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●2016年1月号
■ 新年を迎えて新たな飛躍を
   小島 恒久

   

■ 違憲の戦争法案の強行採決

歴史の曲り角にあるという思いが深い。戦後70年の日本の歩みを根底からくつがえし、戦争の出来ない国から戦争の出来る国へと転換する動きが進んだ。しかも、こうした変革を行う前提である憲法の改正は行わず、国会での中身のある議論もなく、国民の理解も不十分なまま、与党議員の数だけで押し通したというのがこの間の実情であった。
   
まず2014年政府は、憲法の解釈を変えて集団的自衛権を容認した。この集団的自衛権というのは、自分で自分の国を守る「個別的自衛権」とちがって、自分の国が攻撃されていなくても、自分と関係のある仲間の国が攻撃された時には反撃することができるという権利である。日本の政府はこれまでこの集団的自衛権について次のような見解をとっていた。――日本も国連憲章が認めているように集団的自衛権を使う権利をもっている。だが、日本には憲法九条があるので、その下で許容される自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきであり、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない――これは1981年の答弁書で政府が述べている見解であって、それ以来30年以上にわたって、政府はこの見解を引きつぎ、集団的自衛権を認めていなかった。
   
ところが、安倍内閣は閣議決定でこの憲法の解釈を変え、集団的自衛権の容認を主張しだした。このため、これまで集団的自衛権の行使はできないとの一線を堅持していた内閣法制局の長官を強引に交代させ、安倍首相の考えている解釈改憲に近い新しい長官を任命した。そして自衛隊の対米支援が世界中に広がる新しい安保法案を、あわただしく与党内でまとめ、それを手土産として安倍首相は訪米し、15年4月、アメリカ議会で行った演説で「この法案を夏までに成就させる」と大見得を切った。これは日本の議会を軽視し、アメリカとの約束を優先して、戻れぬ橋を渡ったという感の深いものであった。
   
ついで安倍内閣は、集団的自衛権の行使を容認する安保法案(戦争法案)を15年5月14日に閣議決定し、翌15日に国会に提出した。そして衆議院本会議で7月15日、参議院本会議で9月19日に強行採決した。その審議中法案に対しては多くの批判が起った。例えば衆議院の憲法調査会参考人として出席した憲法学者の3人(小林節慶大名誉教授、長谷部恭男早大教授、笹田栄司早大教授)はこぞって安保法案を「憲法違反」と批判した。この中には自民党招致の憲法学者もいた。また衆議院平和安全特別委員会から招かれた元内閣法制局長官2人(阪田雅裕、宮ア礼壹)もこれを違憲と批判した。その他憲法学者の大多数もアンケートに違憲と回答した。また山崎拓元自民党副総裁、亀井静香元金融担当相、藤井裕久元財務相などかつての大物政治家もこの法案に反対を表明した。こうした批判の声の続出にもかかわらず、政府は衆議院の審議時間が100時間を超え、論点も出尽くしたので、「決めるべき時には決める」というので、与党だけで強行採決した。しかし国会の審議はたんに時間をかければよいというものではない。しかもこの法案は10本もの法案を一本化しているのだから、1本当たりにすると10時間程度にすぎない。これでは長すぎるというより短すぎると言わなければならない。
   
このように時間をかけても、法案への疑義が深まるばかりで審議がはかどらず、国民の理解が得られない最大の理由は、この法案が憲法違反だからである。ほとんどの憲法学者がこれを違憲として批判するのに、政府は説得力のある反論が出来なかった。その中で政府が「合憲論」の根拠として持ち出したのは1959年の砂川判決であった。だが、これは米軍の駐留が憲法上容認されるかどうかが争われた事件であって、わが国の集団的自衛権行使とは無縁の判決であった。牽強付会のこじつけと言わねばならない。
   
政府はこの戦争法案が必要なことの根拠として、「国際情勢の変化」を持ち出し、中国の軍備拡張や海外進出など、力による現状変更の動きは黙過できない。また日本を射程内においた北朝鮮の数百発のミサイルは脅威であるといったことを根拠としてあげた。だが、ここであげている中国の軍備拡大や北朝鮮のミサイル、核開発などは、今に始まったことではなく、20年前から進められてきており、「急激な変化」とは言えず、法案の根拠とはなりえない。
   
この理不尽な戦争法案を政府は強行採決したが、その採決の議事録にまで改ざんを行った。9月18日の参議院特別委員会では、最初の議事録は「発言する者多く、議場騒然、聴取不能」となっていた。ところがこれが改ざんされ、「確定後議事録」では、速記者には聞こえなかった経過と付帯決議を追加し、「質疑を終局した後、可決すべきものと決定した」とする一文を付け加えて、事後のつじつまあわせが行われた。
   

■ 戦争法案に反対する闘いの高揚

こうして日本を海外で戦争できる国に変える戦争法案が強行採決されたが、それは安倍首相自身が国民の理解未だ─という状況の中での採決であった。だから、朝日新聞が9月12〜13日に行った世論調査を見てみても、国会の議論は「尽くされた」が11%に対して、「尽くされてない」が75%に上り、安保関連法案に「賛成」が29%、「反対」54%であり、今国会で成立させる必要が「ある」が20%、「ない」が68%に上った。そして内閣支持率は36%、不支持率は42%で、第二次安倍内閣発足以来、支持率は最低となった。
   
