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●2007年9月号
■ 安倍・自公政権にお灸をすえた参議院選挙
  「格差拡大・貧困化」と「美しい国」にノー
                 (広田貞治)
 

■ はじめに

自民党大惨敗、民主党一人勝ちの参議院選挙が終わって2週間がたった。いまや安倍政権がいつまで持つかが政界の最大関心事になっている。世論調査では、選挙結果に7割が満足と答えている。自民党内でも激しい批判と退陣要求が渦巻き、確執が深刻になっている。

もう1つは圧勝した民主党が本当に安定した国民の信頼を得られるかどうかである。今回は自民党支持者の25%が選挙区でも比例代表でも民主党に投票しており、無党派を含め厳しい自民党批判を野党第一党として一手に引き受けた結果(世論調査で8割)であり、民主党への積極的期待票は2割程度と見られる。

衆参のねじれで国会はどうなるのか、解散総選挙はいつか、政界再編が起きるのではないか、などもまた政界の大きな関心事になっている。民主党が社会民主主義的な政党として政権政党に成長するか、それとも内部矛盾を露呈して自民党の支持回復を許すかも大きな注目点である。

社民党は敗北したが、安倍政権打倒に向けて従来どおり幅広い野党共闘をまとめつつ、日本の政治が福祉社会をめざし、改憲・集団的自衛権行使ではなく護憲・平和外交の方向に向かうよう、最大限の努力をすべきであろう。同時に、歴史的な役割を担うべき社民党自身がジリ貧・消滅の道を避けるにはどのような戦略が必要か真剣な議論が求められる状況である。

■ 安倍・自民党惨敗、民主党一人勝ち


 
・各党の消長と参議院の重みの再確認

自民党は改選議席64を37に大幅に減らした。1998年の橋本政権下の44をも大幅に下回り、1989年の宇野政権下の36に肩を並べるものであった。1人区で6勝23敗、2人区から5人区まですべての複数区で1議席止まり、非改選を含めて過去最低の83議席、12選挙区が空白になり、予想以上の大惨敗であった。1人区の惨敗は津島派に大打撃となった。

民主党は1人区で17勝、3人区以上の東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知の4都県で2議席を獲得、改選議席32を60とほぼ倍増、非改選を含め、過半数ではないが第一党に躍り出た。この勢いの中で、無党派層の過半や自民支持層の25%以外に、社民党や共産党の票までも奪うことになった。選挙後、当選した無所属議員の内3名が会派入りし、民主党は112議席となった。

この8年間自民党にべったりの態度をとった公明党は、堅い学会票の外回りのF票(フレンド票)が逃げ、バーターのはずの比例代表での自民からの票も当てが外れた。埼玉、神奈川、愛知の3選挙区で現職が予期に反して落選し、6年前当選13を9に減らし、計20議席になった。

「今必要なのは確かな野党」を唱えた共産党は、選挙区での議席を失い、比例代表でも伸び悩み改選議席5が3となり、計9議席になった。社民党よりは強い組織を維持しているが、古く暗いイメージがあり、若い世代の参入が少なく高齢化が進み、活動力は以前に比べると極端に落ち込んでいる。浮動票はあまり取れず、今後も苦戦が続きそうである。全選挙区の候補者擁立は結果的に自民党を利する間違いであり、野党共闘を柔軟に展開すべきだとの批判も多い。

社民党は「比例票500万、選挙区も含め7議席獲得」をめざしたが、比例代表で3年前より35万票減らし、推薦無所属候補5名の当選を除くと、比例代表での3議席が2に減少、計5議席になった。ジリ貧状態が続いている。労組という支持基盤を失い、市民派からは既成政党批判を受け、組織・財政力が極端に落ち、候補者擁立が遅れた上、事前・本番を通して得票活動がほとんどできない結果であった。後に再述する。

国民新党は改選前の2議席を維持し、計4議席を守った。新党日本は比例代表で田中前長野県知事が当選した。新社会党を軸とする九条ネットは全く勝負にならず、今後の展望も見出せなかった。無所属は、東京選挙区の純粋無所属の川田の他、1人区の沖縄・糸数など民主・社民・共産・国民新党などの共闘で、7議席を選挙区で獲得した。すべてが野党側である。

