■ サイト内検索


AND OR
 
 
 月刊『社会主義』
 過去の特集テーマは
こちら
■ 2017年
■ 2016年
■ 2015年
■ 2014年
■ 2013年
■ 2012年
■ 2011年
■ 2010年
■ 2009年
■ 2008年
■ 2007年
■ 2006年
■ 2005年
■ 2004年
■ 2003年
■ 2002年
■ 2001年
■ 2000年
■ 1999年
■ 1998年


 


●2015年11月号
■ 派遣永続化をもたらす派遣法改正
   弁護士 北川鑑一

   

■ 派遣法改正法のポイント

●1:専門26業務の廃止
これまで、「通訳」「ソフトウェア開発」「財務処理」等、専門性が高いとされていた26業務については、派遣労働の制限期間がなかった。そして、これ以外の業務は、派遣期間原則1年、最長でも3年とされていた。
   
今回の「改正」は、この26業務を廃止した。つまり、どの職種も同じ処遇をされるということである。
   
●2:派遣期間制限の撤廃
どの職種も同じ処遇ということで、それでは、その「同じ処遇」とはどういうものなのか。今回の「改正」は、上記「原則1年、最長3年」の派遣期間制限を撤廃した。そして、その代わりに(?)、1人の派遣労働者が同じ部署で働ける期間を3年と制限したのである。
   
●3:事業所単位の期間制限
他方、派遣先企業は、派遣労働者を受け入れる期間は原則3年とされる(3年を超えて受け入れる場合は、過半数労働組合または過半数労働者の意見聴取が必要)。
   
この事業所単位の期間制限と前2の「派遣期間制限撤廃」の関係が分かりづらいが、こういうことである(と思う。今一つはっきりしない)。
   
先ず、派遣先企業X会社がAさんという人を雇用する。そして、このAさんの職場が、例えば総務部だとする。3年後、Aさんは「同じ部署で働ける期間」3年が過ぎたため、もはや総務部では働けない。そこでAさんの職場を今度は経理部(違う部署)としたいのであるが、その場合、Aさんを通算3年を超えて受け入れることになるわけだから、X社は過半数労働組合または過半数労働者の意見を聴かねばならないのである。
   
●4:雇用安定措置

  1. 直接雇用依頼
    派遣期間終了後、雇用継続を推進するため、派遣元は派遣先に対し、派遣労働者を直接雇用するよう依頼、つまり、「お願い」しなければならないのである。
       
    この場合、「直接雇用」というだけで、正社員として雇用しなくてもよい。また、前記のAさんのように、職場が総務部から経理部に替わった場合にも、この「依頼」をしなければならないのかどうか、つまり、「総務部から経理部への派遣のままでの配転ではなく、直接雇用してください」と依頼しなければならないのかどうかもはっきりしない。
       
  2. 新たな派遣先の提供
    前記のX社がAさんを継続雇用しない場合、派遣元は、新たな派遣先をAさんに提供しなければならない。但し、これは努力義務止まりである。「Y社を紹介し、Aさんが勤められるよう努力したのだが残念ながらダメだった」でおしまいである。
       
  3. 派遣元での無期雇用
    Y社がダメならということで、次に、派遣元が自分の所で期間の定めのない雇用をせよとなる。もっとも、大手派遣会社ならともかく、中小零細派遣元ではとても無理であろう。これもやはり努力義務である。
       
    なお、当然のことながらこの規定は、もともと派遣元会社と無期雇用契約を締結している派遣労働者にとっては意味のないものである。この規定による救済対象者は、有期雇用契約者またはいわゆる登録型派遣労働者(派遣先が見つかるまで賃金を支払わなくてもいいという、派遣元にとって実に使い勝手のいい制度)である。そうであるならば、問題視すべきは有期雇用制度及び登録型派遣制度そのものであり、これを、「派遣元会社は派遣労働者と無期雇用契約を結ぶようにしましょう」と言って事足れりとするのは、極めて姑息なやり方である。
       
  4. (4)計画的な教育訓練
    これも派遣元に求められているが、「キャリアアップ」「スキルアップ」等、口で言うのは簡単だが、問題は具体的な中身である。それが全く見えてこないのである。
       

■ 本「改正」がもたらすもの

先のAさんの例で言えば、先ず総務部で3年、次いで経理部で3年、更には人事部で3年、何時まで経っても派遣のままである。仮に、派遣元がX社に、3年経過時に直接雇用を依頼したとしても、X社にはその義務がない。では直接雇用を(努力ではなく)義務づければよいのかというと、それほど甘くはない。今度はX社は、派遣期間を(直接雇用義務が生じない)2年とするに違いないからである。つまり、派遣制度そのものが問題なのであって、この制度を前提に種々の策を講じても、企業もまた、必ず対応策を講じるのである。現に、何年か前、有期雇用が5年間続けば正規職員になれるという法改正がなされた時、私立大学の非常勤講師の1年ごとの更新を5年で打ち切るという形で大学が対抗し、新聞で取り上げられたことがあった。これは派遣の事例ではないが、同じことが起こるであろう。
   
次に、総務部を例に取れば、3年経ってAさんが経理部に移りました。そこで、Aさんがいなくなったので、今度はBさんという新たな派遣労働者をいれましょう。更に3年経って、次はCさんを入れましょうとなり、これまた延々と派遣労働が続くのである。まさに、派遣の永続化である。
   
