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●2005年9月号
■ 解散総選挙と日本の針路
            (広田 貞治)

 
 ■郵政解散か政権交代選挙か?
 
「殺されてもいい。何しろ通してくれ。否決されれば解散だ」と物騒な発言で脅したにもかかわらず、8月8日、参院において郵政民営化法案が大差で否決された。小泉首相は総辞職せず、即日衆議院解散を断行した。「参院での否決で衆議院解散は筋が通らない」とか「国内外に諸案件が山積し、政治空白を作ってよい状況ではない」「こんな状況で自民党が分裂選挙をしたら大敗北し野に下ることになる」などといった与党内や閣僚内の少なからぬ反対は無視された。
 
 53年ぶりの8月解散で迎える第44回総選挙は9月11日投開票と決まった。
 
 小泉自民党は「郵政民営化法案は構造改革の本丸であり今後の行財政改革に不可欠である」「小さな政府、民間でできるものは民間で」「役人(公務員)天国の是正」「断行して経済を浮揚させ日本売りを防ぐ」として、「国民の審判を仰ぐための郵政解散だ」と、だから反対した議員は公認せず、結果として自民・公明で過半数に達しなければ退陣する決意を表明した。
 
 しかし、自・公の解散前議席は283に対して過半数は241で、ハードルは低く設定してある。
 
 これに対して岡田民主党は「郵政改革は必要だが、今回の法案はひどいものだった」「自民党政権の終焉、政権交代の選挙」と強調し、政権が取れなければ代表を退くと1日遅れで表明した。しかし、郵政改革を巡る自民党内紛劇に国民の耳目が集まっていることに危機感を抱き、貯金限度額700万円など郵政改革も正面の一部にすえざるを得なくなった。「単独過半数獲得を目標とする」としているが、全般的に受身で、影の薄いスタートとなった。
 
 公明党は政治空白を作るべきではないとしていたが、小泉の最終決断には従った。自民党に寄り添いながら現状維持をめざす。民営化法案に本質的に反対した社民党と共産党は「廃案は当然。不当な解散だが、堂々と受けて立って勝ち抜く」とし、議席増を目標としている。しかし、公明・共産・社民の三党は自民内紛劇および自民・民主二大政党の対決の演出の前に影が薄くなっていて、マスコミや国民が注目するような選挙戦略を打ち出しきれないでいる。
 ちなみに、新聞各社が解散直後に実施した世論調査では、首相の郵政解散に過半数の支持が寄せられ、首相や自民党の支持率は下がるどころか跳ね上がっている。弱肉強食の新保守主義経済政策で痛めつけられている一般勤労国民が、その張本人である小泉主導の民営化路線(郵政民営化)と解散を肯定的に捉えるのはなぜか。テレビと大新聞すべてが参院採決目前に「郵政民営化法案は成立させるべきだ」と歩調を合わせ、解散後もその小泉の援護射撃を持続している真の根拠は何処にあるか、資本家が労働者を圧倒している結果だろうが、究明が必要である。
 
 最近まで国民の関心のある政治課題は年金など社会保障、景気・雇用、増税、防災・防犯などの内政課題に加え、外交防衛とくに中国・韓国などアジアとの関係、イラクなどへの海外派兵、さらには改憲問題などであった。郵政民営化はよく分からないこともあって下位に低迷していたが、解散と同時に郵政民営化が国民の関心事に急浮上した。選挙戦の論戦を通して、国民は最終的にいかなる政治テーマに関心を深め、どのような選択をするであろうか。
 
 
 ■各党の選挙戦略と主要政策
 
 各党は候補者の最終的擁立と政策マニフェスト作りに全力を挙げている。
 
 自民党は公明党とバーターする9選挙区を除き、すべての選挙区に候補者を擁立する。反対した37人を公認せず、そのすべての選挙区に郵政法案に賛成の候補者を立てるとし、東京10区などかなりの選挙区で有力候補擁立を決定した。反対派グループは「地元自民党の協力を得て無所属立候補」も締め付けを受け、新党立ち上げに苦吟し、立候補見送りや離党も出た。
 
 地方と中央の対立、派閥の崩壊・弱体化などの分解現象は自民党がぶっ壊れつつあることで、政界再編など選挙後も尾を引くと見られる。それにも拘わらず、ワイドショー的に国民の耳目を集めて他党の存在感を希薄化し、選挙戦を有利に運ぶ結果になっている。「郵政解散」であるから、政策的には郵政法案をテコに官僚・公務員を攻撃し、公的分野の民営化を進める構造改革の推進を強くアピールしている。結果によっては民主党の一部に触手を伸ばしかねない。
 