以上を総合して、自公の与党104に対して民主・共産・社民・国民・新日・無所属を含めて野党は138となり、絶対多数を獲得した。わずかな負けなら無所属をかき集め、民主から一本釣りを考えていた自民党には何の手がかりもない結果となった。

参議院は戦後の緑風会のような会派が政党化に呑み込まれて以来、ずっと「衆議院のカーボンコピーだ」とか、その故に参議院不要論が根強かったが、今回の選挙結果は、参議院の動向が衆議院にも大きく影響し、政権交代にもインパクトを持つ重要性を再確認する結果となった。

また、女性当選者は26人(21.5%)となり、1989年の土井ブーム時より多くなった。政治と金の関係など汚れたしがらみがなく、生活重視と評価されたからであろう。また、4月の自治体選と重なる亥年にもかかわらず、期日前投票が1000万人を超えるなど有効に利用され、投票率は前回3年前より2%高かった。

・勝敗を分けた争点は何であったか
最大の争点は年金であった。消えた年金記録の問題は、安倍政権が昨年暮には知っていたにもかかわらず「いたずらに国民に不安を与えてはならない」として白を切ろうとした。逃げ切れないと見ると態度を急変させ、「来春3月までに記録の突合せを行い、すべての人を救済する」などとリップサービスに努めた。しかし、場当たり的で馬脚が見えていたので、かえって国民の不信を買ってしまった。この問題をえぐり出した民主党は一元化の制度設計も提案し、一定の支持を集めた。

政治と金の問題も大きかった。自殺した松岡の後任の赤城農水相は松岡以上に「政治と金」のいい加減さを露にしたのに説明責任を果たさず、絆創膏事件もあって決定的に嫌悪され、自民党不信に追い討ちをかけた。安倍は2人をかばい立てした挙句、1人は自殺させ、1人は選挙が終わってから更迭した。

閣僚や党三役の失言の連続も国民を怒らせあきれさせた。柳沢厚労相の「女は産む機械」、中川自民党政調会長の「核保有論議はタブーにすべきではない」、久間初代防衛相の「アメリカの原爆投下はしようがなかった」、麻生外相の「アルツハイマーでも分かる」などが代表的である。「仲良し・論功行賞人事」の結果、政治的な危機管理のできる、かつての後藤田官房長官のような重鎮のいない政府の弱さを露呈した。原爆容認発言の久間や安倍内閣の発足当初の佐田行革相を含め、10カ月で4人の閣僚が辞任した。安倍の任命責任が厳しく問われた側面も大きい。

最大かつ基盤的な自民党の敗因は、小泉以来の構造改革・規制緩和が地方経済や非正規労働者、中小企業者や農林水産業者など弱者を切り捨ててきたことである。その恨みつらみが、小泉の後継者である安倍政権のお粗末さに我慢ならなくなって、選挙で噴出したと言えよう。

また、旧来の利権政治の下での建設業界や医師会、特定郵便局長会など磐石の自民党支持基盤が小泉構造改革で壊されたことも大きい。4月の自治体選挙にも傾向は現れていた。

民主党の勝因は、前回総選挙で小泉自民党に流れた無党派の過半を獲得したことからも、縷々述べた自民党の失策・自滅と見られるが、年金問題での対応や地方重視の政策と選挙戦術あるいは「生活第一」のスローガンと合わせて積極的な期待部分もあったであろう。上記テーマが争点となり、憲法九条・安保防衛が外されたことも、この点で党内不統一の民主党には幸いした。

党首の「選挙の顔」としての評価は、選挙前は小沢と安倍に差はなかった。選挙戦略においては、国民の生活や意識と遊離した「美しい国」「成長路線」「改憲」を訴え大都市を重視した安倍より、国民の目線に立ち「生活第一」「年金重視」「地方重視」を訴えた小沢のほうが都市部でも成功したことは間違いない。安倍の消費税をめぐる「ぶれ」も不信を増幅した。

集団的自衛権行使、日米軍事一体化や改憲の是非は争点から外された。社民党や共産党の訴えは、この点で選挙民に届かず、「生活第一」の民主党に票を奪われた可能性は高いが、長い目で見れば、国際情勢の変化もあり、やがて主張の一貫性が生かされる時期を迎えるであろう。11月1日で期限切れを迎えるテロ特措法への臨時国会での対応は最初の正念場となる。

