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●2015年3月号
■ 新自由主義的自治体再編狙う「地方創生」
   社会民主党企画局長  横田 昌三

   

■ はじめに

安倍政権は昨年秋の臨時国会を「地方創生国会」と位置づけ、まち・ひと・しごと創生法案をはじめとする「地方創生」関連法案を成立させた。根幹となる、まち・ひと・しごと創生法案は、まち・ひと・しごと創生の基本理念、国等の責務、まち・ひと・しごと創生総合戦略の作成等について定めるとともに、まち・ひと・しごと創生本部を設置するものであり、2015年度中に都道府県、市町村の創生総合戦略の策定を努力義務としている。法文上は「地方創生」を「まち・ひと・しごと創生」と言い換えているが、「まち・ひと・しごと創生」とは、「まち」=国民1人1人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営める地域社会の形成、「ひと」=地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保、「しごと」=地域における魅力ある多様な就業の機会の創出の3つを一体的に推進し、魅力ある地方を創生することとされている。そして昨年9月3日付で閣議決定により設置されたまち・ひと・しごと創生本部は、まち・ひと・しごと創生法の施行に伴い、12月2日からは同法に基づく法定の本部として引き続き司令塔機能を担っていくことになった。12月27日には、日本の人口の現状と将来の姿を示し、今後目指すべき将来の方向を提示する「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン(長期ビジョン)」及びこれを実現するため、今後5カ年の目標や施策や基本的な方向を提示する「まち・ひと・しごと創生総合戦略(総合戦略)」が閣議決定され、あわせて3.5兆円規模の「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」が決定された。
   
安倍首相が「地方創生」と言い出した背景には、集団的自衛権の行使容認についての強引な閣議決定による支持率低下への対策や、2015年統一自治体選挙対策という面がないわけではない。しかし、選挙目当てのパフォーマンスや従来型の地方ばらまきというところにとどまらない側面があることを見落としてはならない。
   
「地方創生」は、元総務大臣で岩手県知事を務めた増田寛也氏が主宰する日本創成会議が発表した人口減少予測の調査結果に端を発した、「人口急減社会=地方消滅」というプロパガンダと密接に関連している。いわゆる消滅可能性都市を列挙し、自治体に衝撃を与えた「増田レポート」の後、5月13日には、経済財政諮問会議の「選択する未来」委員会は、「人口減少の解決が急務だ」と提言する中間報告書「未来への選択─人口急減・超高齢社会を超えて、日本発成長・発展モデルを構築」をまとめた(2014年11月に最終報告書)。そして経済財政運営の基本方針(「骨太の方針」)に、50年後に1億人程度の安定した人口構造の保持を目指すことや、2020年をめどに『人口急減・超高齢化』の流れを変えることなどが盛り込まれた。国土交通省の「国土のグランドデザイン2050」も、2050年には日本の人口は1億人を下回り、地方にある人口30万人以上の都市圏の数は現在の61から43に減り、全国の居住地域の2割では暮らす人がいなくなることを示し、市街地の集約とそれを交通網や情報網で結ぶ「コンパクト+ネットワーク」による国土再編成の構想を打ち出した。また、総務省の地方中枢拠点都市構想、国交省の国土のグランドデザイン2050構想に基づく高次地方都市連合、ふるさと集落生活圏、農水省の地域の活力創造プラン等々が打ち上げられている。7月15日には、全国知事会議が人口減少問題に関する集中討議を初めて行い、国と地方が抜本的な少子化対策に取り組むべきだとの「少子化非常事態宣言」を採択した。
   
こうした一連の流れの中で、「地方創生」キャンペーンが強調されるようになってきた。いみじくも安倍晋三首相は、「これまでとは異次元の施策に取り組んでいく」(2014年9月の「まち・ひと・しごと創生本部」初会合)と述べ、担当の石破大臣も「『地方再生』ではなく『地方創生』と言っているのは、いろいろな考え方や仕組みを新しく作ろうとしているためだ。中央と地方、あるいは民間と政府の関係を全く違う形にしていきたい」(石破担当大臣、1月19日、経団連の榊原会長との会談)、「地方創生の取り組みは明治以来連綿として作ってきた国家の形を根本的に変えるものであり、『今やらないとこの国の存立は危うい』という意識に基づいたものだ」(1月15日、日本商工会議所の三村会頭との会談)などとしている。まさに「地方創生」は、日本の再生であり、日本全体を引っ張っていくものと位置づけられており、安倍政権の目指す戦争できる国、世界で一番企業が活動しやすい国という、現代版富国強兵の「新しい国」の地方イメージが「地方創生」なのである。
   
