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●2021年3月号
■ 市民と野党の共闘深化に向けて
    宝田 公治

■ 1.情勢の特徴

・(1)経済・労働情勢
新型のウイルス・細菌については、以前から資本主義経済の発展、グローバリゼーションによって世界的流行が指摘されていた。資本主義の矛盾は、貧困・格差の拡大とともに、地球環境の破壊をもたらすことがより明らかとなった、つまり人災と言える。政府のコロナ対策は、多くの識者や野党が指摘しているように無意味・遅れがちが多く、人災的要素が高いといえる。
   
コロナ禍は、経済にも大きな影響を及ぼしている。実質GDP2020年4〜6月期は、戦後最悪の▲8.3%(年率換算▲29.2%)、7〜9月期+5.3%(年率換算+22.9%)、10〜12月期+3.0%(年率換算+12.7%:速報値)と2期連続プラスに転じたが、我々にその実感はない。原稿執筆中、「日経平均株価3万円突破、30年6カ月ぶり(15日)」と報じられた。我々にその実感はなく、さらなる格差の拡大を意味することと、企業業種も明暗が二極化している。
   
コロナ禍は雇用と暮らしを直撃している。特に、非正規労働者と女性、若者に集中しているのが特徴である。正規労働者は雇用調整助成金などで何とか雇用を維持しているが、20年7月非正規労働者は、前年同月比で131万人も減り、11月でも62万人減と少し戻しているが、厳しい状況が続いている。年代別にみると、20年11月では、55歳以上が13万人増に対して、44歳以下は54万人減となっており、若い人により痛みが集中している。20年平均で、非正規労働者は75万人減、その内女性は50万人減と宿泊業・飲食サービス業などで働く女性にシワ寄せが大きい。有効求人倍率は、20年平均1.18倍(12月1.06倍)で前年比▲0.42ポイントと、下げ幅は1975年の▲0.59ポイント以来45年ぶりの悪化となっている。完全失業率も20年平均は、前年比0.4%増の2.8%、191万人と11年ぶりの悪化となった。東京商工リサーチによれば、20年の倒産・休廃業・解散した企業は5万8101件で、とりわけ負債1000万円以下が2000年以降、最悪となっている。産業別では宿泊業・飲食業を含むサービス業が最も多い。給与は11月で前年同月比、一般労働者▲2.4%、パート労働者▲1.3%となっている。
   
以上が統計からみる労働者・勤労者の実態だが、現場ではより厳しい実態があり、それらをつかみ改善に向け運動することが求められる。このような情勢のなかで、21年度経労委報告はコロナ禍をテコに、ベアについては収益安定企業でも「ベアは選択肢」に過ぎず、収益悪化企業は「ベアは困難」、定昇についても「検討せざるをえない」と賃下げに踏み込み、最賃についても抑制を主張している。これに対し、コロナ下の春闘は組織労働者の果たす社会的役割がより問われてくる。非正規労働者を含めた暮らしを守るため、底上げ・底支えを闘いとることが求められる。
   
   
   
・(2)政治情勢
昨年8月28日、安倍首相の突然の辞意表明を受け、9月16日臨時国会で菅政権が発足した。安倍首相の在任期間は史上最長の7年8カ月に及び、その間秘密保護法、安保関連法、共謀罪法など反動法制を強行採決してきた。また、森友・加計学園問題、桜を見る会問題など身内に利益誘導をはかってきた。そして、河井克行前法相と妻の案里参議院議員の買収事件による大臣辞職、案里議員においては有罪、議員辞職となった。6月には、検察庁法に違反して閣議決定で黒川東京高検検事長の定年延長を決め、その後それを改正法案として提出したが、ツイッターデモという現代的な抗議による世論の反対(1週間で1000万件超え)で廃案に追い込まれた。
   
