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●2023年12月号
■ 岸田政権の退陣こそ国民的課題
    小笠原 福司

■ 上場企業の4割が最高益を更新続ける

内閣府が15日発表した2023年7〜9月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価の変動を除いた実質で前期比0.5%減、この状態が1年間続いた場合の年率換算は2.1%減だった。マイナス成長となるのは、3四半期ぶり。物価高を背景にGDPの個人消費が振るわなかったことなどが要因とのこと(インフレに所得が追い付かず、実質の雇用者報酬は2.0%減と8四半期連続で前年割れのままである)。
   
GDPの5割超を占める個人消費は、前期比0.04%減で2四半期連続のマイナスとなった。トヨタ自動車の工場稼働停止で自動車販売が停滞したことや、物価高で食料品の販売が低迷したことなどが響いた。設備投資もふるわず、0.6%減となった。
   
輸出は0.5%増で、2四半期連続のプラスとなった。統計上、輸出に反映される訪日外国人観光客の消費は5%減と5四半期ぶりのマイナスだったが、自動車輸出などが下支えした。輸入も1%増。前期が大幅なマイナスだった反動や、新型コロナ禍の収束で海外旅行が増えたことなどが寄与した。
   
なお、生活実感に近いとされる名目GDPは前期比0.04%減、年率換算で0.2%となった(毎日新聞、11月15日)。
   
民間予測は10〜12月期はプラス成長に戻ると見込むが、長引くインフレや海外経済の不透明感にリスクの芽が残る。「持続的な成長には、所得増に裏付けられた消費拡大が欠かせない」との認識が、日本社会の行き詰まりが深まる中で政労使の共通項となっている。
   
では、企業業績はどうなっているのか。11月2日までに4月〜9月決算を発表した、東証プライム上場で3月期決算企業の4割に相当する399社集計では、純利益が前年同期と比べて3割増と最高益を更新するペースとのこと(日経 11月6日)」。さらに、「企業利益上振れ13.%増」、これは日経新聞の11月16日の見出しである。2024年3月期の上場企業の純利益見通しは前期比13%増と9月時点の6%増から上振れる。円安の追い風に加えて国内外で値上げが浸透し、3年連続で最高益予想である。そして、「今後は稼いだ利益を賃上げや成長投資に振り向けられるかが課題」とのこと。
   
24春闘で大幅な賃上げを闘いとる客観的条件は間違いなくある。「今闘わずして、何時闘うのか」臆することなく組織労働者が決起し、社会的に広げる取り組みが問われている情勢である。
   
   

■ 岸田政権を“危険水域”に陥れた民意

臨時国会の課題は本誌特集を参照頂くとして、ここでは図表にある世論調査から国民の民意を探ってみたい。
   

(図表1・クリックで拡大します)
   
大手新聞2社(毎日新聞と読売新聞)が11月17日から19日にかけて行った全国世論調査で、内閣支持率が過去最低を更新した。
   
毎日の18、19日調査では、支持率は21%で、10月の前回調査から4ポイント落とし、岸田内閣発足以降で過去最低を更新。岸田首相にいつまで首相を続けて欲しいかについては「早く辞めて欲しい」が55%で、9月調査からさらに4ポイントも上がった。
   
また、読売新聞(比較的政権よりと言われる)の17〜19日調査でも、支持率は内閣発足以降、過去最低の24%で前回10月調査から10ポイントも下落。21年9月に当時の菅首相が退陣を表明した後の31%にも及ばなかった。世代別に支持率を見ると、18〜39歳の若者世代で10月調査の26%から17%へ、60歳以上で43%から29%へと若者と高齢者の落ち込みが特徴である。
   
なお、個別面接方式で信頼性が高いとの評価の時事通信社が10〜13日に実施した11月の世論調査では、内閣支持率は前月比5.0ポイント減の21.3%と政権発足以来の最低を更新し、10%台突入目前である。時事の調査で特筆すべきは、自民党支持率も19.1%にまで下がり、岩盤支持層と言われていた3割を割り込んでいる。
   
最大の要因は、経済対策に盛り込まれた所得税・住民税の減税措置で、毎日で「評価しない」が66%に上り、読売も61%と高水準だった。読売の調査では「評価しない」の理由は「選挙対策に見えるから」が44%で最も高かった。選挙目当ての「減税サギ」(迫りくる増税)の手の内を見透かされている。
   
3週間足らずで副大臣・政務官3人が不祥事で辞任した事への評価も厳しい。毎日の調査では、岸田首相の任命責任について「大いに責任がある」「ある程度責任がある」と答えた人が計86%にも上った。自民党支持層でも計70%である。まさに「不適材不適所」を国民に見抜かれている。
   
そして、「自民支持層でも岸田政権が気にくわないという『岸田離れ』がトレンドになっており、どうしようもない雰囲気」「民主党に政権交代を許した麻生内閣末期に様相が似てきた」(衆院選直前の09年8月の麻生内閣の支持率は22%)。との懸念が、「自民党幹部から浮上」しているとの報道すらなされる事態である。明らかに民意は「岸田政権の退陣」を求めている。
   
