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●2012年7月号
■ 野田政権下の政治情勢と私たちの課題
   社民党副党首・参議院議員 又市征治
 

■1. 民自公談合で進められる新自由主義政治

(1) 3年前、多くの国民は、社会のあらゆる分野に格差を拡大した自公政権による市場経済万能論の新自由主義政治に不満や怒りを募らせ、8月の総選挙で与野党逆転を実現した。つまり政治転換を希求し政権交代を実現したのである。
 
だから、誕生した民主・社民・国民新三党の連立政権は、その『政策合意書』の前文で政治転換を宣言した。すなわち

  • 「家計に対する支援を最重点と位置づけ、国民の可処分所得を増やし、消費の拡大につなげる。また…年金・医療・介護など社会保障制度や雇用制度を信頼できる持続可能な制度へと組み替えていく」
  • 「日本経済を内需主導の経済へと転換を図り、安定した経済成長を実現し、国民生活の立て直しを図っていく」

などを謳い、2010年度予算編成では、社会保障予算の拡充と公共事業の大幅削減、雇用対策の強化、子ども手当、高校授業料無償化、販売農家の戸別所得補償制度など国民の期待に応える施策を打ち出したのである。
 
(2) しかし、公約に反する普天間基地の辺野古移設の閣議決定に反対して社民党が政権を離脱して以降、民主党政権は首相交代の度にこの姿勢を後退させてきた。
 
特に野田内閣は、衆参のねじれを口実に自民・公明との協調に走り、震災復興増税と法人税5%減税、改憲に向けた憲法審査会の始動、市場万能主義のTPP参加、日米同盟の強化と武器輸出三原則の緩和、違憲・違法の公務員給与大幅削減、社会保障を口実とした消費税増税、脱原発と真逆の原発の再稼働など、自公政権さえできなかった新自由主義政策を押し進めている。
 
(3) 今通常国会開会に当たり、野田首相は社会保障と税の一体改革関連法案(以下「一体改革法案」と略す)の「今国会中の成立に政治生命を懸ける」と表明した。そもそも政治は国民の生命・財産、安全・安心を守ることが使命なのだから、いま政府が全力挙げて為すべきは東日本大震災の復旧・復興の加速化、福島第一原発事故の収束と除染、原発停止と脱原発・自然エネルギーへの転換、デフレ脱却・景気回復、雇用の創出・安定などであって、決して消費税増税ではない。ここに勤労国民と遊離した野田内閣の政治姿勢が端的に表れている。
 
(4) だから今日、国民の中に「自民党もダメだが民主党もダメだ」の失望感が拡がり、野田内閣の支持率は25%前後に低落し、不支持率も55%を超えている。そのため連合の古賀会長も「(政権交代に)期待した熱い思いは残念ながら冷め、失望や落胆に変わった」とメーデーで批判せざるを得なかったのである。
 
そして、こうした民主、自民両党への国民の不信は既成政党全体への不信に広がって政党支持なし層を増大させ、それが既成の制度などを新自由主義の立場からなで斬りにする大衆迎合的で強権的な橋下「大阪維新の会」などに期待する危険な傾向の基盤となっている。
 

■2. 民主党分裂含みで解散・総選挙へ

(1) 野田首相は、6月4日、問責決議を受けた二大臣を含む五閣僚を入れ替える内閣再改造を行い、その記者会見で「一体改革関連法案を修正協議の上で会期末までに衆院で採決したい」と明言した。
 
これは、自民党が法案に賛成する場合の4条件、

  1. 問責二大臣の更迭、
  2. 一体改革法案の修正(民主党マニフェストの撤回など)、
  3. 会期内の衆院採決(民主党内の消費税増税反対派との決別)、
  4. 法案成立後の解散・総選挙

――の受け入れ表明であった。つまり小沢元代表との2回の儀礼的会談を経て消費税増税反対を唱える党内勢力と決別し、自公と共に一体改革法案を成立させて解散へ――の筋書きである。そこには反対分子を排除して総選挙後に民自公の大連立を組む意図が透けて見える。
 
(2) これを受けて民自公の三党は「密室談合」を開始し、6月15日、社会保障制度改革はほとんど先送りし、消費税率を現行の5%から14年4月に8%、15年10月に10%に引き上げることで合意した。他の六野党や国民世論の多数が反対していても「三党で渡れば怖くない」式で、立法府を破壊するに等しい横暴な姿勢である。増税肯定論を展開してきたマスコミは一斉に「消費増税法案は今国会中に成立する見通しとなった」と報じ、後押ししている。
 
