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●2015年1月号
■ 自公大勝「アベノミクス選挙」戦略が功を奏す
   善明 建一

   

■ 自公で3分の2を超える議席を獲得


(図表1・クリックで拡大します)
   
第47回衆院選挙は、12月14日投票、即日開票され、安倍政権の経済政策「アベノミクス」継続の是非を最大の争点に掲げた自民党と連立を組む公明党が大勝した。
   
今次選挙は、安倍自民党政治の2年間の国民による信任投票ともいえる様相を呈することになった。自民党は公示前議席293より3減の290議席、公明党は公示前議席31より4増の35議席、両党合計で参議院で否決された法案を再可決できる衆議院の3分の2(317議席)を超える326議席を獲得した。(図表1参照)
   
一方、経済政策の転換で政治の流れを変えることを訴えた民主党は、公示前議席62から11議席増の73議席を獲得したが、目標とした100議席をはるかに下回り、2年前の大敗北から立ち直れずに、海江田万里代表は落選し代表を辞任した。前回の選挙では、第三極の躍進のシンボルとなった維新の党は公示前議席42から1議席減の41議席にとどまった。みんなの党は、路線の違いから分裂、さらに解党することになり、渡辺喜美元代表は無所属で立候補したが落選した。
   
共産党は公示前議席8から13議席増の21議席を獲得し、小選挙区では1996年以来となる1議席を獲得するなど、自公政権批判の「受け皿」となった。次世代の党は、公示前議席19から2議席に、生活の党は公示前議席5から2議席に後退した。社民党は公示前議席2を維持したがこれを前向きにとらえ、今後にどう繋げるかが課題である。
   
各政党の議席獲得数は、以上の通りであるが、小選挙区で獲得した得票率を見ると、自民党の得票率は48.1%であるが、議席は75.2%を獲得している。ということは、落選した候補に投じられた議席に反映されなかった「死票」が多いということである。実際に「死票」は2540万票で全体の48%に達している。このように現行の選挙制度のもとでは、選挙得票率と議席の乖離、大量の「死票」を生み、その弊害があらためて浮き彫りになっている。
   
政党別「死票」を見ると、自民党が17%、9人の小選挙区全員が当選した公明党はゼロだった。民主党は70%で前回の83%から改善している。維新の党は79%で前身の日本維新の会の82%に比べて3ポイント改善した。共産党は99%に達したが、候補者をほとんどの選挙区でそろえたことが比例代表での得票の上積みにつながった。
   
ちなみに小選挙区の得票数を見ると、自民党は得票数は2546万票を得ているが、前回衆院選挙より18万票減らしている。前回は43%の得票率で79%の議席を獲得しており、今回は得票率が5ポイント上昇した一方で、議席占有率で3.8ポイント低下した。得票数の落ち込みは投票率が前回より6.6ポイント低い過去最低の52.66%になったことが大きい。
   
投票率が下がったのは「有権者の投票参加につながるような身近な争点や対立軸がみられなかった」、「野党に魅力がなかった」、「安倍首相が争点に掲げた消費税延期の是非も主要政党がこれに反対せず、大きな差はなかった」、「報道各社の情勢調査で自民党の優勢が伝わり、有権者が投票意欲を一層低下させた」などが一般的な見方であろう。
   
投票率の低下は、企業・団体や個人後援会を基礎とする自民党のほか、創価学会を支持母体とする公明党、固い支持層を持つ共産党はいずれも組織型政党で、好調な戦いを展開した。公明党は小選挙区制度導入以降で、最多の35人、共産党も1996年の26人につぐ21人と伸びた。
   
民主党は小選挙区では前回獲得した27議席から38議席まで回復したが、得票数では1191万票と前回から168万票減らしている。他の野党との競合を避け、小選挙区での候補を絞ったことが主な要因である。
   
各政党の小選挙区での得票率は、自民党が48.1%(前回43.0%)、民主党が22.5%(同22.8%)、公明党が1.45%(同1.4%)、共産党が13.3%(同7.8%)、維新の党が8.2%(同11.6%)、次世代の党1.8%、生活の党が1.0%、社民党が0.8(同0.7%)である。
   