最後に、現在審議されている補正予算について見てみる。11月10日閣議決定された経済対策の裏付けとなる13.1兆円の補正予算の67%にあたる8兆8750億円は国債の追加発行で賄う。結局、将来にわたって国民が支払う借金頼みである。これまでは通常の補正予算は前年度の決算剰余金が充てられてきたが、今年度から剰余金は防衛費に優先的に回されることになり、物価対策には全体の2割とほとんど回らない。国民生活よりも軍事優先が見て取れる。そして、極めつけは「供給力の強化」の名で、特許など知的財産からの所得への税制優遇や半導体など戦略物資の生産そのものに対する減税など、これまでとは一線を画す大企業支援が盛り込まれた。岸田政権の本性が見事に補正予算に貫かれている。
   
   

■ 情勢が求める野党共闘の再構築

では、自公政権に代わって野党の支持率は伸びているのか。前述した毎日の世論調査結果から見ると、立憲民主党9%(以下、立憲)、共産党6%(以下、共産)、国民民主党5%(以下、国民)、れいわ新選組7%(以下、れいわ)、社会民主党1%(社民)で合計は、28%である。これに対して自民党24%(以下、自民)、公明党3%(以下、公明)で合計は27%である。辛うじて野党側が上回っている。が他のマスコミ各社の世論調査ではほとんど自公の方が上回っている。
   
そして、昨今野党第1党の位置を脅かすとマスコミ調査でも分析されている日本維新の会(以下、維新)の存在である。毎日では14%と、立憲を引き離して野党第1党である(第2「自民党」的性格、補完的役割りを果たしている維新の本質などについては、本誌8、9、11、12月号の各論文を参照頂きたい)。
   
見てきた野党の支持率、さらにはこの間の国会闘争からすると、自公政権と対峙する野党共闘の成立も簡単ではない。国民の自民寄りの路線、維新の「是々非々」路線による自民支持、無党派層、立憲支持層の取り込みなどによって、立憲野党(立憲、共産、れいわ、社民)の支持は、先程の国民を除くと23%とより厳しい結果となる。言われるところの中道、さらは無党派層への支持の広がりにかける。
   
では、野党共闘の軸として立憲野党の固まりを強くすることをどう考えるのかである。小選挙区比例代表並立制という選挙制度、さらには国政選挙で2人に1人は棄権という国民の政治不信・離れ。結果としての「一強多弱」の政治構図の中では野党共闘による以外に政権奪還は望めない(例え、第1党が「風」を受けて伸びたとしても単独過半数の獲得は至難の業、さらに「安定政権」を目指すには否応なしに連立が求められることは論をまたない)。
   
そこで、問われるのは「野党の共通政策」に基づく共闘の構築である。私たちは2015年のいわゆる戦争法案反対の闘いを通して誕生した市民と労働者と野党の共闘を、その後自公政権に代わる政治勢力として紆余曲折を経て22年の参院選まで積み上げてきた。そして、来るべく総選挙に向けても「市民と野党の共通政策」に基づく再構築への努力が積み重ねられているが、今まで以上に困難さを伴っていると聞く。
   
問われていることは、単に数合わせではなく、「国民の暮らしと命を守り、将来不安を無くし、戦争をする国から転換して日本と世界の平和をめざす」という現下の政治への期待、要望に応える明確で具体的なメッセージを発することができるかどうかではないだろうか。その明確なメッセージの象徴がかつては「安倍政権下における改憲反対」であったが、今日では例えば「国民の生活破壊、戦争の出来る国づくりに突き進む岸田政権を許さない」ということである。「国民の生活破壊を許さない」とは現代資本主義の行き詰まりに起因し、さらなる支配継続を目論む自公政治が必然的にもたらしたものといえる。故に第二次安倍政権時よりも広範な立ちあがりを促す客観的条件の高まりを見て取れるのではないか。
   
そこで問われることは、連立政権政策とは衆院の任期は4年であることをふまえて、「4年間の間にこれとこれを実現する」という喫緊の政策課題を練り上げて、野党の共通政策・連立政権政策として国民に問うことである。その政策は野党共闘に結集している各党が、国民の現状抱えている課題を最大公約数としてどこまで集約しているのか、共通課題は何かを共有化することで作られる。自公政権との違いは小さくても野党それぞれの支持基盤を持っているので、多くの階層の実態と要求を広くつかめる利点を生かすことである。それを集約し、政策として打ち出すことで説得力をもって可視化され、「自公政権に対抗する政治勢力」として認知されることになる。
   
そして、具体的な連立政権政策の実現への闘いに「俺たち、私たちの政策だから、一緒に政治を変えていこう」という国民の政治参加を得ることが出来るのではないだろうか。無論、そのためにはそれを担えるそれぞれの政党の主体性の強化こそ問われているし、その点では野党間で切磋琢磨することが求められている。
   
いま野党、特に立憲野党に求められていることは、国民生活の困窮の一方で、ますます赤裸々になっている大企業と一部の富裕層の懐に溜まり続ける厖大な富に対して規制をかけ取り戻し、国民の暮らしと命、平和を守るために有用に充当する政治への転換を呼びかけることである。特に、野党第1党の立憲にはそうした立ち位置で早急に野党結集を呼びかける行動を望みたい。
   