(3) そのため民主党内の混乱と対立は極限に達し、分裂含みの情況である。
 
そもそも民主党内では、『国民の生活が第一』の理念から遊離した政権運営(新自由主義回帰と自公へのすり寄り)への不満や批判が高まり、街頭に立てば「『ウソつき民主党』とヤジられて選挙が戦えない」と議員らが悲鳴を上げ、これまでも離党者や役職辞任者を出してきた。だからこのような情況の下でいま解散・総選挙となれば惨敗は免れず、自公に政権を明け渡すことになるとの危機感が広がる中で、こともあろうに自公と手を組んで党内の「政権公約を守れ」という勢力を切り捨てて消費増税法案を採決し解散・総選挙に突き進むのは「集団自殺」だと、修復し難い不信と亀裂が広がっている。それが三桁を超える「消費税増税反対」「原発再稼働反対」「TPP参加反対」などの議員署名となって現れている。
 
つまり、公約を次々投げ捨てて自公と大連立を目指すグループと『国民の生活が第一』を守ろうとするグループが「21日までの衆院の採決」の可否をめぐって激しいつば競り合いを演じている。
 
(4) 6月18〜20日に掛けて、民主党内で全議員を対象に三党修正合意・衆院採決を認めるか否かの大激論が戦わされた。「法案そのものがマニフェスト違反で修正合意は認められない」「党を分裂させる行為だ」「白紙に戻し採決を先送りすべきだ」などの意見が続出したようだが、執行部は「政府・党三役一任」で押し切り、野田首相が自公に不手際を謝罪した上で21日に三党間で修正案を正式に合意した。そして、参院での審議を考慮して国会会期を9月8日まで79日間延長したうえで6月26日までに衆院で採決する見通しである。
 
今後の民主党内政局が注目されている。前述したように、野田首相は既に1月に「一体改革法案の今国会中の成立に政治生命を懸ける」と表明していた。これは、事実上の民自公の大連立で消費税増税を断行する決意表明であり、そのためには党内の反対勢力を排除してもやるとの決意でもあった。もし党内融和を重視して修正を拒否したり採決を先延べすれば、参院で自公から首相問責決議を突き付けられ退陣に追い込まれることは明らかだから、既定方針通り分裂もやむなしの道を取ったと言えよう。首相は「法案が成立すればしかるべき時期に国民の信を問う」と述べており、当然、自公は公債特例法案の協力を絡めて早期解散を求めてくるから、延長国会半ばの解散の公算が大である。最短の場合、7月下旬解散・9月上旬総選挙があり得る。
 
この過程で小沢元代表らが離党し分裂する可能性が強い(もし党に留まれば、かつての自民党の「加藤の乱」のように急速に影響力を失うであろう)。分裂回避のために採決での造反者を「厳重注意」で済ませようとか、衆院の選挙制度改革法案を通して選挙を先送りしようといった動きも出てこようが、分裂は避けられそうにない。
 
(5) 社民党は、野田政権は消費税増税や原発再稼動をめぐる国民世論に真摯に耳を傾けよと追及してきた。そして、野田政権が公約と正反対の消費税増税をやろうというのであれば、衆院での採決前に国民に信を問うのが筋だと主張してきた。それが、今日の深刻な政治不信を解消する1つの方策でもあろう。
 

■3. 今日的な政治の争点

今日、政治に求められるのは、東日本大震災の復旧・復興、福島第一原発事故の収束と除染、原発停止と脱原発・自然エネルギーへの転換、デフレ脱却・景気回復、雇用の創出・安定、そして社会保障制度改革などである。これらは、当然、当面する総選挙の争点でもある。以下、これらについての考えを述べておきたい。
 
・[1] 「社会保障と税の一体改革」 批判
(1) 社会保障制度は社会の持続的発展の礎であり、その改革は、憲法二五条の理念を踏まえた「老後に安心できる年金、ほとんどお金がかからない医療・介護や子育て制度」の全体像がまず示され、一定の国民合意が必要である。その上で、それを支える財源がどの程度必要で、これを消費税に限定せずあらゆる税目から国民や企業にどのように負担を求めるかが論じられねばならない。
 
だが、野田内閣の一体改革法案も三党修正合意案も、社会保障制度改革の中身を何ら具体的に示さず先送りしたまま、消費税増税のみを求めている。つまり社会保障を口実にした消費税増税法案であるから、こんな代物は断じて認めることはできない。
 
