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●2009年2月号
■第171通常国会と社民党の果たす役割
社会民主党国会対策委員長 日森文尋
     

編集部 麻生内閣の支持率は、直近の各新聞社の世論調査では20%を切り不支持率は70%を示し、末期的状況を呈するに至っています。昨年の9月に発足した麻生内閣の性格について、この間の臨時国会、通常国会の論戦などから、明らかになっていることは何か、また、なぜこれほどまでに国民から批判されているのでしょうか。

日森 昨年の9月に麻生政権が発足しましたが、この内閣は安倍、福田首相の政権投げ出しに対応したいわゆる「選挙管理内閣」的性格を持って、自民党政権を維持するためにたらいまわしで誕生したもので、国政選挙で国民から審判を受けたものではありません。
 
 支持率低下は麻生首相の個人的資質もありますが、基本的には自公政権のガバナンス全体に対する国民の信頼がなくなったことにあります。第一次補正も真水で1.8兆円程度、そのうち7000億円は出資金で、経済対策はスピード感を持ってやると言ったのですが、実効性も薄く、規模を含めてそれに値しない内容でした。
 
 そうした批判が広がる中で麻生首相は第二次補正を出すとしましたが、政局を優先して臨時国会には出しませんでした。臨時国会後半では、米国発の金融危機が世界経済に波及し、日本の実体経済にも著しく影響を及ぼすことになりました。それは特に「派遣切り」といわれる非正規雇用労働者の雇用問題(解雇)に集中的に現れてきました。
 
 野党三党(共産党を除く)は、非正規雇用労働者等の緊急雇用対策の実効性を確保するために、「緊急雇用対策等関連四法案」(採用内定取り消し規制法案、派遣労働者等解雇防止緊急措置法案、住まいと仕事の確保法案、雇用保険法改正案、有期労働契約遵守法案)などを提出し、スピードを持った実効性ある対策を求めましたが、与党は否決しました。
 
 その後、第二次補正は通常国会で出されてきましたが、その内容は省益、族議員の要求の寄せ集めであり、2009年度予算案もそうですが、緊急の課題になっている国民生活を支えることには程遠いものです。文字どおりバラマキで、その最たるものが定額給付金です。自民党は「連立のコスト」といってはばからないのですが、国民の六割以上が使い道を考えた方が良いという意見です。こうしたバラマキに対して、国民的批判は根強いものがあるのですが、これを無視して衆議院で強行採決をしました。
 
 端的な例ですが、定額給付金に対する麻生首相の考えが二転三転するなど定まらない政治姿勢、また、国民の意見を聞かない麻生内閣の経済対策、政治姿勢に対する失望が、支持率低下に歯止めがかからない要因であることは間違いありません。
 
 麻生内閣が国民から支持されていないのは、日本経済は「100年に1度の経済危機」で、「全治3年はかかる」と言っていますが、日本経済が全治した後の社会像が全く見えないこともあります。自民党政治ではそれはできないわけですから、社民党は21世紀の日本がめざす社会像を具体的に打ち出していくことが求められています。

編集部 麻生内閣の経済政策に対して、バラマキでしかないという国民的批判はありますが、結局、ここには麻生内閣の新自由主義的な構造改革路線があり、その構造的体質、政治姿勢をどのように転換させるかが重要になっています。この闘いの方向性についてどのように考えておられるのでしようか。

日森 麻生内閣の最大の問題は、新自由主義的な構造改革の総括ができないことです。国民の立場に立った改革に手をつければ、これまでの自民党政治を否定することになるわけですから、それはできないというジレンマがあることも確かだと思います。
 
 自由な競争、すなわち市場原理主義を徹底してきた規制緩和路線が、国民に何をもたらしたのかについて、明確な反省がありません。結局、そこから決別ができないことが、ともかく寄せ集めのバラマキで、新自由主義路線で現れている矛盾を繕うことになっているのだと思います。
 
「改革は進めるが、歪みについては是正する」と言われていますが、これではバラマキになるしかありません。新自由主義的改革を続けていけば、あらゆる分野で歪みは次々と生まれて、深刻化します。それを埋めるためにお金をバラマクという処方箋では、矛盾を是正することはできなくなっているのです。これは本末転倒した考えで、改革路線そのものを総括して、ここから決別することです。
 
