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●2008年4月号
■ 通常国会前半からみえてきたもの
   自治創造研究会代表  飯山 満
   
 

■ 一、通常国会前半を終えて

 昨年夏の参院選挙後、安倍首相の「政権投げ出し」のあとを引き継いだ福田首相は、低姿勢を装って与野党協調ポーズを採り、「生活者、消費者が主役」などと唱えながら出発した。しかし、福田の協調ポーズは、衆・参のねじれによって参院を思い通りにできないために、民主党を抱き込もうという戦術にすぎなかった。新テロ法案を巡って、なりふり構わない福田首相と民主党小沢代表との密室会談が行われたが、その後民主党が「大連立」を断わり、新テロ法案を参院で否決すると、結局、与党は数の暴力をむき出しにして、57年ぶりに、衆院の再議決で法案を成立させるに至った。

 一方、政治資金規正法改正案は与野党の協議の場が設けられ、一定の結論を得た。また、被災者支援法改正案や中国残留孤児支援法改正案などは、委員会で与野党修正が行われ成立した。直近の民意は参院であり、与党が既得権益や惰性に固執せず、真摯に協議を行い国民の立場で譲歩すれば前進するというのが臨時国会の教訓であった。

 さて、福田政権初の2008年度予算案を審議する第169回通常国会は、1月18日に召集された。

 福田首相は、施政方針演説で、「生活者・消費者が主役となる社会の実現」を柱にし、「国民本位で」「国民の目線で」「国民の立場に立って」と、「国民」という言葉を48回も使った。しかし、政治が国民のものであるのは当たり前のことであり、逆にいうと、この間の小泉政権以来の構造改革路線や、安倍前内閣の新国家主義的な政治が、国民から遊離していたことを自ら語るものである。演説の中には、「貧困」という言葉すらなく、福田政権の強調する「自立と共生」は、国に甘えていないで自立しろ、税と保険料の負担だけはよこせ、あとは弱い者同士で勝手に支え合え、としか聞こえなかった。

 07年度補正予算案は、後期高齢者医療負担増対策、水田農業等緊急活性化経費にしても、政府・与党の強行した政策の欠陥を粉塗し、総選挙向けのまやかしにすぎなかった。しかも、原油価格高騰対策の最大のものが、自衛隊関係の油購入費差額分約124億円ということからも国民生活より防衛関係を優先していることは明らかであり、野党の反対で参議院で否決された(衆院の優越で成立)。

 補正予算成立後の与野党の対決の焦点が、道路特定財源問題である。政府は、3月末に期限切れになる揮発油(ガソリン)税などの暫定税率を08年度以降も10年維持し続け、59兆円もの道路整備を進める法案を提出し、一方、民主党は「ガソリン値下げ隊」を作って対決をあおった。

 そこで与党は、税制関連法案に盛り込まれた租税特別措置が逆転参議院で否決・保留されて期限切れとなるのを防ぐため、「つなぎ法案」を強行しようとした。解散も行われていない状況下で、衆院での再議決を前提に提出された点で極めて異例といえるものであり、さすがに参議院の論議を封殺し、参議院無用論につながることから、1月31日、衆・参両院議長があっせんに乗り出し、「徹底した審議を行ったうえで、年度内に一定の結論を得る」、「各党間で合意が得られるものについては、立法府において修正する」旨で与野党が合意し、「つなぎ法案」は撤回となった。

 予算案の審議では、派遣労働の実態や後期高齢者医療問題も取り上げられたが、多くを占めたのは道路特定財源問題であった。道路にまつわる世論操作・世論偽装とも受け取れる催し物の開催や官製NPOへの経費支出、佐世保における米軍住宅の移転・建設費、暫定二車線による高コスト構造、天下り法人の実態、特定財源の流用や無駄遣い、道路の中期計画のでたらめぶりがつぎつぎと明らかになった。

