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●2014年10月号
■ 第二次安倍改造内閣と臨時国会の課題
   社会民主党企画局長・政策担当常幹 横田 昌三

   

■「地方創生国会」

9月3日に第二次政権発足後初の内閣改造を行った安倍首相は、「日本の将来を見据え、有言実行、政策実現に邁進する『実行実現内閣』として国民の負託に応える」とした。問題は何を「実行実現」するかだが、菅官房長官、麻生財務相、甘利経済再生相、岸田外相、下村文科相、太田国土交通相ら主要閣僚は留任しており、「戦後レジームからの脱却」路線と「世界で一番企業が活動しやすい国」づくりという現代版「富国強兵政策」の根幹はそのままである。石破幹事長らライバル封じ込めと塩崎厚労相や山谷拉致問題相、高市総務相ら首相の「お友達」の起用、さらには各派閥の領袖や事務総長を取り込んだ挙党態勢作りで、悪政を「実行実現」するための政権基盤を確立・強化した。19閣僚中15人が改憲・右翼団体「日本会議」を支援する「日本会議国会議員懇談会」のメンバーであり、まさに暴走を進める「右向け右内閣」である。女性5人の起用も、ほとんどがタカ派で男女共同参画や夫婦別姓に反対する「国防婦人」が中心である。むしろ安倍政権の進める様々な悪政を隠蔽することになりはしないかが懸念される。
   
内閣改造後初の国会論戦となる第187回臨時国会が9月29日に召集され、会期は11月30日までの63日間となった。安倍政権は、安全保障環境の変化をあおり、強引に集団的自衛権行使容認の閣議決定をしながら、姑息にも関連法案を先送りし、地方創生関連法案と女性が輝く社会作りの推進を中心とする「地方創生国会」と位置づけた。
   
地方創生の理念などを定めた「地方創生法案(まち・ひと・しごと創生法案)」は、「まち・ひと・しごと創生本部」の法的位置付けを明確にし、2060年に日本の人口1億人を維持するための「長期ビジョン」と、国や都道府県が具体策や数値目標を盛り込んだ総合戦略を作成することなどが盛り込まれる。そのほか、地方の中小ベンチャー企業が公共調達を受注しやすくための官公需法改正案、自治体が主体的に新たな支援策を首相に提案できるなどの地域再生法改正案、全国の特区で実施する規制緩和の追加項目に関する国家戦略特区法改正案などが予定されている。
   
地方創生の背景には、アベノミクスの地方への波及という「ローカル・アベノミクス」と、日本創成会議などが示した「消滅可能性都市」のクローズアップがある。地方創生のメニューとしては、総務省の地方中枢拠点都市構想、国交省の国土のグランドデザイン2050構想に基づく高次地方都市連合、ふるさと集落生活圏、農水省の地域の活力創造プラン等々が打ち上げられている。また、ふるさと納税の拡充、地方の企業誘致推進のための地方の法人税の軽減、特産品の販売支援による活性化、PFIの導入促進(10年間で3倍)なども取りざたされている。都市から地方に目を向けること自体は否定しないが、選挙目当てではないのか、4兆円の特別枠のぶんどり合戦になりはしないのか、地方そのものをビジネスチャンスと化していくことや、市町村消滅が「ショックドクトリン」として使われはしないのかなど、論点は多い。東京への人口流出を食い止める「ダム」として、拠点となる都市に施策と投資を集中するというのも、選択と集中の名の下に、周辺の農山漁村地域や過疎の集落などの切り捨てにならないのかが懸念される。
   
人口減少や地方の疲弊は、外需や大企業の利益確保を優先する経済発展追求の帰結でもあり、地方が元気になるには、アベノミクスや構造改革とは逆の発想が求められる。地方創生というまえに、平成の大合併と三位一体の改革、小泉構造改革路線で、どれだけ地方が疲弊したのかについて、反省し検証すべきである。安倍政権の進めるTPPや農協改革、オリンピックを理由とした東京重点投資、国土強靱化を理由にした公共事業バラマキも本来の地方の再生とは矛盾している。「国の政策パッケージに自治体が手を挙げるやり方では住民との対話が十分できない」(片山元総務相)のであり、地域の特色を土台にして住民の手で取り組んでいくことなくしてできない。分権の推進、多様な道筋の保障とともに、開発、拡大、上昇志向や市場競争万能主義、外部依存、経済成長重視ではない、地域の人が地元の宝を見つめ直し、地域資源をベースとする内発的地域再生の方向を模索すべきであろう。
   
   

■「女性が輝く」ではなく「企業が輝く」?

女性が輝く社会作りの関係では、「女性の活躍推進法案(女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案)」が政府から提出され、また前国会から継続となっている、女性の健康包括的支援法案が審議される。
   
女性が輝く政策といっても、安倍政権は、選択的夫婦別姓に消極的であり、男女共同参画の視点も薄い。男社会の中で頑張って「成功」している、「強い女性」の意見ばかりがくみ取られている感が否めない。少子化や労働力不足を、低賃金の劣悪な労働条件で働く女性の自己負担の拡大で乗り切ろうとするとともに、企業のためのビジネスチャンス作りや金儲けの対象としての女性の活躍を目指しているかのようである。子育て支援にしても、公的保育の充実や保育士の賃金や労働条件の改善はなおざりにされ、企業主導の保育室の増設や低賃金の保育支援員の活用にすり替えられようとしている。女性の低賃金・不安定雇用を固定化する労働法制の規制緩和も問題である。仕事と生活の両立を諦めざるをえない労働者への支援・社会環境の整備を行い、安心して働き、結婚し子どもを産み育てられる環境整備に力を尽くすべきである。公共サービスを切り捨て、民間のサービスを金で買わせ、そのために外に出て働けという安倍政権の政策では、輝くのは企業ばかりである。女性の疑似主体化によって、企業が活躍する国と戦争ができる国へ向けた総力戦に巻き込まれていくことが危惧される。
   