 一方でわれわれの対案を示すことが必要になりますが、内需拡大の経済に転換することが重要な選択肢です。麻生首相も内需型経済の転換が必要だとはいっていますが、それをするにはかなり大胆な予算をここに集中的に投下することでなければなりません。政策的にいえば、国民の安心・安全な社会の実現をめざして、ここにお金を投下していくことが必要です。
 
 小泉元首相は、自民党をぶっ潰すと威勢よく言いましたが、小泉構造改革で社会保障だけが壊されてきました。後期高齢者医療制度導入をはじめ、医療の崩壊が進み、医者は増えても産科医、小児科医、救急医が不足し、地域医療は危機的状況になっています。
 
 年金、介護もそうですが、例えば政府の「骨太2006年」では、以降、社会保障費の自然増2200億円削減を打ち出し実行してきました。自民党内ですら、その見直しを求める意見が強くなり、今年度の予算では確かに単年度でいろんなお金を寄せ集めて、230億円に縮減はしましたが、来年度以降、展望はありません。そうした社会保障の分野に国民の税金を集中して使うように転換することです。
 
 もう1つは雇用対策ですが、第二次補正の中でも雇用対策費は、1600億円位でそのうち1500億円は、都道府県に基金として落し、都道府県で実情に合わせて雇用対策をしてくれというものです。労働保険特別会計を足しても4000億円程度ですから、政府の雇用対策はきわめて不十分なものです。厚生労働省の非正規雇用労働者の3月末までの失業者見込みは、8万5000人といわれていますが、これは氷山の一角にすぎません。
 
 非正規雇用労働者だけではなく、電機、自動車などでは、売上げ減退の中で生産調整が行なわれており、これから人員削減は激しさを増してくることが予測されます。
 
 定額給付金2兆円をバラマキするのでなく、この財源を雇用対策などに手当していくことの方が、経済効果としても大きなものになります。
 
 雇用対策は、お金の手当てだけでなく、この間、労働法制の規制緩和で改悪されてきた労働法制を労働者保護の立場から抜本的に見直していくことが必要です。欧州でも非正規雇用者は増大する傾向にありますが、賃金をはじめ正規雇用者と同等の規制がきちんと整備されています。少なくともここまで到達することを目指すことです。
 
 また、労働法制で重要なことは、非正規雇用者の条件改善とともに、正規労働者の長時間労働、ただ働きの規制など、労働時間短縮があります。さらに非正規雇用者を含めた解雇規制の法律化(解雇制限四条件を基本に)が必要です。政府は雇用対策として、ワークシェアリングの検討を労働側にも呼びかけていますが、これは正規雇用者の賃金切り下げだけを意図したもので、労働時間を短縮して非正規雇用労働者の雇用を創出するというものではありません。
 
 さらに、これは主に労働組合の仕事でもありますが、実質賃金の引き上げや最低賃金の引き上げが必要ですし、われわれ政党の仕事ということでは、中低所得者を中心とした減税も国民運動として展開していかなければなりません。社民党は三兆円の定額減税を要求していますが、これは定率減税が廃止された分を実質的に手当てするというものです。
 
 重要なことは、これらの諸課題を働く者の生活防衛として闘われる2009年春闘と結合して、政策・制度闘争として闘うことです。連合は物価上昇分プラスアルファーの賃上げ要求で、実質賃金を低下させないという方針を打ち出していますが、このことが実現されなければ可処分所得も増えません。
 
 こうした労働者の雇用対策、賃金闘争関連だけでなく、第一次産業の農林水産業従事者への直接所得の保証制度の導入など、この分野にたいする政策対応も必要です。もちろん、日本経済を支えている中小企業支援の対策もそうです。
 
 経済対策という面では、社民党は新たな産業戦略を作成して、これはわが党の辻元清美衆議院議員(政策審議会会長代行)が中心となって、『ヒューマン・ニューディール』ということで、人にやさしい仕事で新たな雇用、生活していける条件を手厚く手当てしていくことを提唱しています。その内容は、福祉、農業、教育、環境分野など「人と未来」への集中投資を行い、雇用機会を創出しながら日本の社会構造を変えていくというものです。
 