コロナ対策の失敗も露呈した。根本的には新自由主義政治による雇用の劣化、医療・保健所「合理化」、社会保障の縮小と負担増など脆弱点が明らかにされた。さらに小中高の一斉休校やアベノマスクの配布、「Go To トラベル」の前倒し実施などチグハグな対策を重ねた。それら対策事業での「お友だち」や政官業との癒着も明らかとなり、退陣に至った。これには、15年の安保法制反対から始まった市民と野党による院内外の共同闘争による取り組みが作用していることは間違いない。
   
菅政権は「自助、共助、公助、そして絆、規制改革」を国家像とし、「成長戦略会議」のメンバーに竹中平蔵氏を起用するなど、「自己責任論」を継承する新自由主義政権としてスタートした。また、日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否するなど強権政治でもある。コロナ対策では、「Go To トラベル」一時中止や緊急事態宣言の遅れ、PCR検査拡充の消極対応、さらに国民に会食の自粛を求めているにもかかわらず、首相自身が多人数で会食、自公両党の衆議院議員4人が銀座のクラブに出かけるなどで内閣支持率は、発足時の65%から急落している。その後も菅首相の長男の総務省官僚接待、森東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の女性蔑視発言など自民党長期政権のおごりが噴出し、菅政権は統治能力喪失という事態である。早くも菅政権交代のうわさが出るなど、コロナ対策や東京五輪・パラリンピックの成否によっては、政権交代の流れが加速することもあり得る情勢だ。
   
こうした国民のいのちと暮らしの破壊が進むなか、野党側にも再編の動きが生まれた。立憲民主党の枝野代表は、19年12月、国民民主党、社会民主党、社会保障を立て直す国民会議、無所属フォーラムに合流の「呼びかけ」を行った。紆余曲折を経て昨年9月15日、衆院107人、参院43人の新たな立憲民主党が結成された。
   
社民党は1年近い党内討論を積み重ね、11月14日臨時大会で「社民党を残し、社会民主主義の実現に取り組んでいく」という選択と「『よびかけ』に応えて、立憲民主党へ合流し、社会民主主義の継承・発展をめざす」という選択のいずれをも理解し合うこととする議案を採択した。大きくは2つの選択を認めあったということは、お互いが「社会民主主義の理念や政策の実現をめざす実践の場の複線化」という、菅政権の打倒に向けた今後の方向性を確認したものと受け止めている。しかし、その後の各県の対応で円満に各々の道を進むことを決めた県連合がある一方、理解しあえず対応に追われる県連合も少なくない。今後の野党共闘の進化を考えるならば、お互いを敵視する状態は自公政権を利するだけである。冷静な判断・対応が求められる。
   
こうしたなかで世論の動向はどうか。「北海道世論調査会」1月報告では、内閣支持率は平均で「支持」37.7%(12月:43%)、「不支持」47%(39.0%)と12月から逆転した。「首相は指導力を発揮しているか」(朝日)は、「している」15%、「していない」73%、その他項目も政権を評価するものはない。自民党への支持率も下がり始めた。自民36.2%(前月比▲1.6%)、立憲7.0%(同+0.4%)、国民0.9%、共産3.2%、社民0.3%、れいわ0.4%となっている。
   
   

■ 2.野党再編の現状と課題

いずれにしても「合流問題」の本格的な総括は、各々の組織整備が概ね落ち着いてからになると思うが、現時点で私なりに今後の方向性と課題について考えてみたい。
   
社民党は、2月21日開催予定の全国代表者会議の「当面の活動方針(案)」で、「10の目標」を掲げ、「改めて『社民党宣言』の理念を確認するとともに新生社民党として新たな船出を迎える」としている。その特徴は、女性や若者、非正規や未組織労働者、グリーンや多様性を重視し、幅広い支持層・関心層を確保するために「サポーター制」の検討を打ち出していることだ。そして、様々な政治団体・市民団体と積極的に連携していくとして「日本の革新勢力は過去イデオロギーにこだわりすぎ、自らの理論や政策の正当性を強調するあまり、分裂や対立を繰り返してきた。しかし、戦争法に反対する行動を通じて生まれてきた野党共闘は『違いを強調して相手を批判する』文化から『違いを認め合ってお互いをリスペクトする』文化への転換である」と過去を反省し党のイメージを一新しようとしている。なお、第49回衆院選方針(案)では、政党要件の確保を党の生命線として、21年衆院選、22年参院選を一体のものとして戦うとし、当面する衆院選での目標を「得票率2%、4議席」としている。
   