(2) 消費税増税に私たちが反対する第1の理由は、さらに景気悪化をもたらすからである。
 
給料や物価が下がり続けているデフレ状況の下で、震災復興のために所得税と住民税を増税した上に、さらに消費税率倍増では国民の可処分所得は減り、内需も景気も後退する。民間研究機関の試算では、復興増税などの負担増に消費税増税5%分を加えると、年収500万円の4人世帯では約30万円の負担増になるという。年金生活者はさらに生活困窮を余儀なくされる他ない。
 
(3) 第2の理由は、庶民増税の一方で大企業や金持ち優遇税制が放置されているからだ。
 
私は、参院予算委員会(3月21日)で、「国税収入は、1990年度の62.8兆円が2010年度には43.7兆円に約20兆円も減少している。これは25年前と同レベルだ。25年前よりGDPは約5割も拡大しており景気悪化は理由に当たらない。これは、人為的政策的に税収が減らされてきたからだ。
 
1986年当時の所得税の最高税率70%が現在は40%に、また1989年の法人税の最高税率43.3%が現在は30%に引き下げられてきた。だから国税収入の構成推移を見ると、1990年度には直接税が全体の73.7%を占め、間接税全体では26.3%だったが、2010年度には直接税が56.3%へ減少し、間接税は全体で43.7%へと増大している」と政府を追及した。
 
こうした企業減税の結果、資本金10億円以上の企業の2010年の内部留保は260兆円超(国の一般歳出の約4倍)にも上っているのに、民自公三党は法人税をさらに5%引き下げたのである。
 
因みに、消費税は「福祉目的」の名目で1989年に導入され、以来23年間の消費税収総額は238兆円に上るが、同じ期間の企業減税は223兆円にも上っている。つまり消費税は企業減税財源に回されてきた格好だが、今回の増税分の一部もまた法人税5%減税の穴埋めに回る。到底容認できるものではない。
 
だから私は、「各国の法人税のダンピング競争が各国の税収減と財政危機の一因なのだから、政府は各国政府に法人税の協調増税を呼び掛けるべきだ」と政府に迫った。これらの是正なしの消費税増税は断じて認められない。
 
(4) 第3の理由は、歳出削減・無駄排除などが全く不十分だからである。
社民党は一貫して、

  1. 不要不急の事業の削減・先送り、原発予算や防衛費・米軍への「思いやり予算」の削減、
  2. 特別会計の剰余金等の活用、
  3. 国から補助金などを受ける法人等への支出見直しと天下り役員の削減、
  4. 所得税・相続税・資産課税等の累進性強化

……などで年間10兆円程度の財源を確保すべきだと追及してきた。私たちの追及に菅元首相は、「消費増税は逆立ちしても鼻血も出ないほど完全に無駄をなくした時」と答えたが、この改革も極めて不十分である。
 
(5) 社民党は、消費税増税の前に、

  1. あるべき社会保障制度の提示と国民合意、
  2. 不公平税制の是正や歳出削減の断行、
  3. デフレ脱却・景気回復策の実行

――が不可欠であり、その上でなお消費税増税が必要というのであれば、例えば年収500万円以下の所得層の負担軽減策や生活必需品の税率据え置き(複数税率)を示すべきだと考える。これらを放置して取り易いところから取り立てる増税策には断固反対である。
 
・[2] 震災復興と脱原発・自然エネルギーへの転換
(1) 政府のもたつきから大震災の復旧・復興が大幅に遅れている。「都市の復興」重視でなく「人間の復興」を基本にもっと加速すべきである。当然、地域コミュニティごとの高台移転、雇用、生活支援などを住民合意で加速すべきだ。
 
(2) 野田政権は昨年12月16日、福島第一原発が冷温停止状態を達成したとして「事故収束」を宣言した。わが党は、「冷温停止とは原子炉が健全な状態の場合を指すのであって、事故の収束を宣言できる状況ではない」と批判した。福島県の佐藤知事も「事故は収束していない」と反論した。それは、1〜3号機の溶融核燃料がメルトダウンし、圧力容器と格納容器の底を突き抜け、地下の岩盤に向かっており、これが地下水の汚染を広げていると見られるからである。大量の冷却水でうわべが100度以下になったから「事故収束」というのは早計に過ぎる。
 
