春の統一自治体選挙で自民党の後退、民主党の前進、さらに七月の参院選挙の自民党の惨敗、民主党の躍進、与野党逆転にみられるように、「潮の変わり目」が起り始めています。これを本物にしていけるかどうかが、〇八年の最大の課題です。

その際に最大の焦点になるのは解散、総選挙です。その結果はどうなるか予測できませんが、確かなことは自民党が現在の議席を増やすことはありません。昨年一一月に福田首相と小沢民主党代表の「大連立協議」というゴタゴタがありましたが、野党が福田与党政権とどのように闘うべきかという問題でもあったわけです。そこで、まず新しい政治状況をどのように評価して、野党は闘うべきか、議論をしたいと思います。

広田 新しい政治状況をそんなに高い評価をしていないが、ねじれてどうにもならないということで終わらせてはならない。大連立協議は何を目的にしているのか。いままでは自民党の派閥、あるいは派閥領袖のたらい回しであったのを保守二党でたらい回しにしたいと財界は考えていて、それに同調するマスコミが手助けをしていると見ています。

民主党はヨーロッパから比べたら社民的要素は薄く、好戦国家は否定していない。ということからすればアメリカ型二大政党に今度の「大連立」は向かう危険性があることを考えなくてはいけない。ドイツとは全然違う。それは一時期にわたって続くのではないか。

小笠原 ヨーロッパでは当たり前ですが、日本では「ねじれ国会」は初めての経験であって、これから本格的に対立軸をはっきりさせた政治が問われる。格差社会を変えるためわれわれにとってはチャンスにすべきことだと思うのです。もう一つは、自民党にとっては危機的だが、支配層にとってはこれをテコにして保守二大政党へ誘導していくチャンスと捉えている。それが今回の大連立構想の背景にあるのではないかと思っています。

山崎 僕は二つの政党の政策の違いもあるけれど、日本は本格的な政権交代をやった方がいいと思っています。いわゆる政・官・業の癒着というのは政権交代で一掃はできないけれど減らすことはできます。民主党の小沢代表のISAFとか国連の評価とかに僕は賛成しない。生活第一といってそれなりに力を入れた公約をしたわけだからその政策を堅持するかぎり政権交代をさせたほうがいい。社民党は何かやるとしたら政策面でもっと積極的に「元祖福祉」論者としてそれを打ち出してもらう。もう一つは北東アジアの平和構想を強調してほしい。いまの流れから言うと北東アジアの平和構想を積極的に強調した方が拉致問題にも、経済協力にもプラスであるという主張をしていいのではないか。

伊藤 僕は、せっかく参議院で野党が多数なのだから、そこから政策論議の内容を国民にアピールすることが大事だと思います。みんなが関心を持ち始めている労働保護規制とか、非正規の地位向上とか、社会保障にも力を入れて、参議院でどんどん提案して攻めていく。それに注目を集めて、国民の考え方の転換、潮目が変わったということを国会からアピールしていくチャンスにすべきです。

広田 今回、長年の懸案であった労働契約法が成立したが、その評価は分かれています。連合や民主党は修正協議の上賛成しましたが、疑問のほうが大きいです。企業側の一方的な解雇や労働条件の切り下げに歯止めがかかるかどうか、現状より悪化する懸念も指摘されています。

善明 労働契約法の論議は長い歴史があります。解雇自由で金銭和解ができるという厚生労働省の案が出されて、反対意見が強まりました。解雇規制については、労働契約法で明記しろというのが労働側、労働弁護団の要求でした。今回問題になったのは、就業規則と労働契約法との関係です。若干労働組合の関与を認めたような言い方になっていますが、問題なのは労働組合がないところが圧倒的なわけです。結局資本の一方的な都合でやられてしまうという危惧があり、社民党、共産党は反対しました。

山崎 社民党や共産党の指摘が通る、通らないは別にして改正案としてもっと積極的に強調してほしいのは、雇用契約の内容を企業側に守らせるような法改正です。日本人は契約という考えがあまりなくて、企業にお世話になっているという意識が強い、労働基準法による「対等な契約者」の意識が少しでも育つのであればこれからの運動にプラスだと思う。

小笠原 先程指摘された点について私は、根底には大企業を中心にした企業別組合、正社員組合と言われているような立場に民主党は立っている。そういう弱点が今度の初めての政治情勢で一つの形として現れてきたのではないか。今後そうさせないために社民党、共産党を含めた野党が労働者、勤労者の立場に立って、もっと良くしていく個別法案をどのように作っていくのかが課題です。逆の意味で社民党や共産党が問われていると思います。