一方、立憲民主党に合流する人たちは、2月28日開催予定の「社会民主主義フォーラム(以下略称:社民フォーラム)」結成総会の討議資料で、社民フォーラムの目的・意義を

  1. 社民主義の理念・政策の研究・提案、そして運動に発展させる
  2. 立憲民主党全体としてただちに取り組むことが困難な運動や課題へのかかわり
  3. 会員の経験交流や情報交換の場、

としている。立憲民主党や支持産別・単組の中に、社民主義的政策・運動を広げていくことが課題となる。とりわけ、地方段階における社民主義的政策づくりと運動が重要となる。
   
香川における新生立憲香川県連合の結成に向けた協議での合意事項は、

  1. 護憲・原水禁などの共闘運動は立憲香川が継承
  2. 一般党員・協力党員(通称サポーターズ)を拡大
  3. 自治体を単位とする地域組織、国民運動部会・支持労組会議・青年委員会など立憲全国規約にないものも今後運動実践を行いながら設置
  4. 社民フォーラム香川県支部の事務所は、立憲香川県連合事務所内に設置(すでに部屋と職員(旧社民党書記)を配置し、3月16日フォーラム香川の結成総会の準備などを行っている)

などであり、これまで県内の選挙闘争をはじめとする運動で培った信頼関係の中での合意といえる。これらのことがすべての県・中央で可能かと言えば厳しいことは間違いないが、その努力が求められる。一方、この間の短い協議の中でも組織・一党員のアイデンティティや歴史・文化の違いが明らかになった課題もある。当然のことである。これらについては、形式的な違いを強調するのではなく、運動を通して一つずつ克服していく作風が求められる。
   
   

■ 3.野党共闘の深化に向けて

以上、政治情勢について述べてきたが、新生社民党、社民フォーラムいずれも厳しい課題が突きつけられている。しかし、とりまく情勢は「今こそ社民主義の出番」である。各々の置かれた条件を踏まえ中央・地方から野党共闘を深化させることに全力をあげねばならない。協会としては『提言補強』の「労働者政党の再建、労働組合運動の強化・発展を基礎に反独占の諸勢力を結集した統一戦線運動の拡大がなされなければならない」という基本に立って、野党共闘運動の強化、発展に努力することである。
   
今通常国会において、野党4党は、第三次補正予算の組み換えを共同提案した。しかし、インフルエンザ特措法・感染症法の改正問題では、若干の修正はさせたものの野党の足並みをそろえることができず、課題が残った。
   
21年総選挙の野党共闘の深化に向けては、すべての小選挙区で野党統一候補を擁立することに加え、昨年9月19日に発表された「市民連合」の要望書の合意・豊富化が求められる。要望書は、2015年に安保法制に反対する市民連合が結成され、16年参院選、17年衆院選、19年参院選と3回重ねられたが、その内容は選挙の度に発展している。当初は市民連合の結成に由来する安保法制や特定秘密保護法・共謀罪法の白紙撤回や憲法九条改憲反対などがメインであったが、今回は副題が「いのちと人間の尊厳を守る『選択肢』の提示を」とあるように、コロナ禍で明らかになった新自由主義政治の脆弱点に代わる政治(社民主義的政策)による政権交代を求めている。具体的には4つの柱と15項目の要望で構成されており、例をあげれば、「新型コロナの危機は、医療、教育などの公共サービスを金もうけの道具にしてきた従来の改革の失敗を明らかにした。利益・効率至上主義を脱却し、国民の暮らしと安全を守る新しい政治をめざしていく」などとしている。

   
   