   

■ 「増田レポート」の衝撃

日本創成会議が2014年5月に発表した「ストップ少子化・地方元気戦略」は、「2040年に20〜39歳の若年女性が10年の半分以下となる自治体は全体の5割に当たる896市区町村に上る」との試算を示し、そのうち523自治体は人口が1万人以下となり「消滅可能性が高い」と指摘、市区町村名を公表した。増田氏は「中央公論」誌上でレポートを発表し続けたが、「壊死する地方都市」(2013年12月)、「消滅する市町村523全リスト」(2014年6月)、「すべての町は救えない」(2014年7月)とタイトルはエスカレートし、8月に新書としてまとめたのが「地方消滅――東京一極集中が招く人口急減」である。これらを一体として「増田レポート」とみるべきだろう。
   
しかし、若年女性の半減がなぜ「消滅可能性都市」となり、「市町村の消滅」となるのか、人口1万人以下は、なぜ「消滅」となるのか。なぜ人口減少(少子化)が進むのか、たとえば1億人を切るとなぜ経済が回復困難に陥るのかなどについて、客観的・科学的な検証はなされていない。レポートの基礎となっている人口の転出入(社会移動)に関する推計精度は低く、的確にとらえておらず、2011年(東日本大震災)以降の「田園回帰」など、最近の人口移動の変化も全く考慮されていない。
   
「多くの男女は結婚し、子どもを持つことを希望しているが、社会的経済的理由でかなわず、晩婚化や未婚化が進行」しており、だから「政労使による会議での議論を通じて、非正規雇用のキャリアアップと処遇改善に向けた取り組みを進めるべき」というが、「少子化」は避けられない「自然現象」ではない。晩婚、未婚、少子化が進む「社会的経済的理由」に触れられず、背景の分析は行われていない。なぜ非正規が増えているのかについても、この間の規制緩和や構造改革については述べられていない。不安定雇用、長時間労働、低賃金の若年層を増大させたことや、海外への生産シフト、農産物輸入の増大、大型店の規制緩和を進めてきたことなどは触れられていない。
   
さらに、「より大きな市町村の誕生が、地域の存在感や『格』の向上と地域のイメージアップにつながり、企業の進出や若者の定着、重要プロジェクトの誘致が期待できます」としていた平成の大合併の検証も反省もない。また、「三位一体改革」により、負担増と公共サービス低下をもたらしたことや、過去の過疎対策や地域づくり政策の検証もなされていない。
   
「ストップ少子化・地方元気戦略」の副題は、「成長を続ける21世紀のために」となっている。人口減少・地方消滅プロパガンダと「地方創生」キャンペーンの狙いは、日本経済の「成長」であることがいみじくも露呈している。同戦略は、「グローバル経済圏」と「ローカル経済圏」を提起しているが、東京は一極集中の歯止めをかけつつグローバル競争の拠点とし、地方(自治体)は「選択と集中」を徹底させ「若者に魅力ある地域拠点都市」を中核とした「新たな集積構造」を構築するべきだとしている。
   
地域の拠点都市に「選択と集中」でそれ以外は切り捨ててもやむをえない的な提起となっている。元々、「選択と集中」は、企業経営の概念であり、儲からないところは切り捨てるが、不便なところに暮らすのは自己責任・自己負担、という発想が隠れており、このままでは、地域に住み続ける権利自体も危うくなりかねない。東京への人口流出を食い止める「ダム」として、地方の拠点となる都市に施策と投資を集中するというのも、周辺の農山漁村地域や過疎の集落などの切り捨てにつながりかねない。
   
