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●2010年11月号
■介護保険制度の見直し――福祉と介護のあり方を考える――
  東京地方自治研究会 鹿倉泰祐
   
 

■ 介護保険で暮らしを支えることができない

「介護の社会化」を理念として掲げた介護保険が2000年にスタートし、今年4月に丸10年が経過した。この11月にも2012年からの第5期介護事業計画に向け、制度の大幅な見直しがまとめられ、来年の通常国会には改正法案が提出される予定だ。
 
社会福祉の基礎構造改革という名のもとに、我が国の社会福祉の大きな政策転換として生まれた介護保険制度は、旧来の措置制度(行政処分)ではなく、社会保険制度として利用者と事業者の対等・直接の契約、利用者がサービスを選択できる制度として誕生した。
 
10年を経過した介護保険は、利用者の増大に伴いサービスの供給量も増え、介護従事者も増加してきた。しかし、その評価は立場により様々だ。例えば、厚労省が行った「介護保険制度に関する国民の皆様からのご意見募集」(2010年)では、

  • 「大いに評価」14%、
  • 「多少は評価」47%、
  • 「あまり評価していない」19%、
  • 「全く評価していない」4%

という状況で、「家族の負担が軽くなった」という問いには

  • 「そう思う」が51%、
  • 「そうは思えない」が13%、
  • 「どちらともいえない」が31%

だ。注目すべきは、「在宅生活を維持できるようになった」という問いには、

  • 「そう思う」31%、
  • 「そうは思えない」21%、
  • 「どちらともいえない」43%

で、「仕事をつづけることができるようになった」という問いに対してもほぼ同様の回答だったことだ。
 
東京都社会福祉協議会の調査では、「介護保険サービスは暮らしを支える上で十分なものか」という問いに対して、全ての介護度で「いいえ(不安である)」という回答が「はい」を上回った。全体では、

  • 「はい」が40.1%、
  • 「いいえ」が54.6%

となったが、要介護度が重くなるにつれて「いいえ」の割合が増え、要介護5では「いいえ」が63.6%となっている(「介護保険利用者の声アンケート調査報告書2010年」)。
 
「介護の社会化」を理念として掲げた介護保険制度の現実と今後について、私たちが積極的に議論し分析し、その方向を定めることが問われている。
 

■ 増大する介護給付費

介護保険制度の現在の状況を概括的に見るが、介護保険の成果も課題も介護給付費の増加という姿で現れる介護サービスの量的拡大だ。介護給付費は、2000年は3兆2427億円で、2008年は6兆4185億円、来年度の概算要求では、7兆6678億円(対前年比5%増)と右肩上がりに増加している。介護保険による要介護認定者(要支援も含む)は、2000年は256万人だったが、2008年末では467万人、要介護認定者に占める後期高齢者の割合は約86%だ。2025年の推計では高齢者人口は3635万人で、認定者は755万人になるとしている。全体の給付の割合では、居宅サービスが約50%、地域密着型サービスは約8%、施設サービスが約42%で、軽度者と分類されている要支援1、2と要介護2までの受給者が全体の給付費の約7割を占めている。
 
65歳以上が支払う保険料(全国平均基準月額)は、第1期が2911円、第二期が3293円、第3期4090円、第4期4160円で、2012年度からの第5期は自然増と介護職員処遇改善交付金の部分を上乗せする場合5000円以上と厚労省は説明しているが、逆進性の高い介護保険料や利用するサービスの1割負担を現在のままとするなら、低所得者の生活を圧迫するような状況を生み出すことは確実だ。
 
介護保険制度は、3年ごとに介護報酬の改定と介護認定の見直しが行われてきた。2003年度は介護報酬のマイナス改定、2006年改正では「予防重視型システム」が導入され、介護報酬も連続でマイナス改定となった。2006年改正では、強烈な給付抑制が行われたことで「介護現場の崩壊」というような状況が作り出され、「介護の社会化」から「家族介護」の方向転換となった。
 
