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●2013年1月号
■ 第46回衆院選挙結果を考える
――自民党圧勝、民主党は解党的大敗北――
   善明建一
 

■ 自民党、公明党で3分の2を上回る議席を獲得

第46回衆院選挙は、12月16日に投開票され、自民党の圧勝に終わった。今回の衆院選挙は、09年8月30日の衆院選挙で民主党が政権を獲得してから、この3年3カ月余りの政権運営が国民からどのように評価されるかを最大の焦点にして戦われた。
 
民主党政権の継続か、それとも自民党・公明党が政権に返り咲きするのか、また民主党、自民党から分裂、離合集散して結成された「第三極」が躍進して政局のキャスチングボードを握るのかが注目された。
 
今回の衆議院の小選挙区、比例選挙の各党立候補者数と当選者数は、図表1の通りである。立候補者数は12政党から1504人に上った。民主党は分裂の影響で小選挙区の候補者擁立は264人、自民党、公明党は選挙協力でいずれかの候補が立ったのは299人である。
 

(図表1・クリックで拡大します)
 
獲得議席の結果は、自民党が小選挙区で237議席、比例選挙で57議席を獲得した。これで自民党は単独過半数の241議席を超えて、絶対安定議席数269議席を確保し、獲得議席数は294議席となった。与党である公明党議席と合わせれば衆院議員議席の3分の2議席を上回り、仮に参院で否決された法案でも衆院で再議決できる議席数を確保した。
 
民主党は小選挙区で27議席、比例選挙で30議席で合計57議席となり、民主党の結党時の93議席も下回る解党的な敗北となった。また、藤村官房長官ら現職閣僚8人が落選し、仙石党副代表など党の要職者らが落選するなど散々な状況となった。この結果は、文字通りこの3年3カ月余りの民主党政権に対する国民の厳しい批判である。とりわけマニフェスト違反の消費増税率引き上げ、TPP(環太平洋経済連携協定)参加問題に対する痛烈な「嘘つき」批判だと考えられる。
 
さらに民主党分裂で78人に及ぶ国会議員が民主党から離党し、そのうち議員辞職した1人を加えた75人が今回民主党以外から立候補した。その内訳をみると、未来に59人が参加し当選6人、維新に7人が参加し当選5人、大地に2人が参加し当選1人、国民新党に1人が参加し当選ゼロ、みんなに3人が参加し当選1人、自民党に1人が参加し当選ゼロである。民主党離党者の当選は、74人中13人でしかない。
 
民主党公認候補者と民主党離党者が争った小選挙区は53になった。その結果はそれぞれ1勝1敗で、これで「漁夫の利」を得たのは自民、維新、みんなの党であった。
 
これまで過去2回の小選挙区の当選者は、「郵政選挙」(05年)では「民主党52議席、自民党219議席」で、比例選挙を合わせて自民党は296議席を獲得した。「政権交代」が争点となった09年は「民主党221議席、自民党64議席」で民主党は比例選挙を併せて308議席を獲得している。
 
今回の選挙は、「第三極」の未来、維新、みんなの党が既成政党に挑み、自民党・公明党、民主党による三つどもえの戦いは、208選挙区で展開され、「第三極」同士が競合した選挙区は86に上った。
 
比例選挙の得票数(率)は、自民党が1662万4457票(27.62%)、維新が1226万2228票(20.38%)、民主党が962万8653票(16%)、維新は比例選挙票で、民主党を上回っている。みんなが524万5586票(8.72%)、共産党は368万9159票(6.13%)、未来は342万3915票(5.69%)、社民党は142万790票(2.36%)である。
 
注目された「第三極」の維新の会は、小選挙区で14議席、比例選挙で40議席、合計で54議席を獲得した。これで維新は野党では民主党に次ぐ第二党に躍進することになった。みんなは、小選挙区で4議席、比例選挙で14議席で合計18議席を獲得した。未来の党は、大きく議席を減少させ、小選挙区で2議席、比例選挙で7議席で合計9議席を獲得するに止まった。
 
このようにマスコミが選挙前に煽った「第三極」は総体として「躍進」はできず、12政党間の争いが激化し、票の奪い合いをしたという側面もある。もちろん、「第三極」間(みんなと維新の会)の消極的な選挙協力(候補者が重ならない選挙区では、相互に推薦する)もあったが、政策の違いも大きく、そんなには力になったとは思われない。
 