2014年、生まれてきた赤ちゃんは100万1000人となり、推計値で26万8000人の自然減になっている。2009年に始まった人口減少は、累計110万人を超えており、人口減少に拍車がかかっている。たしかに、人口構造の急激な変化は、生産年齢人口に依存する労働力の減少による生産・経済活動の後退、経済活動の衰退プラス人口減少そのものによる税収の縮小、県民・住民1人当たりの負担増大、介護、教育、医療など、社会的基盤領域の担い手不足などの様々な問題が発生することは否定できない。しかし、里山や限界集落、農林水産業の再評価や、「ふるさと回帰」など、人口減少を積極的に受け止める動きも出ている。人口減少とうまく付き合うという発想もありうる。人口減少が進んだとしても、いかなる自治体においても、最終的担い手として、住民生活の基盤となる公共サービスを提供する義務があり、公共サービスをいかに確保できるようにしていくのかという視点が必要である。大事なことは、そこに暮らす住民が安心して生み育て働き続けられることであり、そのための公共サービスの持続可能性の追求ではないか。地域の資源を生かしながら、若い世代の生活を支えて子どもの数を増やし、地域が継続していくことを中心に考えていくべきであって、数字に踊らされず、地域を最もよく知っている住民が中心となって地域の将来をしっかりと見つめ、考えていくことが大切である。人口減少が避けられないなら、それを生かしていかに質の高い社会をつくるかをあきらめてはならない。
   
   

■ 「地方創生」の狙い

「地方創生」の背景の1つに、統一自治体選挙対策という狙いがあることは間違いないだろう。2014年4月からの消費税増税による経済の落ち込みは、地方ほど深刻な状況となっている。そして、「アベノミクスの成果を地方に」といくら強調してみても、地方ほどアベノミクスの「効果」が表れていない。それどころか、アベノミクスによる円安の影響で、燃料や資材、食品価格が高騰している。選挙を前に幻想によって支持をつなぎとめるためにも、「ローカル・アベノミクス」を口にせざるを得ない状況であり、自治体に寄附すると住民税などが軽減されるふるさと納税の拡充、地方の企業誘致推進のための地方の法人税軽減、特産品の販売支援による活性化、PFIの導入促進(10年間で3倍)、プレミアム商品券の発行支援などが打ち出されている。
   
さらに人口減少や自治体消滅の危機感があおられる中、国の人口減少対策予算や自由度の高い交付金などへの自治体の「期待感」の高まりもある。もちろん、地方の抱える課題は、地域ごとに異なり、自治体からは自ら人口減対策や地域活性化など幅広い事業に自由に使える交付金の創設が求められていた。しかし、今回、自治体向けに、商品券の発行など「地域消費喚起・生活支援型」事業と、雇用の場創出などで地方活性化を促す「地方創生先行型」事業が対象の「地域住民生活等緊急支援のための交付金」が約4200億円規模で設けられたが、国が12項目の事業を例示しているなど、真に自由度が高いかどうか疑問が残る。自由に使える交付金すら国の枠の中の自由である。本来、一括交付金の復活や地方交付税の充実強化でしっかりと対応すべきである。
   
また、過去と同様、公共事業の大盤振る舞い、無秩序な補助金ばらまきが繰り返される恐れもある。実際、総務省、経産省、文科省、厚労省、国交省、農水省など各省庁は、「地方創生」名目での事業の焼き直し、拡大に余念がない。
   
これらが問題なのはその通りだが、実は、「地方創生」のより本質的な狙いは、安倍が強調する「新しい国」を構成する「地方」の姿づくりにあることを見落としてはならない。
   
人口減少・地方消滅をあおりながら、その危機回避の方法は、地方における「選択と集中」、すなわち地方中枢拠点都市への資源集中と小規模自治体の淘汰しかないことを強調している。その先にあるのは、将来的な都道府県再編、道州制導入という地方制度「改革」である。本来、車に頼らずに歩いて暮らせる町という「コンパクトシティ」という言葉が、いつの間にか、拠点都市への集約化の概念として使われてしまっており、「地方創生」には、高層ビルの乱立や道路・鉄道などの公共事業中心のコンパクトとネットワークの国土計画への地ならしの側面もある。
   