   

■ 無党派層を吸収して勝利した自民党

自民党が単独で過半数を占めて大勝した要因は、無党派層を取り込んだことである。朝日新聞の出口調査では、自民党支持層は40%になり、前回の30%から増やしている。支持層の71パーセントが比例区で自民党に投票した。
   
さらに20%にあたる無党派層のうち、22%が比例区で自民党に投票、自民党は前回の政権復帰時でさえ19%で、維新の28%に大きく離されていた。維新は前回を下回る22%であった。(図表2参照)
   

(図表2・クリックで拡大します)
   
安倍首相は、「アベノミクス解散」と銘打ったが、「この2年間の経済政策」が成功か、失敗かを聞くと、「わからない」が39%に上った。このうち37%が比例区で自民党に投票しているのである。2年間で「暮らし向き」がよくなったか、悪くなったかを聞くと、「変わらない」という人が60%、このうち41パーセントが自民党に流れている。自民党を積極的には評価しないが、自民党に投票した有権者が多いことがわかる数字である。それは民主党をはじめ野党が自民党に代わる「受け皿」とは見られておらず、「野党の中に政権を任せられる党がない」、「自民党は野党よりはまし」という消極的な支持ということである。また、そのことは投票率の低さに如実に現れたということでもある。
   
共同通信の出口調査で「支持政党なし」と答えた無党派層は、全体の20.6%で、このうち比例代表の投票先を聞いたところ、21.1%が自民党に投票している。
   
これは前回選挙の19.9%を上回っている。比例代表で最も支持を集めたのは維新の党で21.7%、2位は自民党、3位は民主党の20.8%であるが、民主党は前回の16.4%から4.4ポイント挽回したが、政権交代を実現した2009年までの支持回復はかなわなかった。4位は共産党の17.7%で、前回の7.5%から倍以上となっている。この他、公明党が7.4%(前回は5.9%)、次世代の党は3.9%、社民党が3.2%(同3.0%)、生活の党が2.9%、新党改革が0.1%(同0.5%)の順である。
   
小選挙区の投票先では、自民党がトップの31.7%(同32.4%)、民主党の28.5%(同27.1%)、共産党の18.8%(同9.4%)、維新の党は11.2%の順である。ここでも自民党の堅調さと共産党の好調ぶりが示されている。無党派層の自民党の選択は「ほかよりまし」という消極的な理由であり、無党派層の票が維新の党、自民党、民主党、共産党などに分散したことが示されている。
   
一方で組織力に勝る自民党、公明党がそれぞれの支持層を固めて優位な戦いを進めていることである。自民党支持層のうち比例代表で、自民党に投票したとの回答が79.4%、民主党に流れたのは3.0%にすぎず、自民党の支持基盤をしっかり固めていることがわかる。民主党に政権の座を明け渡した2009年の調査では、自民党支持層から自民党への投票が53.7%だったから、それからすれば着実に盛り返している。さらに連立を組む公明党への投票は、7.3%で、自公両党の選挙協力が一定程度進んでいることがわかる。維新の党への投票は5.1%、次世代の党へは2.7%となっている。
   
公明党支持層は、95.4%が公明党に投票している。民主党支持層から民主党への投票は83.8%、自民党へは1.7%にとどまっているように民主党は支持基盤を自民党以上に固めていることになる。
   
   

■ 不意打ち解散、経済に争点を一本化が奏功

安倍首相は、選挙の争点を経済一本に絞って、「アベノミクス解散」だと自ら銘打ち、その継続を単一争点として、ぶれずに最後まで訴え続けた。透けて見えたのは「いまなら負けない」という打算であり、長期政権を担う首相自身のための選挙との色合いが強いものであった。
   
野党側は、大義なき解散を批判しながら、「円安で物価が上がり、格差は拡大し、分配のひずみが大きくなり、生活は苦しくなっている」と「アベノミクスの失敗」などと批判した。これに対し安倍首相は、株価上昇や有効求人倍率といった経済指標の改善などを前面にだし、これが「アベノミクス効果」であると反論した。
   