■ 4.深化の柱に憲法の実現をすえる

共闘を深化させるもう1つの視点として、「憲法をすえる」ことを考えたい。社会主義協会は『提言』第1章第3節「国家権力の平和的移行」の統一戦線について「われわれは、憲法改悪阻止の国民会議または、共闘会議の発展によって広大にして不動の統一戦線を形成することに全力をそそがなければならない」とし、この組織化にあたっては、労働組合の統一行動と地域における自治体闘争の重要性があげられている。『提言』が採択されたのは1978年であり、現在とは客観的条件も主体的条件も様変わりしているが、今日においても活かされるべき提言と考える。歴代自民党政権、とりわけ7年8カ月の安倍政権、この5カ月の菅政権の憲法無視・違反の政治をみるにつけ、憲法を守り活かす政治が基本にすえられる必要がある。
   
楾大樹(はんどうたいき)さんの『檻を壊すライオン』では、「政治的な立場や意見は人それぞれ違いますが、憲法の基礎的理解は、立場の違いを超えて共有していなければならない」として時事問題から憲法を守り活かすことの重要性を述べている。つまり憲法は広範な結集軸になるということである。いくつかの例を引くと、国民の知る権利は憲法二一条「表現の自由」で保障されているが、「特定秘密保護法」「自衛隊の日報隠ぺい問題」「文書改ざんー森友学園問題」「文書を隠す―加計学園問題」「文書を棄てる―『桜を見る会』の名簿破棄」「詳細な文書は作らない―コロナ対策の議事録」など。権力分立の観点からは、2014年「武器輸出三原則」を国会での審議を経ず、閣議決定だけで破棄し、「防衛装備移転三原則」に。東京高検の黒川検事長の定年延長を「検察庁法」を無視し閣議決定。コロナ禍で法的根拠も閣議決定もなく、首相の一存での休校要請は二六条教育権の制約など。憲法違反・疑義は後をたたない。
   
   

■ 5.総括の視点について

私は、昨年『社会主義』3月号で「合流問題」の論点の1つとして「合流しようがしまいが、社民党が全国政党として崖っぷちにあることの総括が必要」とし、香川でのこの間の総括運動の継続を紹介した。立憲民主党に合流した現在でも、社民フォーラム香川での研究の柱に、「なぜ社民党が後退したのか」の総括運動を挙げている。総括抜きに立憲民主党のなかで社民主義的政策や運動を前進させることは到底かなわぬことと考えているからである。
   
そうしたなかで先輩から紹介された本に保坂正康さんの『対立軸の日本史』がある。この中で彼は、「社会党が消滅した原因は、聞くに堪えない内部抗争とソ連・東欧社会主義が絶対正しいとする社会主義協会だ」というのである。先輩は「以前の私なら、こんな社会党を批判した本は読まなかっただろう。しかし、我々のこれまでの運動を振り返ると、正しい理論なのにどうして広がらなかったのかを総括する必要がある。その意味で……我々の運動を第三者として見ている意見は総括の参考にすべきと考える。例えば、国民が社会主義より日常生活や社会環境の改善を求めていることに注視しなかったことは事実である」と言っている。私も我々の運動を総括する場合、この指摘を1つの視点として活用することは意義のあることと考えている。
   
最近、『資本論』や「社会主義」が社会主義協会以外のところでも取り上げられている。斉藤幸平さんの「人新世の『資本論』」がベストセラーになり、NHK・Eテレ1月「100分 de 名著」にも『資本論』が取り上げられ、斎藤さんが解説者として登場した。また、評論家の池上彰さんが神奈川大学の的場昭弘さんとの対談形式で「今こそ『社会主義』」を著わした。紙幅の関係で内容の紹介はできないが、全く同じ考えではないとしても、マルクス・エンゲルスやそれ以外の文献を研究しながら社会主義の研究をしている。この人たちの研究を「我々とは違う」と切り捨てるのではなく、マルクス主義の今日的な適用として研究素材することも私たちの思想の豊富化、ひいては運動の深化・広がりにつながるのではなかろうか。
   
(2月18日記)
   
   

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