伊藤 連合の中で中小とか非正規を組織している部分が正論を言っていく。参院で野党が多数を取ったというのは使いようによっては大きなことです。衆院で政府側から提案されてくるものに抵抗するだけでなくて、社民党は参院与党として「こういう問題がある」とみんなに目立つように大声を出して、積極的に広げていくことに重点を置く。

■ 問われる税制政策、財源問題

善明 「ねじれ国会」での運動の進め方ですが、社会保障の問題、税制(消費税率引き上げを含め)の問題があります。福田内閣の姿勢は「脱安倍政治」というようにみえますが、果たしてそうなのか。今度の政府予算に関連して企業課税を軽減し、医療制度など社会保障の負担増を打出すなど、諸政策に如実に現われています。財源問題を含めて、野党としてこれにどう対決していくか、この点に議論を移したいと思います。

伊藤 自民党は農業、中小企業、医師会など従来の支持基盤をぶっ壊し過ぎてしまった。それに修正を加えようという振り子の動きが必ず出てくると思います。しかし、彼らを取り巻いているイデオローグたちは相変わらず圧倒的に新自由主義、市場主義です。

企業課税は、国際競争が厳しいのでもう一度増やすのは論外、というのが主流の空気です。昔五〇%だったのが今は三〇%、財務省主税局はもう少し取りたいのが本音でしょうが、それは言い出せないので、増税するなら消費税という。これはここ何十年来ずっとそう考えるパターンになっています。

しかし、日本の企業課税は重いというが、それは外見上の税率の話であって、課税ベースは狭いし、社会保険の使用者側負担も合わせてみれば日本は軽い。アメリカは公的医療がないから会社の福利厚生費という形でかなり負担しており、それをカウントすればアメリカも軽くはない。政府統計でもはっきり出てきているのに、企業には軽く、上げるとしたら消費税、というワンパターンになっているのは非常におかしい。ここは声を大にして言うべきです。

小笠原 「日本の経済は外需中心で支えている」と言われていますが、外需もアメリカで減っている分インドを含めたアジア、あるいはEUからの収益の方が伸びてきている。そして、財界は法人税のアジア基準への引き下げを主張しています。そうなれば内需を中心にした企業、あるいは外需中心の中小、下請けはますます単価を下げられ、大手と中小の格差はますます開いていくことになります。

伊藤 外需依存の日本経済とよく言いますが、世界中で貿易依存度が高まっている中で、日本は一番低いのです。韓国の輸出はGDPの五割、中国も五割に近い。ヨーロッパも国境を乗り越えて貿易が大規模という中で、日本の輸出はGDPの一五%もない。日本は内需が弱く、外需依存で危ない経済だというのは違うと思います。

世界的に分業と相互乗り入れが進んでいる中で、この国はここで強い、伸びているという分野がお互いにある。日本では自動車とか電機に関連した高級で技術の高い部品などで、中小企業でも強いのがいる。そういうところが集積している地域は調子がいい。三重、愛知、栃木とか。そうでない産業、韓国、中国、台湾でもつくれるようなものにしがみついている工場を誘致してもダメです。内需産業では、地方の私鉄が運送をやっているだけだと、存立させることはやらないといけないが、人口が減っていくわけだから縮小しかない。地方としても、日本の強みを活かした分野に結びついていくような産業立地をしないとダメです。

一方ではどんどん必要になっていく分野として、介護や教育、そういうところで人手が必要になります。いまは金がないといって、安くて貧弱なサービスで非正規労働のプールになっています。ある程度のレベルの賃金・労働条件を確保する枠をはめながら拡大することが重要です。それで金が足りなかったら地方自治に金が回されるべきだし、そのために税金が必要であればもちろん負担していかなくてはいけない。

善明 財源問題でいうと歳出削減です。ムダを省いて収支バランスを均衡化しようと、政府はいろいろやっています。また、経済成長と財政再建を両立させると言っているわけですが、最近、埋蔵金から一〇兆円を充てるという議論があります。いずれにしても、予算支出の優先順位を含めて、国民にわかり易く説明しないといけないと思います。

広田 それは前から目をつけていて二年半前に社民党の又市さんが先陣を切ったのです。政党が大きければ売り物になったくらいやっています。五〜六兆円は絞り込めば出せる。中川秀直は四〇兆円くらいあると言うのだから五〜六〇兆円はあるわけです。だが国債還付に回しますと押し切られていました。