その是正のため2009年度には介護報酬がプラス3%改定となったが、根本的な解決にはならず、同時に行われた要介護認定の改悪等は社会問題となった。
 
厚生労働白書(平成20年度版)によれば、「我が国は、世界のトップを切って高齢化率が20%を超えているが社会保障給付の国民所得比を見ると、我が国は約26%であり、高齢化率が我が国より約4%低いイギリス(約27%)と同程度の水準となっている。欧州主要諸国は、我が国より高齢化率は低いが、社会保障給付の国民経済に対する規模は我が国の水準を上回り、国民所得比で四割程度に達している」と控えめに表現されているが、事実上OECD諸国の最低水準であることは明確だ。
 

■ 増える介護殺人や介護疲れ自殺

家族の介護や看護のために離職や転職を余儀なくされている人は、年間で10万人超に達している。厚労省の報告では、こうした人の8割が60歳未満であり、家族への介護や看護が、現役世代の就業状況にも深刻な影響を及ぼしている。家族の介護や看護の影響で離職したり、転職したりした人の数は、2002年10月から03年9月までの1年間の離・転職者は7万9400人だったが、その後増え続け、06年10月から07年9月までの1年間では12万9400人と、10万人を突破した。
 
「被害者は60歳以上。介護が原因で親族や家族によって引き起こされた殺人事件や心中」(1998年から2009年まで)の調査をした日本福祉大の湯原悦子准教授によれば、少なくとも454件の介護殺人が発生し、461人が犠牲になっていることが判明している。加害者は464人で、73%の340人が男性で、被害者は461人で、72%の335人が女性だった。発生件数について湯原准教授は「全体的に見れば、増減を繰り返しながら、右肩上がりで増えている」としている。
 
高齢者が高齢者を介護する「老々介護」の割合が高まっているが、介護をしている高齢者の3人に1人が「死にたい」と考えたことがあり(「平成19年度版 自殺対策白書」)、介護疲れの自殺者は、2009年で過去最高の285人(前年比4.4%増)だった。
 
介護保険サービスが年々量的に拡大してきたにもかかわらず、現実の介護をめぐる事実は深刻だ。厚労省は社会保障の再定義として社会保障が「機会の平等」の保障のみならず、「広く国民全体の可能性を引き出す参加型社会保障(ポジティブ・ウェルフェア)の考え方に立って、より質の高い社会の実現を目指す必要がある」(「平成22年度版厚生労働白書」)としているが介護保険ではこの考え方がどのように生かされているのだろうか。
 

■ 「持続可能」という意味は何か

来年の通常国会で介護保険法の改正を行うため、本年5月より社会保障審議会・介護保険部会で介護保険見直しの検討を進めている。そのテーマは「持続可能な介護保険制度を構築するための財政や負担のあり方、あるいは地域の実情に応じたシステムを確立するための保険者機能や自治体の役割強化、良質で効率的な給付のあり方」だ。介護保険部会には、様々な資料が提出されているが、具体的に厚労省が何をどのように進めるとは、書かれていない。その見直しの基本は、6月21日に資料として配布・説明された「地域包括ケア研究会報告書」だ。その「研究会報告」の目的は、「平成24年度から始まる第5期介護保険事業計画の計画期間以降を展望し、地域包括ケアシステムのあり方や地域包括ケアシステムを支えるサービス等について検討」を行うことで、その理念には、「持続可能な介護保険制度」という大原則を掲げている。
 
「持続可能性」という言葉は、小泉内閣の経済財政諮問会議も好んで取り上げてきた。その場合は、政府の財源負担の抑制を意味する「小さな政府論」であり、新自由主義の主張であることは異論の余地がないと考える。そして福田内閣での「社会保障国民会議」でも「持続可能性論」は使われてきたが、今日の特徴としては社会的要求に押されて社会保障の「機能強化」論が出てきているので、「むき出しの福祉抑制路線が後景に退きつつあるかにみえる」と里見賢治氏(仏教大学教授・「賃金と社会保障」2008年度8月下旬号)が指摘している。この「研究会報告書」でも最大の焦点となっているのが「サービスの充実は重要であるが、財源も同時に確保しなければならない」としているので「社会保障国民会議」の延長線上にあると考えることができるのではないだろうか。
 