「雇用を100万人以上つくった」、「賃金は2%、ボーナスは7%増えた」などひたすら具体的な数字をだし成果を強調した。その欺瞞性を指摘されても、地方の演説では「景気を回復させて、企業が収益を上げる状況を作り、みなさんの懐へと回っていく。この経済の好循環を力強く回し続けることで、景気回復を実感できるようになる」、「この道しかない。これに代わる道があれば対案をだしてほしい。『アベノミクス』を前に進めることで日本のすみずみまで景気回復のあたたかい風を送り届ける」と絶叫した。さらに安倍首相は、賃金格差が広がっているとの批判に対しては、「アベノミクス」は「簡単に言えば、雇用を増やし賃金を増やしていく政策だ」と何度も繰り返し、今後2年間の賃上げは自分が行うかのような発言であった。
   
こうした安倍首相の訴えは「『アベノミクス』は成功してほしい」という有権者にある思いを一定、とらえたことは間違いない。「アベノミクス」は、確かに格差を拡大し、輸入品の価格上昇などで中小企業に犠牲を転化し、生活困窮者を増大させているが、「アベノミクス」の恩恵が全国に広がることへの期待は依然、根強いものがあったと思われる。
   
さらに安倍首相は、野党側の選挙準備ができないうちに解散に打って出たことである。民主党など野党は「選挙は早くて2015年の夏以降」との見方が支配的であった。この結果、候補者擁立が遅れ、民主党は選挙区の過半数に満たない178選挙区(前回264選挙区)しか候補者を出せず、無党派層などの「受け皿」になれないばかりか、政権交代の選挙にはなっていなかったのである。ちなみに小選挙区の候補者は前回1294人から今回は959人に減っている。また野党間の選挙協力もほとんど進んでいなくて、候補者調整も限定的にとどまっていた。
   
一方で安倍首相は、2015年に入れば、原発再稼働や集団的自衛権行使容認に伴う関連法案の審議が始まることで、政権の体力は奪われると判断したこともある。さらに「政治とカネ」を巡って野党がさらに攻勢を強めるとの懸念もあった。また、安倍首相が着目したことは政党支持率である。内閣支持率は下がったとはいえ40%をキープしており、自民党と民主党の支持率は30ポイント以上離れている。前回とは違って、第三極の勢いはなく、無党派層の票は民主党ではなく、自民党に流れてくると見たことが考えられる。加えて、二大政党から政権を担う政党を選ぶ小選挙区制度の定着があり、このもとで国民は自民党を選択すると判断し、今、解散することが自民党の政権維持になると考えたことである。
   
だから安倍首相は、選挙中、憲法改正をはじめ集団的自衛権行使容認、関連した自衛隊法改正など安全保障政策などは抽象的な発言にとどめ、具体的には踏み込むことはなく、選挙中盤以降は全くふれることはなく、経済政策「アベノミクス」一本に絞るという徹底ぶりであった。
   
   

■ 野党の「一本化」の成果は限定的に終わる

野党は小選挙区で前回競争して共倒れした反省から、候補者を「一本化」した。いわゆる「すみ分け」選挙であるが、今回は自公と共産党を除く194小選挙区で候補者を「一本化」したが、これは前回の3倍に増えている。(図表3参照)
   

(図表3・クリックで拡大します)
   
民主党と維新の党の候補が競合する30選挙区のうち10前後の選挙区で候補者が「一本化」されている。こうした「一本化」で当選したのは42選挙区である。5党の小選挙区当選者の約8割を占めるが、与党に競り負けた小選挙区の方が多かった。一定の効果はあったが、政策の違う各党による連携の「限界」を示す結果となっている。東京の25選挙区では、そのうち13選挙区が「一本化型」だったが、野党側が議席を獲得したのは、維新の党候補が当選した東京15区だけにとどまった。福岡の小選挙区では「一本化型」は8選挙区に上ったが、野党側は全敗だった。
   