■ 二大政党化と民主党の正念場
 
・選挙勝利で民主党の支持率急上昇

選挙惨敗後の安倍の言動がさらに国民の信頼を失い、内閣支持率20%台前半、自民党支持率20%割れにまで落ち込み、一方で民主党の支持率は25〜30%台半ばまで上昇し、ポスト安倍の第一候補に小沢の名が挙がってきた。

連合はますます民主党に傾斜し、主要労組内の社民党支持グループを押さえ込みに出る可能性もある。社民党的勢力を民主党に取り込みたいからでもある。財界は民主党と自民党の争いであれば、大同小異と見、あまり介入せず、様子を見ながら資本の立場を政策的に活かしてもらえばよいと考えている。経済同友会が「自民敗北は残念」と発表したあとは口をつぐんでいる。社民や共産が圧勝したら恐慌をきたすであろうが、民主の伸長が社民、共産の力をそぐなら受容できる。民主党は「郵政民営化凍結」で国民新党を自陣営に巻き込もうとしている。

五五年体制後はじめて自民党に代わって民主党が参議院の議長ならびに議運委員長を獲得した。当面は、民主党の政治姿勢、政策、運動などが大きなカギになることは間違いない。与党に選挙中から無責任なばら撒き政策だと批判を受けてきた「農家の所得保障」や「基礎年金の国庫負担の2分の1への引き上げ」などの財源をどう作るのかが問われている。「テロ特措法」など安保・防衛問題でも民主党はきちんと答えを出さねばならない。それができなければ、勝利と期待はバブルとなって消える。

続く自民党内の混乱

選挙が大敗に終わった直後、安倍は「自分の基本路線は信頼されていた」「反省すべきは反省するが続投する」と国民の審判や党内の批判を無視して居直りを表明した。「内閣改造を早めにやる」と口を滑らし、その直後に赤城農水相を更迭した。敗因を閣僚の言動や失敗に押し付け、「人心一新を図る」と言いながら、自らの責任はとろうとしない。「小泉的構造改革・規制緩和路線の継続」と「戦後レジームからの脱却・改憲路線」が明確に否定されたことを認めようとしない。議会制民主主義や選挙に現れた国民の民意を全く理解していないとの批判も強まっている。

自民党内でも閣僚経験者の石破茂、小坂憲次(以上津島派)、中谷元(谷垣派)が「安倍は退陣すべきだ」「国民が求めたのはピッチャー交代だ」と批判を闡明し、ベテランの加藤紘一や山崎拓に加え、後藤田正純などの若手も同調している。8月27日、内閣改造で挙党体勢ができるのか疑問視されている。公明党に相談せず自民党だけで、臨時国会を8月31日に召集することを決め、ねじ込まれ変更する事態も発生した。公明の自民離れも公然と口に上り始めた。一部に親衛隊的言動があるが、山積する難問を考えると年内持つかどうかだとの突き放した見方も強い。

■ 政策課題で国会はどう動くか

・衆参のねじれと解散総選挙、政界再編

国民の多くと野党は「解散総選挙を急げ」となっているが、安倍自民党は言うに及ばず、思わぬ敗北を喫した公明党も時間稼ぎをしたいから、「破れかぶれ解散」などよほどのことがない限り解散総選挙は先延ばしになると見るのが常識的である。過去の国政選挙を見ても、敗北を喫した政党は1年以内の選挙ではやはり敗北している。選挙民の残像が消えないからである。

しかし、衆参のねじれがどんなハップニングを生むかは分からない。お互いに国民の目を意識し、いわゆる「国の進路を誤らないための大人の知恵」を働かせようとするであろう。ただ、小沢一郎は「足して2で割るやり方はしない」と言明するなど、「テロ特措法」「消費税」その他の主要政策課題で衆参、与野党が衝突することは十分ありうる。参議院の先議事項はふえるであろう。

一方で、自民、民主は、お互いに、どっちにいてもおかしくない議員を抱えているので、手を突っ込みあい多数派工作を行う可能性はゼロではない。国民新党などを含めて政界再編の動きはいつ起きてもおかしくない。また、公明党が自民党に見切りをつけ民主党にすり寄る可能性も、政策や体質を考えると十分あるといえよう。選挙直後には自民党との連立継続を表明したが、最近「集団的自衛権行使反対」を鮮明にした。