そして政府は、同21日、福島原発1〜4号機の廃炉の工程表を発表した(内容は、

  1. 2年以内に使用済み燃料プールの燃料取り出しに着手し、
  2. 20〜25年後までに溶け落ちた燃料を取り出し、
  3. 30〜40年後までに廃炉を終える

というもの)が、今年6月9日、避難地域に設定されている地域の中で、5年後には32%、10年後も18%の住民が帰還困難という予測を示した。また、放射能汚染は東日本全域に及んでおり、例えば、東京湾の海底土に含まれる放射性セシウムが昨年8月から約7カ月間で1.5〜13倍に増えたことが近畿大の調査で分かった。さらに東京電力は5月30日に福島原発から20キロ圏内の海域で採取した魚介類から高濃度の放射性セシウムを検出したと発表している。半年前の「事故収束」宣言は国民感情と全くかい離している。
 
だから、政府・東電は全力を挙げて放射能漏れ防止や除染、長期にわたる健康診断・管理を行い、また長期に帰郷できない人々の土地・家屋の買い上げ、移住と雇用対策などを急ぐべきなのである。
 
(3) 野田内閣は、「脱原発依存社会」を投げ捨て、6月16日に関西電力大飯原発3〜4号機の再稼働を決定した。わが党は、以下の点から再稼動は断じて容認できない。

  1. 福島原発事故の原因究明(電源喪失以外に設備・機器の断裂はなかったかなど)が政府及び国会でもできていない、
  2. 原子力安全委員会さえ「総合的な安全審査の観点からは、ストレステストの一次評価だけでは不十分」としている、
  3. 新たな原子力規制機関(規制委員会及び規制庁)が発足しておらず、新たな安全基準もできていない、
  4. 安全対策85項目中免震棟建設やフィルター付きベント設備など31項目が不備である、
  5. 大飯原発の活断層再調査もされていない、
  6. そして何よりも国民の過半数が再稼働に反対している

――など。つまり安全性は全く担保されない無責任さである。
 
(4) 他方、全国54基の原発に溜まった使用済み核燃料は約1万6530トン(小出・京都大助教によれば広島原爆換算で約110万発分)にも上る。現在、これが無害化する数万年後まで保管できる貯蔵施設はないし、仮に建設しても地震列島・日本で安全の保証はない。しかもその貯蔵や廃炉にかかる莫大な費用はすべて国民の電気料金や税負担となる。歴代政権と電力会社は子々孫々の代まで放射能汚染の危険に晒しながら、無責任にも「原発安全神話」を振り撒いてきたのである。
 
今日、福島原発事故を経験し、国民の7〜8割が「原発の段階的廃止」を求めている。わが党は、「核と人類は共存できない」と一貫して脱原発・自然エネルギーへの転換を掲げて闘ってきたが、原発を、そして福島原発事故を止めることができなかったことは私たちの力不足であり、痛恨の極みである。だからこそ原発再稼動に断固反対すると共に、再生可能な自然エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱発電や燃料電池など)に依拠する社会に1日も早く転換しなければならない。
 
そのためわが党は、昨年5月、『脱原発アクションプログラム』を発表した。その要点は、

  1. 当面、新規原発建設中止、震源域立地や40年を超える原発の廃炉、事故原因を究明した上ですべての原発に厳しい安全基準を適用、
  2. 再生可能な自然エネルギーへの転換を急ぎ、2020年までに原発をゼロに、
  3. 2050年までには自然エネルギー100%の日本にもっていく

――である。
 
この提言内容を、約750万筆の脱原発署名をさらに大きな世論に高め、一日も早く国策にするため、脱原発を希求するすべての勢力・グループと共に全力を挙げる。この50年間に作られた原発は私たちが生きているうちに廃絶する、それが現在を生きる者の責任だと考える。
 
・[3] 雇用創出と安定こそ健全な社会存続の基礎
今日、全勤労者の約4割=2000万人が劣悪な労働条件の非正規・臨時雇用であり、その多くは年収200万円以下で1200万人にも上る。職を求める若者の2人に1人が非正規・臨時の職しかなく、未来を担う若者が将来不安に慄く実態にある。
 
憲法の第二五条と第二七条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、勤労の権利を有する。国はそのために努めなければならない」と定めているが、小泉「構造改革」はこの国民の基本的権利を、ひいては社会を壊してきた。まさに政治災害である。だから社民党は民主・国民新と共に製造業や日雇い派遣の禁止など労働者派遣法の抜本改正案を提案したが、野田内閣は自民・公明とこれを骨抜きにする法案を成立させてしまった。
 
安定雇用は社会の持続的発展の基礎である。だからいま政治が為すべきは、

  1. 依然不足する医療や介護、福祉、子育て、教育や環境などの分野での正規雇用の創出と待遇改善、
  2. 非正規労働の規制強化と正規への転換、
  3. 長時間労働の規制・ワークシェアリング、㈣時給1000円以上の最低賃金などの実現