善明 例えば道路財源の問題ですが、揮発油税上乗せ分を止めれば五兆円ですかでてくる。そういう議論をした方がわれわれも迫力を持っていけると思います。

小笠原 財源問題で社民党は法人税、それと富裕層の所得税の税率を九八、九九年にもどせば、二・五兆円。特別会計見直しで六・五兆円。あわせて九兆円くらいの財源はあると、勤労者、弱者の立場に立って試算しています。

広田 年金一元化も同じです。大企業の厚生年金や公務員の共済年金の該当者は反対でしょう。所得税の累進性の復活強化もそうですが、経過措置をとるにしても、底辺層を含め全体の引き上げに協力するくらいでないと連帯できないし、全体の引き上げはできません。

善明 民主党は税制大綱を政府の〇八年予算に対抗して出すでしょう。これで議論がわかり易くなると思いますが、社民党の役割もあります。

広田 基礎年金の国庫負担の二分の一への引き上げで二・五兆円、農業の直接所得補償は一兆円、子ども手当てが二兆円かかります。一五兆円とも言われる財源を歳出削減では搾り出せません。どうしても財源問題が迫られます。

善明 消費税は〇八年はともかく〇九年には手をつけるでしょうから議論しておかないと闘い切れない。

伊藤 税収はもっと必要です。そのさい消費税は最後の最後の順位です。それ以前に直接税(相続税も含めて)を累進性ももたせて再改革する。これを前面に出すべきです。

支出は、年金は一元化が必要だし、基礎部分はできるだけ税金でやっていく。勤労者の中の高所得者とか組合組織とかにとらわれないできちんと議論していく。そういう利権を守ろうとした組織は必ずどこかで叩かれます。少し前なら所得税と法人税を重くしろと言うのは非現実的な話で、消費税増税というのがリアリズムでしたが、今でもそんな感覚でいると世間とずれている。「中流」は崩壊し、格差が拡大しているのですから。

■ 安全保障政策と野党共闘

善明 先ほどらい述べられた課題は、財源問題が残るけれど野党間である程度すりあわせもできると思います

問題は、日本の安全保障政策です。国際貢献と自衛隊海外派遣の恒久法等々です。小沢代表は当面ISAFには参加しないが、油の補給では微妙な言い方をしています。これは国の安全保障政策の根幹を規定する問題です。政権構想とも関連して野党間で大きく食い違っています。国の安全保障や国際貢献のあり方を野党共闘の中で一致できるような政策が可能かどうか。社民党や共産党は固有の政策を持っています。次にこれについて意見交換をしたい。

広田 給油新法に民主党は反対を貫くでしょう。再延長、再議決で問責決議案を出し、解散に向かうかどうかは分かりません。現在、PKOに対して国民的批判はありません。専守防衛なら社民党も共産党も否定していません。しかし、海外派兵は別です。

山崎 社民党にあんまり現実的なことを言ってもらうと支持が崩れてしまうけれど、民主党と連立政権、あるいは閣外協力を組むのはいいのではないか。

広田 小沢は目下、保守と革新のすれすれのところ、とくに生活面で真ん中より少し左の政策を出して、政権を取ろうとしています。社民党は意見を言いながら政権交代に協力すべきだが、閣外協力にとどめる前提で対応すべきでしょう。

善明 今の社民党は実質、国土防衛は、専守防衛で必要最小限でしょう。

広田 民主党の小沢代表は安全保障政策、国際貢献と憲法の関係は踏み込んでいくでしょう。社民党はあくまで反対、専守防衛です。国連決議があっても国権の発動たる武力行使は認められません。要は、生活関連の改善です。そのために共闘するのです。

山崎 民主党を支持しているいろんな団体は社民党が安全保障政策を変えれば連立に置いてもいい。そういう働きかけはすると思います。それは毅然とした態度で、しかし政策の違う党と連立を組むということは当然あるわけです。

小笠原 国際貢献をどうするかは政治的には避けて通れない問題です。社民党は非軍事、民生と言っています。真の意味の国際貢献をこの間の取り組みについて国会の場で検証させる。それを行うことで社民党の非軍事、民生の国際貢献は社会的評価が必ず出てくると思います。