   

■ 闘いを通して岸田政権を退陣させよう

日本はこの間30年にわたって「賃金が上がらない国」になったことが改めて可視化されつつある。そして「この社会の存続」をも危ぶまれる「少子高齢化社会」という事態に遭遇し、「労働力不足」が深刻となっている。
   
故に、岸田首相ですら「持続的な賃上げ」を唱えている。23春闘で経験した「人手不足による労働者確保、採用に迫られた賃上げ」という企業の存続「危機」を背景とした動きである。しかし、再確認をしたいのは「賃上げは闘い取るもの」ということである。
   
24春闘に向けて連合は「5%以上」の賃上げ要求で闘う方針を提案している。これに呼応するかのように経団連も6日、「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」原案で「春闘の賃上げ4%超を目指す姿勢を鮮明にした」などと報道されている。しかし、労働者の生活実感からすればどうか。総務省「消費者物価指数」によると、7〜9月期「生鮮食品を除く総合」は前年同月比3%の上昇。9月の実質賃金は前年同月比2.4%減で、18カ月連続のマイナスとなっている。
   
だが、日銀の「生活意識に関するアンケート調査」では1年前と比較した現在の物価について「何%程度変化したと思うか」という問いに対して、9月調査の結果は平均15%の上昇と比較可能な2004年3月調査以来、もっとも高い上昇率だった。いわゆる体感物価上昇率は7〜9月期の5倍となっている。特に、食料品など頻繁に購入する生活に欠かせない商品やサービスの値上がりが目立っているとのこと。2桁の賃上げ要求が当たり前と言える。
   
この体感、実態に立脚した要求討論の組織化が今日ほど問われている時はない。また、野党が緊急経済対策で掲げる「消費税の5%への引き下げ」(時限立法も含む)などが支持される根拠でもある。
   
24春闘に向けては正々堂々と「当たり前の生活が出来る賃金」を勝ち取る闘いを組織労働者が中心となり、未組織・非正規労働者労働者を含めて社会的な大きなうねりを組織し、何としても勝ち取る闘いを強化することである。
   
2つ目の課題は、中小零細企業の倒産増に対する支援、連帯の取り組みである。東京商工リサーチが11月9日発表した10月の企業倒産(負債額1000万円以上)は793件と前年同月比33%増となった。実質無利子・無担保(ゼロ・ゼロ融資)を利用した企業の倒産は累計で1100件を超えた。企業倒産の増加は19カ月連続で、1〜10月で約7000件となった。23年通年では4年ぶりに8000件を超える公算が大きい(21年6030件、22年6428件)。
   
23年の倒産が大幅に増えるのは、ゼロ・ゼロ融資の反動とのこと。物価高や人件費の上昇で経営が厳しくなか中、返済も始まって資金繰りに窮するケースが相次ぐ事態に。さらにこれに追い打ちをかけているのが後継不足問題である。帝国テータバンクによると、後継者不足による倒産は1〜10月に463件と前年同月比13%増で、集計を始めた13年以降で最多となっている。
   
この借金返済に関連して、企業の借金返済を信用保証協会が肩代わりする代位弁済は前年度同期を上回る水準で推移している(最終的には税金の投入となり国民の負担増となる)。日銀の推計でも経営が悪化していた企業の債権延滞などによるデフォルト(債務不履行)率が上昇。「倒産予備軍」が増えている。
   
ただでさえ疲弊している地方経済が中小零細の倒産の増でさらに深刻さを増している。政治がここに支援、援助することなくして地方経済の疲弊、雇用喪失・流失は止められない。返済の一時棚上げ、低利での資金の援助、経営指南などあらゆる手立てを行い、倒産、廃業、失業増を防ぐことではないのか。でないと日本企業の99%以上は中小企業で雇用全体の7割以上を占めている「モノづくり日本」は「崩壊」への道を辿ることになる。それはまた中小を搾取して肥え太る大企業の足元を揺らがせることになる。
   
最後に、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃と、ハマス壊滅を目指すイスラエルの軍事作戦から1カ月以上が経ち、戦闘は激化の一途をたどってきたが緩和の動きが出てきた。11月9日イスラエルが毎日4時間パレスチナ自治区ガザ北部の戦闘を休止することに同意をした。ハマスによる人質の解放と戦闘の停止に向けた交渉が進んでいる(11月22日現在)。
   
今回の危機にあたって国連安保理がまったく機能しなかった一方で、国連総会は人道的休戦を決議した。停戦を求めるデモは若者も含めて世界に広がっている。アメリカでも「私たちの税金をジェノサイドのために使うな」との声が確実に広まっている。こうした世界的な世論が今回の同意に影響を与えた。日本においても同様のデモが各地で始まりだしている。「即時停戦」を求める行動を全国に広げ、軍事大国への道をひた走る岸田政権の暴走を阻止する闘いと結びつけよう。
   
(11月22日)    
   

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