山積する政策課題

9月に幕を開く臨時国会では、まさに難問が山積している。ざっと拾ってみても、年金、消費税など税制、財政再建、政治資金、医療保険制度、介護保険制度、最低賃金法など労働法、公務員の天下りと官製談合絶滅、郵政民営化(凍結)、教育、環境、テロ特措法、イラク特措法、集団的自衛権の行使、日米軍事一体化、改憲、さらには北朝鮮の核廃棄へ向けた六者協議の成功、日朝国交回復と拉致問題の解決、などいずれも大きな難問である。

社会保障費の自然増に対応するには、政府・与党は歳出削減を図る一方で消費税を軸に税収増を図らねばならないという流れが強かった。小沢・民主党は当面は消費税を上げないと強調して選挙戦を闘って勝利したから、これを貫くと思われる。消費税の来春からの増税は先送りされよう。かといって、法人税や所得税の累進性強化(最低限、定率減税と同時に行われた税率の、それ以前への復元)には触れていない。2011年にプライマリーバランスの均衡を図るには、冗費節減だけでなく財源確保は至上命題であり、不公平税制の是正を強く求めるべきである。

年金記録の来年3月までの突合せ・統合は、専門家筋では「とても無理」が常識で、社保庁解体を急げば不明のままの記録が山ほど残されることは必定とも言われている。一部の人は救われるが、大半はおいていかれる危険性が高い。詐取しようとする不心得者も続出しよう。年金一元化は、厚生年金と共済年金にとどめるか、国民年金まで含めるかがポイントである。基礎的年金の財源を保険料とするか税とするかも大きな議論になる。階層によって利害が複雑に絡むが、すべての勤労国民の幸福と福祉社会の持続的発展の立場に理解を求めていくべきである。

最低賃金の引き上げも社会保障制度の基本的な条件となる重要な課題である。外国人労働者を含め、多様化した非正規労働者のほとんどを救えるような労働法規の改正も急がれる。時間外労働不払や長時間労働につながるホワイトカラー・エグゼンプションを許さないのは当然である。

政治資金規正法の再改正については、「すべての政治団体」において「1円以上すべての支出に領収証を義務付ける」方向でまとまろう。官製談合と天下りの一掃についても論点の1つになる。高級官僚だけでなく、民営化に伴う一般公務員の第2の職場を含めて真摯な論議が望まれる。社会保険庁労働者などの首切り合理化に対抗するTUPEなどの知恵が必要である。

テロ特措法は11月1日に期限切れを迎えるが、これはアメリカの戦争であって、国連の決定に基づくものではないから、憲法違反でもあり、延長すべきではない。小沢・民主党代表もシーファ駐日米大使に、日米機軸に反するものではないとして、同様の趣旨を闡明した。ところが前代表の前原は延長是認を明らかにしている。社民党などが大衆運動を強めつつ、民主党がぶれないよう牽制することは不可欠である。

集団的自衛権行使については、公明党も8月に入って反対を闡明したので、安倍の茶坊主たちの「有識者懇談会」がいかなる結論を出そうとも、すぐ日の目を見ることはあるまい。日米軍事一体化や米軍基地再編のための巨額の出費は財政と国民感情を考慮すれば、中止すべきである。

従軍慰安婦問題や靖国問題で韓国や中国との外交関係を損わないように注意しながら北朝鮮との関係を打開し、長期的に東アジア全体の共同体をめざすことが重要である。対米関係でも追随ではない友好関係に切り替える。在日の権利を守り、日朝国交正常化を進める中で、拉致問題を解決していくほうが現実的であり、六者協議などで国際情勢に遅れない道を歩む賢明さが望まれる。平和的に経済力や科学技術を活かした国際貢献を積極的に展開すべきである。

■ 社民党はいかに闘いを続けるべきか

選挙を闘いきれない組織・財政

 今次選挙では、同志たちは「社民党が伸びてよい情勢だ」と考える一方で、組織・財政・作風のいずれにおいても自信を持ちきれなかった。候補者擁立は遅れ、燃えるような選挙活動ができずに、敗北に終わった。このままではジリ貧だとも実感しているといってよかろう。最近の敗北は選挙制度が原因ではないこともはっきりしている。比例代表部分のない選挙制度では全滅する危険性が大きいのである。以下、厳しい批判を覚悟で筆者の思うところを述べたい。