 2月10日の夜、沖縄県で米軍による女子中学生に対する暴行事件が起きた。その後も、泥酔した米軍兵士の住居侵入事件、20ドル札の偽造と使用、フィリピン女性への暴行など、米軍兵士の犯罪が続いている。現在、基地の外に住んでいる米軍人の状況が、日本側にはまったく知らされていない。03年7月に地位協定の改定案をまとめていた社民党は、今回の事件を契機に、地位協定九条の基地外居住についての見直しを行った改定案をまとめ、三野党の協議を進めている。勿論、問題の抜本的な解決には、米軍基地を撤去する以外にない。

 20年前の「なだしお」号の教訓が生かされず、2月19日の早朝には、房総半島沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故が発生した。現場海域では、潜水艦によって漁網が切られる事故が発生するなど、漁業関係者が安心して操業できない状況が続いていた矢先のことであった。情報伝達の問題、イージス艦が「清徳丸」を発見した時間についての発表方法、海上保安庁に連絡することなく航海長から事情聴取をした事実等を隠蔽しようとしたかのような、防衛省の一連の対応における数々の疑念・疑惑が募っている。もはや「国防組織」の体をなさない迷走と醜態である。福田首相は、石破防衛大臣を即刻罷免すべきであるし、石破大臣自ら情報操作があった場合は辞職すると言っており、保身に汲々とするならば、当然、問責決議の対象になる。

 2月29日、与党は暫定予算回避を理由に議長あっせんを踏みにじり、審議が未だ十分とは言えない中で08年度予算と税制関連法案を衆議院で採決した。民主党は「1週間は休む」と宣言し、鴻池参院予算委員長の不手際もあって、ほぼ2週間空転した。野党が多数を占める参議院では、道路問題のひどさが連日暴露され、「道路の中期計画」の見直しや道路特定財源の修正は避けて通ることはできなくなっている。


■二、社民党の「緊急国民生活対策」について

 この間、政府・与党は、「構造改革」を進め、「企業部門が元気になれば、いずれ、雇用者にも利益が及ぶ」と強調してきた。しかし、「いざなぎ景気」を超えるといわれている現在の景気拡大を多くの国民が実感できないまま、サブプライムローン問題の影響と原油高騰をはじめとした物価上昇で、生活の困難が募っている。さすがに日本経団連も賃上げの意義を強調せざるを得なくなっている。しかし、福田政権は、「経済は一流ではなくなった」(大田経済財政相)と放言し、「予算案成立が最大の景気対策」として、何ら手を打たないままである。こうした中、1月25日、国民新党は、「暮らしを守る緊急20兆円経済対策」を発表し、社民党も31日に、緊急に対策を講じるべき7項目に絞った5兆円規模の「緊急国民生活対策」を発表した。

 社民党案は、生活必需品の価格上昇から国民生活や中小企業を守り、格差と貧困が拡大していくことを防ぐため、㈰所得税・個人住民税の定率減税の復活(3.3兆円)、(a).年金控除の縮小、老年者控除の廃止などこの間切り下げられた控除の復元(0.24兆円超)、(b).4万円を限度に、年収・所得に応じて、年1回支給する、飲食料品に係る消費税額戻し金方式の導入(1.2兆円)、(c).中小企業支援の強化を打ち出し、GDPの6割近くを占める個人消費に効く政策の実現を求めている。同時に、(d).雇用促進住宅への失業者の入居の促進、(e).原油高騰対策として、国家備蓄石油の緊急放出、低所得者等への灯油代支援のための臨時特別給付金(0.4兆円規模)の支給、(f).無保険者の医療受給の支援を求めている。なお、財源としては、政府の「特別会計」の余剰資金(外為特会、財投特会、エネルギー特会等)の活用と、不公平税制の是正(高額所得者の最高税率や法人税の基本税率の引き上げ)で捻出すべきだとしている。

 その後、予算審議が大詰めを迎える中、社民党は、「『地方』、『医療』、『雇用』の再生と『環境・地球温暖化対策』に大きく舵を切るための予算への組み替えを〜2008年度政府予算案見直しに当たっての考え方〜」をとりまとめ、2月22日に発表した。経済の先行きが混迷を深め、新型スタグフレーション突入もささやかれているからこそ、一番「痛み」を受ける層への配慮が求められている。しかし、福田内閣はあいかわらず冷淡な態度をとり続けているし、民主党も道路一本槍である。後半国会は、国民生活改善や景気対策も焦点にしていかなければならないだろう。社民党は、国民生活改善の緊急署名行動を展開し、小泉・安倍・福田政権のこの間の新自由主義的な「構造改革」路線の抜本的転換に結びつけていくことにしている。