 民主党は、自民党の内紛劇が民主党有利に展開しない世論に危機感を強めながら、290選挙区に候補者を擁立する。富山3区や大分2区などほんの一部で社民党と棲み分けする一方で、民主党への引抜きや土井氏に対抗馬擁立など社民党に揺さぶりをかけている。自民党反小泉グループとは手を組まないとして、連合・笹森会長とは一線を画している。
 
 「政権交代選挙」であるから、郵政改革は一部の争点にすぎず、税制、歳出削減、年金、外交とくにアジア外交などを争点にすえて「500日プラン」を選挙民に訴えようとしている。
 
 自民党との対抗上か、公務員の総人件費を20%減らすことも明言した。
 
 公明党は小選挙区で候補者を2〜3名ふやそうとしていたが、自民党の混乱を見て見送り、9名の前職に絞り、自民党との選挙協力を続ける。自民党内反対派については党としては推薦しないが、地元対応までは分からないとしている。比例区は当選見込みプラスアルファを擁立する。解散直後、冬柴幹事長が「国民の声であれば民主との連携も」と口走り、神崎党首が「自民党との協力を続ける」と修正、「今までのように十分協力できるかどうか」とも述べた。
 
 共産党は全選挙区での擁立方針は放棄したが、「自民も民主も変わらない。国民のためのしっかりした野党がますます必要になっている」として、最終的に大半の選挙区で候補者を擁立することとなった。退潮気味ではあるが、自治体選挙での善戦をテコに小選挙区だけの候補者を多数擁立し、比例区候補者をできるだけ多く当選させる方針を今回も続ける。民主など他の党との選挙協力は考えられる状況にないと判断した。政策面では社民党とほぼ同じである。
 
 
 ■国民の生活と日本の政治課題
 
 小泉政権の四年間で、国民生活や国際関係はどうなったのかを概観して見る必要があろう。
 

  1. 生活は全般に悪化し、一部の勝ち組と多くの負け組みとの格差が拡大し定着しつつある。 完全失業者300万人、非正規労働者1590万人超(雇用者数の32%)、年間自殺者3万人、勤労者世帯収入6年連続低下、生活保護世帯増大、生活保護基準以下の年収の世帯比率17%、メンタルな病気の多発、詐欺的犯罪の増大などに端的に現れている。
     
  2. フリーターやニートと呼ばれる青年層が増大する状況は、年金・医療・介護など社会保障制度の掘り崩しに財源・適用の両面で拍車をかけ、日本の将来を不安にしている。正規労働者も、自己保身と限度を超えた長時間労働を余儀なくされ、不安定になっている。
     
  3. 大企業を中心とする「国際競争力強化」を理由にしたリストラ合理化を小泉政権が労働基準法や労働者派遣法の2回の改悪や促進税制など「構造改革」で後押しした。企業は収益がバブル期を超えても、正規雇用や賃金の引き上げ、社会保障の安定を図ろうとはしない。
     
  4. 「官から民へ」の意味は、「官僚主導から国民主導へ」の筈だったが、公務員攻撃により「公的な仕事も民間資本に」にすり替えられ定着した。そして、民営化によってコスト効果論と自己責任論を強め、「小さな政府」論で公的福祉を切り刻んでいる。
     
  5. 中小企業への貸し渋りは、不良債権処理にめどが立っても解消しない。それよりも海外直接投資や海外(アメリカの「はげたかファンド」)を含む金融資本による運用を銀行や大企業が優先するからである。郵貯・簡保残高340兆円の大半はこれに回ると見込まれる。
     
  6. 外交面は八方ふさがりである。当然のことながら国連安保理常任理事国入りはできず、六ヵ国協議では蚊帳の外に置かれた。アジア共同の家でも日本は置いていかれる危険性が強まっている。靖国参拝、歴史観の改窟、対米一辺倒が大きな要因である。
     
  7. 財政再建では、歳出面で公共事業費漸減の一方、防衛予算などの無駄使いが続き、国債累積残高は増加した。公務員バッシング・人件費削減と国民負担の増大(増税や社会保険料引き上げ)で削減を図っている。歳入面では、定率減税を廃止し、所得控除の廃止や消費税引き上げを進める一方、勝ち組に関わる法人税や所得税の累進性強化には全く触れない。
     