こうした反対意見の多い中での強行採決であったから、国会内だけでなく、国会外でも反対のデモがうずまいた。採決当日には、国会周辺に12万余の人々が、「戦争させない」「九条壊すな」「アベ政治を許さない」などのプラカードを持って参集した。これには「戦争させない1000人委員会」をはじめ、法曹界、様々な学者、文化人、宗教者などが集まり、SEALDsに代表される学生、高校生から、中高年層にいたるまで幅広い人々が参集した。
   
これは1960年の安保闘争以来の広範な結集であった。なかでもその中でめだったのは、若者や子連れの若い母親たちの姿であった。それにはこの戦争法案が成立すれば、日本が戦争の出来る国になり、自衛隊の活動が海外に拡がり危険が増大するが、そのしわ寄せは最も若者に寄るという危機意識が強いからである。そしていずれは徴兵制が敷かれるのではないかという懸念が強い。これに対して政府は、徴兵制などありえないと防戦に努めている。では、そのありえないという根拠を示せと迫られると、「憲法上徴兵制は禁じられているという解釈が定着している」と応じているが、これはまったく国民に説得力をもっていない。
   
なにしろ、これまでも長い間政府自民党は、「集団的自衛権は憲法上行使できない」と言い続けてきた。この「解釈」がそれこそ「定着」していると思っていたのに、安倍政権は、いともあっさり「集団的自衛権は憲法上認められている」とまるっきり逆の解釈を打ち出した。そんな政党であるから、いつ何時「徴兵制は憲法上禁止されていない」と言い出すかわかったものではない。憲法を踏みにじった者が、徴兵制についてまた憲法を自説の裏付けに持ち出してきても、それは全く説得力を欠いている。政府にたいする国民の不信感はそれほど強いのである。
   
戦争法案を強行採決した安倍内閣は、その反対闘争の中で燃えあがった火を、のど元過ぎれば忘れると、時間の経過とともにその火が消えるのを待つごとくである。とともに、その闘いの火を拡散させるために、政治の季節は終り今や経済の季節だとばかり、経済の成長、繁栄を強調しだした。そしてGDP(国内総生産)600兆円とか「一億総活躍社会」とかいうキャッチ・フレーズをうたったが、その対策の中身は大企業には企業減税、国民には消費税増税といったものである。
   
こうした対応は、60年安保の時の対応に似ている。60年安保条約を強行採決した後、その主役であった岸信介首相(安倍首相の祖父、安倍はこの祖父の薫育をうけて育ち、祖父の悲願であった改憲を自らの悲願としている)は、反対闘争の高揚の中で退陣をよぎなくされた。その後をうけて池田勇人首相が登場したが、彼は「所得倍増計画」を提唱し、安保闘争で燃えあがった火を、一見バラ色の繁栄ムードの中で拡散しようとした。この60年安保の時の先例に安倍はならおうとしているようである。
   
そして安倍内閣は、今後この戦争法案の運用を拡大して既成事実を積み上げながら、自民党の持論である「憲法改正草案」に示されている、憲法の全面改正を目指そうとしている。16年夏の衆議院選後、その結果を見て、その動きが具体化することが予想される。
   

■ 労働者運動の階級的強化

これに対して他方、戦争法案に反対する闘いの火がかつてない広範さで燃えあがったことは前に述べた通りである。この闘いの火はその後も燃え続けている。今後この闘いの火をさらに強めて、戦争法案の違憲訴訟をおこすなど、戦争法案に反対する闘いを国民世論に依拠して強化しなければならない。そして16年夏の参議院選挙を闘い、自公の与党を過半数割れに追いこみ、戦争法案廃止をかちとる。ついで解散総選挙で与野党の逆転を目指さなければならない。そのため野党はこの戦争法案反対という一点で選挙協力を行い、自民党との対決で勝利しなければならない。
   
こうした動きの中で、本来重要な役割を担わねばならないのは労働者運動である。だが、目下の情勢で気になるのは、この戦争法案に反対しておこった広範な闘いの中で、労働者運動にかつての勢いがないことである。これはかつての60年安保闘争の時、当時の総評が中心的役割を担い、3回にわたってゼネストを打ったのに比べ寂しいことである。このことは我々に労働者運動の階級的強化の課題をつきつけている。
   
社会主義協会は発足以来、この労働者運動の階級的強化に力を入れてきた。労働者運動の強化は、労働条件の悪化を防ぎ、労働者の生活を向上させるために不可欠である。今日安倍政権、すなわち独占資本の支配は、労働者だけでなく、中小企業や農民など広範な国民の生活を悪化させ、不安定なものにしている。だから、この独占の支配にたいして、労働者は広範な国民と連携してたたかってゆかねばならない。こうした反独占の運動を職場や地域からまず起こし、それを労働組合や政党の階級的強化とあいまって拡充し、強固な反独占、生活向上、民主主義拡充、平和擁護の統一戦線に発展させていくのかが、われわれの目指すべき目標ということができる。こうした広範な統一戦線の形成にあたっても、その中核的存在として、労働者運動の強化は不可欠である。
   
だから前にものべたように、協会は1951年6月の発足以来、労働者運動の階級的強化に挺身してきた。もちろん、当時と今日とでは情勢に大きな違いがある。だがわれわれ協会は、今日の経済的、政治的な状況を科学的に分析し、それを労働者をはじめとする国民大衆に訴えて、労働者運動を階級的に強化するとともに、反独占の広範な統一戦線に筋金を入れてゆかねばならない。
   
われわれはこうした課題に全力をあげて取り組むとともに、さしあたっての緊要な課題として、来るべき参議院選挙の勝利にむかって頑張らねばならない。
   
   

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