■三、「新憲法制定議員同盟」の発足と恒久法

 08年度予算案の採決強行をめぐって与野党が激突している攻防戦の中、改憲と自衛隊海外派兵恒久法制定が動き出した。まず、自民、民主、公明、国民新の超党派の改憲派議員でつくる「新憲法制定議員同盟」(会長・中曽根康弘元首相)は、3月4日の総会で、民主党の鳩山由紀夫幹事長や羽田孜元首相の顧問就任、民主党の藤井裕久元蔵相、田名部匡省元農水相、前原誠司副代表らの副会長就任などの新役員人事を了承した。同議員同盟は、護憲派の運動が盛んになっているので、これに対抗する運動を強力に展開していくため、1955年7月に旗揚げした自主憲法期成議員同盟が昨年衣替えしたものである。「国民投票法」の成立で、憲法審査会は設置されたものの、強行採決のしこりと参院での与党惨敗の影響で、規約も決まらず人選もされないまま凍結状態にある。民主党幹部らを新たに役員にした今回の体制固めは、参院選で挫折し暗礁に乗り上げた憲法論議を活性化させ、改憲機運を再び盛り上げる狙いがある。鳩山幹事長が「通常国会中に憲法審査会の立ち上げが動きだす可能性がある」とエールを送っているのは象徴的である。

 このほかにも、「対決」しているはずの自民、民主両党の議員が加わる議員連盟の発足が相次いでいる。3月3日には、「地域・生活者起点で日本を洗濯(選択)する国民連合」(せんたく)と連携する「せんたく議員連合」が発足した。また、自治体での届け出や事務手続きの電子化を推進するための「地方政府IT(情報技術)推進議連」もスタートしたが、自民党のポスト福田の有力候補である麻生太郎前幹事長と民主党の鳩山幹事長らの連携が政界再編をにらんだ動きと話題を呼んでいる。

 国際的な平和活動のために自衛隊海外派遣を随時可能にする「恒久法」の制定については、昨年秋の臨時国会における「大連立」騒動の過程で、福田首相と小沢民主党代表が必要との認識で一致した。

 自民党の防衛政策検討小委員会は、06年8月、「国際平和協力法案」(石破私案)をたたき台としてまとめている。これは、武器使用基準の緩和や国連決議がなくても対象国の要請があれば派兵できるよう主張しているなど、集団的自衛権の現行解釈を見直すことになる重要問題が含まれている。

 民主党も、新テロ法案の対案として提出した法案の中で恒久法整備に触れているが、国会の事前承認を義務付けていることなどが自民党との違いである。 一方、元々慎重だった公明党は、秋の臨時国会で再びインド洋での海自による補給活動延長問題が「政争の具」となるとの危機感が背景にあり、与党PTで検討することまでは認めていたが、今回、イージス艦衝突事故の全容解明を優先すべきだとして再び慎重姿勢に転じ、恒久法論議を進める与党PT発足のめどは立っていない。

 しかし、自公民の与野党の若手・中堅議員101人でつくる「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」は4月に総会を開いて、自衛隊の海外派遣のありかたを定める恒久法や、集団的自衛権の行使に関する憲法解釈の見直し問題、日米安保体制のあり方など、安保政策について幅広く検討する方針であり、引き続き注意を払う必要がある。