  8. 教育も深刻である。教育委員権限での扶桑社教科書の採択、日の丸・君が代の強制、能力差別と国家主義的価値観をめざす教育基本法改悪が進められつつある。教育費負担も重く、所得格差が教育格差、子育ての阻害要因になっている。青年の絶望は深まりつつある。

 これらに関連して、グローバリズム、少子化社会、情報社会、環境問題と循環型社会、男女平等社会など国民に関わる重要課題は山積している。郵政選挙と言うより、こうした課題について改善していく勢力をどれだけ伸ばせるかが問われる選挙だと言ってもよいであろう。
 
 政権交代はそれ自体にも確かに意義はある。惰性と金権汚職の政治、あるいは強権的な手法が改善されるかもしれない。民主党はイラク撤兵、弱者のセーフテイーネット重視など何点かで自民党と異なるし、労組の要求にも一定程度は協力的であるから、労組の支援も得ている。
 
 しかし、「弱肉強食の新自由主義経済」と「改憲・戦争のできる国」では自民党と大して変わらないので財界のかなりの理解も得られている。財務官僚を候補者として奪い合う構図も同質性を現している。まとまりに欠けるが、政権奪取の可能性はないとはいえない。
 
 これに対して、政権政党・自民党は景気回復踊り場脱出宣言、その他の経済情報操作や巧みな演出を選挙期間中続けるであろうし、新時代の政官業の癒着構造を求める財界は自民に七分、民主に三分の支援を直接間接に行う。連合が民主一本の支援を決めても組合員がどういう選択をするかは分からないし、選挙結果がどうなるかで、政界再編を含めて政権がどうなるかは予断を許さない。苦境を乗り越えて、社民・共産がどこまで踏ん張れるかも、今後の政治に影響を与える。
 
 
 ■社民党はいかに闘い、どうなるか
 
 社民党はここ数年選挙で敗北続きであり、まさに存亡をかけた闘いである。連合傘下の労組は負け続ける社民党から、選挙では上り坂の民主党に完全に乗り換えている。政策的には社民党のほうが良いとしながら、議席の少ない社民党より多い民主党のほうが頼りになるし、死票は誰でもいやだからである。「護憲と連動する野党外交が見えない」「現実的存在感を失った」「経済政策が弱い」との指摘も強い。その影響を受けて今回も前職・元職を含めて何人かが民主党に鞍替えした。この苦しい状況を克服し、憲法の戦争放棄と福祉優先・人権尊重の社会民主主義をめざして、方針通りの候補者を擁立し、議席増が勝ち取れるかどうかが問われている。
 
 主要政策は大衆増税反対と所得税・法人税の累進制強化、年金制度の抜本改革、雇用の安定、最低賃金引き上げ、アジア重視の外交展開、軍事大国化・改憲路線阻止、イラク撤兵、靖国参拝中止、教育基本法改悪・反動教科書採択に反対、環境保護と資源循環型社会の推進、男女平等社会の推進などである。
 こうした政策は民主党や共産党と類似または通底している面がある。民主は先に述べたように、根本命題で社民党と異なるので消費税など個別政策でも異なる点が多い。しかし、民主とは地域によって棲み分けができるなら進めるべきだし、政権を担うべき結果が出れば条件をつけて閣外協力することも是認すべきであろう。共産党とは政策面ではかなり共通しているが、過去の相互不信はまだ払拭できないので、今回の選挙では共闘はできない。首長選挙などでの共闘を増やすことを通じて信頼関係を取り戻していき、反動化や生活破壊が極限に達して環境条件が整ったときには、政治的統一戦線の対象としていくことを避けてはなるまい。
 
 以上を総合して、社民党は全面的な選挙協力や「オリーブの木」的な連立や再編を前提した選挙共闘はすぐにはできない。当面、東北、九州などまだ組織力を維持できるブロックでは独自の闘いと一部棲み分けを、太平洋ベルト地帯では革新無党派に支持を広げる可能性を最大限追求すべきであろう。弱体化の著しい首都圏などでは新社会党や市民グループ・革新無所属地方議員との協力・共同関係を広げることが急がれている。
 
 社民党が敗北し二大政党の流れがさらに急激に進めば、この構図は実らないまま、政界再編の中で真の社民勢力・社民党は政治的モラトリアムに陥るかもしれない。こうした情勢分析と戦略の下、社民党に賛同・協力する勢力をどれだけ結集できるかが日本の今後の進路を大きく決めていく。そうした政治戦略が実るかどうかの根底には、主として労働運動の再建強化、都市部ではこれに市民運動の活性化ができるか、党がどう関われるかにかかっている。

(8月15日記) 

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