「制度の持続可能性確保の観点」からの検討では、財務省と同じ観点からの検討とならざるを得ない。つまり、財政運営戦略(6月22日閣議決定)において、財政運営の基本ルールとして定められた「ペイアズユーゴー原則」の範囲内で検討を行うということだ。
 
菅内閣の財政運営戦略は「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的な実現を目指すとされているが、その予算編成原則である「ペイアズユーゴー原則」は、歳出増又は歳入減を伴う施策の新たな導入・拡充を行う際は、原則として、恒久的な歳出削減又は恒久的な歳入確保措置により、それに見合う安定的な財源を確保するものとするとされている。
 
更に、財政運営戦略では、「改革を通じて財源基盤を確保し、持続可能な財政・社会保障制度の構築」を行うことが前提とされているから、現状としては「改革」が実現できないので「必要な費用を国民の間で分担」する方法=消費税の増税か、「ペイアズユーゴー原則」の原則により必要性の低いサービスを削り、削減に見合う分だけしかサービスの拡大を認めないということだ。
 
政府は7月27日、「平成23年度予算の概算要求組替え基準」を決定し、年金、医療などの自然増分1.25兆円(医療0.5兆円、年金0.3兆円など)の要求を認めてもいるが、「ペイアズユーゴー原則」なので、介護保険についての概算要求は、厚労省が予算削減をしたとされる127億円が新規事業(特別枠の要望基礎枠)となり、その特別枠の中で「24時間巡回型訪問介護サービス、家族介護者支援(レスパイトケア)等の推進が要求されている。
 
厚労省は介護保険部会の審議の冒頭で、介護保険制度には与野党の対立はないと説明しているほどだから、この「持続可能性論」が優位の上で、介護保険サービスの見直しが進められるだろう。厚労省の関心は介護保険部会の議論や内容ではなく、日程の消化と11月中の無難なとりまとめだけなのではと疑う部会の委員も多いのかもしれない。
 

■ 「強い」社会保障か「消極的」なのか

さて、「研究会報告書」では「今後10年から15年間で日本はこれまで世界が経験したことのない長高齢社会を迎える。要介護リスクの高い75歳以上人口が倍増し医療・介護ニーズが爆発的に引き上げを要する中で、現状のサービス水準を維持した場合でも、保険料は現在の2倍近くに引き上げを要するものと予測される」とし、「保険で給付されるべきサービスは『負担する価値あるサービス』、『尊厳を確保するためのサービス』であるべき」としている。
 
一方で、国民的な議論、国民各層の合意を求めているのが、

  1. 財源構成の見直し、
  2. 被保険者範囲、
  3. 保険料及び利用者負担、
  4. 調整交付金、
  5. 保険給付の重点化、

を巡る論点だ。「研究会報告書」ではこれらの焦点となった論点について両論併記されているが、その本音は、財源構成の見直しの冒頭で委員の意見として記載されている「国民の共同連帯の制度である介護保険制度については、原則として公費割合は現状維持とすべきであり、公費割合の増大は介護保険が景気等による予算制約を受けやすくなることも意味することから、安易に公費割合の引き上げを議論すべきではない」ということだ。
 
社会保障を「国民の共同連帯」や助け合いで説明するのは、一般的には昔からある考え方だ。近年では1995年の社会保障制度審議会の「社会保障体制の再構築」と題する勧告が有名だ。この「95年勧告」では公的責任より社会連帯を社会保障の中心原理にすえた点に特徴があるとされているが、それでも財政面に関しては企業負担も強調していた。国民が社会保障に権利を持ち、その能力に応じて義務を負うことには異論はないが、財政責任を含む義務において企業が重要な責任を負っていることは当然だ。
 
しかし、厚労省は国民各層の合意と言いながら、介護保険財政の議論は、常に自然人としての国民に限定され、

  1. 被保険者の範囲=年齢の引き下げ
  2. 保険料及び利用者負担=保険料の大幅値上げと2割負担が実行されなければ、
  3. 保険給付の重点化=軽度者の保険給付の排除