 日本経済を内需拡大型に転換させていく時に、政策的にも、財政的にも思い切ったメリハリある対応策を打ち出していくことが必要です。

編集部 内需型経済の転換は、政策的にも運動的にも社民党の役割が大きくなると思いますが、これに伴う財源問題は、国民のもう1つの関心です。麻生内閣は消費税率の引き上げを「持続可能な社会保障等とその安定財源確保に向けた『中期プログラム』」に書き込み、閣議決定しました。持続可能な社会保障を可能にしていくためには財源問題も避けて通れないと思いますが、この点はどうでしょうか。

日森 政府の「中期プログラム」の中では、経済が好転することを前提にしつつも、消費税率の引き上げを2011年度から段階的に引き上げることが書きこまれています。さきほど述べました定額給付金をはじめとするバラマキなどで、政府2009年度予算では33兆円超の新規国債発行、さらにいわゆる「埋蔵金」といわれる特別会計などから借りてきて、収支の辻褄を合わせています。借りてきたお金は、いずれ返さなければなりませんが、返す財源は当然ないわけですから、結局、消費税率の引き上げで賄うというものです。政府は消費税率引き上げ分は、社会保障、福祉にまわすと言っていますが、前回の引き上げの時も同じようなことを言いましたが、実際はそうはなっておらず、国民は騙されたのです。
 
 福田内閣の時に、大問題となった道路特定財源の一般財源化の閣議決定は、麻生内閣になって完全に骨抜きになってしまいました。また、政府は「無駄ゼロ見直し」作業をすすめていますが、各省庁の抵抗でこれも全く成果をあげているとはいえません。
 
 社民党は一貫して、不公平税制の見直しを主張してきましたが、フラットになり過ぎている所得税を段階的に元に戻すことが必要です。法人税率の引き上げが一気にできるかどうか、難しさはありますが、社民党の試算では租税特別措置などを見直せば、2.5〜3兆円の財源は出てきます。もう少し厳しくすれば、例えば資本金10億円以上の大企業の法人税など、37.5%まで引き上げれば7〜8兆円の税収増となります。ただこの不況の中でストレートにいえるかどうかはありますが、基本的考え方としては、余りにも弱者に負担をかけすぎている税制を公平なものに変えていかなければなりません。
 
 連合の高木会長は、最大の経済対策は「賃上げだ」と主張されていますが、これには賛成ですが、内需拡大は賃上げを含めて総合的に勘案していくことが必要ではないでしようか。仮に実質賃金が上がっても雇用、医療、年金などのセーフティネットが壊れていますから、将来が心配でお金はできるだけ使わないで、貯金にまわすという心理が働くことになります。そういう意味でいえば、国民が将来にわたって安心・安全に生活できる社会制度を確立していく取り組みが必要になります。
 
 以前、本誌で掲載された北海道大学の山口二郎さんの講演がありましたが、そこでは世論調査の結果が紹介されていました。「どういう社会を望むか」という設問に対して、「社会保障が整備された北欧のスウェーデンが良い」という人が、7割に達しています。
 
 北欧諸国は消費税率が高いことは知られているのですが、それでも目的がはっきりしていて、社会保障が整備されていれば、相応の負担はしても良いと考えている結果が示されています。
 
 もちろん、自民党は持続的社会保障のためには消費税率引き上げが必要だと宣伝していますが、少なくとも財政支出の無駄は徹底して見直していくことが前提であり、さらに重要なことは政治に対する国民の信頼性が回復されなければなりません。現在の日本には両方とも欠けており、最近の世論調査では政府の消費税率引き上げには反対の人が過半数を超えています。

編集部 働く者の立場に立った経済政策、雇用対策を含めて、その実現には野党共闘が重要であり、そこで果たす社民党の役割が大きくなると思いますが、実際の野党共闘の現状、展望はどうでしようか。

日森 国会対策としては、社民党は基本的には、四野党共闘を強化します。今の段階では参議院で社民党を抜きには野党は多数派にはなりません。そういう意味で社民党がキャスチングボートを握っており、この利点を生かして、これまでもそうでしたが民主党に対してきちんともの申していくことになると思います。
 