また、1人ひとりの女性が健康を享受し、個人の意思で社会参画ができる基盤を作るためには、女性の健康を包括的にとらえて支援する法律が必要である。しかし、今回の法案は、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)に関しては触れられず、「産む・産まない選択」の理念も反映されているとはいえない。肝心の女性自らの選択、自己決定権や男女共同参画の理念が脇にやられているものとなっている問題が残っている。
   
   

■ 重要課題山積の臨時国会

地方創生と女性の活躍をクローズアップさせ、与野党の対決を避けようとしているが、重要課題は山積している。集団的自衛権問題について、与党協議会に提示された事例の取り扱いや与党合意の解釈、閣議決定そのものの内容についての議論は深まっていない。「普通の国」になる場合のコストの議論もなされていない。国会論戦や国民的議論を避けながら、年内の日米ガイドライン改定協議先行の既成事実化を許してはならない。院内外連携して反対の国民世論を喚起し、閣議決定の撤回を求めていく必要がある。
   
労働法制の改悪問題では、前国会、法案に条文ミスがあったことで廃案となった労働者派遣法改正案が再提出される。派遣労働者の保護の強化ではなく、使用者や派遣業者の立場に立った法律への転換であり、派遣労働者が正社員になる道を狭くするとともに、派遣先でも正社員の仕事が派遣に置き換えられていく可能性がある。また、参議院で継続となった有期雇用法改正案は、5年で無期転換権という前回の法改正を無にするものである。さらに、解雇しやすい限定正社員制度や残業代不払い制度の導入など安上がり労働力づくりに向けた議論が進んでいる。
   
そして、安倍政権は、年内にも2015年10月からの消費税率10%への引き上げを判断するとしている。アベノミクスによって、株価維持と景気回復を演出しているが、4〜6月期の国内総生産(GDP)の改定値は、年率換算7.1%減となり、実質賃金は13カ月連続でマイナスを更新し、GDPの6割を占める個人消費は想定を超えて落ち込んでいる。異常な円安による物価上昇も生活を苦しめている。しかも社会保障の充実の約束は守られていないし、経団連の政治献金斡旋再開と引き替えの法人税率減税で消費税増税分が帳消しになりかねない。約7割の国民が10%引き上げに反対であり、消費税率の再引き上げを強く求めていく。
   
また、拉致被害者らの再調査をめぐる日朝政府間交渉、年内にも妥結かと言われているTPP参加交渉、12月施行になる特定秘密保護法、九州電力川内原発の再稼働問題、現地で辺野古新基地建設を許すまじとの反対運動が高揚している沖縄基地問題等々。こうした重要課題が国会論戦なく決定され強権的に推進されていくおそれがある。
   
8月7日の人事院勧告を受け、公務員給与法改正案の提出が予定されるが、7年ぶりの引上げ勧告の実施を求めるとともに、「給与制度の総合的な見直し」の先送り等関係組合と連携した取り組みの強化が求められる。
   
そのほか、臨時国会には、都市農業基本法案、カジノ解禁のための統合型リゾート(IR)推進法案、空家対策特措法案、広島豪雨災害を受けた土砂災害防止法改正案などの提出が予定されている。
   
   

■ 安倍内閣との対決・闘いの強化に向けて

「一強多弱」と言われる国会の勢力関係において、野党の状況はばらばらである。日本維新の会が分裂し、結いの党と合併した維新の党と次世代の党となるが、維新の党も党名や基本政策、主導権を巡って落ち着かない。結いの党と分裂したみんなの党も、渡辺前代表と浅尾代表の確執が激しく再分裂含みである。民主党は、役員の一新を図り、挙党態勢を確立したかに見えるが、リベラル派と保守派、自主再建派と政界再編派が入り交じっている。こうした状況の下、社民党は、国民の声に依拠し、野党共闘を最大限追求している。政策協議での合意が前提だが、選挙協力や統一会派にも前向きの姿勢を示している。同時に、暮らし・雇用の改善、社会保障拡充、消費税増税反対、脱原発・再稼働反対、集団的自衛権行使反対などの国民多数の声と、安倍政権の政治・政策は大きくねじれているということを押さえ、安倍自民党の暴走に対抗する戦線を構築していかなければならない。党改革を断行し党の再建・再生を進めるとともに、新たな政治勢力の結集についても、目的意識的に追求していく構えである。
   
かつて革新自治体が佐藤内閣を追い込んだように、自治体選挙や知事選で国全体の流れを変えることができる。7月の滋賀県知事選挙に続く10月の福島県知事選挙、11月の沖縄県知事選挙、そして半年後に迫った2015年の第18回統一自治体選挙は、次期国政選挙にも大きな影響を及ぼす、きわめて重要な選挙である。原発、基地、そして地方の再生が大きな焦点となるが、民主主義そのものの問い直しであることに加え、「いのちかカネか」という安倍政権に対抗する大きな対立軸を示している選挙でもある。 どんなに堅固な堤でも、アリの開けた小さな穴をきっかけに崩すことができる。社民党は、安倍政権の暴走を食い止め、国民生活の向上と平和で安心して暮らせる社会の実現に向けて、反転攻勢を踏み出す国会とする決意である。
   
   

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