という論法により、自己負担と保険給付のジレンマに誘導しているのが現実だ。
 
「研究会報告書」では、「要支援1・2または要介護1程度の軽度者については保険給付の対象外にすべきとの意見や、少なくとも保険給付はリハビリテーションサービス等の予防的なサービスや認知症を有する者へのサービスに限定し、軽度者の家事援助については地域支援事業」として保険外(自治体の任意事業)にし、「利用者負担割合(1割)を引き上げることを検討すべきとの意見があった」としているが、これは経済同友会等の財界の要望でもある。 問題点は多岐にわたるが、介護保険施設類型の再編で既存の介護施設サービスを解体し、施設を住宅として位置づけ必要なサービスを外部から提供すること、医療法人にも特別養護老人ホームの設置を認めること、従来の「保護型介護」から脱却し「自立支援型介護」、「予防型介護」という視点に立って「ケアの標準化」を行うことや、ケアプラン作成に利用者負担を導入することも検討すべきとされ、「現行の施策の延長ではない思い切った改革に早急に着手する必要」があり、整備に当たっては「地域の実情に応じた整備を進める方策が重要であり、そのための規制緩和や税制のあり方についても検討」すべきだとしている。 「研究会報告書」には肯定的に評価できる部分もあるが、「制度の持続可能性確保の観点」から行われる介護保険制度の見直しでは、国民の介護保険制度に求める課題には遠く、「強い社会保障」ではなく、消極的な社会保障と言えるのではないだろうか。
 

■ 介護報酬の引き上げが必要

介護保険制度の改革は、増大する要介護者を支えるためには介護の担い手を増やさなければならないから、とにかく介護報酬の引き上げが必要だ。
 
介護保険制度の創設以降、介護従事者(医師・看護師・介護支援専門員等も含む)は大幅に増加している。常勤と非常勤を合わせた数値で、2000年が97.7万人、2008年には218.2万人となっているが、相変わらず人材不足は深刻だ。しかも、厚労省の見通しでは現行のサービス水準を維持・改善しようとする場合は、介護職員に限定しても2025年には倍増する。このマンパワーを確保するには労働条件の改善=介護報酬の引き上げが必要なのはいうまでもない。
 
最近になって都市部を除いて介護分野の有効求人倍率が下がり、離職率もわずかばかり改善(17%)されたが、それでも他の産業との比較でも高い状態だ。数値の改善の要因は失業率との関係であることは、数値を重ね合わせると一目瞭然だ。
 
給与については勤続年数の違いなどもあるが全産業の男性32万7000円、女性22万8000円と比較すると、介護従事者(男女)の月給者の平均賃金21万2000円、介護職員に限ると月給は20万円を下回ることになる(介護職員の全体の平均年齢は41歳)。
 
厚労省の調査では、2009年4月に実施した介護報酬改定で、手当てと一時金を合算した額で全国の介護職員の平均月収が08年から9460円増(約3.4%)で、何らかの引き上げを実施した施設が68.9%となっているが、9月に国に提出された介護福祉士会の調査では、全体の半数以上(58.8%)が「これまでと変わらない」と回答している。2つの調査結果には大きな開きがある。
 
昨年度の補正予算で介護職員処遇改善交付金(介護職員(常勤換算)1人当たり月額平均1.5万円を交付、申請率82%)も実施されたが、これについては、事務量が多いことや職種を限ること等の課題も指摘されている。
 
介護労働安定センターの調査では、「今の介護報酬では人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない」とする事業所が52.7%(前年度より約19ポイント改善)だから、介護労働者の給料の原資ともなる介護報酬を国が2003年度に2.3%、06年度に2.4%引き下げた国の責任は大きいといわざるを得ない。
 

■ 自治体に財源と権限 介護と福祉の充実を

介護保険制度を自治事務として担っている自治体は、介護保険制度の今後をどのように捉えているのだろうか。実は、「現行のままでは制度を維持できない」と考えている市町村が87%に上ることも全国自治体アンケートで明らかになっている(読売新聞4月4日)。
 