■四、後半国会の焦点と社民党の課題

 3月末は、道路特定財源の暫定税率の問題や歳入関連法案の取り扱い、日銀総裁問題、消えた年金問題など、様々な問題が集中している。

 まず、道路特定財源については、3月末の期限切れが迫っているが、両院議長のあっせんに基づき、国民生活や自治体財政の混乱を回避するための現実的な修正に向けた六党の協議の場の設置と、年度末までの結論が必要である。自治体財政について十分配慮しながら、暫定税率は廃止の方向で見直し、道路計画を縮小するとともに、総合交通政策や地方分権の観点で道路特定財源のあり方を抜本的に見直すべきである。与党は、ようやく09年度からの一般財源化や道路の中期計画の見直しを打ち出したが、暫定税率廃止にこだわる民主党が協議に応じるかどうかも含めて微妙である。緊急避難的に道路とそれ以外の生活に影響を与える特別措置を分離するなどの打開策も必要である。

 国会同意人事には衆議院の優越がなく、昨年の臨時国会では、3件3人の人事が野党の反対多数で56年ぶりに不同意となった。今回は、3月19日で任期切れとなる日銀の総裁・副総裁の同意人事が焦点となった。衆院での予算案の強行採決と与野党の対立激化によって民主党も態度を硬化し、福田首相が「ベスト」であるとする武藤敏郎副総裁(元大蔵事務次官)の昇格と伊藤隆敏東京大学大学院教授の副総裁起用は、参議院で不同意となった。福田首相は新たに田波耕治国際協力銀行総裁(元大蔵事務次官)を総裁候補として提示した。ドルの下落と円高の急激な進行など、金融の舵取りが重要な時期に、時間が切迫するまで放置しておいて、あえて多数の同意が得られないことが分かっている人を、2度も提示してくる政府の姿勢は理解しがたい。日銀総裁は、日銀の独立性を保持して金融政策を的確に実施すべき重要なポストであり、大蔵・財務省の天下り先であってはならない。金融緩和のために巨額な国債を引き受け、アメリカのドル体制を支えるために、利子率を異常に低く抑える政策の反省・転換が求められている。

 安倍晋三前首相が「最後の1人まですべての記録をチェックし、年金を払う」と強調し、舛添厚労相も「最後のお1人、最後の1円までお支払いする」と発言していた年金記録問題について、政府は12月になって実現不可能だと認め、3月14日には、宙に浮いた5100万件の年金記録不備のうち4割は持ち主が特定できるめどが立っていないと発表した。重大な公約違反であり、国民の信頼回復のためにも徹底的な追及が必要である。

 後半国会は経済情勢が悪化する中だからこそ、国民生活に身近な課題や格差の是正にもしっかりと取り組んでいく必要があり、社民党らしい政策提起が求められている。「現代の姥捨て山」とも言われる後期高齢者医療制度については、社民党が汗をかき4野党をまとめ、2月末に廃止法案を衆議院へ提出した。引き続き、労働者派遣法の改正や障害者自立支援法の全面見直し、格差是正と生活改善のための緊急対策などに取り組む必要がある。

 マスコミの世論調査では、福田内閣の支持率は大きく下降し、「政権の危険水域」といわれる3割を切っている。保守系である週刊新潮も週刊文春も、「福田内閣は脳死状態」とレッテル貼りする有様で、実際、日銀人事や道路問題の修正を巡って、政権の求心力は大きく落ち込んでいる。野党側は解散・総選挙に追い込む構えであるが、衆院3分の2の多数を失いたくない与党側は、ねじれ対策の奇異奇策をつぎつぎと打ち出して来るだろうし、民主党取り込みや野党分断工作も仕掛けてくるだろう。いざとなれば、大幅改造や首相の交代、「政界再編」を含め、何があってもおかしくない。

 「大連立」騒動の際に斎藤次郎元大蔵事務次官の暗躍が囁かれていたように、まさに「大連立」や「政界再編」は、明文改憲と実質改憲(自衛隊派兵恒久法制定)、消費税増税を志向した動きである。実は、「民主党の政策の良さ」に対する積極的評価は少なく、民主党内には自民党以上に新保守主義や新自由主義的「改革」志向も内在している。経営者側の政党が強いからこそ、働く者の側の政党が強くないと、平和と民主主義は守れないし、働く者や社会的に弱い立場におかれている人々の生活はよくならない。

解散・総選挙を控える後半国会だからこそ、社民党の任務には大きいものがあることは間違いない。勤労大衆との連帯・共闘の拡大が急務である。
 
(3月21日)

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