次に、従来「専門性が高い」とされていた26業務の人たちはどうなるか。
   
前述のように、この26業務の区別がなくなり、全ての派遣労働者が同じ処遇となった。そうすると、例えば財務処理の専門家として経理部で働いていたDさんは、3年経過時には経理部をやめなければならない。その場合、Dさんに残された道は2つである、泣く泣く営業部に移るか、はたまた会社をやめて、別の派遣先の経理部を見つけてもらうか。まさに、「改正前の方がまだましだった」である。
   
そもそも1985年に派遣法ができた当初、派遣事業が許されるのは、ソフトウェア開発、翻訳・通訳、研究開発、財務処理等、専門的知識・技術・経験を必要とする13業種に限られていた。即ち、派遣労働は雇用不安定を招くということで、原則禁止だったのである。また、その他にも、長期派遣は正社員の代替化につながるとして、派遣期間も1年とされていた。
   
ところがその後、13業種が26業種に拡大(97年)、更に、原則自由(99年)、派遣期間の3年への延長、26業種については期間制限撤廃(03年)と、加速度的に規制緩和が進んだ。労働側が危惧していた「正社員の代替化」が着々と推し進められてきたのである。
   
今回の「改正」について、安倍は「正社員を希望する方にはその道が開けるようにするとともに(1)、派遣を積極的に選択している方については賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど待遇の改善を図る(2)ものだ」と自画自賛しているが、とんでもない。
   
(1) 正社員への道が開けるというが、前述のように「依頼」と「努力義務」では甚だ心もとない。そもそも派遣先は「人件費抑制」、「使い捨てやすい」という動機で派遣制度を「活用」しているのであり、直接雇用せよなどと言われたら、それこそ「何のために派遣社員を受け入れているのかわかっとるんか!」と怒り出すこと必定である。
   
(2) については、「派遣を積極的に選択している方」の待遇改善というが、それを言うなら第一に地位の安定、第二に同一労働同一賃金であろう。「積極的に」派遣を選択するということは、「いつまでも派遣で働く」(常用雇用型)ということであり(そんな人が本当にいるのかとの疑問もあるが、この点については後で触れる)、そうであれば、追求すべきは派遣元との無期契約の義務化である。これこそが「地位の安定」につながるものというべきであるが、今回の「改正」にはそれがない(あくまで派遣元の努力義務である)。また、同一労働同一賃金にいたっては、かけらも見られないこと明らかである。
   

■ 厚労省の調査について

同省の「平成24年派遣労働者実態調査の概況」によると、以下の調査結果が出ている。 派遣社員ではなく正社員として働きたい43.2%、派遣労働者として働きたい43.1%と、殆ど同じ割合である。「ホンマかいな」と意外な気がしたが、労働側でも要調査である。
   
「派遣労働者として働きたい」人のうち、常用雇用型の派遣労働者として働きたい80.4%、登録型の派遣労働者として働きたい19.6%。
   
これはまあ納得いく数字であるが、ただ、登録型というのは、前述のように、いつ仕事が来るかわからないというものである。「それでもよい」というのは、「自分は引く手あまただ」と自信があるか、趣味で好きな仕事だけをやればいいという人であろうが、そんな人が5人に1人もいるというのもやや意外である(もっとも、登録型を希望するのは35〜9歳と65歳以上が多い。前者が上記「自信」型、後者が「趣味」型といったところか)。
   
年齢別で多い希望は、25〜49歳が「派遣社員ではなく正社員で」、20〜24歳及び50歳以上が「派遣で働きたい」(特に、55歳以上の人は7〜8割が派遣を希望している)。
   
この結果も理解できる。要するに、「生活が懸かっている」世代は正社員を望むのである(一番多いのは、25〜34歳。結婚を控えていたり、乳幼児を抱えた世代である)。派遣労働の不安定さがよく表れた結果といえよう。
   
現在、常用雇用型派遣で働いている人のうち、派遣を希望する割合(今のままでいいということか?)48.5%、正社員を希望する割合37.2%。
   
他方、現在、登録型派遣で働いている人のうち、派遣希望37.3%、正社員希望49.8%。
   
登録型派遣労働者の半数は正社員を望んでいるのである。これでもまだ少ない気がするが、派遣労働の中でも登録型派遣の不安定さが特によく表れた結果である。
   

■ 改革の方向性について

派遣制度など廃止すべきというのが私の考えであるが、現状では非現実的すぎるので、それは控える。
   
(1)登録型派遣の完全希望制である
「廃止」でもいいのであるが、「どうしても登録型派遣がいい」という人もいるらしいので、それならばということで、これを提案する。ただし、無理やり「希望」させられる人が続出しそうなので警戒を要する(やっぱり廃止すべきか)。
   
(2)同一労働同一賃金の原則
これは資本側の抵抗が大きいだろうが、マスコミ等使ってしつこくしつこく追求すべきである。これが実現すれば、派遣制度そのものがなくなる(派遣制度を活用するメリットがなくなる)くらい重大な闘いである。
   
(3)その他
細かい当面の政策として、派遣料金等の透明化を挙げることができる。これによりピンハネ率等がはっきりし、悪質業者の放逐にもつながるからである。
   
   

本サイトに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。
Copyright (c) 2017 Socialist Association All rights reserved.
社会主義協会
102-0072東京都千代田区飯田橋1-8-8 ASKビル4階
TEL 03-3221-7881
FAX 03-3221-7897