昨今の弱さを列記すると、
(1) 党員が少ない上に高齢化が進み、社青同など青年活動家の衰退で活動力が徹底的に不足している
(2) かつては総評・県評・地区労と言う支持基盤があったが、連合主流の民間労組に続いて、総評解散後「平和労組会議」を担っていた官公労も民主党支持一本やりに流され、支持基盤を失った
(3) 固い支持者を除き、かつての支持者が死票を嫌い、次第に負け続ける社民党から離れた
(4) 選挙で負ければ党の財政が厳しくなり、候補者擁立が難しくなり、支部はおろか県連にも専従役員が置けない状況になり、日常的な運動を通しての組織強化ができない
(5) 選挙直前に、党専従者や心ある有識者などが立候補してくれても、最初から負け戦気分で意気が上がらない
などである。

事前の政党ポスターやビラ入れもほんの僅か、かつての、1人1人の支持者に紹介者になってもらう「公選はがき運動」はほとんどできない。本番では初日にポスターを貼り出すのが精一杯、期間中にビラを1000枚とか2000枚各戸配布で終わり、遊説関係者を除くと後はすることがなく、個々面接や電話戦術を続ける気力もあまりない。要するに最低限の形をつけるだけで、活き活きとした得票活動はほとんど展開されていない。これでは「定数の多い大都市部では公認候補に限る」という方針は、候補者を勝たせる仕掛けのない無責任なものとなる。せっかく候補者に魅力があっても、抜群の知名度がなければ勝てない。力がないので後の保証もない。こんな失礼なことはない。こんなことを無為に繰り返すことの是非を真剣に議論しなければならない。

・主体の強化と共闘拡大の有機的な結合を

私は、今次選挙で一人区などで民主党と統一候補を擁立したことは正しかったと考える。少なくとも、自民党を大敗に追い込んだ効果は無視できないし、労働者・労組との関係をきらないという意味でも有効に生かすべきである。

と同時に、大都市部で革新無所属候補を推薦しても良かったと考える。戦略的に「労働者や市民の立場で暮らしと権利を守り、国民投票に備えて九条改悪に反対する共同戦線を広げる、それと連動して比例票を増やすことを第一義に考える」ならば、選挙区で公認候補擁立にこだわって、比例の拡がりを狭め、選挙区で惨敗することは賢明ではない。「比例代表は社民党」を取り付けられ、当選後の院内の協力関係が確認できれば、無所属候補を推薦または支持し、選挙区で勝ち、比例代表でも1議席でも増やせれば、大きなプラスになると考える。

4月の自治体選挙でも社民党の後退傾向は明らかであったが、市議選などでは公認だから勝利したケースもあるが、全体的には県議レベルなどで現職議員の無所属化が進んだし、有望な新人が勝てない地域もあった。国政など大型選挙ではその傾向は強まる。「政党交付金に直結しない」「会派の団結が守れなくなるのでは」などと言って排除することは、あまり説得性がない。公認で当選した議員ですぐ離れていった、ひどい人もいる。

主体の強化と共闘なり連帯を、柔軟かつ弁証法的に関係付けた戦略的な発想が生まれ、根付かない限り、団塊世代が卒業した後を埋める若い力は育たないし、高齢者も含めて活気を取り戻すことはできないのではないか。それにしても、団塊世代にはまだまだがんばってほしい。

今後、社民党の進むべき道について、
(1) 労働者・市民の党であるから、連合を媒体として民主党との連携の強化を模索する。
(2) 民主党は信用できないから、新社会党や革新無所属の議員や政治グループとの連携を追求する。
(3) 民主党も新社会党や革新市民派のいずれも信用できないし、面倒くさいことが起きることは目に見えているので、このまま貫いていくべきだ
の3つの道で議論があろう。筆者は三者択一ではなく、困難を承知ですべてをこなせる党を作る以外に道はないと考える。小さく固まって自由な議論を封じたり、トップリーダーの周りの仲良しグループ的な運営が柔軟な進路を許さないようになれば、展望は生まれない。総選挙まで多少の時間はありそうだ。徹底的な総括議論の結果、社民党宣言の政治理念や主要政策が活かされる方針が生み出されることを期待したい。歴史的役割を果たすために。

<8月14日>  

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