などであろう。労働組合はこうした生活護憲の闘いを積極的に進めてほしい。
 
・[4] 国民生活に多大な影響を与えるTPP参加
 
TPPは、米国主導の環太平洋の経済連携協定で、加盟国の間で取引される全品目について、2015年をめどに関税全廃を目指す仕組みである。これに参加すれば、国内の農畜産業をはじめ、医療・国民皆保険、医薬品認可、食の安全基準(遺伝子組換え、残留農薬)、投資(外国資本の自由化)、公共調達(公共事業)、郵政など24分野の市場開放を迫られ、国民生活は多大な影響を受ける。市場万能主義の新自由主義そのものである。
 
しかし政府は、参加のメリットやデメリット、それに対する国内対策も国民にまったく説明せず(できず)、米国の要求に沿って「バスに乗り遅れるな」と叫んできた。米国運転の「高速ツアーバス」に乗せられるようなもので、危険極まりない。 今日、日本が重視すべきは、40億人超の人口を抱える世界の成長センター・アジア諸国との個別の経済連携を深め、共存共栄を図ることではないか。これを基本としつつ、TPPについては速やかな情報公開と重要品目の関税の削減・撤廃はしないことの明確化を求めるなど、農業団体はじめ関係団体と共にTPP参加反対の闘いを進める。
 

■4. 私たちの課題

(1) では私たちは、こうした情勢や動向にどう対応していくべきか。 第1は、2009年の三党連立政権の『政策合意』は、政権交代の原点であり、生活再建にとって重要な公約だから、引き続き政権にその実現を繰り返し迫っていく。
 
第2は、14年連続で賃金が下がり続ける下での復興増税や消費税倍増は、当然、生活を低下させる。だから労働組合が生活改善を求めて経営側に要求闘争を強めると共に、政府に対して消費税増税反対や違憲・違法な公務員給与削減反対などの政策・制度要求を大衆闘争で迫らなければ、労働組合の使命も果たせない。野田内閣の『政策合意』からの後退は、財界・自民党の巻き返しもあるが、目に見える大衆闘争の不十分さと捉え、強化すべきであろう。
 
第3は、政権は交代したが政治は変わらず、しかも前述した民自公の動向に国民の苛立ちが募り、既成政党への不満・不信が高まっている。民主党の政策にぶれが大きく、「生活が第一」の政治をつぎからつぎに転換し、実現させることができないのは党としての明確な理念を持ち得ていないからである。
 
民主党は総体としては労働者階級を代表する党ではない。その政策は、様々な支持層の要求の集合体であり、階級関係の変化により動揺する。もちろん、社会民主主義政党ではない民主党に、確固とした政策を求めるのは筋違いであるが、野田政権誕生以降、勤労国民の側に立つ政策は忘れられ、大企業の要求にそった政策の実現が図られていることは明らかに均衡を欠く。
 
国民に社会民主主義やリベラル勢力への期待ではなく、真逆の「大阪維新の会」などの伸張に期待する危険な傾向が生まれているのは、既成政党・労働運動の責任だ。
 
第4は、新自由主義への政策的対抗軸を明確にし、働く者すべてを代表してその実現を目指す政治勢力が結集して闘い、同時に国会での一定の議席確保が必要となる。
 
社会民主主義的政策を堅持し、働く者を代表しなければ、社民党は支持を失う。今こそ社民党が、中央・地方でこうした新自由主義に反対する諸勢力の結集軸の役割を果たさなければならない。
 
(2) 選挙結果は日常活動の集約である。だから、候補者擁立と共に、

  1. 公約違反の消費税増税反対、
  2. 原発再稼働阻止、脱原発・自然エネルギーの飛躍的拡大、
  3. 市場原理主義のTPP参加反対、
  4. 雇用の創出・安定と生活再建、
  5. 平和憲法擁護などの宣伝活動と大衆集会などを組織し、その中で、競争最優先の新自由主義政治を押し進める民主・自民は許せない、これと真っ向から闘う社民党と共に闘い、強く大きくしよう

――との意識を1人でも多くの人々に広げねばならない。今日、その条件は拡大している。それぞれの実状に即してその活動を組織的に起こそう。
 
「社民党が小さくなって政治がおかしくなった」と言われて久しいが、そもそも社会党・社民党は、労働組合の経済闘争だけでは勤労国民の生活や諸権利は守れないから勤労諸階層の政治部隊として誕生した。これを強く大きくする以外に根本的な解決策はないことを現実が示している。この認識を大きく広げよう。
 
(2012/06/20)
 

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