同時に、規制緩和と国家戦略特区との連携を通して、大企業による地方市場への参入を促す狙いもある。「農業、観光、防災、国土強靭化」を「PFIやPPPによる民間参加」により達成するなど、民間活力による地域経済「活性化」が志向されている。このままでは、自治体や地方が民間大企業の儲け先として売り飛ばされてしまう恐れがある。安倍政権が進める国家戦略特区は、元々竹中平蔵氏が提唱した「アベノミクス特区」であり、開発規制の緩和、雇用規制の緩和、混合診療の拡大、公立学校の民間開放、法人税率の引き下げ、外国人労働者の受け入れ、農業分野の規制緩和など、「規制緩和の実験場」という位置づけである。しかも、これまでの特区と異なり、国が戦略と地域を指定するトップダウンの手法で、企業が規制緩和を提案できるなど、中央集権・企業主権の発想である。「日本再興戦略」には「投資」という用語が113回出てくるが、そのスローガンは「投資の促進〜『特区』で叶える、世界のトップのまちづくり〜」である。特区という「ミニ独立政府」(竹中平蔵)は、規制緩和を求める民間有識者や事業者で構成する「諮問会議」や「区域会議」が力を持ち、住民や利用者の意思は反映されず、民主主義や地方自治の形骸化にほかならない。
   
「人口急減社会の進行」とそれにともなう「地方の消滅」という形で、小規模町村の絶望感をあおり、あきらめの中で、規制緩和と自治体間競争の徹底という、自治体再編と行革の「ショックドクトリン」として使われはしないのか。「競争しろというのか、その通り。そうすると格差がつくではないか、当たり前だ」、「努力した自治体としないところを一緒にすれば『国全体が潰れる』」(石破地方創生相)と述べているように、自治体同士を競争にたたき込み、格差を拡大させ自然淘汰に持ち込もうという狙いが透けて見える。結局、「地方創生」は、人口と資本の都市への集中が望ましく、「稼ぐ力」を連呼する大企業のための、経済成長優先政策である。
   
安倍政権の「地方創生」は、決して、地方を再生して住民生活を持続的に安定させることが目的ではない。元々活力ある経済のためが出発点であり、規制緩和を推進し大企業の市場を拡大するとともに、「選択と集中」によって儲からない地方、非効率な地域を切り捨てる狙いがうかがえる。むしろ「平成の大合併」後の、国土・自治体の新自由主義的な再編成の方向をとらえておかなければならない。そういう意味で、規制緩和や地域間競争の徹底と結びついた新自由主義的な自治体再編戦略、新たな日本改造計画といえよう。
   
   

■ 羊頭狗肉の「地方創生」

その証拠に、アベノミクス自体が少子化対策や地域の再生と矛盾している。
   
安倍政権は、労働法制を岩盤規制の1つとして、「稼ぐ力」のための労働法制改革を進めている。「限定正社員」制度の導入や「解雇の金銭解決」制度の導入、残業代ゼロの「ホワイトカラー・イグゼンプション」の導入、有期労働契約の延長、どんな業務でも派遣は可とし、さらに一生涯派遣を可とする労働者派遣法改悪を目指している。非正規労働者を激増させ、若者を結婚できない状態に追い込み、子どもの貧困を野放しにすることは大きな矛盾である。
   
また、アベノミクスの異常な円安は、地域経済に大きな打撃となっている。地域経済破壊が懸念されるTPP推進、地域社会の食と暮らしを支えるJAの総合力を弱めようとする農協「改革」、オリンピックを理由とした東京重点投資、国土強靱化を理由にした公共事業バラマキも本来の地域の再生とは矛盾している。「強い農業」だけが生き残り、多くの家族経営が集落から退場し、地域社会が維持できなくなれば、地方の衰退に拍車が掛かることは間違いない。
   
