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●特集/日本の進路を左右する参院選 (2004年4月号)
■ イラク派兵後の状況と国際貢献
   (国会議員政策担当秘書 下道直紀)

 
●米軍の実質的後方支援部隊に
 
イラク復興支援特別措置法に基づき現在、航空自衛隊はC130輸送機3機と隊員総勢200人がクウェートからイラク国内へ「人道支援物資」を空輸する任務についている。
 
陸上自衛隊は陸自第二師団(北海道旭川市)所属の隊員を主体とした総勢600人がイラク南部のサマワ市で給水活動や医療、施設の修理などに当たっている。
海上自衛隊は、その陸自の車両や資材・機材をクウェートまで海上輸送するため、大型輸送船「おおすみ」と護衛艦「むらさめ」の2隻、計300人の隊員が派遣された。
 
それでは陸自と空自の部隊は現地でイラク復興のためどんな支援活動をしているのだろうか。
 
空自の初仕事は医療機器類の輸送だった。3月3日、空自のC130輸送機一機が「サマワ母子病院」向けの新生児保育器や心電図、顕微鏡などの支援物資2トンを積み込み、クウェートのアリ・アル・サリム米空軍基地を飛び立ち、イラク南部ナシリヤ近郊のタリル米空軍基地に着陸した。同基地には80キロ離れたサマワに宿営中の陸自が物資を取りに来て、陸路でサマワ市内に搬送した。
 
ところが、空自はこの人道支援物資を「やっとの思いで探して確保した」のだという。自衛隊が支援物資輸送について現地の米軍司令部と協議しているが、米軍の要望は武器・弾薬を含む軍事物資の輸送である。しかし、小泉総理は「戦争に行くのではない。武器・弾薬の輸送はしない」と言明しており、空自はその総理の意思と、現地の米軍の要望との板ばさみとなった。
 
空自が活動を続けようとすれば、軍事物資を輸送せざるをえない。「3月半ばからは米軍を中心とする連合軍の物資輸送を開始した」ことが明らかになった。コンテナ積みとなっている軍事物資は、中身が武器・弾薬かどうかは不明。「派遣される空自の目的は米軍の軍事物資輸送ではないのか」の疑問はあっけなく現実のものとなった。
 
陸自はどうだろう。鳴り物入りの支援が浄水・給水活動。1時間に3.5トンの浄水能力のある浄水セットをフル稼働させても1日1万数千人分の給水しかできない。サマワの人口が42万人と言われ、とても市民に満足してもらえる給水能力ではない。しかも、給水車で市内を回るわけではない。市民に陸自の宿営地まで取りにきてもらう。
 
サマワよりはるかに治安が悪いイラク北部で日本のNGOが浄水場を復旧させて、1日十数万人分の給水を可能にしたケースがある。サマワでは水道から水が出ない、白く濁っている排水同然の水を飲んでいる子どもたちは、多くが皮膚炎にかかり、下痢をしている。それだけにイラクの人々が今、求めているのは、家庭で蛇口をひねると、きれいな水が出ててくるというささやかな願いであり、浄水場を修復する技術と機器を持つ民間人の支援なのである。
 
医療支援も自衛隊の医官の任務は隊員の健康管理であり、サマワ市内での医療指導は片手間となる。建築物の修理といってもあくまで応急措置である。
陸自も米軍の軍事物資の輸送を始めれば「やっぱり(それが本当の目的か)」となる。派兵された自衛隊の任務は戦場であり、戦争状態のイラクでの米軍の後方支援活動であるという真相が明らかになりつつある。
 
 
●国連主導の復興支援体制に
 
現在、イラクは進攻した米英軍の占領下であり、米英軍占領当局(CPA)のもとで占領行政が敷かれている。国際法上、占領軍は占領した国の政治、経済、社会の秩序回復、復興に責任があり、そのために占領行政を行う。
イラクの占領には米軍13万人と英軍1万1000人のほか米英両国に同調し、36カ国が計約1万6000人の軍を派遣しているが、旧フセイン勢力の掃討作戦や治安維持に当たっている部隊はもちろん、輸送や人道支援活動をしている部隊も米英軍の同盟軍である。当然、自衛隊もイラク占領軍の一部であるというのが国際的常識である。
 
政府は、自衛隊の派遣を「国連安保理決議による人道復興支援への参画の要請」と説明するが、自衛隊員はCPAのもとで「連合国の要員」として扱われている。
開戦いらい米軍の「誤射」「誤爆」でイラク国民の犠牲者は「少なくとも1万人を超した」と言われている。さらにテロ爆破事件で一度に数百人の死傷者を出すなど、混乱は深刻になるばかりである。米英の同盟国スペインの国民までテロの犠牲となった。日本にとって他人事ではない。
 
米英軍占領当局CPAの任務にはイラク人の手による新政権の樹立もある。国連も関与しながら、CPAとイラク統治評議会がこの3月、憲法制定、新政権の樹立に向けた「イラク基本法」を策定した。「基本法」は「今年6月末までに暫定政府を作り、CPAから主権を移譲し、来年1月までに直接選挙で国民議会を選出する」と定めたものの、暫定政府の選出方法もあいまいで、イラク国内各派の指導権をめぐる調整がついたと言える代物ではない。
 