一方、共産党は、小選挙区でゼロ議席、比例選挙で8議席、合計8議席、社民党は、小選挙区で1議席、比例選挙で1議席、合計2議席に終わった。
 
両党は安倍自民党総裁が憲法改正、集団的自衛権行使、自衛隊の国防軍化を打ち出すなど、急速な右傾化傾向を批判し、改憲阻止、脱原発、消費税反対、格差是正など、働く者の立場にたった政策をぶれずに訴えたが、国民の支持をひろげることはできなかった。
 
特に社民党は、この間、辻元清美衆院議員、さらに公示直前に阿部知子衆院議員の離党などの影響もあり、党勢の後退が続き、候補者擁立は前回よりも減らすなど、力量不足は否めない。これが反映した結果と受けとめるべきで、現場、地方から党内の総団結、献身的な再建運動が強く求められているといえる。
 
選挙の国民の投票行動を端的に表現すれば、前回の選挙は自民党政治がひどすぎたということであったが、今回は民主党政治がひどすぎたということであり、そういう意味では民主党は国民からのしっぺ返しを受けたとみるべきである。
 
衆院選と同時に戦われた都知事選挙では、石原都政を継承すると公約した猪瀬直樹副知事が他候補を大きく引きはなして勝利した。
 
 

■ 小選挙区制がもつ「死に票」の弊害

それにしても自民党が単独過半数を超えたばかりか、絶対安定議席数を確保し、与党の公明党が獲得した議席を含めれば、衆議院の3分の2以上の議席を確保した。
 
この結果から、自民党が衆議院選挙で公約した政策が国民の支持をえたとは考えられない。例えば選挙中に各新聞社、報道機関が実施した国民の世論調査をみれば、6割の人が遅くとも2030年代までの原発ゼロを求めている。
 
にもかかわらずエネルギー政策の決定を先送りし、原発の存続をもくろむ自民党が圧勝し、脱原発を求める民意と大きく隔たった結果となっているのである。
 
憲法九条改正でも改正反対と賛成が拮抗し、消費増税でも5割以上の人が消費税率アップに反対しているのである。
 
結果は消費税率アップを決めた民主党、自民党、公明党三党が獲得した議席は370議席を優に超えている。このなせる業は、脱原発、消費税率引き上げに反対を掲げる小政党が乱立して、票が分散したことが大きい。また、現在の小選挙区制度は、二大政党のどちらかを選択するしかなく、小政党に投票しても「死に票」になる。
 
今回の選挙は政党の乱立の結果、さらに「死に票」が非常に増えたことである。ちなみに自民党は小選挙区の得票率は43%であったが、議席数は実に79%を獲得している(毎日新聞)。
 
こうして有権者はどの政党にも投票したくなければ、投票行動を止めて棄権するという方法をとることになる。
 
今回、投票率が59.32%(総務省発表)で、戦後最低を記録し、前回選挙よりも10%ポイント下がっている。これで約1300万人が棄権している計算になる。自民党、民主党も支持しない、という無党派層が投票行動をしなかったとみるべきであろう。
 
また、衆院選挙は12の政党が乱立する前代未聞の「多党化選挙」となったことは先に述べたが、1つの議席を有力候補5〜6人で争うという選挙は小選挙区制下では初めての事態である。有権者にとっては、消費税や原発、TPPの是非、社会保障、憲法問題など、いずれも生活に直結し差し迫った争点があるのに、政党乱立で同じような主張の政党が複数あり、選択が難しくなった。また、そもそもどの政党がどんな政策を掲げているかを判断する以前に、政党名を全部覚え、政策の違いを吟味することができないまま、投票日を迎えたというのが現状であったと思われる。
 
図表2に主要政党別の政策の特徴を示しているが、これをみても国民の多くは今回の選挙ほど選択すべき政策は多様で、また、政党の「多党化」で例えば同じ政党でも1つの政策は支持できても他の政策は支持できないものを含んでいた場合、どこか1つの政党を選択することは極めて難しくなる。
 

(図表2・クリックで拡大します)
 
結局、政策で支持する政党を選択するということよりも、多党化する政党の中でよりましな政党を基準にして消去法で投票するしかなくなる。例えば政治の安定を求めることを優先するとすれば、二大政党のどちらかを選択する他にはなくなるのである。
 
これは国民の側の責任というよりも政党側、すなわち現代政治の責任ともいうべきことである。これからの日本社会のあり方を国民的な議論で決めていく上で、不可欠なことは小選挙区制度という選挙制度そのものを比例選挙を中心とした民主的な選挙制度に改革していくことが必要である。
 
 