「地域資源」と「外部との積極的つながり」、「地域に住む人々」が「地方自らが地域資源を掘り起こす」として、安倍首相の所信表明演説(2014年臨時国会)では、「鳥取県・大山の地ビール」、「島根県・海士(あま)町のサザエカレー」などが紹介された。「地方創生」というのは、住民の暮らしの安心の保障というより、物が売れて儲かるようになるというイメージだが、カネ儲けが本当の意味で地域の再生になるのだろうか。「海外の市場とつながっていくことは、農林水産業や観光での大きな飛躍のチャンス」といっても、安倍政権のTPP推進で農林水産業は壊滅的打撃を受けるのである。
   
   

■ 地域の再生と住民自治の創造

大企業のカネ儲けのための「選択と集中」という「地方創生」ではなく、惨事便乗型の「ショック・ドクトリン」として自治体を競争にたたき込む「地方創生」ではなく、住民自身が主役となり、住み慣れたまちで、いつまでも安全、安心、快適に暮らせるようにしていくことがめざすべき地域の再生である。人口減少や地方の疲弊は、外需依存や大企業の利益確保を優先する経済発展追求の帰結でもあり、人口減少の克服、地域経済の活性化というのなら、格差拡大、大企業優先のアベノミクスとは逆の発想が求められる。
   
成長神話を脱し、内需中心の持続的な産業構造へ転換するとともに、育児・介護など社会保障制度のもろさ、公教育システムや地場産業育成支援の不十分さなどを改革しなければならない。日本世論調査会が昨年9月に実施した全国世論調査の結果では、効果的な対策について問うと、子育て世帯への支援拡充が49%、医療福祉サービスの充実が40%と上位を占め、ソフト面の強化を望む意識が浮かんでおり、雇用創出を要望する声も強い。求められているのは、分権・自治の推進、「いのち」(介護、医療、福祉、子育て、教育)と「みどり」(農林水産業、環境や自然エネルギー)分野への重点的投資、若者に魅力ある安定雇用の創出、中小企業支援の強化、交通や通信、住宅などの生活インフラの拡充、住民同士の「助け合い」の輪の拡大や地域における人権の確立と共生などによって、すみやすいまちづくりを地元から進めることである。
   
地域の再生のヒントは全国各地にある。地元へ回帰する若者も増えているし、地域に志と能力を持った人は大勢いる。厳しい状況の中でも、問題意識を持ち、様々に努力している職員や市民、NPOやサークルなどの市民団体も存在する。地元からの新しい挑戦はもう始まっている。地域の資源を生かしながら、若い世代の生活を支えて子どもの数を増やし、地域が継続していくことを中心に考えるという選択肢もある。
   
実は、自然環境の豊かさや一次産品、ローカルな豊かさを評価する、外部ではなく、地域内のヒト、モノ、カネの循環を大事にするコミュニティ経済、1人1人がそれぞれの創造性や多様性を楽しんでいく、人と人とのつながり、地域やコミュニティ、自然とのつながりを重視するなどの、新しい価値観は、安倍の「地方創生」とは真逆であり、社民党宣言で掲げた「平和・自由・平等・共生」の現実化とオーバーラップしているものである。
   
   

■ 統一自治体選挙で問われる地方自治と地域のあり方

安倍政権の暴走は、「民主主義の学校」と形容される地方自治においても進められている。そうした中で2015統一自治体選挙では、あらためて地方自治と地域のあり方に対する認識と姿勢が問われている。
   
地域から自治体の底力を高め、平和憲法が保障してきた地方自治を発展させ、自治体を平和と民主主義の砦として築き直すとともに、「住民の福祉の増進」という自治体の共同体的機能、セーフティネット機能を果たせるようにして、憲法の幸福追求権や生存権を地域から具現化していかなければならない。
   
昨年5月の関西電力大飯原発の運転差し止めを命じた福井地裁判決は、「人格権は憲法上の権利であり、人の生命を基礎としているゆえに、我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない」などとして、経済活動・カネより、人格権・いのちが上位にあることを示した画期的な判決である。
   
中央集権か分権・自治か、企業主導か住民主権か、カネかいのちか。まやかしの「地方創生」ではなく、社民党は、住民が主役の真の分権・自治を進め、「人といのちが輝くまち」をめざしていく。
   
   

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