 具体的に労働法制でいえば、野党四党の中で、社民党、国民新党、共産党の三党は1999年の派遣法改正(原則自由化)以前に戻せということで一致しています。
 
 社民党は、民主党に対しても製造業の派遣は原則禁止を求めていますが、民主党は連合内民間大企業産別労組の意見などもあり、明確になっていません。
 
 民主党は昨年の通常国会から自民党と大して違わない法案を出したいとしていました。臨時国会でも民主党はそうでしたから、それに対しては国民新党、共産党と共に修正案を出すことを対応として検討したこともあります。
 
 そうした中で政府も製造業派遣について世論の高まりで規制の方向で検討が始まり、民主党も踏みとどまったという経過があります。通常国会では、製造業派遣禁止に向けて、社民党と民主党で話し合いを継続しており、その実現に向けて努力していくことは確認されています。
 
 したがって、一致できるところでは、できるだけ全野党共闘で努力するし、例えば先に述べた緊急雇用対策等関連四法案を参議院で共産党を除く三党で提出しました。衆議院では与党の多数で否決されましたが、国民的アッピールはでき、国民の共感は広がりました。緊急雇用対策等関連四法案は、政府の「新たな雇用政策」に不十分ですが実質的に反映させたことは評価できると思っています。 また、定額給付金問題でも、共産党は共同提案には乗ってきませんでしたが、野党三党で修正法案を提出しました。これからも野党四党で一致させて経済対策、雇用対策の充実に向けた努力はしていけると考えています。
 
 ただ、民主党はどういう政党かということでは、中には第二保守党と規定する人もいますし、リベラルな人、構造改革、保守的な人など、民主党内部は混在していることは事実でしょう。ですが共闘関係は、政策を中心にひとつひとつ吟味して、それが本当に国民のためになるのかを判断していくことになります。いずれにしても何でもかんでも一緒にやるということではありません。共闘関係については、国民に誤解を与えないように、できるだけ大衆的にして社民党の態度を支持者はもちろん、国民的な理解を得る努力をしていくことが必要です。
 
 政策では、憲法問題がありますが、社民党は全くぶれはありません。憲法調査会についても、民主党は今日の政治情勢を受けて、今、踏み込むことは得策ではないと判断していますが、国会では規定を作って協議を始めようという議運の流れは強まっています。
 
 さらに防衛費に関連したアフガニスタンへの自衛隊派遣を見込んだ装備問題、ソマリア沖海賊対策を名目として、自衛隊の護衛艦の派遣が浮上しています。海上警備行動発令は法の拡大解釈であり、ソマリア特別措置法や海賊対策恒久法といった新法も事実上の自衛隊の恒久的な海外派遣に道を開く危険性があり、その問題点や矛盾点を徹底的に追及することが必要です。
 
 民主党との共闘は追及しますが、いずれにしてもこれらの課題では、社民党独自の主張を打ち出して闘っていくことになります。

編集部 解散・総選挙闘争で、社民党を守り、残すことは、国民本位の政策転換を実現し、選挙後の政局を考えた場合、きわめて重要になっています。そこで社民党の総選挙闘争を闘う姿勢について、聞かせてください。

日森 社民党は国民、支持者に見える活動をいかに工夫していくかが問われています。マスコミなどは、社民党の国会活動、福島党首の記者会見の内容は、ほとんど報道しません。国会共闘で社民党が果たしている役割なども、全て民主党、野党としての取り組みとされてしまいます。こうした政策活動などは、国会議員、地方議員、党員の日常活動を通して、国民に浸透を図っていくことが決定的に必要です。もちろん、社民党支持者、労働組合との協同行動も大事になります。
 
 マスコミなどでは二大政党制の大合唱が叫ばれ、自民党、民主党の対決だけが大きく報道されていますが、国民の立場に立った政策転換を図るために政権交代が不可欠なのであって、そのためにも社民党の政策、果たしてきた役割を強く訴え、支持を拡大していくことが必要です。
 
 解散・総選挙は3月末解散、4月選挙が次の政治日程になる可能性がありますが、社民党としては2桁の議員の獲得をめざして努力しています。
 
 私共も全力をあげますが、皆さんの一層の奮闘を強く訴えるものです。

編集部 本日は、大変、お忙しいところありがとうございました。

  (インタビュー、1月14日 議員会館にて)

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