■ 今後の政局はどう進むか

選挙結果を受けて、安倍自民党政権が誕生し、自民党、公明党連立政権が3年3カ月ぶりに復活することになる。
 
これに「第三極」の政党が政権の枠組みに参加することになるのかどうか、とりわけ自民党が野党第一党の民主党、そして第二党となった維新の会とどのようなスタンスをとるかが注目される。選挙結果が出た直後、安倍自民党総裁は、民主党とは連立を組む考えはないことを表明している。また、選挙中でも参議院では「ねじれ国会」が続き、政局運営ではどの政党とも政策一致にたった部分連合(パーシャル連合)を行いたいと述べている。
 
それにしても自民党安倍総裁、そして自民党が掲げる憲法改正、道徳教育、経済競争力の重視、デフレ経済脱却に向けた金融財政政策、インフレ目標の設定、日銀法改正、地方分権・道州制などでは維新の会とその政策は重なり合っており、ほとんど違いはない。ただ維新の会が重視する国会議員の定数削減や消費税の地方税化などの政策では、大きく隔たっているが、両党とも政策ごとの一致(パーシャル連合)でやっていけるとしている。脱原発政策でも石原代表は、維新の政策は変更させるとして、選挙を乗り切ったように、維新の会は脱原発ではない。
 
公明党の山口那津男代表は、選挙中にも自民党の「右傾化」を懸念する発言を繰り返してきた。安倍自民党は集団的自衛権行使の容認を主張し、憲法改正で自衛隊を国防軍に位置づけることを公約に掲げた。これに対して「集団的自衛権を行使できる国防軍の創設は今の政治課題ではない」と批判している。さらに自民党と維新の会が憲法改正で接近することを警戒し、石原維新の会代表が発言した「核兵器開発のシミュレーションはあってもよい。憲法九条が拉致解決を妨げた」との発言を厳しく批判している。
 
このように安倍自民党の「右傾化」をチェックできるのは政権与党の公明党であり、その役割は大きくなる。マスコミ報道では、今回の衆院選挙は自民党にとっては、準決勝戦であり、決勝戦はこの夏の参院選挙だと強調している。参議院は民主党が88議席、自民党が83議席、公明党が19議席で、自公で102議席で過半数には16議席足りない。維新の会は参院で3議席、みんなの党は11議席をもっている。自民党、公明党は次の改選は44議席で、両党だけで過半数を超えるには、63議席以上が必要になる。
 
最高裁判所に「違憲状態」と指摘された一票の格差が解消されないまま行われた衆院選挙は、憲法問題、安全保障と尖閣諸島など領土問題、東日本大震災の復興と復興後の国のかたちや暮らしをどうするか、さらに雇用や日本経済再生、金融財政政策、消費税の是非と社会保障のあり方、原発政策の行方などが、争点となって戦われた。だがそのどれ一つをとっても、国民的論議が行われ国民的合意が図られたとはいえない。来年度予算編成、景気悪化に対応した補正予算、社会保障制度改革国民会議での社会保障と税制のあり方の議論も8月のまとめをめざして開始される。とりわけ、日本社会の貧困化を作りだしてきた雇用形態の多様化は、最大の社会問題であり、労働法制の抜本的改革を柱としたディーセント・ワークを実現する闘いは、政治闘争を抜きには進まない。みんなの党、維新の会などは、日雇い派遣禁止撤廃、解雇規制の見直し、最低賃金の引き下げ、さらには法人税の引き下げを求めるなど、自民党と変わらない企業の競争力強化を政策の柱にしている。これらの「第三極」、そして自民党との対決が強く求められる。
 
また、安倍自民党は今回の大勝利で憲法改正の衝動に駆られていると思われるが、当選議員の89%が憲法改正に賛成しているとの報道もある。当面は、まず九六条改正から手をつけるために、参院選挙で過半数の獲得をめざし、その条件を確保するとしているが、そのことは絶対に阻止しなければならない。すでに夏の参院選に向けて熾烈な戦いが開始されているのである。選挙結果に一喜一憂することなく、ただちに反安倍自民党を明確にし、幅広い改憲阻止の国民連合を組織していく運動を強めなければならない。社民党は社会民主主義の党として、そして、民主党、未来の党などが、「生活が第一」という本来の政策、姿に立ち返り再建されること、そのために労働組合が企業の競争力を強化する新自由主義政策に明確に反対し、労働者の力を発揮して闘うことを情勢は強く求めている。
 
2013春季生活闘争を精一杯組織し、参院選挙の勝利に向けて、引き続き闘いを強化しなければならない(12月17日記)。
 

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