アンケートでは、今後10年間、財源構成やサービス内容などは現行のままで制度を維持できるかを尋ねたところ、9割が否定的な見方だった(「そうは思わない」が29%、「どちらかといえばそうは思わない」が58%)。その主な理由は、「保険料の上昇に住民の負担が耐えられなくなる」(71%)、「老老世帯や高齢独居世帯の増加に対し、現在の介護サービス量では足りなくなる」(58%)などだ。
 
日本の地方自治体における福祉の現状は、児童、高齢者、障害者などへの現物給付サービスの環境整備が不足しているのが現状だが、その基本的な問題は地方自治体の税財源の不足だ。2010年度の地方財政は、地方税収が景気後退を受け32兆5096億円と前年度当初比マイナス10.2%。地方交付税は16兆8935億円と1兆円超の増額だが、地方自治体全体の財政の財源不足額は18兆2168億円と過去最高となった。
 
地方公務員数は、1995年以降連続して減少し、特に福祉関係を含む一般行政職は、この5年間でも1割以上が減少し、しかも国は「徹底した行政改革・経営改革」を行う自治体に財政的支援を行うとしている。地方自治体は、債務残高が肥大化し、地方財政が果たすべき福祉等の公共サービスや地域雇用の確保という役割を発揮できない状況にあるので、必然的に自治体が責任を負っている介護保険サービスの基盤整備等は進んでいない。
 
例えば、特別養護老人ホームの待機者は全国で42万人以上だ。厚生労働省は、全国の自治体における介護保険の施設・居住系のサービスの達成率が過去3年間で71%だと公表しているが、東京、千葉、京都では達成率が5割以下だ。2006年の改正で導入された6種類の地域密着型サービスで、介護保険事業計画(第3期)が具体的に計画に沿って実現しているのは、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、認知症対応型通所介護で、小規模多機能型居宅介護や夜間対応型訪問介護等は整備が進んでいない。更に、6種類の全サービスについて未設置の保険者(自治体等)が12%、小規模多機能型居宅介護では6割、夜間対応型訪問介護では95%の保険者で未設置だ。引き続く第4期事業計画でも施設の増設計画もそれほど多くないのが現実だ(畠山輝雄日大文理学部助教調査)。
 
高齢化の進展や独居者の増加などにより、利用者、介護者のニーズは多様化している。介護保険制度だけで高齢者の生活を支えることは不可能だ。訪問介護等の医療サービスや低所得者対策等の福祉サービスや介護予防事業等の保健サービスが、保険料を財源の五割とする介護保険事業の中にあるのでは、本来の医療、福祉や保健サービスの充実・発展も期待できない。
 
また、要支援1・2、要介護1の軽度者への介護サービスを財政的な理由で地域支援事業(任意事業)へ再編することは、自治体の財政格差による介護格差を発生させる可能性が大きい。現在でも財源力がある自治体とそうでない自治体の格差が大きいとされているが、今後も介護保険制度の自治体格差が拡大することが予測される。
 
10人が死亡した昨年3月の群馬県渋川市の老人施設「たまゆら」火災に見られるような「貧困ビジネス」は、様々な分野で拡大しているが自治体はそれを必要悪として認めてきた。夏に社会問題となった行方不明高齢者の問題でも自治体の無責任な対応が問題となった。
 
高齢者の社会的孤立の深刻化は、急速な高齢化と一人暮らしの増加が背景にあり、「無縁社会化」ともいわれている都市化によるコミュニティーの崩壊、さらには病気や貧困など、私たちは様々な問題に直面しているが、介護保険制度だけで高齢者の生活を保障することは不可能だ。
 
財源の移譲を伴わずに自治体に地方分権で権限を渡しても介護も福祉も充実はしない。求められているのは、「強い社会保障」をつくるために国からの抜本的な税財源と権限の移譲で、地方自治体が介護保険制度と公的福祉サービスを高齢社会を見据えて強固なものにすることではないだろうか。
 

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