広田 先ほど言われたのですが、アフガンやイラクにアメリカを中心に軍隊を出していますが、それが民生なり経済に貢献しているのか。そういう議論を詰めながら、突出化してやっていけば必ずしも軍隊を出さなければ国際貢献にならないということにはなりません。朝鮮問題も拉致問題を何とかする仕掛けができれば「やっつけろ」という国民的議論はなくなっていきます。政権を取る過程はまだ先です。信頼を得ながらつくっていく課題と、政権を取った後の課題を一緒にやるのは違うと思う。

善明 今アフガンのテロ対策支援で民主党は法案を国会に出していません。民主党の法案の中身は非軍事、民生が中心です。ここにとどまっています。新法の議決、会期を延ばした時にどう対応するか。民主党は反対の姿勢は変えないのではないでしょうか。民意があります。

広田 反対します。ただ問責決議を出すかどうかです。

善明 民意は実質的に政権交代が必要ということですが、社民党の中では、「政権交代は言うな」という意見もあるようですが。

広田 それはいろんな人がいて、第三極という言葉を使うな、うちが二極になるという人もいます。だが政権交代が重要だと言うことはかまわないと思います。

山崎 参院選挙をやって民主党が多数になってからはむしろ、政権交代に積極的な態度を示さないとますます死に票になると思われて、社民党離れが進む危険性は大きいわけです。自分の政策をはっきりさせながら政権交代にも積極的だという態度の方がいいという気はします。

小笠原 参院選挙の結果で示された民意は、格差、貧困社会の是正が中心です。こうした生活に根ざした政治、そういう観点で民意を反映させ是正する政権交代を、と社民党は言えばいいと思いますが。

善明 参院選挙後の世論調査があります。民主党が勝ったのは今の政治を変えてほしいが三七%でトップ、政権交代は二五%くらいです。よく考えてみると、政治を変えてほしいと言うのは政権交代抜きには不可能ですから、政権を取ってほしいというのが大半の民意です。

小笠原 そこで問題になるのは、資本、政府の攻撃として保守二大政党誘導への大きな流れが出てきます。その中で政権交代を言えば社民党の影が薄れていくということがあります。社民党らしい独自の主張ができなくなっていく。議席も票も減るのではないかという危惧があります。

広田 不動の信念を貫くことは大事ですが、あまり主観的になりすぎると、国民からみるとどんどん存在感が薄れていくことになります。

山崎 民主党と共闘したから埋没してしまうというのは、選挙民が選挙に慣れていない時はそうでした。最近ではある選挙で民主党に投票したら次に社民党に戻らないという傾向はあまりないです。社民党が候補を立てなかった選挙区でも基礎票は残っています。共産党に投票した人もいるわけです。消滅してしまうと神経質に考えることはない。

小笠原 今の「ねじれ国会」の中で社民党らしさをどう出すかです。中心は構造改革の疲弊の是正ですが、社民党が構造改革の疲弊を改革する自治体議員を中心にした闘いをどう組織するのかです。中央での格差の是正を柱とした政策づくりと野党共闘の努力、地方からの闘いの組織化と両方から攻めて社民党を前進させて残す。この意志統一と実践、交流を強めることではないかと思います。

広田 もう一つは大都市部の陥没が社民党にあります。民主党に続いて公明党、共産党が大都市部で取っています。社民党は落ち込んでいます。そこは考える問題です。新社会とかコレコンの仲間とか結集するのが大事です。

小笠原 私の地域で憲法を考える会を作って一年になります。伊藤真さんを呼んだ時は一五〇人来ました。「戦争をしない国」の上映会は八〇人来ました。しかし、僕より年上ばかりで若い人をどう組織するかです。問題提起をしているのは憲法二五条の生存権、二六条の教育権、二七条の勤労権にそってワーキングプアの問題、就学援助増の問題、医療費の負担増などの問題をテーマに取り上げる。そこを切り口にして憲法九条とつないでいこう。そうすれば若い人だって呼べると議論もしています。そういう切り口と運動の組み方が必要ではないかと思っています。

■ 客観的条件が求める大衆運動強化

善明 最後になりますが正規労働者の賃上げ闘争、非正規労働者の均等待遇実現、最低賃金引き上げ、派遣労働法の抜本的改正など、企業の利益、金余りをもっと労働者に配分しろという労働運動の役割です。ここの闘いに元気がないと労働者は、政治に関心が向かないし力が出てきません。