「一本化」が必ずしもうまくいかなかった背景には、5党による政策面での連携がなく、安全保障、原発政策など主要な政策でも食い違う点が多いことが指摘されている。 民主党と維新の党が合意した共通政策は、箇条書きの5項目で、原発政策、特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認も触れられていない。民主党、維新の党は、候補者調整をしたが、民主党と与党の対決区で、維新の党支持層は42%しか民主党候補に投票せず、29%は与党候補に投票している。維新の党と与党の対決区でも、民主党支持層は、55%が維新の党候補に投票しているが、17%が与党候補に流れているという現実がある。
   
一方で野党5党が複数の候補を立てたところでは、維新の党が地盤をもつ大阪(計19選挙区)では、維新の党が民主党などと競合した選挙区も含めて5議席を獲得している。
   
このように野党間で政策の違いが、「一本化」の効果を限定的にしていることがあるが、自民党の政策との関連、そして野党間の政策の違いを簡単に列挙してみる。
   
民主党は安倍政権を批判し、「厚く、豊かな中間層の復活」、「人への投資」など、有権者に心地よいスローガンを掲げた。しかし、これは「アベノミクス」に対抗する政策ビジョンとしては説得力に欠けていた。とくに税制改革では、法人減税を公約とする自民党への対案は、示すことはできていない。安全保障政策でも、集団的自衛権行使容認の是非に関して、党内に賛否両論を抱え、党見解さえまとめられない。ただ自民党の労働法制の「岩盤改革」には、社民党、生活の党とも一致して反対の態度を打ち出していた。
   
第三極の政党は、前回選挙のように国民の期待を集めることはなく、なによりも離合離散を繰り返し、目に見える実績を残せなかった。維新の党は、行政改革の断行(公務員賃金の3割削減など、身を削る改革)、「岩盤規制改革」では自民党と一緒で、自民党をこえる政策を売りにするという態度であった。まさにサプライサイドを強化する企業側に立った改革政党という印象を有権者に与えた。
   
共産党、社民党の政策は、「アベノミクス」が勤労者にもたらしている格差拡大、生活の困窮化の増大に対抗する具体的改善策、消費税引き上げに対する態度も、財源問題も含めて独占資本に負担させるということでは共通したものであった。憲法を軸とした安全保障政策も、集団的自衛権行使容認の撤回、特定秘密保護法反対などの主張も明確であった。こうして自民党政権の「受け皿」として躍進したのが共産党であった。社民党の政策は、これまでより簡潔に整理され、わかり易かった。だが候補者の少なさなど、力量不足で批判票を吸収するまでにはいたらなかった。
   
消費税引き上げ延期では、社民党は「8%から5%に戻すこと」、共産党は「8%は中止」を打ち出した。他の野党は延期には「反対」していないが、導入時期はふれていない。生活の党の政策は「生活が第一」を掲げたように、比較的社民党に近い政策であった。原発、集団的自衛権行使容認などは、明確に反対の態度である。
   
   

■ 選挙後の政局はどう動くか

自公の大勝で安倍首相は、12月24日の臨時国会で首相に選出され、全閣僚を留任させ、2015年通常国会に向けて、税制改革大綱を決定し、予算案、さらに選挙で先送りしてきた集団的自衛権行使容認を担保する一連の自衛隊法改正、労働者派遣法、ただ働き法案、医療改革、教育改革法案など重要法案を成立させるとしている。
   
民主党の代表選挙は2015年1月18日に実施し、新しい執行部を選出する。ここで人事がどうなるかが、今後の野党共闘、そして、政界再編の流れを左右することになる。すでに維新の党の江田憲司代表は、政界再編で大きな野党の塊を作ることに意欲を燃やしている。
   
大衆運動では2015春闘、統一自治体選挙と続くことになる。選挙結果を受けて、これらの闘いを通じて自公の対抗軸となりうる政治的戦線統一の前進に結びつけていく努力が必要である。
   
(2014年12月16日)
   
   

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