イラクの復興も新政権作りもなかなか先が見えてこない。イラク人を中心とした新政権づくり、そのための復興支援の形を整えないと、イラクは内乱に陥ってしまうだろう。CPAの解散、米英軍の撤退時期を明示し、つまり軍中心の占領政策をやめさせ、国連主導で、イラク戦争に反対してきた欧州諸国などを中心とした復興支援体制を1日もはやく敷くほかはない。「米英軍がいなくなれば治安はさらに混乱する」との主張や、そういう思い込みもあるが、それは逆である。反米勢力のゲリラ戦術とは米英軍をできるだけ、イラク内にとどめさせ、いたぶって消耗させるのがねらいである。米英軍が撤退すれば、反米勢力と国際テログループの敵は眼前からなくなり、その面での治安は一気に回復するであろう。
 
 
●民間の支援と外交的努力を
 
米国の真の目的が国際石油市場の支配をめざすイラク石油権益の確保であるだろうから、その点での、米国とイラクおよび各国との利害調整が最大の課題となるが、戦争よりも外交での勝負の方が余程ましである。
 
日本はイラク復興支援への拠出金50億ドル(5500億円)のほかに、自衛隊派遣に伴う特別な経費について、2003年度予算の予備費と2004年度予算で合わせて376億円を計上している。
 
イラク現地に行っている国際ボランティア団体のメンバーからは「数千万円まして数億円もあれば、イラク国民の何十万人も救う給水施設復旧が可能となる」と、政府の支援のあり方に注文をつけている。余計な自衛隊派遣をやめて浮かした予算と支援金をNGOや民間人の協力をえたプロジェクトに活用すべきである。
 
イラク戦争とは一体何だったのか。ブッシュ大統領の言う「テロとの戦い」つまり「力の論理」はテロと混乱を拡散させ、犠牲者を増やすだけである。
 
ところが、小泉政権は、米軍への物資輸送などの多国籍軍支援をそのたびに特別措置法を作らなくてもできる「自衛隊海外派遣恒久法」を作ろうとしている。一方、民主党の中にも実質的に多国籍軍への自衛隊の派遣を目指す「国連待機軍」構想が出ている。いずれも国際紛争で自衛隊の軍事力を使う「力の論理」の構想である。
 
ガリ国連事務総長の時代、1993年5月から展開した第二次ソマリア活動でPKO活動とは違って武力の強制力が伴った米軍主体の「平和執行隊」が編成され、実行に移されたがあえなく失敗した。ここでも「力による論理」が失敗し、結果的にPKO活動の衰退を招いた。
 
その後、カナダや北欧諸国などが「人間の安全保障」の考えをふまえ、「平和構築活動」を開始し、国際紛争の予防に重点をおいた外交を展開し、この流れが今、国際的な主流になりつつある。ここには国連憲章の精神や日本国憲法の平和主義が生きている。日本の取るべき外交・防衛はそこにあるのではないか。
 
イラクの大量破壊兵器査察を指揮した国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のハンス・ブリスク前委員長は『東京新聞』のインタビューに答えて、「イラク戦争は違法」という前提に立ち、「サダム・フセインはイラク国民の脅威であったが、近隣諸国をはじめ世界の脅威ではなかった」とし、「イラクは事の緊急性に気付くのが遅かった」と振り返った。国連査察は効果があったのである。開戦の前、ブリスク委員長(当時)は「あと数カ月の査察継続」を国連安保理に求めたが、その平和的解決は米英両国につぶされてしまった。
 
国連では今、大量破壊兵器の廃棄や規制をめぐって条約協議が進展している。国際的なテロ、人権侵害などの犯罪に対しては国際刑事裁判所も活動し始めた。このような国際的な機能を活かせば平和を築くことができるのである。 
 
在京エジプト大使館のバドル大使はさる3月、参議院議員との意見交換で「テロとは戦わなければならないが、テロはなぜ起きるのか。核心はパレスチナ戦争であって、イラクの問題は枝葉の問題である。日本はイスラム社会から良いイメージを持たれている。パレスチナ戦争の解決に全力をあげてほしい(日本こそそれができる)」と注文した。世界平和のための日本外交が問われているのである。
 
(注1)『日経新聞』2004年3月4日付
(注2)『東京新聞』同年3月19日付
(注3)「連合国および外国連絡派遣団の要員および契約者の地位」を定めたCPA命令第17号は第1項で「連合国要員」とは「司令官あるいは連合軍、連合国に雇用された軍に任命されるか、その指揮の下におかれるもの」と定義し、不逮捕特権などを有するとされている。
(注4)日本国憲法の前文と第九条は、国際紛争が起きても軍事力を使わずして解決にあたるとしている。しかも憲法前文の主語は日本政府ではなく、「日本国民」となっている点を思い起こしてほしい。
(注5)『東京新聞』同3月9日付    続

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