労働運動の変化はあるわけです。ここをしつかりみて、運動を押し上げることを工夫していくことが大事になっていると思いますが、ご意見を聞かせてください。

小笠原 官民が分断されながら、八〇年代の行革攻撃から九〇年代に入ってバブル崩壊後の民間での大リストラ、九〇年代後半から〇〇年代に入っての市町村合併、「官から民へ」の市場原理導入。この三つの流れの中で旧公労協の部隊が徹底的にやられてきた。同時に民間の一部大企業は競争の中で生き残っているけれども中小・零細は徹底してやられてきた。NTTは賃金の二〜三割ダウンです。自治体も早晩地域給を導入され地場賃金にならされていくでしょう。むろんこの実態でも民間中小よりは雇用条件はまだいいとは思いますが。問題は資本の攻撃によって官民、特に中小民間との統一闘争の客観的条件がより高まってきているという認識を持つことが必要だと思います。

二つ目は、連合運動の変化はそういう客観条件に規定されて五年目の中小共闘、パート共闘三年目、有志共闘二年目です。新たに割増共闘と非正規労働センターを設置しました。客観的条件と労働者状態に規定されてそういう運動方針をだしてきています。思想的には民間大企業中心に企業主義に浸っていますが、労働者状態に立脚をして闘う方針や組織つくりを連合はやってきているわけです。

産別中央として連合にものはいいながら、批判に止まらず地方連合、地域共闘を中心にして旧官公労が中小民間と泥んこになって具体的な運動を作る。その中から企業主義を排していく努力が必要だと思います。

善明 先ほど言われたように、運動を通して意識を変えていくことを重視しなければなりません。企業主義を克服しろ、産別自決はけしからんと、何回いっても前進しません。例えば非正規の組織化とか、均等待遇とか最低賃金引き上げの運動があります。こうした運動に踏み込んでいける条件は出てきています。そういう認識に立てるかどうかです。

山崎 その運動を支援する超党派の支援機構みたいなものを作って資金援助もするし、弁護士とか議員とか協力体制も作る。それは本来ナショナルセンターがやるべきことであろうけれども、そういうものを作って応援団でいいから現役の人にがんばってもらう。そういうものを提唱していったらどうかという気がします。

善明 連合はこの五年、客観的な変化の中で労働者状態の悪化を改善させるための課題を提起してきました。それがどれだけやられてきたか、集約され、総括されていない問題はありますが、課題は次から次に出てくるわけです。これからは地方連合会がもう一つの大きな運動の力だから非正規労働センターの運動にどうかめるかです。

山崎 そういう支援を包括すれば行政に対してももっと協力しろと言えるし、労働組合を組織化しやすいような法律の改正も個別に言うよりは言いやすくなります。そういう大きな構想を一方で立てることが必要だと思います。

小笠原 大きな構想は賛成です。そのために組織労働者が自らの企業内にいる未組織や非正規の人を組織する経験を積むことだと思います。この運動を自らの課題と同時に、本気になって今年の春闘で取り組み、外に訴えていく。そういうことを通して組織労働者の信頼を広げていく、そこを一歩ずつやりながら連合が提起している社会的な労働運動の課題にも精一杯取り組むことだと思います。

山崎 地区労運動は連合と別になっているから、ベテランの専従者で活躍できる力を持っている人が活かされていないです。持っている力を全部活用していけるような機構、構想が必要ではないかという気がしています。

広田 連合は一定の政策は出しているが運動化が不十分だ。社民党の国会議員は衆参で一二人しかいなくて、力が及ばないので、その中で青年の非正規問題一本に絞れと議論は起きているのです。T字型とI字型とかあるでしょう。T字型で溝が平和憲法になっているわけです。

山崎 賃金統計を非正規、下請け含めて企業内で働いている労働者全体の賃金平均を出してそれで外国と比較するべきです。そうしないと正規労働者の賃金だけで比較して、「日本の労働者の賃金は高い」と経団連は言うわけですが、これは嘘です。

伊藤 経団連が賃上げを言い出したのは、内需中心の産業がもっと消費を増やしてもらわないと困る(ただし我が社以外は)ということだと思います。個別企業になればとんでもないという話。こちらとしては労働分配率が下がり過ぎている。トヨタがもっと出さなくてどうするのか。

資本は儲け第一で、そのためには何だってする、ということを理解するのが経済学の要点です。少しでも若い人を含めたところで、考え方に影響を与え、変化の芽を作り出していくことが重要でしょう。

善明 本日は、労働者運動の反転の年にすべく議論をしていただきました。まだ、討論を深めなければならないことは残っていますが、これで終了します。ありがとうござした。

<12月10日>  

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